ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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三五話

「ドイツに行けばミーちゃんと一緒で……でも、クラスの皆とも……」

 

納紗はミーナから聞かされた提案を聞き、自室で考え事をしていた。

ずっと明乃や真白と共に過ごしたい。心の底から願うその気持ちは揺るぐことはなく、納紗はその日はなかなか寝付くことができなかった。

 

 

 

 

 

翌朝、学校に登校する道の途中で納紗は真白に例の一件の報告をしていた。

 

「あの指示書でそんな事が?」

「はい。このままだと私のクラスがバラバラになっちゃいます。急いで艦長に相談を……」

 

納紗が報告を入れると真白は彼女に伝えた。

 

「分かった、すぐに艦長に報告する。その間に、クラスのみんなをうまく纏めといてくれ」

「っ!!了解しました!!」

 

真白に言われ、嬉しそうに答えた納紗はそのまま走って校舎まで走って行った。

 

 

 

 

 

同時刻

猿島フロート 船内ドック

 

そこではドックに浮かぶ一隻の航洋艦を真雪とサクラが見ていた。

真雪が航洋艦を眺める中、サクラは横で紙をペラメラとめくって確認しながら呟く。

 

「宗谷校長、此方が例の書類です。確認をお願いします」

「ええ……そっちも色々忙しいのに、何だか申し訳ない気分ね……」

「いえいえ、元々はモンタナの余剰パーツを渡しただけですし、問題ありません」

 

二人はそう話していると、真雪は現時点で伝えられている改装工事の内容を思い出しながらサクラに言う。

 

「しかし、随分と大掛かりな工事なのに本当に二ヶ月で終わるのかしらね?」

「さぁ?私にもわかりかねますが、既に本国ではアイオワ級二隻が既に工事を終えたそうですよ?」

「早いわね……」

 

とりわけあの国の工業力にブイブイ言わせた形なのだろうが……

ともかく、他国とは一線を画する合衆国の工業力に舌を巻く真雪だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

真雪に書類提出を終え、報告書も書き終えて提出したサクラだったが。未だに終わりの見えない明乃の様子を見る為に図書室に入ると、そこで真白の呟きを耳にしていた。

 

「どうやら、晴風クラス解散の噂が流れているらしいです」

「えっ!ウチのクラスが!?」

「そんな話…聞いたこともないけど……」

 

真白の話を聞き思い当たる節がないもえかは疑問を浮かべる。

 

「もかちゃんなにか知っているの?」

「うん、明石と間宮の艦長が晴風の子を欲しがっているって言う噂は聴いたけど……」

「え〜!家族がバラバラになるのは嫌だな……ただでさえ家なき子だし‥‥」

 

明乃がそう呟くと、サクラがそこにやって来た。

 

「じゃあ、ミケちゃん。モンタナにでも来るかい?」

「うーん、サクちゃんと一緒は嬉しいけど、私の家は晴風だから……」

「まぁ、そう言うと思ったけどね……」

「じゃあ、ちょっと私の方でも情報を集めてみるね」

 

そう言い、もえかが携帯を取り出すと明乃が席をガタンッ!とさせて立ち上がる。

 

「私も、みんなのところに行かないと……!!」

 

するとそこで真白が明乃に伝えた。

 

「晴風に関しては納沙さんに任せてあります。…なので艦長はまず始末書の提出をして下さい!!」

「えぇ〜!!じゃあシロちゃんも手伝ってよ〜!!」

 

机に突っ伏した明乃を見て真白は溜息を吐きながら呟いた。

 

「はぁ〜…仕方ないですね……」

「わぁい!!有り難う!!」

 

そう言うと、明乃はかつてない程の速度でレポート用紙を書き進めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

明乃達が図書室で悲鳴をあげている頃。横須賀にある神社の境内で納紗、八木、宇田の三人がベンチに座りながら話し合っていた。

 

「クラス全員を取り纏めるといってもどうやったらいいんでしょうか?」

「まずは、連絡」

「それだけでは何か足りなさそうですね……」

 

三人が悩んでいると幸子の視線の先に戦艦三笠の装甲板が目に入った。

 

「……っ!!東郷ターンですよ!!東郷ターン!!」

「「?」」

 

いきなりの納紗の提案に疑問が浮かぶ。

 

東郷ターン

日露戦争最大の海戦、日本海海戦において東郷平八郎貴下の日本艦隊がロシア艦隊に丁字戦法を取る際に全艦に取り舵を指示しロシア艦隊に横腹を見せるような行動をとった。

この時の行動を司令官であった東郷平八郎の名を取って東郷ターンと言った。

 

八木が解説を読むと納紗がいつもの一人芝居を始め、それを二人はジト目で見ていた。

 

「みんなで一つになればどんな困難でも立ち向かえます!そのために署名を集めましょう」

「なんで署名?」

「署名だと一致団結には最適じゃないですか?」

「なるほど……横須賀の人に呼びかけて署名を集める……いいかもしれない!」

「でも大丈夫なの?」

 

納紗の意見に宇田は心配したが、八木は以外にも乗り気だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

署名をすることが決まり、納紗達は行動を起こした。まず最初に先日、姫路達砲雷科メンバーのいたゲームセンターに向かう。

 

「勝った!!」

「イエーイ」

 

先日とはちょっと異なり砲術科と水雷科のメンバーは混合のチーム対抗戦をしており、武田・松永ペアが勝ち、小笠原・日置・姫路のチームは負けていた。

 

「次は負けないよ」

「足引っ張ってゴメン」

「大丈夫、フォーム直せばいけるから」

「ホント?」

 

其処へ、クリップボードを抱えた納紗がやって来る。

 

「楽しそうですね~、ちょっといいですか?」

 

そう言い、納紗は姫路達に署名をするように勧める。

小笠原達砲術員はもし武蔵になったら46cm砲が撃てると言ってあまり乗り気ではなかったが、当然他艦にも砲術科の生徒はおり、バラバラに配置されるか人数が多いと射撃指揮所にも入れない可能性があった。そう言ったところで小笠原達は反対した。

水雷員はそもそも魚雷が武蔵には無いと言う事で姫路達はすぐに反対の意見を出した。

そうして、砲雷科メンバー五人は納紗の署名にサインをした。

 

 

 

 

 

その頃麻雀店では駿河がボロ負けしていたが昨日と違い、駿河は上の空状態であった。

無論長い付き合いなのでそれに気づかない他の面々では無かった、そんな中若狭がみんな同じ学校に転学するものだと思っていたが、広田がもし転学する事になっても場所の空きを作るために通う場所はバラバラになると言った。

それに驚いた伊勢が驚いて席を立つと衝撃で牌が倒れて公開された。

 

「あら?これじゃ死んじゃうね〜」

 

そう言ってやってきた納紗にとんでもない事を言われて次の牌を取ると上りの牌だった。

 

「ええーっ!!これまだ大丈夫でしょう!?私まだツモってないし!!」

 

納紗の縁起悪い話を真に受けて慌てる伊勢。

 

「じゃあ……生きている内に署名して」

 

宇田がデビルズスマイルを浮かべて伊勢に署名を迫る。

その後、事情を説明して機関科のメンバーから署名を貰う納紗達であった。

 

 

 

 

 

横須賀にあるマーケットでは航海科メンバーが集まって机を囲んでいた。

それぞれが晴風と一緒のクラスが良いとぼやいていると……

 

「ソンナ、アナタガタニ、ビッグニュース~ワタシノハナシヲキケバ、ソンナナヤミイッキニカイケーツ!!」

 

納紗が怪しい宗教勧誘口調で航海科のメンバーに声をかけた。

 

「胡散臭い」

 

ダウジングバーを持ちながら八木が呟く。

 

「落ち込んでいる時は其処にドンドン漬け込むのが定石」

 

その横で宇田は怪しいデビルズスマイルを浮かべてボソッと呟く。

 

「あれは完全にダメなパターンでしょう」

 

そう言い、納紗は航海科のメンバーに署名に協力すればクラス解散はしなくて済むし、その上、成績も上ると言うと……

 

「「サインする(ぞな)」」

 

知床と勝田がまっさきにサインすると言った。

 

「サインするんだ……」

 

しかし内田と山下が怪しんでいたが、そこへすかさず署名すれば宇田が美白効果と胸が大きくなると言って幸子の援護射撃をして、両名も紙にサインをしていた。

 

「で?これ、何の書類ぞな?」

 

署名した後に書類について尋ねる聡子。

 

「勝田さん、絶対に振り込め詐欺に引っかかるタイプ」

 

航海科のメンバーの協力を得て次なる獲物を求める納紗達であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そして納紗達が次に向かったのは横須賀の公園だった。そこでは野間、青木、和住、等松の四人が野間を題材にした写真撮影を行なっていた。

ダウジングで彼女らを見つけた納紗達は彼女らに署名活動の話をする。

 

「ふっふっふ、そう言う事なら、私のコレクションが火を吹くッスよ」

 

そう言い、青木の目が光った。彼女の案というのは野間にコスプレをさせて駅前に立たせるというもの。しかし、釣れたのは等松だけであった……

 

「ダメですね」

 

納紗は一言でこの策は失敗だと言い切った。

 

「いい案だと思ったッスけど……」

「釣れるの美海だけでしょう!!

 

和住も納紗同様、この策は失敗だと言い放つ始末だった。

 

「私、次行きますね~」

 

そう言うと納紗は駅前を後にしていた。

 

 

 

 

 

次に納紗達は万里小路の居る公園に来ていた。

 

「万里小路さん」

「納沙さん。それに皆様もお揃いで、どうされたのですか?」

「昨日、つい聞いてしまったのですが…万里小路さん、実家に連れ戻されてしまうんですか?」

「いったん戻りますが、直ぐ帰ってきますわ」

 

第二次世界大戦を経験していないこの日本は未だに華族制度が残っており、明治ほどの特権も今は形ばかりとなっているが、万里小路は社交界デビューをする一八歳までに一度だけ舞踏会に出る必要があった。

 

「二人が宇宙語を話している」

 

宇田がそう言い、八木は出て来た単語をスマホで検索して言葉の意味を調べていた。

 

「で、今署名活動をしているんですけど、協力してもらえますか?」

「まぁ、面白そうですわね」

「万里小路重工の協力があれば、あっという間に数万人あつまるんじゃない?」

 

宇田はそう言うも、それは本当の協力では無いといい、万里小路は個人で協力する事にしていた。

今思えば、クラス再編詳しい話を知った上でこの状況を楽しんでいたのかもしれないが……

 

 

 

 

 

夕刻となり、駅前の広場で署名活動をしていると美波とシアがセグウェイに乗った状態でやって来ていた。

 

「そこのお嬢さん、ちょっと寄っていくぞな」

「ん?」

 

すると美波を勝田が呼び止め、納紗が驚いた様子で近づいて来た。

 

「あれ美波さん、大学の研究でもう戻ってこれないんじゃ……?」

「なんだ?それは?そんなつもりはないぞ」

「えっ?」

 

突然の美波からの告白に納紗は驚いていた。

すると美波は自分がセグウェイに乗っているのは揺れに耐える為だといい、まだ海洋実習期間は残っているので船に乗り続ける事をも伝えた。

話を聞き納紗は早速美波に署名するように言った。

 

「なんの署名活動だ?」

「うちのクラスが解散になるかもしれないので……」

「なっ!?そ、それは困る」

 

驚いた様子の美波を見てシアが興味ありげに話を聞くと美波がシアに言った。

 

「シア。アレを使ってくれないか?」

「え、いいの?!あんたがそう言う何てビックリだわ!?」

 

そう言うとシアは持っていたタブレットを持っていきなりハッキングをしようとして、晴風メンバーが大慌てで止めていた。

類は友を呼ぶとはこの事だったのかと思いながらシアと美波のやり方は危険だと言っていた。

ガッカリする美波だったが、気持ちはよく伝わったので、シアはモンタナのクラスメイトにも署名の一件を伝えて協力するように言っていた。

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