ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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五〇話

シカゴマフィアとシカゴ市警察の怪しい取引現場を目撃した少女二人と知り合ったサクラ達はシカゴ郊外の倉庫地区でその現場を抑える為に準備を進めていた。

 

「さてと……お相手さんは居るかねぇ?」

 

マスタングに乗りながらケイリーがぼやく。すると外で倉庫を眺めていたルイーザが答える。

 

「さっき確認したカメラにあの副警視の車は写っていた……とすればシカゴマフィアの拠点のここに居るはず」

 

そう言うと、ケイリーがルイーザに向かって言う。

 

「ルイーザ達はここに詳しいの?」

「ええ、もちろん。両親に色々と教わったわ。でなきゃこんな危ない事をしないわよ」

「ふーん」

 

ルイーザと話しながらその時を待っているケイリーはふと、気になった事を聞いた。

 

「ねぇ、こんな命の危険があるってのに、記者のバイトを続けている理由は何?」

 

そんなケイリーの問いにルイーザは少し驚きながら答えた。

 

「うーん、そうだな……強いて言えば『スリルがあってやり甲斐がある』かねぇ……」

「ほーん…なるほどね……」

 

するとルイーザが聞き返した。

 

「アンタも、何でこんなことしてんだ?彼方みたいな特殊な家じゃ無いだろうに……」

「私はサクラの幼馴染だし、モーリスさんには色々と世話になったからね……」

「なるほど、似た者同士って事かい」

「そだねー」

 

そんな風に話していると、無線機からサクラの声が聞こえた。

 

『こっちは入口前に到着したよ』

 

無線が聞こえ、ケイリーとルイーザは狙撃銃を手に取った。

 

「しっかし、よくもまぁこんな銃を持って居る事で……」

「蛇の道は蛇ってね」

 

そう言いながらケイリーは持って来たAWMに.338ラプア・マグナムを装填しながら答える。

ルイーザは渡されたSACO TGR-42 A1を構え、同じように.338ラプア・マグナムを装填していた。

対物ライフルなんか持っていたし、本当に狩猟キャンプに行く予定だったのかと聞きたくなってしまうが、ルイーザは自分用にセッティングしたスコープを覗き込む。

見張の居る倉庫の下でサクラは肩からサプレッサー付きのMP7A2を降ろして様子を伺っていた。

 

「今更だけど、一人で行かせて良かったの?」

 

ルイーザがそう聞くと、ケイリーは自身ありげに答える。

 

「大丈夫、サクラは強いから」

「ほーん」

 

そう言い、いざとなった時のバックアップとしてサクラの援護をするルイーザは、サクラがまるで某ゲームに出てくる傭兵の如く姿勢を低くしながら建物に侵入したのを確認した。

 

「サクラ、その先に二人居る」

『了解』

 

ネルが映像を見ながら指示を出し、サクラは対処していた。

あの倉庫には監視カメラに映らない部屋があり、そこで話し合いが行われているのではないかと言う予想を立てていた。

倉庫から中に入ったサクラはネルに通信を入れた。

 

「欺瞞は流している?」

『ええ、流しているわ』

「OK、すぐに行くわ」

 

そう言うと、サクラは倉庫の吸気口からダクトに入り、匍匐前進で目的の部屋を探す。

道中、誰かの話す声が聞こえる中。サクラはダクトを通り、建物の場所を把握していた。

 

「身体が小さくて助かった……」

 

時々、真下を構成員が歩く時に冷や汗を掻いてしまう。

言い知らぬ緊張感が漂う中。サクラは倉庫の構造を思い出すと、少しだけ寄り道をした。

 

 

 

 

 

少しして、サクラはダクトの奥から聞こえる怒号を聞いた。

 

『ええい!まだ見つからんか!!』

 

中年男性の声が聞こえ、サクラは目的の部屋であると確信すると街で買ったスネークカメラを起動して中の様子を伺う。そして、音声も含めた映像を確認していた。

 

『とっくに市外に逃げてんだ。もしかすると他の警察署に行ってるかもだぜ?』

 

そんな激昂する中年男性に対し、落ち着いた様子で話しているのはマフィアの幹部と思われる人だ。ルイーザ達が入手していた映像に映っていたのと同じ顔だ。

 

『その為にすでに奴らの出版社を抑えている。下手に動けんようにな』

 

なんと下衆な野郎だ。今すぐにでも挽肉にしてやりたい気分だが、グッと堪えて十分な映像を取った。後は帳簿か何かあれば最も良いのだが……

 

「(まぁ、普通は見つからないよね)」

 

そう思い、撤収しようとした時。無線機から声が聞こえた。

 

ジッ『サクラ!無事?!』

「どうした?」

 

サクラが聞き返すと、無線機の奥から銃声とエンジン音が聞こえた。

 

『マフィアが追っかけて来た!今すぐ逃げれる!?』

「分かった…だけどケイリー達の安全を優先して。こっちはなんとかなるから」

『了解!』

 

通信が切れると、下では構成員が慌ただしく走り出し、車に乗り込み始めた。

 

『急げ!!』

『車を出せ!!』

 

構成員が声をあげて車に乗り込んでいき、エンジンがかかる。

 

「行かせないよ……」

 

ダクトを移動して、車庫に出たサクラは持っていた起爆装置のボタンを押し込んだ。

 

カチカチッ!

ドゴォォォオオオンンン!!

 

「ぬぁぁあっ!」

「何だ!?うわぁぁ!!」

 

倉庫の壁が吹き飛び、瓦礫が車庫に散乱する。

この直前に武器庫にあったC4に雷管をくくりつけて簡単な爆弾を完成させていた。そしてそのまま武器庫の弾薬に誘爆し、この有様である。

地震が起こったような激しい揺れが起こり、倉庫の天井が吹っ飛んだ。

 

「さぁ、これで警察か州軍が出てくるだろう」

 

まぁ、おそらくは州軍が出て来るだろうと予想しながらサクラは瓦礫が散乱する倉庫を走り抜ける。

廊下を走っていると、いきなり前から構成員が出て来た。

 

「なっ!?」

「て、敵…!!」

 

即座に銃を構えるが、サクラは二人の間に跳躍し、地面に手を付け。足で相手の銃を蹴り飛ばした後に、右足と左手で相手の顔面を左右の壁に叩きつけた。

 

「ごはっ!?」

「ブヘッ!?」

 

顔面から鼻血を垂らしながら倒れるとサクラはそのまま倉庫を探し続ける。

 

 

 

 

 

サクラは証拠集めの為に倉庫を走り回っていると倉庫から慌てて出ていく二人組を見た。

 

「む……」

 

車に乗り込むのは副警視とマフィア幹部。そして副警視の片手には鞄が握られていた。

 

「逃がさん」

 

倉庫から車庫に向かって走り出すと、サクラは二人の目の前に飛び出した。

 

「!?」

「お前は……」

 

いきなり現れたサクラに驚く二人。するとサクラはすかさず二人を取り押さえようと動いた。

 

「このっ!…….ガァッ!!」

「はいはい、おっさんは黙ってようね」ダンダンッ!!

 

顔を鷲掴みして拳銃を出そうとした副警視を黙らせるとサクラは副警視に向けてSIG SAUER P320の引き金を弾いた。

そして放たれたワイヤーでボンレスハムの様に副警視を拘束した後はマフィア幹部を見た。

 

「後はアンタだ」

 

そう言うと幹部は驚いた様子を浮かべながら言う。

 

「お前が…もしやフレッチャロッサか?……噂じゃあ女性と聞いていたが、まさかこんな子供とは……」

「子供で悪かったわね」

 

そう言うと、サクラは幹部にワイヤーを射出して拘束するとそのまま倉庫の外に連れ出した。そこでは一人の男がサクラを待っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「だぁ、クッソ!面倒だなぁ!」

 

ケイリーはシカゴの街を走りながら愚痴っていた。

その理由は後ろを走る二台の黒塗りの車にあった。狙撃場所でサクラの援護をしていたケイリーはいつのまにかマフィアに見つかり、そこからミニと共に追っかけられていたのだ。

ミニを先行させ、マスタングが囮となって注意を引いている現状だった。

 

「……しかけるか」

 

バックミラーを見ながら呟くと、ケイリーはマスタングのブレーキを思い切り踏み込んだ。

 

キーーッ!!

 

思い切り踏み込んだ事でバックしたマスタングは追いかけて来ているX6の後ろにつくとそのまま後ろからX6をどつき始めた。

 

ドンッ!「こっちの方が硬ぇんだ。事故れ!事故れ!」ドンッ!

 

そして、何回かタイヤをどついているとX6は姿勢を崩してスピンして停車する。残りの一台はそのままミニを追いかけていた。

後方のスピンしたその瞬間を逃さずにケイリーはマスタングを止めて車からOSV-96を取り出して無理矢理固定すると車のタイヤを吹き飛ばしていた。

野次馬が飛んでくるのですぐさまケイリーが逃げると無線から通信が入った。

 

『ケイリー、そっち終わった?』

「今片付けたところ。そっちの状況は?」

『なんか、クッソおもろい自損事故起こしてやんの』

 

そう答え、もう一台も片付いたのかと理解すると、あっさりとしたカーチェイスの終わり方に不完全燃焼なケイリーであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「不当に逮捕された記者はすでに釈放した。情報もリークしている。明日の週刊誌には乗るだろうな」

 

燃え盛る倉庫の前で一人の男とサクラは面会をしていた。その後ろでは黒塗りの大型バスに乗せられる副警視と、マフィア関係者が目隠しをされた状態で連行されていた。その様子を見届けながらサクラは男に聞いた。

 

「でも、父さん。今日はマイアミで公演するんじゃなかったの?」

 

そう聞くと、モーリスは少し笑うとこう言った。

 

「問題ない、あっちには影武者を送った。腕のいいやつだ。バレることはない」

 

するとモーリスは燃え盛る倉庫を見ながらサクラに言う。

 

「俺もそろそろ次の公演に行かなければならない。帰るぞ」

「うん、分かった……」

 

するとサクラは先ほどまで多くの車が停められていた場所に向かった。中にあった多数の車両はすでに駆けつけたモーリスの知り合いの者や警察によって外に運び出されており、多数の消防車が燃え盛る倉庫に水をかけていた。

 

「何をする気だ?」

「ちょっと迷惑料をね……」

 

そう言うと、サクラは運び出された押収品の一つであるフェラーリ・296GTBに乗り込んだ。

 

「ケイリーが欲しがっていたから。…あとお願い」

「やれやれ、世話のかかる娘だ。……まぁ、任せておけ。一台くらいは揉み消せる」

「ありがとう」

 

そう言うと、サクラはエンジンを掛けて走り出した。多数の警察車両が停まる中。一台のスポーツカーが現場から去って行く。それを見届けたモーリスは部下に指示を出していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

シカゴマフィアの拠点から離れ、シカゴ市内に戻ったサクラは集合場所に指定された街のカーショップに入った。

 

「よっ、色々と話聞いたよ〜。ありがとね〜」

 

カーショップの入り口では、すでにケイリーが待っていた。

 

「ここは?」

「ルイーザ達の知り合いの店だってさ」

「なるほど」

 

すると、ガレージの奥からルイーザとネルが出て来た。

 

「あ、お帰りなさい……ってあれ?その車は……」

「あれ?その塗装……」

 

ネル達はサクラの乗って来た車に見覚えがあった。そう、あのケイリーが欲しいと言っていたあのスポーツカーだ。塗装も全く同じで、何処から持って来たのだろうか?その事を指摘しようとした所でサクラは車を降りると、そのまま運転席にはケイリーが乗った。

 

「ほうほう、こんな感じか〜。これならすぐに乗りこなせそうね」

 

そう言って、ギャングから貰った(強奪した)車を見ながらケイリーはエンジンを吹かす。

元々犯罪組織が持っており、置物と化していたのだろう。走行距離のメーターが全然伸びていなかった。

 

「いやぁ、親父の中古スカイラインがスポーツカーに早変わりだね〜」

「父さんが後の事をやってくれるってさ」

「おー、やっぱり持つのは権力とお金を持つ友人だね」

「人聞きが悪いよ」

「おーすまんすまんw」

 

そんなふうに会話する二人を聞いて、思わず冷や汗が出てしまうルイーザとネル。記者のバイトをしているが、世の中知らん方がいい事もあるのだと感じるのだった。

 

「じゃあ、そろそろ帰りますかね」

「あ、もうそんな時間か……」

 

すると時計を見たサクラとケイリーはルイーザ達の方を見ながら手を振った。

 

「ごめん、うちら帰んないと行けないから。ここでお別れだね」

「え?あ、もう行くんですか?」

「早いわね……」

 

すると、サクラはルイーザに手を差し出して握手を求めた。

 

「ありがとう。二人には感謝するよ。二人のおかげで今回の汚職事件も暴く事ができた」

「暴くつったって、ほとんど貴方がしてたじゃん」

「だけど、きっかけを作ってくれたのは貴方達のおかげよ」

 

そう言うと、サクラはルイーザに一枚の小切手を渡した。

 

「これは……」

「迷惑料と口止め料。車の修理代の足しにでもしてね」

 

そう言うと、サクラは自分の車であるマスタングに乗り込む。

 

「また、海洋学校で会いましょ」

 

そう言うと、サクラはガレージを後にした。サクラのマスタングに続くように、ケイリーの乗るフェラーリもカーショップから出て行った。

 

 

 

ルイーザとネルは渡された小切手の金額を見て思わず吹き出しそうになってしまった。

 

「車の修理って…これミニの新車買えるじゃん……」

「それどころかもっといいの買えるよ」

「出どころが気になる所だけど……」

 

少なくともこんな額の小切手を渡せると言う事はごく一般的な自分達とは遠くかけ離れた生活をして居るのだろうかと思ってしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

シカゴの街から離れ、国道をひたすらに走るサクラ達。

 

「いえ〜い!ハッハァ!」)^o^(

 

二人は対向車が見当たらない国道を走っていた。

 

『飛ばして壊すんじゃないよ』

「大丈夫〜!」

 

電話越しでサクラが注意をするも、ケイリーは嬉しそうに走らせていた。

 

「ヒヤッホォォォウ!最高だぜぇぇぇぇ!!」

 

そう言うとケイリーはアクセルを踏み込んで道を走っていた。

 

「やれやれ、事故らないか心配ね」

 

そう呟くとサクラはケイリーの跡を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ふふっ」

 

ふと思い出した記憶に思わず声が出てしまった。

 

「どうしたの?」

 

するとすかさずケイリーが、サクラに問いかけた。

 

「ん?あぁ、いや。昔のね、ほらルイーザ達と会った時のことを思い出して……」

 

そう言うとケイリーは納得した声をし、あの時のことを思い出した。

 

「今思うと、とんでもない話だよね」

「いやぁ、学校来てからの方がとんでもないでしょ」

 

モンタナでの訓練後の片付けを終え、サクラ達は寮でそれぞれ自由時間を取り、好きなことをしていた。

そんな中、サクラとケイリーはそんな他愛もない話をして盛り上がっていた。




入学前の話だったのにここまで伸びちった……∑(゚Д゚)
あ、次回からサクラ達の一年生編が始まりまーす。(多分)
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