その日、とある密林の中にある掘立て小屋のような場所で男達が集まっていた。
彼らは片手にAKを握り、防弾チョッキなども着ていた。彼らは卓上に置かれた数枚の地図を眺め、話し合いをしていた。
「ーーー出航を確認した。予定通りこの地点で作戦を開始する」
一人が地図に記された赤鉛筆をなぞりながら最後にバツ印の場所で地図を叩く。
部屋にいる一〇人程の男達は地図を見ながら確認を取ると頷いていた。
「相手はVIPだ、向こうが無視できないようにするんだ。目的さえ遂行できれば良い」
「しかしボス。それはアメリカに喧嘩を売るも同然のことになるぞ?」
一人がそう言うと隊長格の構成員が嫌味たっぷりに答える。
「上からの要求だ。ロビー活動が失敗し、あの法案が可決されるまで秒読みだ。もはや四の五の言ってられないんだろう」
すると隊長の後ろにいた男はニタニタとしながら舌舐めずりをしながら言う。
「俺ぁ、どっちだって良いんだ。ただ、女の園に入れるならな」
すると隊長はそんな構成員に対し釘を刺しながら言った。
「いいや、貴様は船に残らせる。
良いか!目標に危害が及んだら、恐らく無理にでも乗り込んでくる。そうすれば作戦は破綻だ!
上は穏便な解決を望んでいるんだぞ!分かって居るのか?!」
「へっ、女を自由に出来るってのに我慢できるかよ」
隊長は本心ではコイツを今すぐにでも置いていきたい気分だった。しかし、この男は元軍人という経歴から幹部からは非常に優遇されていた。要は下手に手出しができない状況だったのだ。
だからこそ、この男はこの作戦のどさくさに紛れて殺す算段だった。これはある一人の幹部の許可も取り付けており、準備は整えていた。
「では、作戦を始めるぞ」
「「「「はっ!」」」」
そう言い、一斉に男達は小屋を後にする。卓上にはモンタナ級戦艦の艦内図やサクラの顔写真が置かれていた。
クレアの跡をつけてから一週間後……
サクラ達モンタナクラスは洋上を航行していた。相変わらずクレアの当たりは強かったものの、好きな機械いじりが出来ることからか気分は良さそうだった。あの違法レースもどうやら興味は無かったようで、レースができなくとも特にイライラした様子はなかった。
コッソリとシリカからクレアの様子を聞くと、食事とシャワー以外はずっと機関室にいるらしい。
あんな騒音の中寝られるのかと感心しながらサクラは今は艦橋上の見張り所で大海原を眺めていた。
「眺めは上場……って所か……」
サクラは口にココアシガレットを咥えながら潮風を感じて居ると、耳につけていたマイク付きワイヤレスイヤホンから連絡が入った。
もう、モンタナに乗り始めて半年程が経ち、操艦や訓練にも慣れたものである。
艦内のどこに何があるのか、目を塞がれていても分かる。時刻は夕焼けとなり、明日には教官艦との合流地点に到着する予定となっていた。
『艦長、教官艦に定時連絡を行いました』
「了解」
通信を切ってサクラは再び海を眺めていた。夕食は既にとっており、この時間を邪魔する者は誰もいなかった。
同時刻 モンタナ艦橋
モンタナの第一艦橋ではケイリーが舵を握り、エマが双眼鏡片手に海を見ていた。
「いよいよ明日から他校との交流演習だね」
「ええ、先輩達がどんな感じなのか。気になるわね」
艦橋で二人はこれから行われる交流訓練を楽しみにしていた。
出航時、海賊が艦艇を狙っていると言う噂が飛び、念のため時間をずらしての出稿であった為に予定よりも早く到着しそうであった。
同時刻 船内食堂
そこでは主計科や航海科、機関科の一部が食事を摂っていた。
「うまぁ……」
「カミラー!これお代わりある?」
「まだまだ余って居るよ〜!」
そう言いながらカミラはオーブンからハワイアンピザを取り出して提供する。今日のメニューはカミラが作ったハワイアンピザで、非常に好評だった。
同時刻 機関室
エンジンの轟音が響く中、クレアやシリカや残った機関員が点検を行なっていた。
「ここの調子はよし……っと」
「あらかた終わった?」
「ああ、あとはタービンの確認だけだ」
クレア達は好きな機械いじりを楽しんでいた。
同時刻 医務室
多数のベットが置かれて居る中。船医で乗り込んでいたシアは今度の品評会に提出する為の剥製を作っていた。
「……よし、後は綿を詰めるだけだ。よし、渾身の一作だ!」
シアはハクトウワシの剥製まで後もう少しと言ったところで一旦休憩に入っていた。
モンタナでゆったり閉じた時間が流れて居る中。ソナー席に座っていたカルミアがモンタナに接近してくる複数の推進音を確認した。
「なんだ?」
すぐさまカルミアは通信を入れて、サクラに伝える。
「艦長、艦尾並びに右舷方向より複数の推進音が向かってきます」
すると即座にサクラから返事が返ってきた。
『総員戦闘配置!海賊が乗り込んでくるわ!急いで!』
「え?」
『早く!!』
「は、はいっ!」
サクラに怒鳴られ、カルミアは慌てて壁の非常ボタンを押す。
すると艦内に非常警報が鳴り響き、一斉に生徒達は艦内を走って配置につく。
「全砲門発射!撃てるのからレーダー射撃!」
「りょ、了解!」
かつてない程緊張した様子でサクラ達は指示を出す。
「おそらく乗り込んでくる……非常閉鎖システム起動。CICと機関室の隔壁を閉鎖して!……ネル!」
「はいっ!」
「武装系統がジャックされるのは何としても避けて!ハッキングしてロックをかけて!」
「わ、分かりました!」
サクラのただならぬ剣幕にネルは急いで武装システム全体の保護を開始する。
「おそらく相手は実銃を持っている……主計科の子達には艦橋に避難を!!」
「艦長!海賊が乗り込んできました!」
「どいて!」
するとハシゴがかけられて居るのを見たケイリーが艦橋から飛び出し、接近してくる小型ボートに対して四連装40mm機関砲を直接照準で放つ。
何発かは木製ボートに命中して爆散し、梯子を登ってきた海賊も頭を上げた瞬間にルイーザが持ち出したM25狙撃銃の狙撃で頭を撃ち抜かれる。
「くそっ!もう気づかれたか!撃て!」
「!?」
しかし海賊もやられまいと生き残ったボートからDShK38重機関銃を持ち出した。
「っ!伏せて!」
サクラがそう叫んだ瞬間、ボートから銃撃が艦橋付近に襲いかかる。各所から悲鳴が上がる中、サクラは叫んだ。
「艦橋の出入り口を塞いで!何でもいい!急いで!!」
そう言うと、防弾仕様の艦橋の中で艦橋要員はそこら中から持ってきた棚や金属パイプで出入り口を塞ぐ。
「エレベーターの電源は切った。これで侵入経路は外からのみだ……」
すると、イヤホンに連絡が来る。
ジジッ『こちら機関室……艦長、聞こえますか?』
「シリカ?何があった?」
すると、シリカは震えた声で言う。
『その……機関室に海賊が入って……それで……あっ』
するとイヤホンの先から知らない男の声が聞こえた。
『よう、お前がサクラ・A・ミヤマ・ファーゴか?』
男の声が聞こえ、サクラは内心舌打ちをする。サクラは少し間を置くとその男に聞いた。
「……狙いは私の首か?」
『御名答……ではないが、お前さんが目当てなのは当たりだ』
サクラの問答に、艦橋に居た面々は冷や汗を掻く。機関科のメンバーが人質に取られたのだと、認識した。
すると海賊のリーダーはサクラにある提案を持ちかけた。
『そこで提案だ。お前さんと引き換えでこの部屋にいる嬢ちゃん達と交換ってのでどうだ?』
「……」
海賊からの提案を聞き、サクラは一考する。
他のクラスメイトが心配しながら様子を伺っているとサクラは答える。
「……ええ、いいわ」
「「「艦長!?」」」
サクラの返答に驚くルイーザ達だったが、サクラはさらに続ける。
「だけど、その代わり。機関科の子達の安全を担保させる為に甲板で行い、他からも見えるようにする事。それが条件よ」
『OK、良いだろう。前甲板で落ち合おうぜ』
そう言うと、通信が切れた。サクラは腕を下に落とすと、エマが心配する様子でサクラに聞いた。
「艦長……本気ですか?」
するとサクラはエマに対して答える。
「ええ、入ってきた賊は機関室を制圧していた……隔壁が間に合わなかったと言う事は……
恐らく他は全部制圧された……」
「「「「!?」」」」
サクラの推測に全員が驚愕すると、ネルが涙をこぼして謝った。
「ごめんなさい……私のせいで……」
するとサクラは涙をこぼし始めたネルに対し、取り出したハンカチを差し出すとこう言った。
「いや、ネルは良くやってくれた。おかげで武器管制は奪われなかったんだ。これで海賊の手札を一つ潰せた。後は、システムを奪われないように頑張って頂戴」
「はい……」
そう言うと、サクラはケイリーに艦長帽を渡す。
「ケイリー、これを預けておく。だから、機関科の子達を必ず保護して」
「……分かった」
「みんなの安全が最優先だって事を忘れないで」
そう言うと、サクラは艦橋から甲板に繋がる外階段を降りて行った。
その様子を、ケイリー達はただ眺めることしかできなかった……
甲板に降りると、そこでは銃で武装した海賊が機関科のクラスメイトを囲んでサクラを待っていた。
「約束通り来たわよ。さぁ、最初に機関科の子達をこっちに来させなさい。でなければ、ここで自害する」
そう言うと、海賊は関心しながらサクラを見て言った。
「ほぅ……てっきり来ないかと思っていたが。随分と図太い神経を持っていんだな」
「さぁ、早く」
「へいへい、せっかちな事で」
そう言い、リーダーは機関科のクラスメイトを解放する。しかし、サクラは海賊に向かって言う。
「……おい、クソ野郎。二人足りねえぞ」
そう言い、サクラは指摘するとリーダーはため息を吐きながら答えた。
「なんだ、気づいていたか……じゃあ、無理にでも行かせてもらうぜ……!?」
リーダーがサクラに襲い掛かろうとした瞬間、サクラは隠し持っていた拳銃の銃口を頭に当てた。
「さぁ、ここで自分が死んだらどうなると思う……?」
「っ!このアマッ……!!」
彼らにとって最も重要なのはサクラを生きたまま人質にする事。もし死んでしまってはどんな理由があろうとアメリカ軍が全力で自分達を叩き潰しにかかるのは容易に想像できた。
「さぁ!早く残りのメンバーも解放しな!」
甲板にサクラの怒号が響き渡った。
pixivで阿部かなり先生暴れてて草