ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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二六話

アプラ港に停泊し、パーシアス作戦に向けて改修作業中の戦艦モンタナ。

現在は作業が開始されてから三日目となり、夜を通して行われている改修作業はその工事のおよそ八割ほどを完了させていた。

 

V()I()P()殿()、船体の改修工事のおよそ七割が完了しました」

「……ネル、その言い方はよして」

 

艦橋で不満げに言うサクラに、ネルは面白くなさそうな声を上げる。

 

「やれやれ、艦長も面白みがないねぇ〜」

「仕方ないよ、艦長だもの」

 

すると改修作業から戻ってきて休憩をしていたエリーが片手にコーラを飲みながら話す。

 

現在、モンタナは岸壁から各種武装を搭載し、パーシアス作戦のための準備を急ピッチで進めていた。

主な改修は前に言った通りに行われ、甲板中央部に耐熱板を敷き、その上にミサイル発射機が搭載されていた。発射機を乗せるに当たり、両舷中央部のアスロックランチャーはMk.11ミサイル発射機に変更されていた。

 

「あ〜、そう言えばアリス達から連絡があったわよ」

「?」

 

かなり変わった艦影を見ているとエリーが思い出したような口調で言う。

 

「なんか、サイパンを出た船舶がマリアナ諸島北西沖でレーダーの調子が狂ったって通信を受けた。ってさ」

「……」

 

エリーからの話を聞き、サクラとネルは思わず顔を見合わせる。

 

『レーダーが狂った』

 

機械の故障でなければ心当たりがあったのだ。

 

「……ネル、地図出せる?」

「はいよ」

 

そう言い、ネルが地図を出すとサクラはズームアウトしてタッチペンを使って少し考える。

 

「武蔵最後の発見場所はここ……確認されたのはおよそ一週間前……」

「エリー、アリス達が通信を聞いたって言う海域は?」

「えっ?あ、うーん…大体この辺りかな……?」

 

そう言い、地図上に円を描いた。それを見てサクラは少し考える。

 

「……匂いますか?」

「どうだろう……まだ確証は持てないけど……」

 

パーシアス作戦での自分達の仕事は火力支援。

甲板上に設置されているミサイル発射機はいわば弾薬庫が剥き出しに近い状態。もし一発でも武蔵の砲弾が当たれば誘爆を起こすと思われている。

そんな動く弾薬庫のような状態の戦艦に前線を張らせるには余りにも危険すぎる。

その為、展開したブルーマーメイドおよびホワイトドルフィン艦隊、日米艦隊が武蔵の座標を指示し、モンタナは後方から超長距離砲撃やミサイル攻撃を行う手筈になっていた。

 

「艦長、如何します?」

 

そんなネルの問いかけにサクラは少し考えた後、ネルに言う。

 

「……ネル、航海科に連絡。予定進路の変更を行う」

「了解、上にも連絡しますか?」

「ええ、適当に理由つけて予定進路よりも北側に航路設定するわ。ネル、どっちに出ても対応できる場所はある?」

「至急、CICに問い合わせます」

 

艦橋でネルとサクラは一種の懸念を感じ、予定変更を行なった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、アプラ港での改修工事が完了し。モンタナはパーシアス作戦の為に出港する。

出港前にサクラは背中まで伸びていた髪の毛をバッサリと落とし、ショートヘアになっていた。

クラスメイトからは勿体無いと言われていたが、サクラの生徒手帳の写真はショートヘアである。これが通常なんだと言ってクラスメイトを納得させていた。

なお、後から知ったが。サクラの髪を切ったシアは綺麗だから捨てるのは勿体無いと言って髪の毛を自分のコレクションの中に保管したと言う……

 

「はへぇ〜、何とか終わったぁ〜……」

 

横でケイリーが目に隈が出来上がり、ひどく緩んだ声色で言う。かく言うこの四日間、忙しすぎてほとんど寝れていなかった彼女は疲労困憊していた。サクラの代わりに各所に奔走してくれたのだ。そんな、ケイリーにサクラは労う。

 

「しばらく休んでな。パーシアス作戦発動まで、まだ時間はあるから」

「はいよ〜、お休み〜」

 

そう言いながら緊張よりも疲労が勝ったケイリーは艦橋を後にする。

その様子を眺めて思わずエマが呟く。

 

「相変わらず副長は芯強ぇな」

「そりゃ、こんな艦長と共にしてたら芯も強くなるって」

 

ルイーザの返しにサクラが突っかかる。

 

「お?それは私に喧嘩売ってんのか?」

「そんなわけ無いでしょ」

「むしろ、艦長に楯突ける人を聞きたいわ」

 

真顔で答えるルイーザとネル。すると会話が丸聞こえだったのだろう、機関室にいるクレアが話してきた。

 

『そりゃあ、大統領の愛娘に喧嘩なんて出来ねぇだろ』

 

クレアがそう言うと艦橋内に爆笑が起こった。

サクラは少し表情が曇るが、ネタにされるだけまだマシだと思って小さくため息を吐いた。

 

「はぁ……取り敢えず。我々は日本近海に武蔵が発見された場合のことを考えて直ぐに動けるようにするわよ」

「「「了解!」」」

「幸いにも我々は武蔵をフィリピン方面艦隊と挟み込む形だ。北上すれば日本にも到着するからな」

「さぁて、艦長の嫌な予感は当たるのだろうか……」

 

ルイーザはそう呟いていた。

だが、サイパンを出た貨物船がレーダーが故障した報を知り、全員がまさか……と思っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

五月四日 早朝

ブルーマーメイド日本支部 作戦司令室

 

その日、早朝に富士山山頂に設置されている遠水平線レーダーが大型艦を探知した。

 

「バルーンからの情報は?」

「こちらに」

 

真霜は隊員から紙媒体の情報を受け取る。レーダーで探知し、地上から飛ばした飛行船に写る写真を見ていた。

 

「この艦影に赤いライン……間違いなく武蔵ね……」

 

真霜は報告を見て、冷や汗を掻いた。てっきり、最終発見情報からフィリピン沖に向かっていると思っていた武蔵がまさか東京を目指しているとは思わなかった。

 

『完全に戦力を集中させたことが仇となったわね……』

 

至急真雪と連絡を取り、対応策を練っていた。

 

『今、真冬のべんてんが急いで向かってくれているけど。間に合うかどうか……』

 

横須賀女子海洋学校校長室で真雪は真霜と話す。

 

「現状、武蔵とまともに戦えそうな艦艇は?」

『予備で九州沖に置いといた平賀・福内の別動隊しか……』

 

リアルタイムで映るビーコンの位置を確認しながら、真霜は言った。

 

「武蔵はあと三時間で浦賀水道に到達します」

 

言葉が出なかった、まさか武蔵がフィリピンではなくこの東京湾に近づいているとは思わなかったのである。

いや、正確には考えられていたのだが、確率は低いと思われていたのだ。

 

『現状、武蔵に一番近いのは晴風……ただこれは晴風には負担が大きい。だけど……』

 

しかし、武蔵に関する情報は欲しい。少々危険だが手伝ってもらう必要があった。

 

「分かった……晴風にはこっちから伝えておくわ。武蔵の居場所を細かく伝えるようにね……」

『お願います……』

 

と言って通信が切れた。校長室で、真雪はある報告を見ながら真雪は思わず呟いていた。

 

「まさか、本当に東京に向かっていたなんて……」

 

真雪は作戦本部から余り本気にされていなかったモンタナからの上申を思い出していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃晴風では……

 

「現在、武蔵は伊豆半島南西一〇マイルを一八節で航行中と推測されます。本艦は三五節で追跡中です」

「学校からの指示はブルーマーメイド本体が到着するまで、晴風の安全を最優先に補足し続ける事だ」

 

納紗と真白がそう言うと等松が鼻元に鉛筆を挟みながら言う。

 

「今度こそは遅刻しないように…って言って出発したのに……」

「おかげで私達が武蔵の一番近くになっちゃうなんて……」

 

元々明石との補給中に赤道祭をしていた晴風は、今度こそ遅刻しない為に予定よりも数時間早く出航した事が功を成して、現状武蔵から最も近い場所にいた。すると美波が手を上げて推測を話した。

 

「おそらく武蔵も、例のウイルスに感染しているものと思われる」

「って事はこの前みたいに助けられるって事っすよね?」

 

美波の話に、青木が聞くと、次第に教室で話が盛り上がる。

 

「私たちも何かできないかな?」

「うん、そうだよね!」

 

内田や山下がそう言うと日置や小笠原が言う。

 

「主砲もバキュンと新しい5インチ砲になったし」

「射撃指揮所も新品になったしね!」

 

そう言い、二人はモンタナから貰った五インチ連装砲や、Mk37射撃装置に換装された晴風を思い出しながら言う。

すると水雷員の松永が同じように言う。

 

「そうそう、水雷方位盤も新型になったしね」

 

そう言い、艦橋では新しい零式方位盤を見て西崎が涎を垂らしながら愛でていた。

教室では武蔵と戦う事に意気込みを感じ、士気は高かった。

 

「……艦長、どうします?」

 

そんな明乃を見ながら真白は聞く。

 

「私たちは学校からの指示通り、ブルマーを支援しよう。……武蔵は装甲も火力も、桁違いに強いから…」

「そうだな…ブルーマーメイド主体で当たるのも妥当だろう……」

 

そう言うと晴風メンバーは少し残念そうにするも、やる気に満ちていた。そんな中、明乃はずっと親友のもえかのことを案じていた。

 

「……あと何処くらいで武蔵と接触する?」

 

真白は武蔵との接触時間を納沙に聞いた。

 

「あと、二時間くらいですね……」

「あと、二時間か……」

 

そう呟き、真白は持っていた腕時計の時間を見ていた。

 

 

 

 

 

『我々は石垣島南方を四〇節で航行中。急行します!』

 

校長室で、真冬が報告をするとそのまま画面が切り替わった。

 

「戦力を集中する作戦が。裏目に出たわね……」

『今、別動隊が向かっているけど武蔵を止められるかどうか……』

 

真霜の報告に、真雪は問いかける。

 

「……他に動かせる艦艇は?」

『ドックでメンテ中の船が一隻。出せるかどうか……』

「はぁ……」

 

ため息を吐くと教頭から続報が入る。

 

「武蔵はあと三時間で、浦賀水道に侵入します」

 

武蔵の浦賀水道侵入は首都圏が火の海になる事を示唆していた。それはつまり、この横須賀女子海洋学校やブルーマーメイド日本支部もその放火に晒されると言う事だった。

もし、首都圏に入れば機能は完全に停止。国家存亡の危機となる。

 

「……晴風は?」

「およそ二時間後、武蔵と接触します」

 

そう言い、真雪はビーコンに近づく晴風と武蔵を見ていた。

 

 

 

 

 

そして二時間が経ち。ついに武蔵との接触時間となった。

 

「もうすぐ、予定時間か……」

 

すると野間から報告が入った。

 

『艦影一。左一〇度、水平線。艦影視認!』

『電探でも探知しました!』

 

すると艦橋にいた全員が左側に双眼鏡を向けた。すると……

 

『方位角、右九〇度……閃光視認。目標、発砲した模様!』

「回避!面舵一杯!」

「はい!」

 

その直後晴風の近くに砲弾が着弾した。

 

「しっかり距離をとって!」

 

明乃は少しでも安全のために武蔵との距離をとり可能な限り武蔵の位置を報告し続けた。

 

『主砲弾六!此方に接近!』

 

宇田がレーダーを見ながら報告を入れた。その直後。晴風の周囲に大きな水柱が上がり、衝撃が走る。

 

「艦長!撃っちゃう?!」

『威嚇射撃した方が、回避もグルグルしやすいかも?!』

「うぃ……」

 

その間も砲弾が飛び、晴風にダメージを与えていく。

 

「艦長!指示を……!!」

 

真白がそう言うも、当の明乃は床にへたり込んでもえかのことで頭がいっぱいとなって操艦どころではなかった。どうすればいいと思考を回した時、

 

「ブルマーです!!」

 

納紗がそう言った直後、晴風の頭上を幾多もの噴進魚雷が飛んで行き、武蔵に着弾していた。

 

『艦長!ブルーマーメイドからの通信です!『晴風は至急この海域より退避されたし』との事です』

 

八木が報告を入れると、真白はやや唖然となって呟いた。

 

「退避……」

『ブルマーより撤退命令です!』

 

晴風の向こう側に、四隻の改インディペンデンス級沿岸戦闘艦が艦隊を組んで航行していた。

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