ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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三七話

密封指示書開封より数日前……

その日、図書室で明乃達は悲鳴を上げていた。

 

「うぅぅ〜やっと試験も終わってお休みに入ったのに…この書類の山はいつまで続くの?」

「終わるまでです」

「疲れたよ〜」

 

図書室の中でそうぼやく明乃。その横で真白が答える。

するのその横で書類を片付け終えたもえかとサクラが資料を置いていた。

 

「でも、大分片付いてきたから。後もう少しよ?」

「頑張ってミケちゃん」

 

そう言い、二人が励ましていると扉を開けて間宮艦長の藤田がやって来た。

 

「こんにちは」

「あっ、優衣ちゃん」

 

やって来た藤田に早速あだ名で呼んでいる明乃に真白はやや呆れながらも、明乃が藤田に聞く。

 

「どうしたの?」

「ちょっと差し入れにね。中間テストの後も書類仕事で大変だって聞いたから……」

「そうなんだ。ありがとう」

「と言うわけで、一休みしない?」

 

そう言い藤田は明乃達をお茶に誘った。そのお誘いに思わず真白が絶叫する。

 

「天使のような悪魔の囁き!!そんな暇は……「わーい!しようしよう!」艦長ーーー!!」

 

両手をあげて喜ぶ明乃に真白は叫ぶ。後少しで終わりだと言うのに、ここで大休憩をとって仕舞えば明日まで伸びてしまうからだった。これ以上サクラ達を巻き込む訳にはいかないと、真白は断ろうとした。

 

「そんなんだからいつまで経っても終わらないんですよ!!」

「わーん、だってぇ〜」

 

そう言うと藤田が横から援護射撃をする。

 

「まぁ、まぁ、ちょっとだけだから……」

「宗谷さんも疲れてない?」

「一休み、一休み〜」

「(この艦長ども……)」ピキッ

 

怪しい笑みを浮かべて目元が若干暗くなる明乃、もえか、藤田の三人に真白はやや呆れていると後ろからサクラがさらに言う。

 

「まぁ、良いんじゃない?せっかく間宮艦長が準備してくれたものだし。後で泣くのもミケちゃんだから」

「……全く、後悔しても知りませんよ?」

「シロちゃんからもOK出たし、行こう!!」

「それじゃあ、外に行きましょう。此処、飲食禁止だし」

「はぁ……」

 

ため息を吐きながら真白は出て行った明乃達を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

「んん~……やっぱり、海はいいなぁ~」

 

海が見えるスペースで明乃は思いきり背伸びをして海風を感じる。

 

「いつも見ているじゃないですか……」

「でも、最近は室内ばかりじゃん」

「まぁ、確かに……」

 

真白のツッコミに綺麗に返すと、真白も缶詰生活を思い返しながら納得する。

 

「お茶入ったわよ」

 

藤田がそう声をかけ、用意された席に座ると。そこには紅茶セット以外にもカステラやクッキーなどが置かれていた。

 

「美味しそう……!!」

「流石、間宮の艦長だな……」

 

補給艦という事もあって料理の腕もピカイチな内容に明乃は目を輝かせていた。

 

「あれ?そう言えば、今日は珊瑚ちゃんと一緒じゃないの?」

 

そんな明乃の純粋な疑問に藤田は少し面白そうに言いながら答える。

 

「あはは、別にいつも一緒にいる訳じゃないのよ。お互い別の艦の艦長だしね」

 

仲が良いと言っても藤田は間宮の艦長、杉本は明石の艦長なので普段から常に一緒に居るわけではないと言う。

 

「まぁ、珊瑚は後から来るって言っていたけど、先に野暮用があるんですって」

 

藤田は紅茶が入ったカップに口をつけて後から杉本が来ることを告げた。

 

「そうなんだ」

 

明乃が納得をすると今度はもえかが藤田に聞いた。

 

「藤田さんも杉本さんとも付き合いが長いの?」

「ん?そうねぇ……中学からの付き合いだから、そこまで長いってこともないかしら?中学もお互いに別の学校だったし……」

 

藤田と珊瑚の二人の中学はお互いに別々の中学だったが、何らかの交流があり、知り合っていたみたいだ。

 

「でも、私が間宮に乗るきっかけを作ったのが、珊瑚だったから、影響は強いかも」

「「「「へぇ~」」」」

 

四人は納得すると、明乃が嬉しそうに言う。

 

「じゃあ、二人とも同じ学校でよかったね!私もサクちゃんやモカちゃんと離れちゃったから。またこうして会えて嬉しいんだ」 

「そうだね」

「晴風を置いて飛び出すくらいですもんね」

「わぁぁぁっ!それはその……反省シテマッス……」

 

顔を俯かせながら言う明乃に、なぜか真白は目元を暗くして、してやったりと言った表情を浮かべていた。

 

「でも、晴風のクラスになってシロちゃんと同じになったのも同じくらい嬉しいかな」

 

そう言うと真白はツンデレにも似た言葉を呟くと、もえかが思い出したように明乃に言う。

 

「あっ、そう言えば、海洋実習でお世話になった平賀さんだけど、あの人も学生の頃はミケちゃんみたいな艦長さんだったらしいよ。それにスキッパーの運転も上手だって……」

「横女の伝統なのかしら?」

「そんな伝統あってたまるか!!」

 

そう言い、真白が突っ込むと明乃が自身ありげに言う。

 

「じゃあ、私もブルーマーメイドになれるね!!」

 

そう言うと藤田は爆笑していた。

 

「あはははははは」

「そんなに笑わなくても……」

「あはは、ごめん、ごめん」

 

そう言い、五人は盛り上がっていると…

 

「盛り上がっているようだねー」

「あら?珊瑚、早かったわね」

 

そこに、杉本が合流した。

 

「そう?まぁ野暮用だからねぇ~」

「こんにちは珊瑚ちゃん」

「やあやあ、晴風の諸君と武蔵艦長にモンタナ艦長。なんか、実習後も色々大変そうだね」

「それはもう、始末書・顛末書・報告書と……」

 

真白がそう言い、今までの苦労を愚痴っていた。事前にサクラから言われて準備をしていたとは言え、明乃の効率の悪さで帳消しになっていた。

 

「まぁー困ったことがあれば何でも言ってくれたまえよ………よっこいしょっ……」

「ちょっと!!珊瑚。なんで、私の膝の上に座るのよ!?」

「だって、優衣が私の椅子を用意してくれないだもん」

 

そう言い、藤田のミスだからと答えた。確かに椅子が足りなかったのは藤田のミスだった為に何も言えなかった。

 

「足が痺れる……」

「二人とも仲良いね」

 

そんなお似合いコンビを見て明乃はそう言うと、もえかが椅子を少し引きながら言う。

 

「ミケちゃんも私の膝の上に座ってみる?」

 

その提案に明乃は椅子が一つ開くから良いのではと言った。それを聞いてやや呆れた様子の真白が言う。

 

「そんな事しなくても私が譲りま……

 

 

 

ってああーーーーっ!?」

 

 

 

いきなり叫んだ真白に明乃達は驚く。

 

「どどど、如何したの?シロちゃん」

 

すると真白はチラリと見た時計を明乃に見せながら言った。

 

「艦長……

 

 

 

休みすぎです!!もう一時間も経っているじゃないですか!!」

 

すると真白は明乃の手をとって走り出す。

 

「そろそろ戻らないと明日の休みも潰れますよ!休憩終了!!」

「そんなぁーーーっ……!!」

 

高速スキッパー並の速度で席を後にしていく明乃達。

 

「もかちゃぁぁぁあああん!!サクちゃぁぁぁぁあああんーーーーーー!!」

 

そう叫びなながら消えていった二人を見てポカンとなったサクラ達。

 

「えーっと…それじゃあ私もご馳走様でした」

「え、えぇ、そうね。またお茶しましょ」

 

真白に連行され、中断されたお茶会からもえかも去り、残ったのは藤田、杉本、サクラだけだった。

 

「ふぅ、晴風は副長も元気だねぇ」

「そうね……それよりそろそろ開いた椅子に移動して欲しいんだけど」

 

そういう藤田に杉本は動こうとしなかった。

 

「んー……なんか、座り心地いいし、このままでいいよ~」

「私が良くないの!!」

 

そしてだんだんと足が痺れてきた藤田だったが、杉本は移動せずに紅茶を飲んでいたサクラに聞いた。

 

「行かなくてよかったのかい?モンタナ艦長」

 

声をかけられたサクラは無問題と答えた。

 

「ん?ああ、大丈夫大丈夫」

 

そう答えると杉本はすかさずサクラに向かって言う。

 

「お〜、それが大統領の愛娘の余裕ですか」

「……まさか知っていたとは」

 

思わずちょっとだけ睨んでしまったが、杉本は慣れたような目線で言った。

 

「いや、調べたら出てくるからねぇ。その様子じゃあ、あまりみんなに言わないみたいだけど」

「当たり前ですよ。……政界に出る訳でもあるまいし」

 

そう答えると杉本はややつまらなさそうな表情をしていた。

 

「なーんだ、親の後は継がないんだねぇ」

「継ぐ気なんて……あんな魑魅魍魎の世界に自ら突貫したくないね」

「ほぅほぅ、面白いね。そんなこと言うなんて」

 

そう言い、二人は少しだけ将来のことで盛り上がった後。サクラが席を立った。

 

「おや、行くの?」

「ええ、岬艦長の進捗次第では尻に火を付けないといけませんから…フフフ」

「うわぁ…怖いねぇ……」

 

サクラの悪い笑みに少しドン引きする杉本だったが、サクラはそのまま席を後にしていった。

 

 

 

 

 

同じ頃、図書室では……

 

「さぁ、もう少しですよ!!」

「ヒエエエエエッー!!」

「終わらせてからお茶にした方が良かったかもね」

 

悲鳴を上げる明乃に真白が発破をかける。すると図書室の扉が開き、サクラが入ってきた。

 

「あ、サクちゃ……」

 

入ってきたサクラに明乃は助けを求めようとするが、明らかに異質な雰囲気にもえか達ですら息を呑んだ。

 

「さ、やろうか」パンッパンッ

 

明らかに笑っていない目元に明乃は涙目になりながら頷く。

 

「ハイ…ワカリマシタ……」

 

半ば脅迫といった様子だったが、身近で最も怖い人間が真後ろで監視するという恐怖からか、明乃は嘗て無い程早い速度でその日の分のレポートを書き終えてしまった。

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