ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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四〇話

明乃達が報告書でヒーこらしている頃、横須賀市内の公園では立石と西崎がキャッチボールをしていた。

かれこれ何十球も野球ボールの投げ合いをしており、西崎は疲労が溜まっていた。

 

「タマ、ちょっと休憩しない?」

「うぃ?」

 

そう言い、西崎は公園のベンチに座ると携帯の時間を見て驚いた声を出す。

 

「うおっ!気づいたら一時間以上キャッチボールしていた」

 

そう言うと西崎は携帯をしまいながら呟く。

 

「タマに付き合ってたら少し体力が付いて来た気がするよ」

「うぃ!」

 

そう言うと西崎はグローブを見ながら立石に聞いた。

 

「これからどうする?ずっとキャッチボールを続けるのもなぁ……」

 

何か別の事をやりたいと言う西崎に対し、立石は提案をした。

 

「それなら、次は打つ」

 

そう言うと西崎は意味を履き違えて答えた。

 

「私も撃ちたいけどさぁ……魚雷とか」

「違う」

 

西崎の勘違いに即座に立石は否定すると、そこで西崎は言葉の意味を理解した。

 

「ん?ああ、バッティングの方ね。でも二人じゃ難しいなぁ。周りにも危ないし」

「うぃ〜……」

 

そう、打つにしたってバットが必要な上に飛んでいった野球ボールが誰かに当たる危険性があった。どうしたものかと思っていると立石がある事を閃いた。

 

「良いところ、ある……」

「おっ、本当?じゃあ、もう少し休憩したら行ってみよう!タマは案内よろしく」

「うぃっ!」

 

 

 

 

 

そして、少し休憩した後。二人が向かったのは市内にあるバッティンクセンターだった。

金属バットが飛んできた野球ボールを弾き返す甲高い音が響く中、西崎は感心した声を上げる。

 

「ほぇ〜良いところってバッティングセンターかぁ。初めて来た」

「うぃ!」

 

そう言い、立石は少し慣れた様子だったので、西崎が聞いた。

 

「タマはよく来るの?」

「たまに……」

「へぇ〜…」

 

立石はバッティンクセンターにたまにしか来ないというと、受付を指差した。

 

「受付はあっち」

「ほいほーい」

 

そう言い、西崎は受付に行くと棚の上に並ぶ鮫のぬいぐるみをみた。

 

「おっ?なんだこれ」

「景品…?」

 

すると立石が鮫のぬいぐるみの横に書かれていた張り紙を見た。

 

「ホームランを打ったら貰える…見たい」

「ほうほう」

 

すると、西崎はそこでふと思い出す。

 

「ぬいぐるみといえば副長、晴風と一緒にぬいぐるみも沈んじゃって内心落ち込んでいるかもなぁ…」

 

そう、晴風は沈んでおり。真白の部屋も海水にどっぷりと浸かってしまったので、中にいたファンシーグッズもビチャビチャになっていたのだ。

 

「せっかくだから挑戦してみよっか。目標あった方がやる気でるし」

「うぃ」

 

そう言うと、西崎は目標を定めるとやる気を昂らせた。

 

「よっし!私たちでホームランを打ってこの景品を副長にプレゼントしよう!」

「おー!」

「と言うわけで、これに挑戦したいんですけど」

「はい、ありがとうございます」

 

そう言い、西崎は受付の係員に話すと、詳しい説明を受けた。

 

「こちらのチャレンジではそちらの打席で行っていただきます。球速は120kmのストレートです。球の高さは調整出来ます」

 

そう言うと係員は心配した様子で西崎を見る。

 

「……大丈夫ですか?結構速いですけど……」

「120キロっていかほど?」

「そこそこ」

 

西崎の問いかけに立石がそう答えると、なんとかなるかと思いながら注文した。

 

「打席にある機械にこのカードを挿してください。一回十五球で、三回まで出来ます。頑張ってくださいね」

 

そう言い、カードを西崎達に出した。

 

「終わったらひと声かけてくださいね〜」

「はーい」

 

そう言うと、二人は120キロ打席の場所に移動し、中の注意書きを読んだ。

 

「ヘルメットが被れない……」

 

注意書きを読んでヘルメットを被ったが、ポニーテールが邪魔をしてうまく被れなかった。仕方なく髪を解いて下で纏めると準備を整えた。

 

「これでよしっと……よっしゃこーい!」

 

そして120キロの球が放たれるが……

 

シュンッ「速ぁ!!」

 

あまりの速さに西崎は動揺してしまう。

 

「えっちょっナニコレ!想像の二倍速い!」

「頑張って…」

 

安全上、ネットの外でしか応援できない立石はそう言うだけだった。

 

「ふぁいっ!」スカッ

「だぁぁっしゅ!!」スカッ

「ぬおぁーー!?」ブンッ

 

バッティングをする西崎だったが、全てかすりもしていなかった。

 

「曲がった!!曲がんなかった!?設定直球だったよね!?」

 

そう言い、最後の球だけズレたと言うと立石はあるあるだと言ってスルーしていた。

そして結局、西崎は一発も当たる事なく一回を終えるのだった。

 

「タマがんばれー!」

「うぃ!」

 

交代して立石の順番となり、ヘルメットを被った立石は金属バットを持って構えていた。

そして放たれた一球目はバットの端にあたり、音を立てた。

 

「この調子ならいけるかもっ!タマいけっ!打っちゃえ打っちゃえー!」

「がん…ばる!」

 

そう言い、西崎は立石を応援し出した。

放たれる120キロストレートにバットを振ると、次第に掠っていたのがしっかりと当たるようになり、弾き返した。

 

「うーん、前には飛んでいるんだけどなぁ」

「あと一球…。コレで…決める」

 

西崎は惜しいというと、立石は最後の一球にかけていた。

 

「ジン…ギス…」

 

そして放たれたボールに立石の降ったバットが当たる。

 

カァァァァアン‼︎

 

そして弾き返したボールはそのまま打ち上がった……

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「お疲れ様でした」

 

係員がそう言うと西崎達は真っ白になりながらカードを返した。

 

「ダメだったー!」

「うぃ〜…」

 

そう言うと、係員は二人を励ますように言った。

 

「惜しかったですね」

 

すると二人に二つの小袋を出した。

 

「はい、コレ参加賞ね」

 

そう言われ、中身を取り出すと。中から参加賞の鮫の飴が出てきた。

 

「鮫の飴……略して…さめ?」

「あめ……」

 

残念だったが、コレでも良いかと思っていると西崎の横をセーラー服を着た生徒が左肩に細長い袋を持ってやって来ていた。

 

「すみません。ここに120キロのをお願いします」

 

そう言うと係員の人が驚いた声を出したが、持っていた荷物を見て納得をすると淡々と説明をしていた。西崎達はその生徒のブルーグレー色の制服に西崎は見覚えがあった。

 

「あ、モンタナの制服!」

「?」

 

西崎が見覚えがあると言うと、その生徒がくるりと西崎を見た。

 

「君たちは…」

 

するとその少女は西崎を見ると、西崎が自己紹介をした。

 

「晴風の水雷員の西崎芽衣と、砲術長の立石志麻!」

 

そう言うとその少女は理解した顔で返事をした。

 

「あぁ!晴風の……どうも。モンタナ砲術長のルイーザ・J・ホワイトよ。よろしくね」

「おぉ!」

 

モンタナと言えばあの16インチ砲の引き金を握っている人。巨砲を撃っている人を見て羨ましそうに見る立石だった。

お互いに紹介を終えたルイーザに西崎が聞いた。

 

「ルイーザさんはよくここに来るんですか?」

「んー、ちょっと違うかな。ここに来るのは初めてだけど。地元じゃあ、よく野球の練習のために行ってたねぇ」

 

アメリカのバッティングセンターは打撃練習場としての側面が強く、野球経験者をメインターゲットにおいた運営がなされていた。そのため、ルイーザはかなりの野球経験者だと言う事がわかる。

係員もバットを持参している時点で慣れていると言うことから注意することもなかったのだ。

するとルイーザは係員の人にカードをもらうと西崎達が聞いた。

 

「ルイーザさんも120キロ打つんですか?」

「ええ、そうよ」

 

すると、西崎はルイーザに忠告を入れた。

 

「気をつけてください。想像の二倍は速いですよ」

 

そう言うも、ルイーザは慣れた様子で答える。

 

「ああ、大丈夫大丈夫。こう言うのは慣れているから……よかったら見に来るかい?」

 

そう聞かれ、西崎達はルイーザの後を追いかけて行った。

 

 

 

 

 

さっきまで西崎達がいた場所に今度はルイーザが入る。彼女は持っていた袋を開くと、中には何本もの金属バットが入っていた。

 

「「おぉ〜!」」

 

今まで使われて来たのであろう、本格的なバットを見て興味津々の西崎。すると西崎は知り合ったばかりだが、ルイーザに鮫のぬいぐるみの一件を話した。

 

「ほうほう、そんなルールがあるんだ。面白いわね……」

 

話を聞いたルイーザは面白そうにするとバットを持って高さを合わせると構えた。

 

「じゃあ、ホームラン狙ってみますか」

 

そう言うとルイーザは飛んでくる球を捕らえた。

 

「……フンッ!」カァンンン‼︎

「「おぉ!!」」

 

打ち返した球はホームランから少し逸れてネットに当たる。初球から打ち返して、なおかつ惜しいところまで行った事に驚きの声をあげる。

 

「コレいけるよね!?」

「まだ…分からない」

 

そう言い、西崎達は期待しながらルイーザを見ていた。

 

 

 

ちなみに日本にはかつて初速400kmを叩き出すピッチングマシンがあったそうだが、これは9mm拳銃弾以上のエネルギーを出した為に危険すぎると言う事でリミッターがかけられていた。

しかし、この威力を生かして消火弾を発射する装置に使われているとか何とか……

ちなみに九州には時速240kmを打ち出すピッチングマシンがあるようで、いずれはそこに行ってみたいと思うルイーザだった。

 

そしてバコンバコンと、120キロストレートを打ち返すが、ホームランには僅かにずれており、なかなか当たらなかった。

 

 

 

そして遂に次で最後の一発を打ち返す事になった。

 

「次で、最後……」

「緊張……」

 

先ほど、失敗した西崎達は手に汗を握りながらルイーザやピッチングマシンを見ていた。

 

「……」

 

機械のパネルに映る選手もどきがグローブを持ってボールを投げる格好を取る。それとほぼ同時に120キロの野球ボールが射出された。

 

「(っ!見えたっ……!)」

 

脳内にフレクサトーンの音(ニュータイプの音)が響き、ここだと感じたルイーザはバットを振る。

 

いつも通り野球ボールはバットに当たり、ボールが変形する。そして音を立ててボールが弾かれる。

 

「いっけぇぇぇぇえ!!」

 

西崎がそう言い、弾き返されたボールはそのまま打ち上がる。

 

打ち上がったボールはそのままホームランの的に向かって飛んでいく。

 

そして……

 

 

 

ダァンッ‼︎

 

 

 

野球ボールは勢いよくホームランの的に音を立てて当たる。

そして、ルイーザの機械から音が聞こえた。

 

『ホームラン!!』

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「いやぁ、よかったよかった」

「うぃうぃ!」

 

バッティングセンターからの帰り道、片手に鮫のぬいぐるみを抱えた西崎はホクホク顔だった。

 

あの後、無事にぬいぐるみを手に入れた西崎達はまずルイーザに感謝をした。

 

「ありがとうございます。ルイーザ先輩!」

「良いよいいよ、こっちも結構楽しかったし。それに……」

 

すると懐からルイーザは千円札を取り出した。

 

「賞金もらっちゃったしね〜」

 

そう言い、懐があったかくなったルイーザも嬉しそうだった。ホームラン賞を当てたルイーザはぬいぐるみと一緒に賞金ももらっていたのだ。

 

 

彼女曰く、あそこのコンディションは把握したらしく。コレから通う事になりそうだと言っていた。

 

「コレで小遣いを増やしに行こーっと」

 

そう言い、ホームランを取る気でいるルイーザに立石達は尊敬した目で見ていた。

 

 

 

 

 

なお、獲得した鮫のぬいぐるみは無事に真白の元に渡ったが、当の本人はぬいぐるみがボロボロになっているとは思っていなかったようだった。




因みに作者はタマちゃんが最推しです。
だけど、この回を読んで髪を下ろたメイちゃんもちょっと好みに……
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