ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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六一話

インペリアル500に出場する為に練習を積んでいるサクラ達スキッパーレースチーム。

彼女らがスキッパーの練習をしている間、ケイリー達砲雷科は特別訓練の為に海軍の訓練施設でひたすらに機械を触っていた。

 

「あぁ…私もスキッパー乗りてぇ〜……」

 

ヘッドホンを付けながら砲雷科の一人が思わず呟く。するとそれに続くように他の生徒達も同じように羨ましく思う声が上がる。

そんな中、ケイリーが口を開いた。

 

「何、訓練が早く終われば練習に入ればいいわ。何も禁止されているわけじゃないんだし」

 

そう言い、スキッパーレースに出たい人はちゃっちゃかと訓練を終わらせようと言うと、砲雷科の面々は頷くと液晶画面を見ながらミサイル発射までの過程の訓練を始めていた。

特別訓練はミサイルの発射。および不具合が発生した時の対処法に、ミサイル迎撃の手順などを訓練していた。中にはCIWSのマニュアル操作もあり、かなり勘も試される部分もあったが、特別訓練も徐々に終わりが見えてきていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「終わった〜〜!!」

 

施設から出て腕を思い切り伸ばすケイリー、他の生徒達は既に噂の改造スキッパーに乗る為に飛んで行っており、ここには居なかった。

 

「お疲れ〜」

 

腕を伸ばして休憩しているとサクラが声を掛けてきた。話しかけられたケイリーはサクラに聞く。

 

「どう?スキッパーは?」

「とんでもねぇ暴れ牛だって言っておくわ」

「おぉ、そりゃぁ大変だ」

 

そう言いながら二人は敷地を歩く。そして、サクラが乗ってきたであろうマスタングに乗り込んだ。

 

「今から会場の視察に行くんだけど、良い?」

「ええ、視察は重要だしね」

「じゃあ、出すわね」

 

そう言い、マスタングのエンジンを吹かしてサクラ達は少しドライブに出掛けていった。

 

 

 

 

 

道中、改造スキッパーの諸元を見たケイリーが苦笑し、エンジンの出所が気になっていたが。そのまま車を走らせる事五分、二人はケーソンやコースを示す印が置かれた海上レース場を見ていた。

 

此処は通常は観光客などが海水浴に来る場所だが、その一角にはレースを行うための施設が揃っていた。

大会が行われるのは二ヶ月後、それまでにあの暴れ牛に乗りこなせなければならなかった。

 

「移動用トレーラー、人員。部品の手配は完了しているわ」

「既に私たちと同じこと考えている人がいるみたいね」

 

そう言いながらサクラ達は視線の先ににビデオカメラを持った同い年と思われる人たちを見ていた。おそらく会場のコンディションの確認のためだろう。

 

この大会は男女関係なく行われ、毎年接戦となっている。賞金も出る為、レース前の準備には力を入れる。同日の天候がどうであれ、波の大きさや、海中の海流の有無や水温など、必要な情報は集めておかなければならなかった。

 

サクラ達も車から一頻り情報を集め終えると、そのままビーチを後にしていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

学校に戻り、車を置いたサクラ達は学校内のスキッパー演習場に行くと、そこでは大会に出場するクラスのスキッパーが海上を疾走していた。

クラス対抗ではあるものの、団体としての面もあるので。ややこしいのだが、参加学校毎でもポイント加点制で順位が決まるのだ。

今年の参加数は52チーム、走り出しの順番はくじで決まっていた。海洋学校以外にも参加しており、通常の高校からも参加していた。

 

 

 

国際機関の一部である海洋学校の学制に合わせて合衆国もブルーマーメイド発足時に学制は日本と同じに設定し直していた。

その為、高校は三年制となり、大学も基本的に同じになっていた。違うのは年度の始まりくらいだろう。

 

 

 

 

 

ともかく、ボディを白色に塗装され。側面に《Fabulous Raging Bull》と打たれた金属板を取り付けた改造スキッパーが駆け抜け、正面に『12』の番号が貼られていた。

密閉されたコックピットにクラスメイトが乗り込み、エンジンのオンオフ。乗り換え、無駄のない補給などを繰り返していた。

 

「タイムは23,65、自己ベスト更新よ!」

 

ネルが時間を計測している中、サクラは声をかけた。

 

「やぁ、順調そうね」

「はい、予定通りに動けています……どうでしたか、会場は?」

「すでに偵察に来ている生徒がいたよ」

「はい、これ会場情報。必要なのは取ってきたよ」

「ありがとうございます」

 

そう言い、ネルがケイリーからUSBを受け取る。

今回、データエンジニアとなったネルはパソコンにスキッパーのシミュレーションを何回も繰り返していた。

 

スキッパーを運転するパイロットは五人交代制で、20周毎に交代する手筈となっていた。

 

機関科はメカニックとしてスキッパーの調子を監視しており、主計科はホスピタリティとして、パイロットの体調管理や屋台設営の準備などをしていた。

 

ケイリーはチーム監督として取り仕切っており、サクラはパイロットとしてスキッパーを操縦する事になっていた。

 

この改造スキッパー……いや、《Fabulous Raging Bull》は一応フロートなどは市販品の強化版を使用しているらしいが、それ以外は全く新造しているらしい。

まぁ、大会に出られる装備は一通り備わっており、クラッシュが起きても安全対策は万全だそうだ。

 

インペリアル500に出場するスキッパーは高速化の為にオリジナル部品を使用するチームもいるが、事故った時に修理が大変になる為。大体が市販品の中身カリカリ弄りで終わるらしい。つまり、エンジンから機体までほぼ新造のうちらは異端児と言うわけだ。

 

 

 

 

 

会場の視察を終えたサクラはそのままレーシングスーツに着替えるとヘルメットを被り、スキッパーの練習に混ざる。

ピットに滑り込んできたスキッパーの油圧式キャノピーが開き、先ほど乗っていたクラスメイトが降りると、滑るようにサクラが乗り込んだ。

 

「さてと……」

 

グラスコックピットの液晶を見ながら、ハンドルを握り。右手にあるスロットルレバーを手前に倒す。

ダーボの音と共にピットから出たスキッパーが走り出す。

 

 

 

大会まで後二ヶ月、これは面白いレースになりそうだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

二ヶ月後……

サンディエゴ湾内 インペリアルシースピードウェイ

 

その日サンディエゴ湾の近くでは大勢の人が集まり、設営された観客席は二〇万人の観客で埋め尽くされていた。

そんな中、解説席からリポーターが話す。

 

「お待たせしました!まもなく始まります、インペリアル500!!

ここ!インペリアルシースピードウェイよりレースをお伝えいたします」

「生徒達の戦略と知恵。そして何より、スピードが物を言うレース。興奮する一日になるでしょうね」

 

そう言い、解説役が会場となるインペリアルシースピードウェイでマイクに向かって話す。

 

「今年の目玉はやはり昨年度優勝のキッドクラス!!的確なラインを踏んでの素晴らしいコーナリング見せてくれるでしょう!」

「いやいや、今年はギアリングクラスも期待できますよ。なにせ去年はキッドクラスと接戦でしたからね」

「現在、各チームはピットにて最終調整を行なっています。まもなくレーススタートです!」

 

そして解説は次に出場チームの説明を始めていた。

 

 

 

 

 

同時刻、ピットにてモンタナクラスのスキッパーはエンジンの最終調整に入っていた。

 

「燃料補給完了」

「エンジンの点検終了。問題無し」

「フラップ、スラビライザーの連動を確認。問題なし」

 

クレア達が機体のターボファンエンジンのカバーを閉じると報告を入れる。

 

「予備機は?」

「問題ないわ。いつでも動かせる」

 

ケイリーが聞くと、ルイーザが答える。現在ピットの中には浮かんでいるスキッパーと同じ形の機体が駐機されていた。

基本的にインペリアル500参加チームはクラッシュ発生時にマシンが破壊された時のための予備機を持っており、その為市販車の改造が多かったのだ。

しかしモンタナチームはほぼオリジナルだった為に予備機はクレア達の過重労働と引き換えだった。

 

 

 

上空ではアメリカ軍から大会を盛り上げる為にAHー88の編隊が会場の上を飛行し、観客を盛り上がらせる。

そして最後尾を飛んでいたCHー46チヌークがレース上の海面スレスレでホバリング。中からペーススキッパーを送り出して会場の雰囲気は絶好調になっていた。

 

 

 

そしてアナウンスが鳴り響き、レース前のパレードラップに乗り遅れぬよう、各機がエンジンをかけ始める。

初手にコックピットに乗り込んだのは普段はモンタナの舵を握るエマだった。

最初に出て行く直前、エマはサクラに声をかけられる。

 

「エマ」

「艦長!」

 

キャノピーを閉じる前にサクラはエマの顔を見ながらアドバイスを送った。

 

「安全を最優先よ。留学前に大怪我なんてされたら……」

「ええ、分かっています。機体も頑丈ですから、大丈夫ですよ」

「初陣、頑張ってね」

「はい!」

 

そう言うと、エマはキャノピーを閉じる。ガッチリとロックされ、あえて純白に塗装されたモンタナの暴れ牡牛はタービンの回転数を上げてピットから離れて行く。

 

「ふぅ……」

 

エマは密閉されたコックピットの中で息を整える。ピット区画から出ると、周りは同じような見た目の市販車が多く。派手な塗装をしているチームもいた。今回与えられたチーム番号は12番、機体前面とエンジンの両脇に貼り付けられ。とても綺麗に映っていた。

 

「一周はパレードラップ……だけど、次ラップはもう試合が始まる……」

 

公平性を保つ為に並ぶ順番は当日の早朝にチーム監督がくじを引きに行って決まる。

そして今回ケイリーは引いた番号は26、団体のほぼ真ん中であった。

 

「副長もくじ運がいいんだか悪いんだか……」

 

そう呟きながらも、エマはヘルメット内蔵の無線機からチーフエンジニアを務めているシルフとカルミアの声が入る。

 

『エマ、そろそろパレードラップが始まるわ』

『いよいよ試合よ、頑張ってね。それと、作戦を忘れないでね』

「了解、報告ありがとう」

 

無線機は常に繋がっているので走行中でも簡単に会話が可能である。

そして先頭のペーススキッパーに追従する形で今回参加する52台のスキッパーが綺麗に並び、コースをゆっくりと走り出す。

エンジンを回転させ、周りからヘルメット越しでもわかる激しいエンジン音が聞こえる。

ゆっくりと周回を始める中、観客席に集った20万人の観客から歓声の声が上がる。

 

「いよいよか……」

 

周回が進む中、エマはハンドルを動かす。どうもレースカーに似たようなハンドルだが、旋回性能は練習時でも抜群の性能を発揮していた。

この機体なら絶対的な安心が生まれる中、パレードラップが終わりに差し掛かり、先頭のペーススキッパーが列を離れた。それとほぼ同時に周りのスキッパーも加速を始め、エマもスロットルを徐々に倒し始める。

 

そして、スタートラインに立つ係員が旗を振ったと同時に一気に全機が加速し始めた。

 

『さぁ、始まりましたインペリアル500!今年はどんなレースを見せてくれるのでしょうか!!』

 

リポーターが興奮した声を上げながらスキッパー52台が一気に加速を開始した。

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