ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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三四話

晴風メンバーにクラス再編の不安感が起こっている中、柳原と黒木は……

 

「いい自主研修ね、コレ」

「だろう?勘も鈍らねぇしな」

 

そう言い、二人は船舶エンジンの修理のバイトをしていた。テスト休みも、特にすることが無く、趣味の機械いじりをしながらお金を稼げる一石二鳥の修理のバイトをこなしていた。

 

「マロンと二人で何かをするのって結構久しぶりね」

 

黒木は柳原と一緒に居るが、二人っきりではなく、他の機関科のメンバーもいた。なので二人きりと言うのは入学式以来だった。

 

「ああ、たまにはいいもんだろう?」

 

そんな漁船のエンジンの修理をしていた二人に声を掛ける人物が居た。

 

「やっぱりいい腕しているね」

 

その声に反応して柳原と黒木が桟橋を見ると。そこには横須賀女子の制服の上に灰色の防水コートを羽織った小柄な女子生徒が立っていた。

 

「なんでぇ、あんたは?」

「明石艦長、杉本珊瑚……妙な噂を耳に挟んだんで、会いに来た」

 

 

 

 

 

同時刻

伊良子や杵崎姉妹のバイトする和菓子店では……

 

「いらっしゃいませ〜」

「あれ?貴女は確か‥‥」

 

和菓子屋の自動ドアを潜り入って来たのは横須賀女子の制服を身に纏う一人の女生徒で、伊良子と杵﨑姉妹はその女生徒に身に覚えがあった。

 

「話があるんだけど、いいかしら?」

 

和菓子店を訪れたその人物は間宮艦長の藤田だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

納紗はクラス再編に不安感を募らしながら街を歩く。

 

「まだ……決まった訳じゃ……あっ……」

 

納紗が航海科のメンバーが集まるレストランに向かっている最中、前方からセグウェイに乗った美波がやってきた。

 

「美波さん」

 

美波も幸子に気づいて、彼女の前でセグウェイを止める。

 

「よかった。これを」

 

納紗は美波に封筒を手渡す。

 

「ん?」

「学校からの期日付の密封指示書です」

「感謝する」

 

美波が封筒を受け取った瞬間に彼女のスマホが鳴り出す。

 

「もしもし……分かった」

「あの?」

「研究室に戻る。衣帯不解……」

 

美波は四字熟語を残すとセグウェイで来た道を戻る。その後、納紗は美波の呟いた四字熟語の意味を調べる。

 

衣帯不解

『衣服を着替える事もせず、ある事に熱中すること。不眠不休で仕事に打ち込むこと。』

 

タブレットにはこう記されていた。

 

 

 

 

 

そして納紗は航海科のいるカレー屋に到着する。店内ではお通夜のような雰囲気で、出されたカレーに一口も口をつけずに俯いている航海科メンバーがいた。

 

「あの〜…失礼しま〜す」

 

そう言うと全員が一斉に納紗を見た。

 

「ココちゃん……」

 

納紗の姿を見て知床と内田が涙目になる。そして、一斉に納紗に駈け寄った。

 

「「うわぁぁぁん!!」」

 

「ど、どどど、どうしたんですか?皆さん!?」

 

突然泣きつかれて狼狽える納紗。

 

「私達、皆バラバラになっちゃうんだって~」

「お、落ち着いてください。公式にそんな発表は……」

「でも、見たぞな。さっき和菓子屋でみかんちゃんと杵﨑姉妹が間宮の艦長にスカウトされていたぞな」

「えっ?」

 

勝田の言葉を聞いて納紗も驚く。

 

「マロンちゃんとクロちゃんも明石の艦長がヘッドハントしに来たって聞いたよ」

「ええっ!?」

 

内田の続報にさらに納紗は驚く。

 

「きっと私達の航海長も比叡あたりから引き抜きに来るよ」

 

間宮、明石がヘッドハンティングした事で、比叡辺りからも同じのが来るのではないかと言う心配の声をあげていた。

 

「いやだ!!皆と離れたくないよぉ~!!」

 

海洋学校卒業後は進路がバラバラになる為、せめて高校のクラスメイトと一緒に過ごしたい。と言う願望が彼女らにはあった。

晴風の沈没に間宮、明石両艦長のスカウト。これらの出来事に納紗達は不安感が膨れ上がっていた。

このスカウトは杉本、藤田の半ば独断に近い行動だったのだが、この時は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

航海科メンバーに封筒と渡し終え、納紗は封筒を眺める。

 

「これは…転属指示書と言う訳ですか……」

 

今まで起こった出来事を纏めると晴風クラスは解散。晴風の活躍を聞き、自分たちの勢力を強める為に晴風のメンバーを回収しようとしている。

と言うのが納紗の考えだった。

沈んだ気持ちで晴風寮に戻ると、そこではミーナが寮にあるテレビで任侠映画を観ていた。

 

「おう、遅かったから先に見ておったぞ」

 

と言って再びミーナはテレビ画面に視線を戻した。

 

「ミーちゃん……」

 

と言うと納沙はミーナの隣で座り泣きながら彼女の袖を掴む。

 

「うちのクラス……解体になるかもしれないです……」

「噂は本当じゃったか……」

「クラスがバラバラに……もう、私の居場所無くなっちゃう……」

 

するとミーナから思いもよらない提案が伝えられる。

 

「そうか……じゃあ、もしそうなったらわしの学校に留学せんか……」

「え?」

 

突然の提案に納沙は少し唖然としてしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同時刻

横須賀女子海洋学校 校長室

 

「…そうですか…建造は順調で予定通りの期日に就航できると……分かりました。ご苦労様です」

 

そう言い、真雪は受話器を置き、机の上に置かれた紙を見る。そこには『クラス再編成案』と書かれた書類が置かれていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同じ頃、モンタナ寮ではモンタナクラスの生徒が寮の外に出て騒ついているようだった。目の前に置かれたビリヤード台やテレビ、バスケットボールやバレーボールなどを寮に運んで片付けていた。

 

「さぁ、早く運んで!テスト休みが潰れるわよ!」

 

寮の前ではケイリーがそう言ってクラスメイトを急かしていた。

と言うのも。モンタナは現在、パーシアス作戦時に受けた損傷の修理を行うと同時に船体をいじるほどの大改修を本格的に始めていた。

理由は簡単で、アメリカ国防総省及び政府は合衆国海軍が所有するすべての戦艦に本格的にミサイルを設置する事を決めていたからだ。

 

 

 

 

 

なぜこんな事ができるのか。それはサウスダコタ級、アイオワ級、モンタナ級戦艦などの俗に言う新戦艦と呼ばれる戦艦の所管がブルーマーメイドではなく、アメリカ海軍にあるからだった。

 

アメリカとソ連の冷戦時代、時の大統領が発した六〇〇隻艦隊構想により、ブルーマーメイドに移管されそうになっていたアイオワ級、モンタナ級、サウスダコタ級は予備役から復帰。現役最後の戦艦としてその任についていた。

1950年代に中国で起こった第一次国共内戦は、アイオワ級二隻と竣工したばかりのモンタナが青島を砲撃し、補給線を絶つ任務を受けていた。

そして、冷戦が終わった後も各戦艦はアメリカ海軍が保有し続け、それを各海洋学校に貸し出す形で自動化工事を行った後に生徒が運用していた。

 

 

 

これはモンタナ級に限らず大和型やアイオワ級、金剛型などの戦艦級以上全てに言える事だが、一クラス分の人数で艦の運営をするのは本来であれば超人手不足。いくら自動化が行われているとはいえ、満足に運営するには最低でも一〇〇人は必要だった。

まぁ、その人手の少なさが前回のパーシアス作戦成功の要因でもあったが……

 

 

 

 

 

兎も角、現在モンタナはドックに入り、改修作業を受けていた。

その工事は船体を弄る工事のため、一旦すべての荷物を持ち出す事になり、寮の前には大量の荷物が積まれていた。工事が完了するまでこの荷物は寮の倉庫などに押し込まれる事になっているが、引越しのような出来事に横須賀女子の生徒も何事なのかと言った様子で運ばれていくビリヤード台などを見ていた。

その様子を眺めながら、サクラは自室で何処かに電話をしていた。

 

「うん…うん…こっちは大丈夫……だから、何処も怪我してないって……」

 

少しだけ笑いながら電話をしているサクラ。相手はサクラの父であり、現職のアメリカ合衆国大統領。モーリス・ファーゴだった。モーリスはある事件以降、定期的にサクラに連絡を入れてくるようになっていたのだ。

 

「今、大丈夫なの?」

 

今の時間的に向こうは深夜。体調は大丈夫なのかと聞くと、電話の向こうからは溌剌とした声が返ってきた。

 

『ああ、こっちは問題ない。仕事も終わっているしな!』

 

その後に豪快な笑い声をしたモーリスに、サクラは思わず聞きたかった事を聞いていた。

 

「……で、父さん。良かったの?日本で改修工事を行なっても……」

『あぁ……最近北中国がきな臭くなってきた。日本政府も了承したからドックを開けてくれたんだ。何も問題はない』

 

北中国とは、前述した国共内戦後に誕生した中華人民共和国の俗称である。アメリカや日本、欧州各国などは国交を樹立していない国家であり、黄河より北側に位置し、社会主義を掲げる独裁国家であった。

逆に黄河より南側は中華民国と呼び、アメリカや日本が指す中国はこちらであった。資本主義を掲げ、数多の資本は南側に集中していた。

 

国共内戦とは今までに六度ほど起こっている北中国と南中国の戦争の総称である。

一九五〇年から始まり、戦争、休戦、戦争、休戦を繰り返して現代までズルズルと続いている戦争だった。

元は社会主義国家群と資本主義国家群の代理戦争だったが、ソ連は崩壊。アメリカも冷戦の終わりから軍縮の影響で手を引き、その影響でここ二、三〇年は戦闘も大規模なものは起こっていなかった。

 

社会主義の総本山であったソ連は何十年前にも消え、社会革命を起こした国家も次々と資本主義政策を施行する中、この国はいまだに強い社会主義と言う妄想を描いていた。そんな国をアメリカが気にしない訳がなく、南中国や朝鮮共和国を介して常に調査と監視を続けてきた。

そして昨今の動きからモンタナ級を大規模的に改修することを決定した。彼の国を刺激するのではないかと言う反対意見は半ば封殺されたと言って良いだろう。

何せ、今まで噴進魚雷の飽和攻撃で沈没できると思っていた戦艦が、まさか単艦で一六隻のあきづき型を航行不能にするなんて誰が思っただろうか。

 

この報告を受け、国防総省は狂乱に陥ったが、パーシアス作戦時にモンタナの放ったトマホークやハープーン。シュペー攻略時のアスロックなどが、船体や武装にダメージを与えた事を受け、アメリカでは従来の艦艇にミサイルを多数搭載する方針を展開していた。

それからヘリコプターの訓練も行われることになり、モンタナには現在UHー1YとSH-2Gの搭載が決定していた。

 

 

 

又、UH−1とSH-2の採用がブルーマーメイドで決定する事になった。

現在、様々な型があるUH-1は全てUH-1Yに、SH-2はSH-2Gに改修された後に引き渡しが行われるそうだ。

既に調達が始まり、来年度から各海洋学校に《航空科》と言う新しい学科が誕生する旨なども報告を受けた。

 

「航空科…か……」

 

父からの報告を聞き、サクラはモンタナの停泊するドックの方を見る。

先のRats事件で大きく変わるであろう、今後の戦略転換を想像していた。

 

航海科、砲雷科、機関科、主計科に次ぐ新たな五つめの学科。

色々と変わっていくのだろうかと思いながらサクラはケイリーに呼ばれて荷物運びの手伝いをしていた。

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