「いやぁ、助かったよ〜。ありがと〜!」
峠を出たところで止まったミニから出てきた少女達がサクラたちに礼をする。
「でも、何で助けてくれたの?」
もう一人の少女にそう聞かれ、マスタングの傷の具合を見ながらサクラが答える。
「いいよいいよ、こっちとしても
「「「!?」」」
サクラの呟きに三人が驚いていると、サクラは先ほど二人を追いかけていたX6に乗っていた男の刺青を思い出していた。
「車に乗っていた奴の一人の刺青はシカゴを拠点とするマフィアの一党の物……そんな奴がわざわざ隣の州まで来る理由。
……それに、車は貴方達を殺す気だった。それが気になってね……」
そう言いながらボンネットを閉じるとサクラはミニに乗っていた二人の少女に聞いた。
「二人はどんな事を知ったんだい?……まぁ、まずはその持っている拳銃を下ろしてから始まるが……」
サクラの的確な問いに隠しきれないと理解したのか、少女達は後ろで拳銃を握っていた手を緩めると、諦めた様子でサクラに言った。
「やれやれ…大統領候補者の娘さんはお見通しですか……ネル、見せてあげて」
「……分かった…」
そう言い、ネルと言った少女は傷ついたミニからパソコンとUSBを取り出してメモリーの中身をサクラ達に見せた。
「これは……」
中身を見たサクラは驚いた声を上げた。ケイリーはいまいちピンと来ていない様子だったが、サクラは無音の映像を見て笑い声を上げた。
「ふっ、ふははは!!これは、慌ててマフィアが追いかけて来るわけだ」
「どう言う事サクラ?」
するとサクラは写真に映る男の写真を指先しながら言う。
「この集会に映っているのはシカゴ市警察の副署長とシカゴマフィアの幹部だ。これでマフィアと裏で繋がって居るのさ」
「えぇっ!?そんな事が……!!」
信じられないと思うケイリーだが、ネルはさらに細く説明をする。
「そう、この映像を手に入れたんだけど……こいつらにバレちゃってね。隠れながら隣のアイオワ州まで来たんだけど、そこで見つかっちゃって追っかけ回されてたの」
「そこで、ウチらが吹っ飛ばしたと……」
「そう言う事」
そうして、今までの経緯を聞き。ケイリーが思わず二人に聞いた。
「何であなた達はこんな物を手に入れたのよ?」
「そりゃあ、うちらは親が記者な関係で週刊誌の会社でバイトしているからな。私とネルの二人で危険だけど高収入だし、ネルがこう言うのは得意だから」
「ふーん……」
やや怪訝な目で二人を見ていたケイリーだったが、サクラはその映像を何度も見た後、二人に聞いた。
「……貴方達、名前はなんて言うの?」
「え?」
「名前、二人の、ついでに連絡先も」
「え?あ、あぁ…これで良いか?」
そう言い、二人はメモ帳に連絡先や名前を書くとサクラに渡した。
「ルイーザ・J・ホワイトとネル・ウィルソンね……」
そう名前を呟き、連絡先を登録するとサクラはある場所に連絡をした。
「あー、もし?ちょっと美味しいネタを見つけたよ。…うん、そうそう……」
そう言い、何処かに連絡しているサクラにケイリー嫌な予感を感じていた。するとサクラは電話を切るとくるりとケイリーを見て言った。
「ケイリー、予定変更。……今からシカゴに行くわよ」
「あぁ!やっぱりかよクソッタレ!!」
そう言い、頭を抱えるケイリーにルイーザ達は困惑する。
「え?シカゴに行くの?」
「な、何で!?」
ネルがそう聞くと、サクラは車のドアに手を掛けながら答えた。
「そりゃあ、もちろん。
その声色に思わず息が詰まってしまう二人。
するとサクラは車に乗り込み、窓を開けてネル達に話しかける。
「レッカーを手配しておくから。あなた達のミニも直るはずよ」
そう言いながらサクラは側面がボロボロのミニを見た。
「じゃ、良い情報をありがとね〜。お代は今度君達に送っておくよ」
そう言い、マスタングにエンジンをかけた時。ルイーザが声をかけた。
「ちょっと待て……!!」
「?」
「だったら話がある」
そう言い、サクラを呼び止めたルイーザはサクラ達にある話をしていた。
同時刻
「くそっ!まだ見つからないのか!!」
シカゴ郊外の倉庫街の一角。そこでは一人の小太りの中年男性がイラついた様子で机を叩いていた。
彼はシカゴ市警の警視であった。その様子を眺めながら少しだけ余裕そうに一人の男が警視に向かって言った。
「大変だなぁ、警視さんよぉ」
「黙れ!元はと言えば貴様が取り逃したのが原因だろう!!」
そう叫ぶと警視は携帯を壊さんと言わんばかりに握る。
「こうなれば、貴様らまとめて突き出してやる!!」
「そう出来れば宜しいですがね。あいにくと帳簿はこちらにあることをお忘れで?」
「この青二歳め……」
そう言い、警視はパイプ椅子に座っていた若干三十代ほどの男睨みつけていた。しかし、その男は余裕そうにしながらタバコに火をつけると煙を吐き出していた。
「気長に待ちましょうや、どうせこっちに来るでしょうしな」
そう呟き、男は再びタバコを思い切り吸っていた。
「…あそこか……」
双眼鏡で大量の倉庫群を見たサクラはやけに警備が厳重な場所を見た。
「あそこの倉庫の内のどれかだね〜」
同じようにマスタングの車内からケイリーがそう言うと、別の場所から声が聞こえた。
「今、周辺の倉庫の監視カメラをハッキングしてる所」
「どのくらいで終わる?」
「あと、二〇秒くらい」
サクラの問いかけに答えたのはノートパソコンを広げて、画面を眺めているネルだった。
また、マスタングの後ろにはミニが止まっており、そのボンネットではルイーザが片手に狙撃銃を構えていた。
「狙撃の腕はあるのかしら?人を撃てるの?」
ケイリーがルイーザに問いかけると、彼女は不敵に笑った。
「フッ…舐めんじゃないよ。こっちは山育ち。仕事柄、人を撃った経験くらいあるわよ」
「……なら安心できそうね」
そう言い、ケイリーも同様に車から狙撃銃を取り出す。なぜ、ネルやルイーザがここに居るのか。
それはサクラ達が別れようとした時。ルイーザが言い放った一言からあった。
「だったら話がある」
そう言い、サクラ達を呼び止めたルイーザはサクラに言った。
「もしシカゴに戻るなら、私達も連れて行け」
そう言い、ルイーザは自分たちもサクラに着いて行くと申し出た。もちろん、サクラはそんなルイーザに申し出を断った。
「ダメよ、いくら何でも危険よ。あなた達の顔が割れていた場合、確実に追いかけ回されるわ。ほとぼりが覚めるまでシカゴに戻らない方が良いわ」
真っ当な意見であった。ギャングにあそこまで命を狙われて居るのだ。下手すれば死ぬ可能性があった。しかし、ルイーザは言う。
「自分の愛車をこんな風にさせられたんだ。許せるわけねぇだろ……」
そう言い、サクラは両側面が傷だらけになって窓ガラスにも薄らとヒビが入ったミニを見た。それに、ルイーザが怒って居るのは本当の様子。
ネルも同様にやる気はある様子。しかし、あまり許容はできないと思っているとケイリーが援護射撃をした。
「偵察すると言っても、数は多い方が良いでしょ?」
ケイリーにそう言われ、サクラは少し考えた後にため息を吐いた。
「はぁ…仕方ないか……」
そう呟くと、サクラは再度ルイーザに聞く。
「これからギャングとかち合う可能性があるけど。いいの?」
「ああ、覚悟はとっくにできてらぁ」
「それに、以前私達は密会から逃げてるんですから。大丈夫ですよ」
「それもそうか……」
そもそもこうしてめぐり合った経緯を思い出しながら、サクラはルイーザ達を見る。
「ならば、すぐに出るわ。車は出せる?」
「外が傷付いただけで全然動かせる」
「……じゃあ、着いて来てもらおうかね」
そう言うわけで、ルイーザ達はサクラ達の跡を追ってシカゴまで戻って来ていたのだった。
サクラ達と知り合って二日程。街に入ったサクラはそこでケイリーから質問を受けた。
「……んで、シカゴの副警視とギャングの癒着に首突っ込む理由は?」
その問いかけに、サクラは答える。
「あの副警視は熱心な共和党論者だ。SNSに自慢しているくらいだからな」
「ああ、なるほど良く理解」
サクラがそう言うと、ケイリーは納得して、その続きを言った。
「モーリスさんは民主党だもんね。おまけに相手の共和党候補者とは接戦を繰り広げている。しかし、そこでギャングと副警視の関係が暴かれれば共和党に投票しようとして居る人が揺らぐと?」
「まぁ、シカゴの一都市での出来事だし、関連性が遠いから選挙に響くかは謎だけど」
「何もしないよりはマシでしょ」
そう言い、ケイリーは街中を走る警察車両を見ながら呟く。
「おーおー、こりゃあの二人を置いて来て正解だったね」
「あの二人を血眼になって探してらぁ」
そう言い、今までに何台も見かけたパトカーを横目にサクラ達はマスタングを走らせる。
別名キムワイプと呼んでいる塗装の施されたこのマスタングは街中を走り。街中のガンショップの前で止まる。
「さて、仕事の確認もしたし。あとは準備をするだけね」
そう言うと、サクラは車から降りてガンショップの中に入って弾薬を購入していた。
「今回の依頼は『シカゴ市警察副警視とシカゴマフィアの癒着の証拠を押さえる事』だとさ。無理だと思ったらさっさと帰って良いってよ」
「ねぇ……それ、来月から高校生のウチらにやらせる事?」
モーリスからのメールを読んだサクラに苦笑気味のケイリー。すると、ルイーザがやや驚いた様子を浮かべて言った。
「あら、あんた達も来月から高校生なのか?」
「あんた達……ってことは君たちも?」
「ええ、私たちも来月から高校に通うのよ。親に言われてね……」
「へぇ、何処に行くの?」
ケイリーが興味本位でネルに聞くと、ルイーザが答えた。
「サンディエゴ海洋学校よ。たまたま受かったんだよねぇ」
「ワォ、こりゃビックリ。ウチらも今度サンディエゴに通うのよ」
そう言うと、ルイーザ達も驚いた様子だった。
「Wow、まさかの同級生ですか……」
「じゃあ、何処かで会うかもしれないですね……っと、映像同期したよ」
「おっ、お疲れ〜」
まさかの事実と共にネルは何十個に分割されたカメラの映像をサクラに見せた。
「お〜、さすがハッカー」
「これくらい簡単よ」
ネルが自信満々に言うと、サクラは映像を眺めながら人の写って居る映像を重点的に見ていた。
「……ネル、この映像に欺瞞はない?」
「ええ、全部生放送よ。偽造された痕跡は見当たらないわ」
そう言い、映像を次々に動かしているとサクラ達は思わず舌を巻いていた。
「ヒュ〜、見てよこの倉庫。高級車しかない」
「こっちは対物ライフルにロケットランチャー……」
「相変わらず質の高い武装ね」
「あ、これ私の欲しい車だ!」
そう言い、ケイリーは監視カメラに写っていたフェラーリ・296GTBを指差しながら羨ましそうにしていた。
「良いなぁ……欲しいなぁ……ねぇ、サクラ。あれ盗めない?」
「いやいや、無理に決まってんでしょ」
そう言って、ケイリーのトンデモ発言に驚愕する他三人。しかし、質の高い装備を持つ相手にたった四人で何とかなるのかと不安に思うルイーザだった。
作者は友人に言われて初めてガルパン三世なる面白い物を見つけた。