オリエンテーション中の晴風クラス+加藤、大谷達。
森の中を散策する各チームはポイントを集めていた。
そんな中、チョキチームでは……
ジジジジッ!
「うわぁっ!!」
「宗谷さん!!」
蝉の突撃を喰らって足元がよろめいてしまった真白に、黒木が手を差し伸べる。
「大丈夫?」
「あ、あぁ……」
そんな真白を見て憐れむように伊良子や勝田が言う。
「宗谷さんもう三回も蝉に突撃されているね」
「先頭を行ってくれているから犠牲になっているぞな」
そう言われ、励まされているのかわからない言動を聞きつつ真白がお決まりのセリフを言う。
「はぁ~ついていない……」
そう真白が言うと、小笠原と若狭が現状を呟く。
「副長の不運を除けば探索は極めて順調だけどね」
「優秀なのは間違いないからねぇ~ウチの副長。運は悪いけど……」
すると山下が真白に報告を入れた。
「ポイント発見しましたー!!」
「流石航海科、よく見ているね」
若狭はポイントを見つけた山下を褒めていた。
「ここまで順調に進めているのは山下さんの功績が大きいな」
真白も同様に山下の事を褒めると、万里小路も呟く。
「やはり、目がよろしいのですね」
「ウチも何個か見つけたぞな」
そう言い、やる気満々の勝田。すると黒木が地図を見ながら疑問を口にした。
「このまま行くと川があるわね。ゴール付近にも川が流れているみたいだし、遡って行けばゴールできそうだけど……これはルール上いいのかしら?」
「ゴールに辿り着くのが目的ならそれでいいんじゃない?位置を把握する最低限のポイントは見つけているんだし」
「そうだよね」
ゴールに続く川に沿っていけば良いのでないかという意見が出た。
「ですが、ポイントはできるだけ見つけるといったルールもありましたわよね?」
「それって、最短ルートを阻害するためだけにあるひっかけ問題の可能性もあるよね」
万里小路の意見に若狭が推測を述べる。
「でも、制限時間内にゴールは絶対条件ぞな」
勝田の意見にあまり寄り道が出来ないと思いながら真白はこのオリエンテーションの意味を考えていた。
「そうだな……しかし、例えばこの実習……チェックポイントを救助者と仮定した救助訓練なのだとしたら。
時間内になるべく多くの救助者を発見し、目的地に辿り着くのが本来の目的なのかもしれない」
「救助訓練?」
真白の推察になぜだろうかと思う小笠原。
「もちろん、ただの推測だが……」
自分の意見のやや否定的に思う真白だったが、黒木がそんな真白に意見をする。
「確かに特別実習にしては、説明されただけのルールだけを遂行するだけならそれほど難しいことじゃないわ。でも、別の意味が隠されている可能性も十分に考えられるわね」
そんな黒木の推測に真白は少し考えた後に勝田に聞く。
「勝田さん、ここからゴールを目指すならどれくらいかかりそう?」
「道が悪いことを考慮しても一時間はかからないくらいぞな?」
普段から海図室に篭って航路策定をしている勝田はこの分野は得意だった。その為情報の信憑性は格段に高かった。
「まだ時間には余裕があるね」
「じゃあ、ゴールはひとまず置いておいて、もう少しポイント探しに行ってみる?」
そんな伊良子や小笠原の意見に真白が問いかける。
「いいのか?自分で言っておいてなんだが、これが救助訓練だと決まった訳では……」
そう言い、このままゴールに向かう方向でなくていいのかと聞いてしまった。
「いいのよ。少なくとも私は宗谷さんの意見には納得したわ。恐らく他のみんなもね‥‥」
黒木にそう言われ、真白は少し考えた後。自分のチームの方針を決定した。
「ありがとう……よし!!では、これからはポイント探しを重視!!広範囲を捜索しつつ、ゴールへの道筋は大きく外れないよう移動する!!それと制限時間には遅れないように気をつけるぞ!!」
「「「了解!!」」」
チョキチームはポイントを重点的に探しつつ、ゴールを目指す方針を取るのだった。
その頃、ゴールでテントを張りながら晴風クラスの到着を待っている古庄達は……
「まだ、どのチームもゴールに辿り着いていませんね」
そう言い、椅子に座っている古庄に平賀が声をかけた。
「この時間だと真っ先にゴールに向かうことを想定したチームはゼロ……ですか」
「そうね。最低限のポイントでゴールを目指すなら、最速を目指さなければ……その先の目的を達成できない。
でも、それは数ある中の一つの想定よ。この実習内容をどう受け止めて、どう行動するか……それは生徒たちの自由」
古庄はあえてこの実習の本来の目的を明かさなかった。もしかすると古庄が思っているのとは違う考えに至っている可能性があるからだ。
その為に最低限のことしか伝えず、こうして到着を待っていた。
今頃森の中で何をしているのかは分からないが、それは後々地図を見れば分かること。問題なのはこの状況を彼女らが何に捉えるのか。そこが最も重要だった。
「楽しみに待ちましょう。あの子たちが何に気づき、それを想定した上でしっかりミッションを達成できるかどうか‥‥」
「‥‥ええ、そうね」
福内の呟きに古庄は楽しみにしながら晴風クラスの到着を待つ事にしていた。
数十分後…
「いっちばーーん!!」
森の中から西崎達、フレミングチームが出てきた。
その後ろで宇田は『奇跡だ……』と、ゴール、それも一番目に出来たことに信じられないようだった。
そして二番手は納紗達のパーチームだった。
「まさか、フレミングチームに一着をとられるとは思いませんでした」
「自信あったのになぁ~」
「二位でもすごいよ」
納紗の推察では野間の探知能力で順調にポイントを集めながら登ってきていたので、一番だと思っていたようだった。
少し悔しがる武田に、知床がフォローを入れる。
そして三番手は明乃達のグーチームだった。
「疲れたよ~」
「でも、楽しかったネ~!!」
そう言い、明乃達は苦労を労っていた。彼女らは森の中を散策しつつ、緩やかにゴールに到着していた。
そして四番手は真白達率いるチョキチームだった。
「すまない……時間を管理していた私の腕時計が不具合を……」
「まぁまぁ……」
「ギリギリ間に合ったんだし、大丈夫じゃない?」
一部肩で息をしているものもいた。そう、この中で最も順調に進んでいたであろうチョキチームは真白の不運体質が爆発し、時間がズレていたことに気づいて大慌てでゴールにやって来ていたのだ。
しかし、時間にギリギリ間に合ったので良しとなっていた。
「みんな、お疲れ様!!」
平賀達はゴールした晴風クラスの生徒たちに労いの言葉をかける。
「ひとまず、制限時間内にここまで辿り着くことが出来たみたいね」
最低限の条件である時間内にゴールするという目標を全てのチームはクリア出来た。
「はい!は~い!!一位でゴールしたチームには何か褒美とかありますか~?」
すると一位でゴールしたフレミングチームのリーダーである西崎は古庄に何か一位になったご褒美があるのかを訊ねる。
「実習なので、そういうのはありません」
元々学校の実習なので、褒美はないと古庄は答えた。
「ガーン……ガンバッタノニ……」
そういい、何も褒美が無い事に西崎はショックを受けた。
「そりゃそうだ」
真白は当然だろうと、西崎にツッコミ入れた。
すると古庄は西崎に追い打ちをかけるかのように晴風クラスの生徒たちにもう一言付け加える。
「それに、実習はこれで終わりじゃないわよ」
「「「えっ!?」」」
古庄のこの一言に晴風クラスの生徒たちは固まった。
「まず、本日各チームが作成した地図を回収します」
すると福内が補足説明をした。
「あとは明日までに、本日のオリエンテーリングで何を考え、どのように行動したのかレポートをまとめて提出すること。
最終的に探索にかかった時間、地図の完成度、レポートの内容をトータルし、吟味した上で評価を下します」
「うへぇ~レポートもあるのかぁ~……」
そう言い意気消沈する西崎達。するとそこで平賀が激励をする。
「でも、もう、終わったも同然!!レポートを乗り切ったら、明日は自由時間!!もうひと頑張りよ!!頑張れ若者よ――――っ!!」
「「「おぉ――――!!」」」
平賀の言葉に一気に沸き立つ晴風クラス。そうして、四苦八苦しながらもレポートを書き終えた。
そして迎えた翌日
「海…じゃなくて川だーーーっ!!」。
そう言い、水着に着替えて飛び出した明乃達は目の前の川辺で遊び出す。
川辺ではBBQが始まり、伊良子がとんでもないデカさの鉄串に刺した肉を持って来たり、化石があると言う噂を聞いて川にある岩を叩こうとする駿河など、思い思いの時間を楽しんでいた。
「賑やかねー!!」
「川で遊ぶなんて何年振りかしら?」
平賀と福内の姿を見て、西崎は驚きの声を出す。何故なら、二人の姿は自分たちと同じく水着姿だったからだ。
「二人まで完全に遊びモード」
そんな浮き足立っている二人をジト目で見る西崎。
「ふふっ、実は私たちも半分夏休みできているのよ」
「ビーチバレーでもする?ビーチじゃないけど」
平賀は満面の笑みで晴風クラスの生徒たちをビーチバレーに誘った。
「現役ブルマーとビーチバレー対決!!オープン戦みたいにワクワクするね!!」
「ワーオ!!エキサイティングねー!!」
「よぉーし、やってやろうじゃねぇかぁ!!クロちゃんも呼んでくらぁ!」
すると大谷、加藤、柳原はやる気満々だった。
そんな中、明乃は古庄の姿を見つけると、彼女のもとに駆け寄った。
「古庄教官!!」
「ん?」
「教官も水着なんですね」
そういい、パラソルの下で地図の採点をしている古庄に明乃は声をかけた。
「あの子たちが持ってきたのよ。まぁ、どんな格好でも採点はできるから仕方なくね……」
ブランケットを羽織りながらそう言うと、明乃が恐る恐る聞いた。
「あの、実習の得点次第では、さらに実習なんて……可能性も?」
明乃はこれ以上夏休みが減ってしまうのかと思っていると、古庄は心配はないと言った。
「それはないわ。元々この実習自体が補習みたいなものだし、点数をつけると言っても、判断能力や適性を見るのが目的だから」
そう言うと明乃はホッとした様子を浮かべ、安心していた。
「チーム分けの方法も少しは採点に影響しているわよ」
「えぇっ!?それって、もしかして、マイナスなんじゃ……」
そう言い、思わずヒヤリとなってしまう明乃。
「ふふっ、そうかしら?」
しかし、古庄教官は笑みを浮かべて誤魔化す。
「岬さーん!!」
「艦長も一緒にやらなーい?」
鈴と若狭が明乃をビーチバレーに誘う。
「あっ……」
「ほら、私はいいから、岬さんも遊んでらっしゃい」
「はい。あの……よかったら、教官も採点が終わったら、一緒に遊びませんか?」
そんな明乃の提案を聞き、古庄は楽しげにビーチバレーをしている平賀達を見ると、明乃に伝えた。
「……そうね、考えておくわ」
「やったぁ!じゃあ、待っていますね!!」
「えぇ」
そう言い、明乃はビーチバレーをしている所へと走って行った。
古庄教官はそれを見た後。晴風クラスの生徒たちが作成した地図を見る。すると、フレミングチームが作成した地図には、『まいぞー金』や『温泉(足湯サイズ)』と書かれていた。
「宝の地図……?」
古庄はその地図を見て首を傾げてしまっていた。