ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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三三話

納紗が心当たりがあると言って和菓子店を後にした頃。

横須賀市内のとある銭湯では、西崎と立石が風呂上りの牛乳を飲んでいた。

 

「ぷはっ……いや~テスト明けはやっぱり、温泉に限るなぁ~」

「うぃ~」

 

西崎の意見に同意する様に牛乳瓶に口をつけ牛乳を飲む立石だった。

 

 

 

 

 

納紗が心当たりがあると言ったのは、横須賀市外にある公園だった。

そこにある電波塔の上で野間が風を感じていた。どうやってそこに登ったのか、どうやって入ったのかは不明だが、野間を見て思わず宇田が呟いた。

 

「ホントに居た」

「でしょう!」

「うーん、いい電波が出ている」

 

その横で八木がなにか変なモノを受信している様子。

 

「ないない」

 

宇田は即座にそれを否定していた。すると……

 

「マッチは陸に上がったてもサイコー!!サイコーよ!!」

 

声がした方を見るとそこには等松、青木、和住の三人がいた。

等松は電波塔の上にいる野間をスマホで写真を撮っていたのだが、手ぶれ補正が補正できないぐらい手を振りながら写真を撮っており、本当に写真が撮れているのか疑問な感じである。

青木はスケッチブックに野間の姿をデッサンしており、和住は帆船の模型を作っていた。

 

「カッコイイ」

 

宇田が青木のデッサン画を見て一言呟く。

 

「マッチ主役の漫画を仕上げて、夏のビッグイベントで金をガッポリせしめるッス」

 

そう言い、彼女は漫画で儲ける気満々でいた。

 

「野間さんが高い所に居そうなのは読めていましたが、更に三人補足できたのは幸運でした」

「ココちゃん名推理だったね」

 

そして、納紗は其処に居るメンバーの封筒を手渡す。

 

「……そう言えば、二学期から私達どうなるんだろう?」

 

青木の呟きに思わず納紗はハッとなる。

 

「っ……機関長と黒木さんは研修…主計科の三人も和菓子屋さんで修業…わざわざテスト休み中にですよ」

「言われてみればちょっと変かも……」

「二学期からの海洋実習、私達は乗る船が無いんです…それを見越して動いているんだとしたら……」

 

良いしれぬ不安がその場を包み込む。

すると、野間が海で沈没している晴風に近づく浮きドックを見ていた。

 

「っ!!あれは……!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

沈没した晴風は浮きドックの中に入り、クレーンが忙しなく動く。

その様子を万里小路はずっと眺めていた。

 

「お嬢様だと思っていたけど、此処まで凄いとはね……」

 

後ろに止まっていた車の後ろから八木が呟く。連絡を受けてここに来ていたが……ある意味予想通りというべきか、万里小路はお嬢様だった。

彼女の家である万里小路家は華族であり、第二次世界大戦を経験していないこの世界で華族制度はまだ残っていた。

万里小路重工の御令嬢である彼女は浮きドックを見ていると、横にいた執事が万里小路に話し掛ける。

 

「お嬢様、そろそろお戻りになっていただかないと……」

「時期に戻りますからもう少し待って下さい」

「…分かりました。では、御当主様にもそうお伝えいたします」

 

そう言うと執事はその場を去り、万里小路が口を開く。

 

「分かっております……そこにいらっしゃるのは……」

 

遠回しにそこにいるのは分かっていると言われ、納紗達は車の影から出て来る。

 

「えっと……お渡しする物が……」

 

そして納紗は万里小路の分の封筒を手渡す。

 

「ご丁寧にありがとうございます」

「あの……万里小路さん。さっき話していた『戻る』って……」

「実は、お父様から何度も言われておりまして……」

「っ!?」

 

万里小路の告白に納紗は言葉が止まる。

 

「それってまさか……!!」

 

すると、メールが届き八木達は次の場所へ移動し始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同じ頃、立石と西崎は温泉施設の休憩室で将棋を打っていた。

 

「よーし、打っちゃうよぉ~取っちゃうよぉ~ソレ」

「うぅ~うぃ~」

 

大事な駒が取られ、立石は次の手を打つ。

 

「おぉっと、また取れちゃうねぇ」

「うぃ~……!!」

 

折角打った手も西崎には通じず、かえって被害が大きくなる立石。

 

「タマの仲間はどんどん減って行く~」

 

初心者の立石相手に西崎は将棋でボコボコにしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

納紗達が次に向かったのは姫路達がいると言う市内のゲームセンターだった。

 

「そぉ〜れ!」

 

そこでは姫路達水雷員がボウリングでストライクやスペアを連発し、ダーツをしながらそれを見ていた小笠原達砲術員は『あり得ない』と評価していた。

ダーツをしていた日置を皮切りに二学期からの海洋実習に不安を募らせる中、納紗達がやって来た。

 

「失礼しま〜す!」

 

そう言い、納紗は早速姫路達に封筒を渡す。

 

「あっ、一緒にダーツやる?」

 

すると、小笠原は納紗達をダーツに誘う。

 

「ビリヤードでもいいよ」

「いや~みんなでやるならボーリングでしょう」

「いやいや、ここはやっぱりドキュンと輪投げで……」

「「「「ないから」」」」

 

そこで、日置以外の砲術科と水雷科の全員がツッコム。

 

「いえ、任務が残っているので……ですが、近いうちに是非!一緒に遊びたいです。できればクラスのみんなで」

 

納紗はまだ封筒が残っているので、遊ぶのはまた今度と答えた。

 

「クラス皆って大げさな……」

「ドキュンと集まるかな?」

「あ、でもさっきモンタナの先輩達が集まってクレーンゲームしていたね」

「あぁ、それなら結構行けるかも……」

 

すると、そこで納紗が恒例の一人芝居をしたが、逆に白けてしまっていた。

 

「大丈夫?ココちゃん」

「なんかただ事じゃないってのは伝わって来たよ」

 

芝居を終えて項垂れた後。八木に慰められ、小笠原がそう言う。

 

「皆で集まれるのは今の内だけかもしれないので……」

「えっ?それって私達船がないから……」

「じゃあ、私達のクラス……」

 

納紗の呟きを聞き、八木達はここでやっと自分達のクラスが解体されるかもしれない可能性に気が付いた。

 

「ま、まだ決まった訳ではありませんから。御内密に……」

 

すると、納紗の呟きに全員が一瞬だけ黙ってしまう。

確証はないが、無い訳ではない。納紗達の間に不安感が高まっていた。

 

「……あっ、そう言えばさっきメイちゃんとタマちゃんの居場所を掴んだんだけど……ちょっと離れているんだよね」

 

携帯を見ながら八木がそう教える。

 

「じゃあ、私達でメイちゃんとタマちゃんに届けておくよ」

 

八木と宇田がそう言い、納紗は二人に立石と西崎の分の封筒を渡すと、次にメールが届いた。

 

「航海科はこの後、ドブ板通りのレストランでご飯だって」

 

航海科のメンバーの居場所が分かったので、納紗はそっちに向かう事になった。

 

「やばいよ、クラス無くなるの?」

 

砲雷科のメンバーに八木達が顔を見合わせてアレやこれやと話し合う。

 

「あれ?皆お喋りタイム?」

 

そこへ先程まで麻雀をしてきた機関科のメンバーがやって来た。駿河は赤くなった額を手で抑えていた。

 

「あれ?機関科の……」

「麻雀していたんじゃ……?」

「留奈が負けてばっかで、おでこ痛くなったから他のコトをして遊ぼうって」

 

若狭がここに来た理由を話すと、広田が八木達を見て聞いて来た。

 

「皆さん、仲がよろしい様で何より。……で?お揃いで何のお話ですか?」

 

その問いに、小笠原が答えようとした時。ボウリング場に一〇人くらいのグループが入って来た。そのグループは両手にこれでもかと言うほどお菓子やらぬいぐるみやらが入った袋を抱えていた。

白い船形帽を被り、ブルーグレー色のセーラー服に身を纏った、八木達にとっては親しみのある衣装だった。

すると、グループの先頭を歩いていた女生徒が八木達を見た。

 

「お?君たちは晴風の子じゃないか」

「あ、エリーさん!如何して此処に?」

 

グループを率いていたのはモンタナクラス主計長のエリーだった。一ヶ月間、ほとんど共に行動していたと言うのもあって晴風メンバーとモンタナメンバーはお互いに顔を合わせる機会は多かった。その為、八木達もエリー達もお互いの顔を覚えていたのだ。

するとエリーがここに来た理由を話していた。

 

「いやぁ、下のUFOキャッチャーで乱獲してたら追い出されちゃってさ。仕方ないからこっちに来たのよ」

 

そう話すと、駿河達は商品を見ながら呟いた。

 

「あ!ゲームセンターが店じまいしてたのって先輩達の仕業だったんだ……」

「それはまぁ…あれだけ獲っていたらねぇ……」

「うわぁ、凄い獲りましたね」

 

そんな風に乱獲して山盛りになっているお菓子を見ていると小笠原がエリーに聞いた。

 

「あの…先輩方は知っていますか?」

「ん?何の事?」

「実は……」

 

そして、小笠原がエリーにクラス再編の噂話すと不思議そうな表情を浮かべた。

 

「そんな噂があるの?」

「はい」

「初めて聞いたわね……ねぇ、そんな話聞いた?」

 

晴風クラス再編の噂を聞き、エリーは一緒に来ていたメンバーに聞くが、全員が『知らない』『初めて聞いた』と言っていた。

 

「うーん、ちょっと艦長に聞いてみるか……」

「え?でも、モンタナの艦長さんも忙しいんじゃ……」

「あ〜、大丈夫大丈夫。そろそろ仕事も終わるだろうから……」

 

そう言い、エリーは携帯を取り出してサクラに電話をかけていた。数コールの後にサクラが電話に出た。

自分たちの艦長と同じ部屋にいるのを知っている八木達は大丈夫なのかと思っていたが、あっさりと出たことに少し驚いていた。

 

「……あ、もしもし?艦長、ちょっと晴風に変な噂が流れてるらしいんだけど何か知らない?」

 

そしてエリーはサクラと少し話すと、電話を切った。

 

「……うーん、少なくともクラス再編の噂は艦長も初耳だってさ」

「そうですか……」

 

サクラが知らないとはいえ、クラス再編は学校に大きく関係する出来事。いくら艦長でもサクラが知る由もないかと、余計に不安感を煽る結果になっていた。

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