ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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三六話

納紗達が署名活動を始めた日の夜

横須賀女子海洋学校 モンタナクラス寮 遊戯室

 

モンタナから運び出された荷物を運び終え、改修作業が終わるまでの遊び場として設置した部屋。元々の大部屋を改造して作っており、中にはゲーム機やビリヤード、ダーツ、スロットなどが置かれていた。

クラスメイトや他のクラスが遊びに来る中、部屋の隅でサクラともえかが話をしていた。

 

「ーーーで、ウチのところに来たと?」

「そう言う事」

 

部屋の窓を開けて海を見ながらサクラともえかが話す。シアからの話で晴風クラスは解散阻止のための署名活動を始めたらしく、サクラもその紙にサインをしていた。

 

「私たちが始末書を書いている時。サクちゃん、時々いなかったから何をしているのかな……って」

「はぁ…よく見ている事でね」

 

サクラはため息を吐くと、そのままもえかを見て何やら話していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日

JR横須賀駅前

 

「署名、全然集まらないよ〜!」

 

と言って知床が署名の数がいまいちである事を言った。

 

「日焼けしちゃうよ〜!」

「どうすればいいぞな?」

 

その横で内田や勝田がそう呟くと、美波が署名してもらうにはまず最初に人を集めて趣旨を説明してから署名を貰わなければならないと言う。

期限まで後二日しかないと言う焦りもあって、どうしようかと思っていると……

 

「それならいい手があるよ?」

 

知床達にもえかが声をかけた。

 

 

 

もえかの案はまず最初に等松に公園使用の許可証を書いてもらい、主計科に必要な材料の仕込み、青木はポスター制作を行い、

そのポスターに晴風と武蔵の奮戦した様子を書いてもらう。

若狭達の居た雀荘のある雑居ビルで解散阻止の為の行動準備が着々と進められていた。

 

 

 

 

 

同じ頃、横須賀の商店街では西崎と立石が積み将棋をして遊んでいた。ただの将棋では西崎にボコボコにされ続けて来た為、ゲームを変えていたのだ。

 

「話しかけないでよ……ぜぇ~ったいに話しかけないでよぉ~……!!」

 

慎重に一つの駒を山積みになっている駒から引き抜いていく西崎。しかし、駒が崩れてしまった。

 

「ああーっ!!しまった!!」

「うぃー」

 

すると立石は指一つで将棋の山を接着剤でくっつけたかのように全部持って行った。

 

「嘘でしょう!?」

「うぃ」

 

これには西崎も驚き、立石は西崎にドヤ顔をする。

これまで将棋で散々西崎に辛酸を舐めさせられて来た立石がついに将棋で西崎に勝つことが出来た。

 

「ああー!!此方に居たんですね、実は……」

 

そんな西崎と立石を納紗が見つけると、二人に現状を説明した。

 

 

 

 

 

夕刻

三笠公園

 

夕刻になり、三笠公園では主計科と機関科のメンバーが屋台の設営をおこなっていた。

屋台の設営が終わると公園内にはいろいろな屋台が出ていた。カレー屋、射的屋、輪投げ屋などなど……

この活動にシュペークラスやモンタナクラスも集まっており、晴風の手伝いをしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

翌日、密封指示書開封期限まで後一日になった所で三笠公園では晴風クラス主催のカレーフェスが行われていた。

 

「じゃあ、これお願いね」

「はいよ〜」

 

カレーフェスが行われる中、サクラはケイリー、ネル、ルイーザなどの艦橋メンバーを呼んでチラシ配りを依頼していた。

三人が公園を出て行くとサクラは戦艦三笠を見ながら片手にココアシガレットを咥えていた。

 

「まぁ……何とかなるか」

 

そう呟くと晴風の署名活動を遠くから眺めることにしていた。

 

公園内にある舞台では明乃ともえかがデュエットで歌を歌い、

西崎と立石が漫才を行い、テア達やケイリー達が駅前まで行きチラシと号外を配る。

 

その成果があってか三笠公園には徐々に人が集まり始めた。

これならば署名活動も捗るかと思いきや、予想外の出来事が起きた。

予想よりも人の集まりが多く、飲食店の食材が切れかけた。

しかし、若狭達の機関科のメンバーや勝田達航海科メンバーが追加の食材を持って来た事でなんとかうまく回る事が出来た。

もえかと明乃は集まった人々に署名活動の趣旨を説明し、署名の協力を求める。順調に署名が集まり、夕刻になった。

時間となった柳原は黒木と共に打ち上げ花火を始めた。

 

「花火何て打ち上げていいんですか?」

 

こう言った花火には申請が必要になるが、大丈夫なのかと問いかけると、砲雷科のメンバーの中で花火の資格を持つ面々が自作で作ったと言う事で、五十六の形をした花火まで打ち上がっていた。

 

 

 

カレーフェスは大盛況に終わり。打ち上げの際、皆はラムネで乾杯してカレーフェスの成功を祝った。

署名もかなりの数が集まり、紙の束が出来上がっていた。

 

「しかし、どこからクラス解散の噂がたったんだ?」

 

真白がそう言いそもそもの噂の出所を尋ねる。

 

「みかんちゃん達が間宮にスカウトされてたぞな」

「断ったけどね」

 

みかんが間宮からのスカウトを蹴った事を伝える。

 

「マロンちゃん達も明石にヘッドハントされて……」

「それも断ったんでぇい」

「ええっ!?」

「万里小路さんと美波さんも誤解でしたし……」

 

納紗がそう言うと、姫路達が言う。

 

「あれ?ひょっとして……」

「話広げたのって……」

「えっ?私達?」

「……」

 

砲雷科と機関科、宇田や八木が話しをここまで広げてしまった様で。真白は彼女らを睨む。

 

「「「「ごめんなさい……」」」」

 

色々と混乱はあったものの、明乃達艦橋メンバーは集まった署名を持って横須賀女子の職員室へと署名書を持って行った。

 

 

密封指示書の開封まであと一四時間前の出来事だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日 午前七:五五分

横須賀女子海洋学校 校庭

 

翌朝、校庭に晴風クラスは集められていた。

いよいよかと思い緊張する面々。全員が片手に密封指示書を持ち、その時を待っていた。

 

「静かに」

 

そして教頭の一声でクラスメイト達は静まる。

 

「時間になりました……密封指示書を開封せよ」

 

真雪から開封の許可がおり、クラスメイト達は次々と封筒を開けて中に入っている書類を取り出す。

皆ドキドキしながらその書類に書かれている事に目を通していく。

 

「えっ?」

 

納紗はそこに書かれている内容を見て思わず声を漏らす。

書類には以下の内容が書かれていた。

 

『晴風クラスの編入に関する通知

 

標記の要項について、横須賀女子海洋学校関係者の審議を踏まえ、晴風クラスは6月13日より貴殿に陽炎型航洋直接敎育艦Y-469への異動を通知します。

より一層の能力を発揮して学業に勤しむことを期待します。

以上』

 

「Y……」

「46…9…」

 

艦番号を呟くと、真雪が声をかける。

 

「岬艦長……」

 

真雪から言われ、明乃は顔を上げた。

 

「あなた方の団結力と行動力を見せてもらいました。

職員の中にはクラスを分けるべき、と言う案もあったけど……一緒にしておいて良かったわね」

 

と言い、真雪から同じクラスのままだと言われてクラスメイトは全員喜んでいた。

 

 

 

 

 

港に移動すると、そこには一隻の陽炎型駆逐艦が停泊していた。

 

「これが……」

「新しい船……」

 

そう呟き、明乃達は艦橋に上がる。

 

「あっ!五十六!!」

 

艦橋に上がった明乃は羅針盤の上で座っている五十六を見た。

すると西崎が驚き、嬉しそうな声を上げた。

 

「水雷方位盤……晴風とおんなじやつだよ!!」

「えっ!?」

 

すると内田や山下が叫ぶ。

 

「艦長!!これ晴風の双眼鏡です!!」

「ですよ!!」

 

すると立石が言う。

 

「これも…同じ……!」

「タマちゃんのも?」

 

すると明乃は羅針機を見て気づいた。

 

「この羅針機も……」

 

明乃は驚いているとさらに伝声管から報告が入った。

 

『艦長!操作盤も晴風のとおんなじでぃ!!」

 

機関室では黒木が端に置かれた椅子を見て驚く。

 

「マロン見て、モモとヒメが作ってくれたやつ……」

「この椅子並べると昼寝に良いんだよなぁ!!」

「機関長!冷蔵庫もおんなじだよ!!」

 

駿河がそう言い、機関室の後ろにあった冷蔵庫を指差しながら叫んでいた。

同じ頃、炊事室でも……

 

「炊飯器ちゃん!!また会えたね!!」

 

そう言い、伊良子はやや傷ついた炊飯器を撫でていた。それを見て伊良子姉妹も他の設備も全て晴風のものだと言って嬉しそうにしていた。

そして魚雷発射管や見張り室、ソナー室、レーダー室、通信室や医務室でも同様に同じ設備が使われている事に喜びの声が上がっていた。

艦種付近では砲術員三人が搭載された主砲を見ながらハイタッチをしていた。

 

「また、大きくなってる」

「でも射撃指揮所は前のだよ!!」

 

そう言い、晴風の単装砲を見ながら小笠原達は呟いていた。

 

「っ!そう言えばこの電話も……」

 

艦橋で報告を聞いていた納紗も受話器を手に取りながら呟く。知床や勝田も舵や海図室が同じだだった事を報告する中、真白は悲鳴をあげていた。

 

「わぁぁああ!!私のブルースがぁぁ!!……ついてない…」

 

目の前に現れたのは海水に浸かってボロボロになったサメのぬいぐるみだった。

すると艦橋に真雪が上がって来て明乃達に聞いた。

 

「新しい船の様子は如何かしら?」

「校長先生…これは一体……」

 

明乃がそう聞くと、真雪は訳を話した。

 

「沖風は艤装前だったから、晴風の部品の一部を使って完成させたのよ」

「だから、こんなに晴風の部品が……」

 

そう言い、明乃は周りを見回す。

 

「ちゃんと動くか、試してみなさい」

「はい!」

 

すると、明乃は思わず真雪に聞く。

 

「あ、あの。艦名は……」

「沖風のつもりだったけど…晴風でもいいわよ。岬艦長」

 

そう言われ、明乃は心が浮き上がりそうになりながら出航準備を始めた。

 

 

 

 

猿島フロートの岸壁に停泊する晴風はタグボートによって岸壁から離れる。

その途中、青木と和住が港で真雪に怒られているもえか達を見ていた。

 

「機密解除されたとはいえ、勝手に晴風の情報を開示されては困ります」

 

そう、あのポスターに書かれた内容を見た真雪はもえか達に注意をしていたのだ。その事を事前の伝える事なく利用したもえかに真雪は呆れも混ざった表情を浮かべていた。

 

 

 

そして晴風では初航海時よりもラッパが上手くなった万里小路が甲板で出航時のラッパを吹く。

 

「出航用意!両舷前進微速!」

 

そしてスクリューが回転し、晴風Ⅱは猿島より出航する。その様子をテア、ミーナ、もえか、杉本や藤田。そしてサクラやケイリーが見送る。

その後ろでは教員達も出航して行く晴風を見送っていた。

 

と言うと晴風は猿島フロートから出港していった。

その途中、浮きドックに浮かんでいた晴風を見ながら明乃達は敬礼する。そして再び前を向くと、指示を出した。

 

「航海長操艦」

「「「航海長操艦!」」」

 

初航海の時を思い出しながら明乃達は海を走る。

新しい家と共に明乃達はまた新しい航海を始めるのだった。

 

「両舷前進減速。赤黒なし、進路一五〇度!」

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