ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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五一話

シカゴ市での汚職事件から二週間後。サクラ達は再びシカゴに存在するシカゴ・ユニオン駅にやって来ていた。

 

「やれやれ、予約が取れただけでも良しとするか」

「そうだね」

 

シカゴ・ユニオン駅でサンディエゴ駅に向かう為の寝台特急列車に乗る為にサクラとケイリーはやって来ていた。

かの有名な映画、アンタッチャブルの撮影に使われた待合室でキャリーバッグ片手に二人は列車が来るのを待っていた。

史実とは違い、航空機がないこの世界ではいまだに複数の大陸横断列車がバンバン走っていた。

もちろん殆どの路線で高速化が行われ、この列車は最短三六時間で目的地に到着する。

 

「予定だと、明後日の夜にはサンディエゴに到着しているわ」

「一日半かかるのか……」

「短い方だよ」

 

そう言うと二人はホームに入り、止まっていた一編成の列車を眺める。

 

「ヒュ〜」

「やっぱ長いね、さすがは大陸横断列車」

 

そう言い、二人は切符を片手に列車に乗り込む。

 

二人が乗った列車は『シティ・オフ・ロサンゼルス』シカゴとロサンゼルスを結ぶ。おそらく最も有名なアメリカ大陸横断鉄道だ。

サンディエゴ海洋学校に行く為には終着駅のロサンゼルスで特急列車に乗り換える必要があった。

ロサンゼルスからサンディエゴに向かうまで一時間。合計三七時間の列車の旅である。

 

 

 

 

 

キャリーケース片手に寝台車に乗り込み、割り当てられた部屋に入ると、そこにはすでに来客があった。

 

「おっ、お久〜。二週間ぶりだね」

「あっ、お久しぶりです」

「こんにちは」

 

そこには既に列車に乗り込んで待っているルイーザとネルの二人がいた。

あの事件で連絡先を交換し、おまけに通う学校が同じだった二人に、サクラが一緒に学校に行かないかと提案していたのだ。予約人数が増えるだけの事だし、ついでにと言う事で四人で学校に行く事にしたのだ。

 

「いやぁ、四人だとちょうど大部屋が埋まるから良かったよ」

「割り勘すると二人の時よりも安くなるしね」

 

そう言い、二段ベットが向かい合って設置された部屋を見ながらサクラは荷物を置く。

この部屋は俗にツインルームと呼ばれるクラスで、ランク的に言えば下から数えた方が早い部屋であった。

しかし、三食食事付きだし人数が多いので割安というお得感満載の部屋だった。

 

そして、窓の外ではサクラ以外の親が窓越しに見送りに来ていた。

 

「流石にサクラの親はいないか……」

 

そう言い、モーリスがいない事にほんの少しだけつまらなさそうに呟くルイーザ。

 

「そろそろ投票だしね。今頃カリフォルニアにでも居るんじゃない?」

「わー、忙しいねぇー」

 

サクラの呟きにネルが呟くと、ケイリーが答える。

 

「まぁ、でもヘリで移動して居るから列車で移動よりかはめっちゃ早いと思うよ?」

「いいよねぇ、羨ましいよ……」

 

そう、今年の大統領選挙はヘリコプターの使用が許可されたのだ。

軍の管轄の元と言う原則はあるが、移動時間が大幅に短縮されており、まさに夢のような乗り物であった。

 

「ねぇ、サクラは乗ったことあるの?」

「ううん、私もない。いつかは乗ってたいけどね〜」

「じゃ、今のうちにもっと交流を深めとかないと」

「もしかしたら乗せてもらえるかもだしね」

 

そう言い、明らかなゴマスリに思わず笑ってしまうサクラ達であった。

 

 

 

 

 

あのシカゴ市警察の汚職事件は思っていた以上に酷く。なんと、あの副警視は大統領選挙に関与しようとしていた事が発覚。連邦捜査局が出てくる大騒動に発展していたのだ。

 

おかげで今まで拮抗していた大統領選挙は一気にモーリスの民主党が優位に立っていた。選挙前最後の予想では過半数がモーリスに加わるという結果で終わっていた。

ほぼ当選は確実と言った様子のため、二人はサクラに親密に関わろうとしていたのだ。

 

「まぁ、大どんでん返ってこともあるから油断はできないけどね」

「まぁね、昔の選挙でもそんなことあったしね」

 

過去、事前の予想では民主党が勝つと言われていたのに、結果は共和党が勝ったと言うどんでん返しの選挙があった。なので、最後まで油断できないと言うサクラの意見には二人とも納得していた。

 

 

 

 

 

少しして、列車が出発するアラームが鳴り、列車の扉が閉まる。ゆっくりと動き出す列車からの車窓を眺めながらルイーザが詩人になったように呟く。

 

「さらばシカゴ、また帰る日まで……」

「何詩人ぶってんだよ」

「良いじゃないの。しばらく帰れないのは事実なんだし」

「これから楽しい楽しい寮生活が待ってるよ」

 

そう言うと、ディーゼル機関車が唸り、列車は走り出す。

複雑怪奇なポイントを抜け、列車は走り出す。

新しい生活に期待を膨らませながら、サクラ達は旅人となった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

列車が出てから数時間後。いくつかの停車駅を経由している影響か、多くの人が乗り込み、通路は人で溢れている場所があった。

そんな中、サクラ達は食堂車に来ていた。

 

「おー、あったあった」

 

自分たちの名前の書かれたテーブルを見つけ、そこで四人は共に食事をとる。外はすでに真っ暗で、荒野の中を走っているのがよく分かった。

食堂車で食事をとっている中、サクラはルイーザに聞いた。

 

「ねぇ、そういえばあのミニって直った?」

「ん?あぁ、既にミニは直って、カートレインで既にサンディエゴに送った」

「おー、ウチのマスタングとおんなじだ」

「あ、サクラ達も車持って来たんだ。ちなみにフェラーリは?」

「塗装が終わったら親に送ってもらうつもり」

 

ケイリーがそう答えるとサクラが呟く。

 

「特に制限とか無かったからね。駅から学校までバスが出ているらしいけどほぼ確実に混んでいるだろうし…….」

「生徒であれば車の管理もしてくれるみたいですしね」

 

食堂車での四人は車事情について話していると、今度はルイーザが話題を振った。

 

「んで、主席様はなんかスピーチでも書いたか?」

「うーん、まあ一応ねー」

 

そう言って、サクラはルイーザに一枚の紙を渡した。

 

「どれどれ……は?」

 

紙を見たルイーザは固まった後に、真顔でサクラに言った。

 

「アンタ、舐めてんのか?」

 

そう言うと、紙を全員に見せた。

それを見たケイリーとネルは一言。

 

「「これは舐めとる」」

 

そう言い、紙に書かれた原稿にツッコミを入れていた。

 

『陸で話すことは特にない』

 

短くそう書かれた一文を見て、ルイーザが裏面にするとペンを渡した。

 

「こんなもん書き直しじゃ。馬鹿たれ」

「えー」

「何が『えー』だ。こんなの叱られる未来しかないぞ。おまけにいらん反感を生む」

「へいよー、書き直しまっさー」

 

そう言うとサクラは原稿の書き直しをしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、サクラ達を乗せた列車は予定通りにロサンゼルスに到着する。

三〇両編成の列車が停車する様はなかなか壮観だが、ロサンゼルス・ユニオン駅に到着したサクラ達はそのまま横に停車するアメリカ西海岸特急《サーフライナー》に乗り込み、サンディエゴを目指す。

 

先ほどの寝台室と変わって普通席になったサクラ達はふと周りに乗る客層を見て、自分達と同じような年代の人が多いと感じていた。

 

「入学式は明日だけど、前日入りする人が多いんだね」

「そりゃ、入学式なんかに遅れたかないでしょ」

「サクラ、原稿は大丈夫か?」

「記者のあんたが添削しんだから問題ないでしょ」

 

席に向かい合って乗っていると列車はひたすらに海岸沿いの路線を時速250キロで走る。太平洋がよく見え、サクラは久しぶりに見た太平洋を見ていた。

 

「うわぁ、太平洋は初めて見た」

「今まで、五大湖は死ぬほど見て来たんだけどやっぱり海は違うね」

「なんか、潮の匂いってこんな感じなのかな」

 

そう言って太平洋を眺めながら、やや興奮気味のケイリー達。今まで東海岸側に住んでいたことから大西洋や五大湖を見たことがあると言う彼女達だった。

 

「(そう言えば船で来た時はサンフランシスコだったっけ……)」

 

もう何年も前になってしまった記憶を思い出しながら、サクラは太平洋を見る。

 

「(いずれは日本に行く機会もあるのかな……)」

 

そんな事を思いながら、サクラは海を眺めていた。

 

 

 

 

 

一時間後

特急サーフライナーは終着駅であるサンタフェ駅に到着する。

 

「やーーーっと……

 

 

 

着いたぜ!サンディエゴ!!」

 

駅から降りて、両手をあげて大喜びするケイリー。サクラは背中を動かしながら同様に腕を伸ばしていたルイーザ達と共に興奮するケイリーを見ていた。

 

「やばい、腰バッキバキなんですけど」

「長時間運転した後みたいになってるよ」

「でも、シカゴとそんな気温は変わらないですね」

 

するとサクラが事前に調べた情報をネルに言った。

 

「向こうは冬がクソ寒いやん。だけどこっちはあんまり気温変化がないんだってさ」

「うわぁ……季節感がバグりそう」

 

ルイーザがそう言うと、まずは車の受け取りをする為に駅の窓口に行く。

窓口では何人かの同級生と思わしき人が待っており、車が来るのを待っていた。

スペイン風の色とりどりのタイルで貼られた待合室で四人は待っている間、学校のある場所を調べていた。

 

「もともと軍用飛行船基地だった場所を基地の移転と共に学校を建てたんだってさ」

「「「へぇ〜」」」

 

ネルがそう言い、三人が言葉を漏らしていると外の道を改造された三代目ダッジ・チャレンジャーと三代目ダッジ・チャージャーが走っていった。チャレンジャーの運転席には少しガラの悪そうな同年代の少女が乗っていた。

 

「うわぁ、法廷範囲内の改造なのかな?」

「エンジン音やばいね」

 

そんな事を呟いていると、自分達の番号が呼ばれ、外に出るとマスタングとミニクーパーが停まっていた。

 

「よし、ホテルに行くついでに観光しますか」

「賛成〜」

 

そう言うと四人はそれぞれ車に乗り込むとサンディエゴ市内を走り出し、明日の入学式に備えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日

高い柵で囲われた大きな施設の中にサクラ達は入って行く。

二人はサンディエゴ海洋学校のセーラー服を羽織り、学校の立体駐車場に入る。後ろではミニクーパーが追従し、隣に停まる。

入学式の会場となっている港湾地区には既に多くの生徒が待っており、生徒の保護者も大勢来ていた。

 

「いよいよだね」

「そうだね」

 

入り口で写真を撮った二人は一旦ルイーザ達と別れると事前の打ち合わせを行い、指定された席に座る。暫く待っていると入学式が始まり、校長の話やら自治体の祝辞やら長々と話しが進み、ついに自分の番が来た。

 

『続いて、新入生代表の挨拶です』

「サボるんじゃないよ。原稿通りに話してよ」

「分かってるよ」

 

そう言われ、注意を受けながらサクラは壇上に上がる。

 

「新入生代表のサクラ・A・ミヤマ・ファーゴです。今更言うことは特にありませんが、自分の持つ能力を活かせるよう努力していきましょう」

 

そう言うとサクラは堂々とした様子で壇上を後にした。




サンディエゴ海洋学校の場所はサンディエゴ国際空港の場所だと思って下さい。
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