ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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四話

シュペーから反転し、海域からの逃走を図る晴風に向かってシュペーからの砲撃が絶えず飛んでくる。

 

「シュペーも速度を上げました!!」

「追ってきた!!」

「早く逃げよう~よ!!」

 

逃走中に、納紗からのシュペーの諸元が明かされる。

 

「シュペーは基準排水量12100t。最大速力 28.5節、28cm主砲6門、15cm砲8門、魚雷発射管8門、最大装甲160mmと小型直教艦と呼ばれるだけあって巡洋艦並のサイズに直教艦並の砲力を積んでいます」

「着弾!!」

 

報告した直後に砲撃が飛び、晴風は激しく揺れる。

 

「しゅ、主砲の最大射程は約36000m、重さ300kgの砲弾を毎分2.5発発射可能で!一発でも当たれば、一瞬で轟沈です。……まぁ、15cm砲副砲でもうちの主砲よりも強いんですけど……」

「防護と装甲は、向こうが遥かに上……」

「うちが勝っているのは速度と俊敏さだけ……」

 

諸元を聞き、相手が格上であることを認識する。

 

「このまま機関全速にし続けたら完全に壊れちゃうよ」

 

鈴はこのままでは危険である事を伝えると芽衣がすかさず聞く。

 

「魚雷撃って足止める?」

「もうない!」

「だー、そうだった〜!!」

 

と、初歩的で最も重要な事を忘れており、頭を抱えていた。

 

「こっちの砲力は?」

「70で5……」

「7000で50mm……シュペーの舷側装甲は?」

「80mmです」

「30……」

「30まで寄れば抜けるのね」

 

そんな明乃と立石の会話に芽衣が驚愕する。

 

「ちゃんと会話が成立している!?」

「これが艦長の器ですか……」

「そんなわけないだろ!!」

 

すかさず真白が突っ込むと明乃は伝声管を通して機関室にいる柳原に聞いた。

 

「マロンちゃん!!出し続けられる速度は?」

『第四戦速まで、でぇい!』

「第四戦速……27ノットか……」

「向こうの最大戦速とほぼ同じです」

「どうしたら……」

 

報告を聞き頭を悩ませていると……

 

「ぐるぐる」

 

と立石が呟く。

 

「?」

「ぐるぐる」

 

立石の呟きに明乃はピンと思いつく。

 

「っ!?鈴ちゃん!取舵一杯!」

「と、取り舵いっぱ~い!!……取り舵三〇度!!」

「何をする気ですか!?」

 

何をしでかすのだろうと言う明乃に真白が問い詰める。

 

「煙の中に逃げ込むの!!……戻~せ、面舵いっぱ~い!!」

「戻せ、面舵いっぱ~い!!面舵三〇度」

 

そうして明乃の指示の元、晴風は右に左に回転しながら逃げ回る。

 

「一発でも当たればやられる。速度と小回りが効くのを生かして、逃げ回れるしかない!!…マロンちゃん機関を不完全燃焼させて!!」

『合点承知!!』

 

晴風の煙突からは黒煙が噴き出る。機関室では柳原がバルブを持ちながら明乃の案を理解する。

 

「黒煙が煙幕代わりだな~」

『それから逃げ回るんで、機関には負担をかけるけど、よろしくね』

「よろしくって……」

 

柳原は明乃の作戦を理解するが、黒木はエンジンに負荷をかけるやり方に呆れていた。

 

「やるしかねーんだい!!」

 

柳原は生き残る為には仕方がないともう割り切ってやる事をやっていた。

艦橋では明乃がシュペーを見ながら指示を飛ばす。

 

「鈴ちゃん不規則に進路を変えて。できたら速度も。ただしできるだけ速度を落とさないように」

「う、うん」

 

明乃は知床に速度を落とさず不規則な進路を取って回避運動するよう命じた。

 

「艦長、止めるには実弾を使うしかないよ。ウワッ!!」

 

芽衣がそう言った直後にまた至近弾が当たる。船体に振動が走り、今にも沈みそうであった。

 

「……戦闘…左砲戦三〇度、同行のシュペー……」

 

ここに至り、明乃は西崎の提案を受け入れて実弾による攻撃を指示する。

 

「何を言っている!猿島の時と同じになるぞ!!」

「スクリューシャフトを撃ち抜くの。それで速度を落とすの……副長」

「これ以上やれば、本当に叛乱になる!!」

 

真白と明乃が言い合いになるも、シュペーの15cm単装砲が着弾し始める。

 

「このままだと、怪我人が出る……」

 

明乃がそう言い、真白も15cm砲弾が夾叉しているのを確認した。これはまずいと確信した真白と明乃は互いに常に閉まっている鍵を持つとそれぞれ『火ノ用心』と書かれた鍵穴に差し込み、同時に回した。

 

「実弾…用弾初め」

 

そして砲塔内の自動装填装置が晴風の主砲弾を装填する。

 

「まる」

 

立石の確認が取れ、砲身が動く。

 

「装填良し……射撃、用意良し」

 

発射準備が完了し、あとは明乃の発射命令を待つだけとなった。

 

「スクリュー撃つには、どれだけ距離を詰めれば良いかな?」

「水中だと急激に弾の速度が低下するから無理だって」

「水中弾てのがあったでしょう?」

「それは、巡洋艦以上でうちには積んでないから……」

 

真白が水中弾は晴風には積んでいないことを明乃に伝える。

 

「通常形状でも、水中は進むって聞いたよ」

「理論上は、12.7cm砲弾の水中直進距離は約一〇m。原則装甲を抜くことを考えれば……三〇以下まで近寄ってください」

 

納紗がタブレットで計算してシュペーのスクリューシャフトを撃ち抜くのに必要な距離を伝える。

 

「八の字航行のまま、距離を三〇まで詰めて!!」

「近づくの?怖いよ~」

 

シュペーに近づくことに怖がる鈴。

 

「何を言っている!!」

 

真白がこの期に及んで近づくことを怖がっている鈴を叱咤する。鈴は驚いた猫のように飛び跳ねてしまいそうになる。

 

「だから怖いって言って……」

「じゃあ、分かりました!!」

 

納紗が怖がっている鈴に近づき……

 

「何するの?」

 

両手で彼女の両目を隠した。

 

「近づいてください!!」

「前が見えないよ~暗いよ~」

「何をやっている!?」

 

手で隠されて、砲撃してくるシュペーの姿が見えなくなり、舵をきる知床だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同時刻 シュペーと晴風の戦闘域から離れた海域

 

そこではモンタナより発艦したSHー2がレーダーに映る影を確認していた。

 

「ーーこちら、ロングボウ1。本艦より南南東一二〇マイルにて戦闘と思わしき反応を確認。指示を乞う。指示を乞う」

 

ヘリに乗っているパイロットが通信を入れると、聞こえてきたのは雑音の混ざった声だった。

 

『ザザッ……した……1はそのま……維持し、……を随時……せよ』

「ちっ、雑音が酷すぎるぞ……」

 

酷い雑音と共に聞こえてきた命令に愚痴りつつも、こっちにモンタナが向かってくるのを確認したパイロットは命令通りにその場で待機をしていた。

 

「一体、何が起こっているんだ……?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

シュペーから逃げ回っていると、野間が報告を入れる。

 

『シュペーより、小型艇が向かってきます!!』

「えっ!?」

 

明乃はその報告に驚愕していた。

そして見張り台から野間は接近してくる小型艇がシュペーの15cm砲の砲撃の中をジグザグに曲がり、避けていた。しかし……

 

ドォォン!!

 

近くに着弾した15cm砲の水柱によって小型艇もろとも吹き飛ばされてしまった。

 

『小型艇の乗員が海に落ちました!!』

「味方を攻撃している?!」

「なんで?!」 

 

驚愕する明乃達に納紗がすかさず一人芝居をする。

 

「『わたしは艦長の指示に従えません!晴風を攻撃するなんてあまりにも!!』

『なんだとー艦長に逆らう気か!?』

『ええ~い!こんな船脱出してやる~』」

 

そんな納紗に真白が突っ込む。

 

「想像でものを言うな……!!」

「私にとってはノンフィクションよりフィクションが真実です!」

 

もはや漫才のような関係の二人を横目に明乃は

 

「シロちゃん……」

 

と明乃が真白に声をかける。

 

「『宗谷さん』もしくは、『副長』と呼んでください」

 

真白は『シロちゃん』という仇名が気に入らず、反論をするが…

 

「ここ、任せていい?」

「は?」

 

明乃の頼みに真白は思わず拍子抜けしたような声を出す。

 

「ドイツ艦を引きつけておいてね、ココちゃん、甲板に保健委員の美波さんを呼んでおいて!!」

「何を……?っ!?まさかっ!!」

 

真白は明乃の言葉から彼女はこれから何をしようとしているのか察しがついた。

 

「何で、敵なのに助ける!?」

「敵じゃないよ」

「えっ?」

「海の仲間は…家族だから……」

「…」

「じゃあ、行って来るね」

 

そう言って明乃は真白に被っていた艦長帽を渡して、艦橋を出ていく。

そして、スキッパーで砲弾を回避しながら、小型艇から落ちたミーナを救出に向かった。砲撃の中を明乃はスキッパーで華麗に避けていた。

 

「艦長落ちた子助けに行ったの?」

「距離三〇まで近づけ」

「えっ!?うぅぅ〜……」

 

西崎の問に答えずに、真白が指示を飛ばす。これ以上近づくことに恐怖する知床は嗚咽声を漏らしながら舵を回す。

 

「距離三二……三一…」

「撃っちゃえ!撃っちゃえ!撃っちゃえ!!」

 

納紗が報告し、西崎は興奮気味で砲撃の様子を眺めていた。現在、晴風は三番砲塔が損傷し、火を吹いていた。

真白は艦橋からそのようすを眺め、そして……

 

「二番砲右!攻撃はじめ!」

 

指示と共に砲撃が飛ぶ。放たれた二発の砲弾はシュペーの直前で着弾し、一発は後部の魚雷発射管に着弾する。

 

『目標に命中!シュペー、速力が下がっています!!』

「「「やったー!!」」」

 

野間の報告を聞き、機関室では機関科のメンバーが大喜びをしていた。この好機を逃さず、真白は撤退を指示する。

 

「取舵一杯!第四戦速」

「第四戦速!!宜候!」

 

その様子を眺めて納紗は思わず呟く。

 

「逃げるときはテキパキしていますね……」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同じ頃、小型艇から落ちた少女を救出に向かった明乃は海に浮かぶ木片に帽子を片手にしがみついて気絶した様子の一人の少女を発見する。

 

「大丈夫!?」

 

スキッパーで近づき、少女の脈を図った明乃はホッとした様子を見せた。

 

「大丈夫…あなた、生きているよ」

 

その後、回収されたスキッパーと共に少女も担架に乗せられて運ばれていった。

 

「シロちゃん」

 

艦橋に戻った明乃に真白は叱責しようとしたが、ずぶ濡れの明乃に驚いてしまった。すると明乃は、

 

「ありがとう……」

 

そう言われ、思わず顔を赤くしてそっけなく返していた。

 

「適切な指示をしただけだ」

 

 

 


 

 

 

数時間後、皆がシュペーから逃げ切りいよいよ待ちに待ったカレーが食べられるとウキウキになった時、野間が一報を入れた。

 

『前方より、再び超大型艦を発見!!』

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