ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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六話

モンタナが晴風と邂逅し、武蔵からの救援要請の通信を受けて二日後。

 

四月八日 一六:三〇

太平洋の洋上を二隻の艦が航行していた。

一隻は赤いラインを塗られた晴風。もう一隻は船体をブルーグレー一色に塗られ、白帯の線が船体に横一線に塗られたモンタナだった。

 

「(武蔵からの救援要請……)」

 

明乃は心ここに在らずと言った様子でここ数日ボーッとしていた。武蔵の無線は晴風も聞いており、明乃は武蔵に親友のもえかが乗っている事を知っていた。

 

「(サクちゃんに言えば……何とかしてくれるかな……)」

 

心が揺れ動いている明乃を、後ろで舵を握っていた真白が様子を窺っていた。

 

 

 

 

 

モンタナ 船内CIC

 

そこではモンタナのクラスメイトの多くが集まっていた。

 

「現在、晴風は機関の総点検を行っています」

「機関科によれば後八時間は掛かる見込みです。……一応動けますが、巡航速度以上は出せません」

 

次々と上がる報告を聞き、全員の表情が渋くなる。するとルイーザがネルに聞く。

 

「……向こうの武装は?」

「三番砲塔が使用不能。魚雷、残弾無し。爆雷、残弾一発。戦術航法装置並びに水上レーダー損傷。通信は……受信のみ出来る状態です」

 

報告を聞き、既に晴風が満身創痍であることは明確だった。

 

「……兎も角、我々がすべき事は晴風を横須賀に送り届ける事だ。それまで面倒ごとにならない様に祈るしか無いか……」

 

サクラがそう呟くとCICの外で何やら大騒ぎになっていた。

 

「?なんだ?」

 

サクラ達はドッタンバッタンしている外の声に耳を澄ませてていた。

 

『待てー!私のモルモット!』

『う、うわぁぁあ!ネズミ!ネズミ!!』

『グヘェ…マ、マシュー!?』

 

どうやらネズミが出てそれをシアとマシューが追いかけているらしい。

 

「ネズミか…」

「ちょっと!!捕まえるわよ!!」

 

ネズミと聞き主計科のエリー達が網を探しに行き、ネズミを捉えに行った。

 

 

 

 

 

一〇分後……

 

「よっしゃー!捕まえたぞ!!」

 

ゴム手袋をはめて捉えたネズミを掲げるシア。その周りではグッタリとした様子のモンタナのクラスメイト達が…

 

「よくやったぞ、マシュー。後でおやつを上げるからな」

 

かつてない程キラキラした様子でマシューを褒めるシア。シアはその後、捕まえたネズミを強固な箱の中に入れ、ウキウキした様子で部屋に戻って行った。

 

「ふふーん、このネズミとハムスターの混ざった様な生物……気になるわ!!」

 

その後、『解剖解剖〜』と言って医務室に戻る彼女はなかなかに恐怖だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

モンタナ船内でのネズミ騒動から数時間後……

 

「まずい、実に不味いぞ……」

 

急遽、CICに移動したサクラは緊急で会議を開いていた。

CICには他にもクラスメイトが集まり、その通信に戦慄と怒りを覚える。

 

「おいおい…嘘でしょ?」

「日本人は自国民を殺すの?」

「なんと野蛮な……!!」

 

全員の目は目の前にあるタブレットに映された文書にあった。

 

『現在、横須賀女子海洋学校の艦艇が逸脱行為をしており、同校全ての艦艇の寄港を一切認めないよう通達する。また、以下の艦は抵抗するようなら撃沈しても構わない。

対象艦:航洋直接教育艦 晴風』

 

どうやら、この日本という国はやや…いや、相当お馬鹿なのかもしれないと思ってしまった。新入生の乗る駆逐艦を碌な確認もせずに撃沈命令を飛ばし、さらに兵糧攻めをすると来た。少なくともこんな馬鹿げた命令は撤回すべきだ。と思わざるを得なかった。

 

「どうする?艦長」

「分って言っているでしょう。アメリカに引きずってでも彼女らを守るわよ」

 

ケイリーの問いかけにハッキリと答える。するとルイーザが問う。

 

「でも、どうするんですか?命令を撤回させるにもどこに通信をすれば良いか……それにウチらも巻き込まれるのでは?」

 

そう聞くとサクラはこう答える。

 

「何を言う。我々が横須賀まで晴風を護衛すれば良い。このモンタナは対大和を意識して作られた艦よ?望むところだわ」

「それにウチらはアメリカの艦だしね〜。沈めたら外交問題よ」

「あ〜それは強い。ウチら何もしてないしね」

 

サクラの返答にエリーやケイリーが口を開く。CICで会議をしている中、クレアは右舷側を見ながら呟く。

 

「まぁ、あの子達の心情は穏やかじゃないわね……」

 

その壁の向こうには晴風がいた。

 

 

 

 

 

「げ、げき……」

「撃つのは、好きだけど、撃たれるのは、やだぁ~!」

 

撃沈という言葉を聞き。立石と西崎は絶句し、頭を抱えていた。

 

「何所の港にも寄れないって事?」

「そう言う事だな……」

「私たち完璧にお尋ね者になっているよぉ~!!」

 

説明を聞き、知床は完全に泣いていた。

 

「もしかして、武蔵も同じ状況なのかも……だから、非常通信を送って来たのかも…」

 

明乃は、先の武蔵からのSOSを思い出し、晴風と同じ状況だと察するが、

 

「こっちと違って、簡単に沈むような艦じゃない」

 

そう、武蔵は戦艦。それも世界最強と謳われている戦艦だ。晴風の様な駆逐艦と違い、簡単に沈むはずはないのだ。

 

「でも、助けを求めていた……だから…」

「我々の方が、助けが必要だろう!!」

 

ごねる明乃に真白が叫ぶ。現に晴風は撃沈許可が出ている状況だ。何も伝わっていない武蔵よりもよっぽど状況は悪かった。

 

「大……丈夫なのかな?」

「何がだ?」

 

舵をとってベソをかく知床は横を航行するモンタナを見ながら言う。

 

「ほら、私たちの撃沈命令を見て。こ、攻撃とか……」

 

知床の言葉に思わず全員が右側を見る。16インチ砲では晴風は一撃だ。副砲の12.7cm砲でも十分な脅威だ。思わず不安に思ってしまうと明乃が言う。

 

「大丈夫だよ。だってサクちゃんが乗っているから」

 

そう言い、自信ありげに答えると納沙が明乃に聞く。

 

「あの…サクラ艦長とはどのような関係で?」

「うーん、昔からの友達だね」

「成程……」

 

明乃の言葉を間に受け、納紗は納得すると明乃は言う。流石に友人が乗る艦艇を沈めるような真似はしないだろうと真白達は少しホッとした。

 

「取り敢えず、このまま学校に戻ろう」

「うぃ」

 

明乃の意見に立石が賛同する。

 

「じゃあ私が艦橋に入るから。皆は休んで」

 

明乃は、皆に休むように言うが……

 

「今夜の当直は私と鈴ちゃんです」

 

納紗は今夜の勤務表を明乃に見せる。

そこには確かに今日の夜間当直は納紗と知床だった。

 

「正しい指揮をする為には、休むのも必要だ」

「私は大丈夫だから……」

「良いから休んでください!!」

「うん、分かったよ、シロちゃん…」

 

絶対に休まないと確信した真白は艦長室まで明乃と同行し、その後再び艦橋に戻った。

 

 

 

 

 

時間は過ぎ、陽が落ちた頃。灯を落としたモンタナの艦橋で当直のサクラは横で灯をつけたまま航行する晴風に気づいた。

 

「あれ?あ、ちょっと。晴風に灯を消してって連絡を」

「了解です」

 

そして、モンタナ側面のライトから晴風に発光信号が送られる。

 

 

 

発光信号を受け取った晴風では……

 

「艦長、モンタナから発光信号です」

「え?どうしたの?」

「艦橋の灯と航海灯を消せと……」

「んー、なんでだろう?」

 

疑問に思う真白だったが、真白は向こうが経験が多いからと言うことで指示通りに艦の照明を全て消した。

 

「うわっ、暗っ」

「いずれ慣れますよ」

 

西崎が驚いていると納紗が答えた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

灯を消し、航行を続けるモンタナと晴風。

今は深夜帯だが、通信室でゲームをしていたモンタナの聴音員がスクリュー音を探知した。

 

「聴音室よりCIC及び艦橋へ。水中より推進機音探知」

 

報告を受け、艦橋で到着をしていたサクラとエリーは少し話す。

 

「潜水艦?」

「だったら準備した方が良いか」

「そうね…総員戦闘配置。対潜戦闘用意」

 

モンタナの艦内をベルが響き渡った。それは晴風も同様であった。

 

 

 

 

「ふぁぁぁぁぁ〜… 如何したの?こんな時間に…?」

 

深夜に叩き起こされ、パーカーを羽織った状態で眠たそうに言う芽依や志摩。そして、全員が上がって来た時ちょっとしたハプニングがあった。

 

「シロちゃん、それ!!」

「何やっているんですか……」

 

そこには寝ぼけた状態で鮫の枕を抱きながら上がって来た真白がいた。真白は意識がはっきりとすると手にぬいぐるみを持っていた事に気づき、声を上げてしまった。

 

「ん…?わぁっ!?こ、これは…その…み、見るな!!」

 

そしてその後、各箇所で報告が入り、準備が整った。しかし、機関だけはまだ間に合わず、巡航速度以上は出せなかった。

 

「か、各部…配置に着きました!!」

 

顔を赤くしながら真白は報告をしていた。

 

 

 

 

 

「ふむ、相手は東舞校の伊201か……」

 

モンタナではサクラが照合の終わった艦艇の名前を聞いていた。

 

「基準排水量1070t、水中速力20節は出る高速艦です。武装は53cm魚雷発射管四門、25mm単装機銃二挺、魚雷は一〇本です」

 

ネルが諸元を報告するとサクラは引き続き警戒をするように指示をした。

 

 

 

 

 

「東舞校?」

 

聞き慣れない学校に首を傾げる。すると納沙がすかさず解説を入れた。

 

「男子校ですね〜」

 

正式名称:東舞鶴男子海洋学校

日本にあるホワイトドルフィン……男子版ブルーマーメイドの養成学校の一つで東舞鶴他にも江田島、室蘭、大湊にある。

 

「へぇー男子校なんだ」

 

すると左舷側の見張りをしていた山下秀子が意外そうに言った。山下に続いて右舷側で見張りをしていた内田まゆみが……

 

「潜水艦は全部男子校ですもね……でも暑くて、狭くて、臭くて……」

 

と、まるで経験して来たかのように言った。その話を聞いた鈴は……

 

「わ、私にはムリー」

 

と、想像しただけで泣いていた。

 

「全体追っ手だよ!撃っちゃおう!」

 

西崎が潜水艦に先制攻撃をしようと提案するが、明乃は判断に悩んでいた。そして一つの考えに達した。

 

「ココちゃん、伊201と交信できないかな」

「普通の電波だと海水で減衰するので届きませんね」

「じゃあ普段はどうしているの?」

 

そんな明乃の問いに真白が答える。

 

「潜水艦だからっていつまでも潜って言うわけじゃない!!」

「そうだよね、時々は海上の様子を見ないと怖いよ〜」

 

そう言い、鈴は相変わらずな様子で言う。すると明乃は真白に聞いた。

 

「シロちゃん!潜っているときは向こうもソナーで探っているんだよね!」

「当然だ!!」

「じゃあ此方からアクティブソナーをモールスの代わりにしたら?」

「恐らく可能だと思いますが……」

「そんなことをしたら間違いなく攻撃したと思われるぞ!!」

 

真白はアクティブソナーを撃てば、伊201は『攻撃目標を探している=攻撃するつもり』という認識となり危険だと話す。

 

「ソナーでも何でもいいから撃っちゃえ!」

 

とにかく何かを撃ちたい西崎はそんなことを言い始めた。

 

「馬鹿なことを言うな!!」

「万里小路さん、艦名と所属、それと交戦の意思がないこと伝えて。できる?」

「一切、承りました」

 

そう言ってアクティブソナーで伊201にコンタクトを試みるのだった。




ブルーグレーっていい色ですよね……
個人的にはアンドロメダ級の印象が強い……
それと録画したカーズと特典雑誌を見て結構いろんな国から艦隊が来ていた事とサージが最上級曹長ぽかった事に驚いてる……( ゚д゚)
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