その日、明乃達の帰りを学校の校門前でさくらともえかは待っていた。
「さくちゃーん!もかちゃーん!」
そう言い、下駄箱で靴を履き替えて飛び出した明乃。いつも通り三人で施設まで帰っていると、帰り道の途中でさくらが口を開いた。
「ミケちゃん、もかちゃん」
「「?」」
「私……今度の夏休みで親戚の家に行く事になったの」
「「!?」」
さくらの告白に驚く明乃達。するとさくらは二人に申し訳なさそうに言う。
「親戚がアメリカに居て、それで引き取られる事になったの……」
「そっか……」
そう言い、残念そうに語る明乃。もえかも寂しそうにしていた。
「ごめんね、せっかく姐になるって言った矢先に……」
「仕方がないよ」
そう言い、明乃は諦めがついているとさくらは少しだけ頭を抱えながらブツブツと呟き始める。
「ミケちゃんはおっちょこちょいだし、宿題が遅いし。
もかちゃんはもかちゃんでミケちゃんのことになると頭が真っ白になっちゃうから心配なんだよね」
「あははは……」
「さ、さくちゃん……」
さくらの呟きに思わず苦笑してしまう明乃達。しかし、夏にはさくらは引き取り手のいるアメリカへと行ってしまう。それまで三人は目一杯思い出を作ろうと約束した。
「しかし、アメリカか〜……どんな場所なんだろう」
「教科書とか映像でしか見た事ないよね」
そう言い、明乃達は授業で知ったアメリカを想像していた。
人がいっぱいで日本みたいにフロートが無く、陸地ばっかりなイメージがあり、未知の領域だった。
「私も、その親戚に会うのは初めてなんだけどね」
「そうなんだ!!」
そう言い、明乃は少し驚いた様子を見せていた。
それから、三人は色々な場所に行った。
海や川に釣りに行ったり、ボートを漕いだり。
山に登って木登りなどをして遊んだり。
とにかく思い出作りをしていた。少なくとも三人で遊べるのはこれで最後になる可能性が高い。外国に行ってしまうさくらに、明乃やもえかは寂しさを感じていた。
そして、お別れの日が付きつつあったある日。明乃やもえかがさくらを呼んで、ある物を渡していた。
「これ、私たちの思い出」
「こうしとけば忘れないかなって思って……」
そう言い、渡された真鍮製のロケットの中にはさくら達が撮ったあの写真が埋め込まれていた。
大事そうにロケットを受け取ったさくらは大切にしまうとこれを一生の宝物にすると決め、アメリカに行くための準備を進めていた。
「離れていても、ずっと一緒だからね」
「うん、そうだね」
もえかや明乃と共に施設で過ごす最後の日々。ずっと続くかと思っていた関係はもうすぐ終わるのであった。
そしてさくらがアメリカにいる親戚に引き取られる事になった日を迎えた。
施設の前には一台の車が止まり、黒いワンピースに身を包んださくらは片手に施設の子などから貰った物などを入れた鞄を持ちながら玄関を出る。
「さくちゃん……」
玄関の外では明乃ともえかが寂しげな目をしながら待っていた。
今まで泣く事はなかった明乃達だったが、さくらが此処を出て行くのを感じると明乃が遂に堪えきれずに涙を流した。
「うっ…うっ……!!」
そんな明乃を見てさくらも寂しさを感じながら、明乃に寄って話しかける。
「大丈夫、向こうに着いたら手紙を送るから」
「本当?」
「ええ、そのつもり。だから寂しくないよ」
そう言うと、明乃は涙ぐみながら返事をすると、そのまま目の前の車に乗り込む。
「グスッ……行っちゃうの?」
車の扉を閉め、車に駆け寄った明乃達を見てさくらは窓を開けた時にそう言われた。
「ごめんね……ずっと一緒にいられなくて……」
「ううん……大丈夫…」
さくらが手紙を送ると約束したから、安心だと言う明乃。その後ろでもえかが立っており、さくらはもえかを見て言う。
「ミケちゃんをお願いね」
「うん、任せて」
そう言い、もえかは頷くと明乃が最後にさくらに言う。
「またいつか会おうね」
「うん…そうだね」
「約束も忘れないでね」
「うん」
そう言うと明乃達は車から離れ、雫さんの元に戻り、手を振った。
さくらも同じように手を振り返すと車が走り出す。今までの家であった養護施設がどんどん離れて行く。
明乃達は道路に出ると車が見えなくなるまで手を振るのだった。
「懐かしいなぁ……」
「どうしたんです?艦長」
山道を登りながら明乃が呟いた事に不思議に思って問いかける和住。
「ん?あぁ、ちょっと昔を思い出しててね」
「昔……」
「そう、幼い時にもかちゃんやサクちゃんと一緒によくこんな道を走ったりして、懐かしいなぁ〜って」
「へぇ〜」
明乃の話を聞き、和住は納得した様子を浮かべるのだった。
オリエンテーションは着々と進んでおり、明乃の持ち前の運の良さが発揮され明乃の探した場所にはポイントがほぼ必ずあった。
グーチームで明乃は感傷に浸っている頃。納紗達率いるパーチームでは……
「赤のG、発見!」
「赤のGは此処と……」
と言って木に登っている野間の報告を聞いて地図に記入をしていた。パーチームは野間の得意分野を存分に活かして木登りをして高い場所からポイントを遠くから見つけていた。
「位置の把握はほぼ出来ましたね」
「野間さんがいるとすぐポイントが見つかって助かるよね。でもこれで良いのかな……」
知床は野間のお陰で簡単に見つけられるが、木の上に登って見つけるのはOKなのかと疑問に思っていた。
「そう言うのはルールには載って無いので良いと思いますよ」
すると納紗がそう言ってこの方法を続行することとなった。
その後ろでは等松がいつも通り野間に対して黄色い声援を送っていた。
「私たち、一番にゴール出来るかもね!!」
「そうね」
パーチームは野間のおかげで順調に進んでいた。
「他のみんなは大丈夫かな?」
「どうかしら?互いに連絡を取り合うのは禁止にされているからね」
このオリエンテーションは合流して情報共有を防ぐ為に連絡の取り合いは禁止されていた。
「そもそも、これはどういう訓練なの?」
「サバイバル力アップ?」
武田の疑問に広田が答える。
「そうですねぇ~……想定としては、機械の故障などで方角も位置もわからず、孤立した状態での行動……と言ったところでしょうかね?」
そんな納紗の憶測に松永が聞く。
「山でやる必要はあるのかしら?」
「いつも海だからね」
「理由それだけ?」
「さあ?」
理由は兎も角、これも成績に混じっているとするなら真面目にやる必要がある。時間内にゴールまでにだどりつき、それまで出来るだけポイントを見つける必要があった。
「とにかく、このままゴールを目指しましょう。地図によるとゴールは……こっちですね」
納紗が地図を見ながらそう言い、方針は決まった。
「次のポイントも探さないとね」
「マッチがいれば完璧よー!!」
野間と言う強い味方がいるパーチームは既に恐ろしい数のポイントを書き記していた。
同時刻
フレミングチームでは……
茂みからガサガサと音が聞こえ、その奥から西崎が顔を出した。
「ぷはぁっ!」
西崎が顔を出すとその後ろからさらに立石だ飛び出し、フレミングチームがゾロゾロと出てくる。
「うーん……なるほど、なるほど……」
西崎は周囲を見渡すと、呟いた。
「……迷った?」
「うい!」
リーダーを務める西崎に立石が頷き、大谷がオロオロとしてフレミングチームは危機的状況に陥っていた。
蝉が鳴き、道に迷った所で一旦フレミングチームは休憩を取る事となった。
「ぷはぁ!!道に迷って飲む水は美味い!!」
「こんなんで大丈夫っすかね?」
青木がそう言い、この状況に苦笑してしまっていた。
その後ろで、宇田が膝を抱えて暗い表情を浮かべていた。
「(ぬかった!!)」
その内心、宇田は思考を巡らせていた。
「(じゃんけんによって四つに分かれたチーム……一見ランダムのように見えるけど。実は好んで手を出すのには正確が出ている)」
宇田は膝を抱えながらある考察をしていた。
「(例えばグー、握り拳はよくエネルギッシュなイメージ。そして石から連想される職人やリーダータイプ!)」
そう思い、グーチームになった艦長や機関長の顔を思い浮かべる。
「(つまりこのチーム分けは性格によって結果似たタイプで構成されている!!)」
そう考え、宇田は合っていそうで間違っていそうな自分なりの考察をする。
「(チョキは平和と攻撃のバランス力を重視した慎重なチーム。
パーチームは紙のような柔軟があるが、裏もあるかもしれない怪しさが漂うようなチーム。
そしてこのフレミング・チームは、本来ジャンケンには存在しない特別な枠……それを出すタイプは……目立ちたがり!!)」
そう思い、宇田は辺りを見回す。
目立ちたがりの西崎。
新しい物好きのあかね。
好奇心旺盛の青木と駿河。
自由人の八木。
と言って面々であながち自分の考えが間違っていないと思った。
「……出す手、間違えた気がする」
そう、感想を述べた。するとそんな謎の呟きをした宇田に八木が声をかける。
「めぐちゃん、どうしたの?」
「ううん、なんでも無い」
と言って宇田の様子に気づいた八木の声に返答をした。
「何はともあれ、とにかくポイントを探すのが先決っすねー」
「位置がわからないと、どうしようも無いしね」
と言って青木の意見にあかねが賛成し、ポイント探しのための策を出し始める。
「確かに、どんなに打席が伸びても方向が悪ければただのファール!!」
そう言い、野球の話を持ち出した大谷に西崎が立石に問いかける。
「タマわかる?」
「うぃ」
野球のルールを知っている立石はその意味を理解していた。
「探し物ならまかせて」
そう言い、八木は鞄からいつものL字の金属棒を取り出した。
「やると思った!!任せられないよ!!」
そう言い、宇田が突っ込んでいると駿河が話す。
「でも、噂は聞いているよ。つぐちゃんってこれまでダウジングで色々見つけているんでしょう?意外といけるかも」
「そんなオカルトは信じないもん!!」
宇田がそう言うも、八木は両手に棒を持つと目を閉じて念じ出した。
「探し物の内容をチェックポイントにすれば……」
「そんな融通利くの!?」
思わず宇田が突っ込んでいると青木達はそんな八木に期待するように話す。
「まぁ、他に当てもないっすから、一度試しても面白いかもしれないっすよ」
「この采配、支配にどう影響するのか見物だね」
「うぃ」
そう言い、盛り上がっているフレミングチームに対し、冷静に答える宇田。
「なんでそんなに他人事なのかがわからない」
そして目立ちたがりが集まったこのチームは特に方針も決めずになるがままに行動を開始したのだった。
「よーし、じゃあ行ってみよう!!」
「ふあ―――ん!!」
そんな宇田の悲鳴が森の中に響いていた。
小学生の時、林間学校でオリエンテーションをやっていたけど、途中から看板探すのが面倒になって他グループと合流して情報共有やって楽していたのを思い出した。