その日、サクラ達は今年のインペリアル500に出場する為の機体。《Fabulous Raging Bull Mk.Ⅱ》の整備を行なっていた。
《Fabulous Raging Bull Mk.Ⅱ》は《Fabulous Raging Bull》に比べて推力を向上させ、更に低姿勢を追求する為にフロート部分が動くようになっていた。元出は去年の優勝賞金と私がネットで儲けた金だ。
レース用スキッパー部品を製作する小会社を設立し、そこで儲けた資金などもアメリアの研究資金、スキッパー開発に注ぎ込んでいた。まぁ、元々アメリアの研究論文を読んだサクラが『これはいける』と感じた為、航空機開発援助の為に建てた会社と言っても過言ではなかった。
現在、モンタナにある工作器具なども用いて今年度用のレース用スキッパーを製作していた。
「ふぅ……」
モンタナ船内にある作業台で新たにM1911の更新で支給されたベレッタM9の整備をしながらサクラは小さく息を吐いていた。
現在、モンタナ戦内には白兵戦用にM3短機関銃をM8シリーズへ、M1911をベレッタM9に更新しており。言ってしまえば軍のお古や採用を見送った武器の押し付けをしていた。
まぁ、M8シリーズに関しては一部部隊で試験的に採用されているようだが、それでも押しつけに変わりはなかった。
去年に起こった武装集団による襲撃、春に起こったRATs事件。これらの事件により、アメリカでは定期的な船内での白兵戦訓練を義務付け、日本の海上安全整備局も同様の訓練を次年度より始める方針を決定した。
現在、日本は訓練のための人員や武器の手配を進めており。最新式の20式6.5mm小銃や16式南部9mm自動拳銃の調達が急ピッチで行われていた。
ベレッタの調整も終わり。サクラは拳銃をホルスターに差し込み、片付けをしているとケイリーがやって来た。
「サクラ、お客だよ」
「?」
どうやらサクラに用があるらしく、ホルスターに拳銃を入れ。ケイリーと共に甲板に上がると、そこには明乃がサクラが来るのを待っていた。
「どうしたミケちゃん?」
「あ、サクちゃん!実はね……」
明乃はそう言うと、サクラにある話を持ちかけていた。
その話を聞き、サクラはそのイベントに参加すると答え、ケイリーと共に行くことにした。
夏休みも終わりに入り、そろそろ始めなければならないのが二学期に行われる競闘遊戯会の準備。
毎年新入生が居る学校が担当となって準備する為、今年は横須賀女子海洋学校が準備する必要があった。
「やれやれ…何をしようかねぇ……」
ケイリーと共に晴風寮に向かいながらサクラは呟く。するとケイリーが提案する。
「エリーに頼んでアメリカンチックな店がいいでしょ?」
「うーん……また後で会議でも開いて決めますか」
そう言いながら寮に入ると。そこには明乃、真白、高橋、山辺の四人と榊原つむぎ、長澤君江がいた。
「と言うわけで〜、肝試しで〜っす!」
寮に入り。榊原、長澤と挨拶をしたサクラ達はそこであらかじめ聞いていた夏休み最後の肝試し大会に参加することになった。
「やるからには勝つわよ!!」
「肝試しの勝敗ってあるのかしら……?」
「当たり前じゃない!!勝負には常に勝者と敗者が存在するのよ!!」
そう言い、やる気十分の高橋。
「そもそも肝試しは勝負事ではない気がするが‥‥」
「私、肝試しは初めてかも。サクちゃんとシロちゃんはやったことある?」
明乃がそう聞くと真白が先に答えた。
「肝試しは……昔、真冬姉さんに何度か付き合わされたことがあります」
「真冬さん?何か好きそうだよね、こういうこと」
そう言い、明乃達は比叡の時に出会った真冬を思い出し、あり過ぎる心当たりを感じていた。
「えぇ……今回のように予め探索側と脅かし役を決めて行う事もありました。正直、私はやりたくなかったのですが……」
そう言うと、真白は付き合わされた過去を思い出していた。
『船乗りたる者、一に根性、二に根性!!三・四も根性!!五も根性だ!!』
真冬は肝試しの前に集まった真白たちの前で言う。
『今時、根性論なんて流行らないよ』
即座に真白は冷静に真冬の根性論を否定した。しかし、真冬は続けて言う。
『おっ、言うようになったなシロ。だが、肝試しは根性論じゃない』
すると真冬は詳しく語り出す。
『いいか?まず、探索側は精神を鍛えられ、脅かす側は人知れず行動する。
それは潜入・隠密行動の鍛錬になる。ブルーマーメイドになるには必要なスキルだ。肝試しどころかホラー映画にもビビっている様な奴は立派な船乗りにはなれねぇぞ』
真冬は肝試しの利点を真白に説いた。
『むっ、昔の話でしょう!?』
「……と、言う具合に…まぁ、あの姉の事ですからやりたいことを実行するためにそれらしい理由を並べただけかもしれませんが……」
「でも、確かにそう言う考え方もあるよね。どんなことも訓練として考えられるなんて凄いよ!流石だね」
「そうでしょうか?」
明乃のポジティブさと真白の真面目がうまく合致して真白も少し考えを改めていると明乃が聞いてくる。
「サクちゃんとかは何かやった?」
「え?うーん……恐怖体験と言えば…ケイリーの牛舎で牛に悪戯したくらいしか……」
するとケイリーが思い返すように呟く。
「あぁ、あれね。サクラが悪戯で牛に石投げて追っかけられた奴ね。いやぁ……サクラが牛にどつかれた時は死んだと思ったね」
「「「「「「は?」」」」」」
突拍子もない発言に思わず明乃達から変な声が出る。するとサクラは詳細に語り出す。
「ケイリーの実家は酪農と農業やっててね。
そんで、その牛舎でケイリーやケイリーの兄妹達と遊んでいたんだけど、放牧中の牛に石投げて怒った牛に追っかけられる遊びやってたらずっこけてそのまま……」
「「「「「……」」」」」
幼少期のとんでもない遊びに思わず絶句してしまう明乃達。
「よ、よく生きてましたね……」
真白がややジト目で言うと、サクラは笑いながら言う。
「なぁに、でっけぇ痣が出来ただけで骨とか後遺症はなかったしな!」
「あの後、お父さん達からめっちゃ怒られたけどね……」
そう言いながらケイリーは疲れた表情で言う。その心情を理解できるから真白と山辺は思う。
「「(この人も同類か……)」」
どうやらしっかり者かと思われたがこんな危ない事すると言うことは、自分達の艦長と同じ部類の人間だと確信してしまった。
序盤から飛ばした気分になったが、高橋が聞く。
「それはそうと、参加者は私たちだけなの?」
ここにいるのは八人、これで肝試しはギリギリできるくらいだった。これから移動をするのかと思っていると長澤が言う。
「他の皆さんは脅かす側として参加されています。誰がお化け役かは分からない方が面白いと思うので秘密です」
そう言い、どうやら本当にホラースポットとかに行くわけじゃなさそうな雰囲気だ。
「では、ルールを説明します!まず、皆さんにはこちらを」
すると長澤は持っていた袋からある物を取り出すと明乃達に渡した。
「何よ?コレ?」
「使い捨てカメラみたいですね」
高橋は配られた使い捨てカメラヲ見て首を傾げた。
「これから皆さんには決められたルートを進むわけですが。もし道中、お化けが出たらそれで写真を撮ってください」
「もしって……オバケ役がいるのだから。確実に出るんだろ?」
真白が不思議そうに聞くと、長澤は少し愉快げに言う。
「最初から出るなんて言ったらつまらないじゃないですか。オバケ役は居ますけど、もしかしたら、全くでないかもしれませんよ?
いるのに出ないって面白くないですか?」
「そういうことか……」
長澤の意図を理解し、真白は納得する。
「……えっと…どこまで話しましたっけ?」
「お化けが出たら写真を撮るってところまで」
長澤は榊原聞くと、解説の続きをする。
「はい、はい、そうでした。
で、お化けには予め決まった点数があります。上手く写真に撮れればその点数が加算され、最終的にはその合計点で勝敗を決めましょう」
「本当に勝敗があるのか……」
「はい。高橋艦長の意向を組んで勝負方式を採用しました」
そう答え、高橋もご満悦のルール説明を長澤はする。
「オバケ役以外にも小ネタを用意してあります。これらもオバケと同じで点数は最後に発表しますので一か八か撮ってみるのもアリですね」
「小ネタって何よ?」
「それも秘密です」
「むぅ……」
そう言い、やや足りないようにも思えるが何が起こるかわからない肝試しに少しだけサクラ達も楽しみになっていた。
すると説明を終えた長澤は手を叩きながら言う。
「さぁさぁさぁ!はいはいはい!」
「「「「「「?」」」」」」
突然の行動に疑問に思う一同。
「はい!!」
「何よっ!?」
何をしているんだこいつはと言う目で見る高橋に榊原が解説を入れる。
「説明は以上なのでスタート地点に向かいます……と言う意味かと…」
「言いなさいよ!普通に!!」
「最後だけやたら雑だな……」
そんな長澤に真白、高橋を除く面々は面白そうにしていた。
同時刻
肝試し会場内
「ボスから探索組スタートの報告だ」
「遅い、遅い!待ちくたびれたよー」
「さぁ……子猫ちゃんたちを震え上がらせるぜ、ハードボイルドにな」
そう答え、脅かす組もやる気十分であった。
作者は個人的に思う。三八式実包の方が威力も抑えられているし、元々が小銃用弾薬だから狙撃も出来る一番自動小銃に合う弾薬ではないかと……