窮地に陥った晴風だったが、てんじん率いる増援艦隊が到着し、形勢が逆転していた。
晴風の援護を行う為に、てんじんから全艦に命令が降った。
『全艦、突撃せよ!!』
特別艦隊指揮官の古庄から命令が下り、一斉に発砲が開始される。舞風、浜風からの魚雷攻撃も行われ、武蔵の周りに集中砲火を浴びる。
武蔵も砲塔を旋回させて撃ち返し、水柱が上がるも、砲撃を続行していた。
『怯むな!!』
シュペー艦橋では武蔵の砲弾が近くに着弾するが、ミーナがドイツ語で叫んで撃ち返していた。
水柱が上がる中、グアムで交換された攻撃ヘリコプター《AHー1Z ヴァイパー》は武蔵の船体に沿うように前後から侵入する。
「目標、武蔵対空火器!ロケット弾発射!!」
バシュゥゥゥゥバシュゥゥゥゥ‼︎
ヴァイパーのロケットポッドからハイドラ70ロケット弾が発射され、武蔵に搭載されている40口径12.7cm連装速射砲や25mm三連装機銃、13mm連装機銃を破壊する。至近距離から発射され、事前情報通りに攻撃を行った影響で武蔵の対空兵装は二機のヘリコプターによって一瞬で全滅させられた。
黒煙が上がり、アリスは風で煙を吹き飛ばすと艦橋でコチラを見ているもえか達を確認した。
「こちら、ヴァイパー1よりモンタナ。武蔵第一艦橋に艦長と思わしき人員を確認しました!」
『ーー了解した。…モンタナよりヴァイパー隊に次ぐ。レーザーを武蔵主砲に照射し、ミサイル誘導を行え』
「ヴァイパー1、了解」
『ヴァイパー2。同じく了解』
二機のヘリコプターはそのまま射撃指揮所付近に止まると機体先端のレーザー誘導装置を起動させ、武蔵主砲の上部にレーザーを当てた。
武蔵の猛攻を受けつつも、やはり武蔵の46cmは威力が高かった。
残った二基の主砲はその砲口を艦隊に向けて放ち、近寄らせないように水柱を作る。
「なんとか隙を作らないと……」
晴風で明乃が言っていると。
「艦長、これ使えないですかね……」
と言って納紗が煙幕用の噴進弾を見せた。
「もしもの時に、って明石が載せてくれたんです」
と納沙がなぜここ噴進弾があるのかを話した。それを見た明乃はある閃きが浮かんだ。
「っ!メイちゃん、タマちゃん!」
「「ん?」」
と言って噴進弾で何をするのかを伝えた。
「ーーー分かった!よし、タマ行くよ!」
「うぃ」
と言って艦尾方向に二人は向かった。
「鈴ちゃん!」
「は、はい!」
すると明乃は知床の方を向いて言った。
「晴風を武蔵の前に出して!」
と、突拍子もない発言をした。
「か、かか艦首の前……ですか!?」
と言って迷ったが…
「知床さん……前進!武蔵の前へ!」
真白が後ろから支えるように言った。
「りょ、了解」
知床はそう答え、晴風を旋回し始めた。
「武蔵の前に出るのか!?」
その様子をミーナ達は見ていた。晴風が旋回したところをテアは叫ぶ。
「晴風を撃たせるな!砲撃は全てこちらに引きつけろ!」
そして砲塔が武蔵に向いて注意を引きつけた。
その光景はモンタナにも映っており、サクラは指示を飛ばした。
「晴風を守れ!ハープーン発射!!」
「ハープーン発射します!!目標、武蔵主砲!発射数二!撃てぇ!!」
バシュゥゥゥゥ‼︎バシュゥゥゥゥ‼︎
発射された二本のミサイルはそのまま真っ直ぐ飛翔し、レーザーが当てられた武蔵主砲塔に向かい、そして……
ドガァァァァアアンン!!
武蔵主砲塔の真上から着弾した。そしてそのまま武蔵の主砲は爆発を起こし、砲塔天板を吹き飛ばした。
「ヴァイパー隊から報告!ハープーン命中!!それと、燃料が限界と報告が」
「よし、そのまま武蔵から引き上げさせろ」
「了解!」
そう言い、二機のヘリコプターは武装や燃料の殆どを使い切って武蔵から離れて行った。
明乃の提案で艦尾に走った西崎たちは、布に包まれた噴進弾を取り出す。
「タマ、時間がないから急ぐよ!」
「うぃ」
と言って急いで噴進弾の準備をした。その間も武蔵は残った兵装で混成艦隊に砲撃をし、ジグザグ航行をしながら避けていった。
「噴進弾、いつでもいけるよ!」
西崎の報告に明乃は、
「前進いっぱーい!面舵いっぱーい!艦尾を武蔵に向けて!」
「前進いっぱーい、面舵いっぱーい!」
と言い、武蔵の前に向かった。そして明乃は叫ぶ。
「タマちゃん、発射準備!」
そう言い、立石達はタイミングを見計らった。
「タマ、魂で撃て!」
西崎の言葉に立石は武蔵が後ろに来るまで今か今かと待った。そして、レールの先に武蔵が入ろうとした時……
「この弾で…チャンスを掴む……」
そして、発射ボタンを押された噴進弾はレールを伝って勢いよく武蔵に飛んでいった。そしてそのまま武蔵上空を通過し、完全に煙幕で覆い被さった。
「げほっげほっ」
発射した煙幕にむせてしまった西崎は…
「艦長、今だー!」
と言って親指を立てながら武蔵への突入を敢行させた。
「鈴ちゃん、面舵一杯!武蔵の右舷へ!」
「面舵一杯!」
と言って知床は勢いよく舵輪を回したが、舵が途中で固まってしまった。
「だ、舵輪が回りません!」
「え!?」
『舵が損傷!操舵不能ぞな!!』
先程の武蔵の衝撃で梶が損傷してしまっていたのだ、如何しようと考えていると…
「……はっ!パラシュートあったよね!」
と言ってパラシュートの有無を確認した。
「え、ええ……」
と真白が力無く言う。すると…
「姫ちゃん、ももちゃんパラシュート用意!」
そう言ってパラシュートを準備させた。
「パラシュート用意したっすけど、如何すんすか?」
と青木が聞く。すると明乃は突拍子もない事を言う。
「それを右舷後方に投げて!」
「「へ?」」
「早く!」
「「はい〜!」」
明乃の声に急いで二人はパラシュートを海に投げ込んだ。投げ込まれたパラシュートは水中で開き大きな力を生み、船体が大きく動き煙幕の中に突入した。
「回った!!」
「やりました!敵前大回頭!!」
知床や納紗がそう言うと真白が煙幕の中の影を見た。
「武蔵見えた!」
すると即座に明乃は叫ぶ。
「パラシュート、切り離して!」
「えい!」
と言ってこれ以上必要のないパラシュートを斧で切り離した、そしてそのままの勢いで武蔵に向かった。
「激突するぞ!」
「衝撃に備えて!」
と明乃が言うと各部署は衝撃に耐えられるよう何かに捕まっていた。そして……
ゴォォォォォォオオンンン‼︎
大きな金属音がぶつかった音が響き、煙幕からは武蔵に体当たりした晴風が船体から火花を散らして出てきた。船体に衝撃が走り、安全装置が働いて武蔵、晴風共に停船する。
「救出部隊突入準備!『出来ていますわ』へ?」
すると接舷した晴風甲板では木製薙刀を持った万里小路が武蔵に向かって突入を敢行した。
「行きますわよ!突入!!」
そう言い、万里小路は我先に突入を敢行した。
その様子を見ているともう聞き慣れた音が響き、ふと空を見上げるとそこにはモンタナが搭載していた灰色のUH-1Yが二機、武蔵の後部甲板にホバリングして降り立っていた。
中には突入装備を持ったブルーマーメイド隊員が乗り込んでおり、真白達はヘリから突入部隊が降りて船内に入っていくのを眺めていた。
そして真白は明乃を見ると、彼女は今すぐにでも飛んで行きたい自分と、艦長として残らなきゃいけない自分とでモジモジしていた。
「艦長!」
「ふぇっ!?」
いきなり声をかけられ、驚く明乃に真白が言った。
「わ、私は艦長だから。ここにいる……」
「行ってください」
「で、でも……」
艦長として無理に残ろうとする明乃に真白は焦ったくなって思わず少し強めに言う。
「行って!岬さん」
「えっ……!!」
「分かっていますよ。顔にそうやって書いていますから」
真白がそう言うと、少しして明乃は真白が言った言葉の意味を理解すると艦橋を後にする。
「シロちゃん……ありがとう」
そう言い残して艦橋を後にすると、真白は納紗に抱きつかれ、真白はやや鬱陶しそうに答えていた。
シュペーと別れて以降、納紗と真白はどう言うことかベッタリと接することが増えていたのだ。
納紗に抱きつかれながらも、真白は晴風から武蔵に乗り移っている明乃を見ていた。
ずっと心配だった武蔵艦長との再会。明乃の心情はなんとなく分かる。
これ以上戦闘も起こらないだろうと思い、真白は明乃を武蔵に送っていた。
上空ではブルーマーメイド隊員を送り届けたUHー1Yが発艦し、武蔵を離れて母艦であるのだろうてんじんに戻っていった。
真白に言われ、明乃は晴風から武蔵に乗り移って艦橋の階段を登っていた。
「モカちゃん……モカちゃん……!!」
ずっと会いたかった親友。色々と伝えたい思いを胸に、階段を登る。
万里小路が途中で薙刀で近づく武蔵の生徒を斃し、青木や和住が艦橋の扉を開けて海水を含んだ竹水鉄砲を船内に向けて出し続けているのを横目にただひたすらに階段を登る。
途中、ヘリコプターの攻撃で一部柵がが壊れた部分もあったが、明乃は遂に階段を登り切って、もえかの居る第一艦橋のすぐ外に到着する。
「っ!モカちゃーーーん!!」
明乃は必死に扉を体当たりでこじ開けようとする。
その音を聞き、もえかはバリケードを崩し始める。
「モカちゃん!!モカちゃん!!」
そしてもえか達がバリケードを壊し始めた事で徐々に体当たりする度に扉が開く。
そして何度も体当たりしているうちに扉は徐々に開き、そして……
「う、うわぁぁ!!」
扉が開き、明乃が体勢が崩れながら中に入る。すると、そこではもえかが明乃を抱えるように立っており、入ってきた明乃を支えていた。
明乃は思わず顔を上げると、もえかが涙を堪えながら明乃を見ていた。
「やっと…会えたね……ミケちゃん……」
「モカ……ちゃん…モカちゃん…モカちゃん…モカちゃぁぁーーん!!」
明乃は思わずもえかの体に飛びつく。するともえかは嬉しそうな声を上げながら明乃と抱き合って喜びを露わにしていた。
「本当……無理をしちゃって……」
「だってぇ……」
「本当に……でも…ありがとう……」
二人は艦橋でお互いに涙を流してあっていた。
すると、複数人が艦橋の階段を登る音が聞こえ、明乃が入ってきたルートと同じ道を誰かが入って来た。
「ミケちゃん!!」
そう言い、入って来たのは銀髪のショートヘアをしたエメラルド色をした瞳を持つ、見た事ない制服に身を包んだ少女だった。
知らない子、だけど身に覚えのあるその子はもえかと明乃を見て心底ホッとした表情を浮かべていた。
「良かった……無事だったのね……」
少女はそう言うと後続で来た同級生と思わしき人の方を見て英語で会話をしていた。
そして会話を終えると少女は再びもえか達を見て言った。
「皆さんを移送します。こちらに来てもらって構いませんか?」
「は、はい!!」
そう言うと明乃は少女を見て驚いた声をした。
「サ、サクちゃん!?」
「え?」
明乃がそうあだ名するのは一人しか思い浮かばなかった。思わずもえかはやって来た少女に聞く。
「もしかして……サクラちゃんなの……?」
そう言うと、少女はもえかを見ながら一回目を閉じると再び開いて優しい表情をして頷いた。
「ええ…久しぶりね……モカちゃん」