折り返し地点から戻っている途中の高橋・山辺ペア。
散々驚かされてきたこともあって高橋は不満げな表情をしていた。
「もぅ!あんな驚かし方ってないでしょうにっ!!」
「まぁまぁ、肝試しってそう言う物だし……」
そう言い、山辺は高橋を落ち着かせながらチェックポイントを探しながら戻る。インスタントカメラもすでに使い切っていたのでこのまま開始地点に帰れば良いだけだった。
森の中を歩いている高橋達だったが、ふと山辺が気づく。
「?…あれ、誰か居る?」
「へ?」
ふと山辺は後ろから聞こえる足音に疑問に思うと、高橋が不思議そうに山辺に聞く。
「どうしたのよ?」
「え?あ、いやぁ……足音が聞こえてね」
「え?ま、まさかまだ居たの!?」
まさかまだ残っていたのかと思い、高橋は驚いた様子で言う。
「でももう写真撮れないよ?」
そう言い、山辺は残り0枚のインスタントカメラを見ながら呟く。携帯も置いてきたので写真を撮る手段はどこにも無かった。
悔しいけど諦めるかと思いながら、誰が仮装しているのかと思いなが二人は振り向いた。
「……え?」
「は?」
振り向いた二人は疑問に思う不思議な光景を見た。
そこには自分たちと同じ髪型、服をした二人組が立っていた。それは月光も相まって鑑写しを見ているようでとても不気味だった。
目元は髪で隠れており、表情はよく分からなかった。
「何……あれ?」
「誰かの…仮装……??」
思わず高橋が顔を青ざめながら指さすと、山辺は誰かの仮装かと思っていた。しかし、それにしては余りにもリアルだった。
すると高橋の格好をした少女の口角が上がり、三日月状の不気味な笑みを浮かべた。
「い、いやぁぁぁああ……!!」
「あ!ちょっと、ちーちゃん!?」
咄嗟に逃げ出した高橋に置いてかれた山辺は再び二人組を見た。瓜二つの格好に山辺も恐怖を抱き、思わず呟いた。
「ド…ドッペルゲンガー……!?」
山辺は今までの知識の中から出た言葉を紡いだ。
ドッペルゲンガー
それは自分の瓜二つのに姿を持つ幻覚の一種とも言われており、その姿を見た者は死ぬと言われている物だった。
そんな超常現象を目の当たりにして山辺も思考が正常になるとすぐに行動に移した。
「わ、わぁぁぁぁあああ!!」
咄嗟に悲鳴をあげて山辺も高橋と同じ道を辿って開始地点に戻って行った。
高橋と山辺のドッペルゲンガーはその場から動かずに様子を眺めると、すぐに消えていた。
同じ頃、知床の声を元に森を探していた真白達。すると茂みの中から一個のラジカセを見つけた。
「ラジカセから声が……」
「よかった、泣いているリンちゃんは居なかったんだ……そうだ、写真を撮っておかないと」
思い出したように明乃がシャッターを切る。取り敢えず知床が置いてかれたなんて言う事件になっていないのだとホッとしているとふと真白は気配を感じた。
「(っ!?な、なんだ?背後から気配が……!)」
真白は感じた気配に恐る恐る振り向いた。
「や、山下さん……?」
「あっ、しゅうちゃん!!」
そこには白いワンピースに身を包んだ山下が両手で顔を隠して立っていた。すると彼女は手を退けるといつもよりも大きく目を開いていた。
「うわぁぁあぁあ!!」
「おぉ!!」カシャッ!!
思わず明乃がシャッターを切って山下を写真に収める。
「…って目が開いてるだけじゃないか!!」
「びっくりしたけど!!」
「このままでもいつでも開いているんだけどね…今のは見開いただけ……」
そう言い、明乃達はホッとした声を出すと山下の後ろから出てきた勝田や内田が声をかける。
「お疲れ様ぞな!」
「バッチリ良かったよ!」
そう言い、出てきた三人を明乃は写真に納める。
「「「終わったら写真見せてね~」」」
そう言うと明乃達は三人と別れて行った。
「珍しい写真が撮れたね」
「これでポイントになるんでしょうか……とにかく先を急ぎましょう」
そう言うと明乃達は道を進んで行った。
途中、高橋達が引っかかったギミックなどに驚かされたりもあったが、それぞれ写真を撮り続けていた。
折り返しの看板も撮影し、帰ろうとした時。茂みが揺れると茂みの中から五十六が姿を現した。
「わぁっ!!」
これに明乃も驚いた声を上げていた。
「なんだ、五十六かぁ~びっくりした~」
「こんな所に……」
「肝試しももうすぐ終わりだし、カメラもあと一枚残っているから撮っちゃおう」
フィルムのラストは五十六に決めた明乃。
帰路はお化け役のクラスメイトたちも脅かしては来ないだろうと判断していた。
「完全に一枚無駄にしましたね……猫相手にフラッシュは危ないので私が照らします。懐中電灯で……」
「ありがとう、シロちゃん」
こうして五十六を撮り、あとは開始地点に戻るだけとなった。
帰路の途中、明乃がふと思う。
「…あ、そういえばサクちゃん達とかに合わなかったね」
「きっとタイミングの問題でしょう」
そう言い、誰もわなかったと明乃が言い。真白はタイミングの問題だと言い、帰路についているとふと明乃が指さす。
「あれ?あれって……」
「?」
明乃の視線の先には二人組が先を歩いていた。てっきりサクラ達かと思ったが、どうやら違う。良く目を細くしてみると真白が驚いた声を上げた。
「っ!あれは……!!」
その姿を見た明乃達はギョッとなる。
自分たちと同じ服、髪型をしており自分たちの鏡写しを見ているようだった。目元は隠れているが、自分たちと全く同じ格好をしていた。
「うわぁぁあ!!」
「だ、誰……?」
思わず明乃がそう聞くと、その二人はこちらをクルリを向くと、明乃の格好をした方が口角を上げながら呟いた。
『見つけた……』
恐ろしいほどゾッとした恐怖を感じ、明乃は反射的に一目散に逃げ出した。
「わぁぁああ!!」
「ひゃぁぁぁあああ!!」
叫びながら逃げて行った。そしてそのまま二人は開始地点に戻り、高橋達と合流した。
明乃達が逃げて行った後、道で立っていた明乃達のドッペルゲンガーの近くの茂みでガサガサと音を立てて長澤達が顔を出した。
「お疲れ様でーっす!」
長澤がそう言うとドッペルゲンガーは頭を触るとそのまま茶髪と黒髪のカツラが取れ、中から銀髪と金髪が現れた。
「ふぃー、あっちぃな」
「そりゃ、夏ですからね」
そう言い、現れたのはサクラとケイリーだった。
やや汗ばんでいる彼女らに長澤は話しかける。
「いやぁ、流石にうちらの真似をされた時は怖かったですけどね」
「心臓に悪いです……」
そう言い、溜息混じりに榊原が言うとサクラがやや愉快げに言う。
「でも面白かったでしょ?」
「はい!まさかそっくりに変装しただけなのにここまで怖くなるなんて思いませんでした!」
そう言い、長澤は悲鳴をあげて帰っていた天津風・晴風ペア。そして驚かされた自分達を思い出していた。
肝試し開始前にサクラはドッペルゲンガーの様にイタズラでカツラと服を早急に準備し、まず最初に開始地点で問題が起こったと言い、長澤達を呼び出して脅かした。
そしてその後、事情を説明した後に長澤達もドッペルゲンガードッキリに賛成して彼女達の通るルートで待ち伏せをしていた。
そして案の定高橋ペアは悲鳴をあげて逃げていき、明乃ペアも同様に今までで一番肝を冷やしていた。
「まぁ、肝試しをやっているから心理的に音とかにも敏感に反応するからね。そこで自分達そっくりな人がいたら怖いに決まってんでしょ」
「そうですね。明るいのに驚きましたからね〜」
そう言い、長澤とサクラはそのまま帰り道を歩いていった。
「んじゃ、また明日ね」
「はい!結果を楽しみにしていて下さい!」
そう言うとサクラペアは長澤達と別れるとそのまま開始地点に戻って行った。
開始地点に戻ったサクラ達は先に帰ってきていた明乃達にドッペルゲンガーの一件で問い詰められたのは言うまでもなかった。
翌日
晴風寮にて昨夜の肝試し大会の結果発表が行われた。しかし、サクラ達は用事があってここには来ていなかった。
「さて、昨日行った肝試しの写真が現像できたのでこれから結果を発表したいと思います」
長澤がそう言うと、昨日参加したメンバーが昨日の感想を話していた。
「楽しみだね」
「私が勝っているに決まっているわ!!」
そんな風に話す高橋ペアに、長澤が発表を始める。
「まずは天津風チームの得点はこちら!!」
そう言い、表示された点数は210だった。
「いくつかマイナスポイントのお化けを撮ってしまいましたが、見つけにくい小ネタのビックリ箱などでそれなりに挽回した結果となりました」
そう言い、長澤は点数の詳細を語ると山辺が言う。
「頑張って探してよかったね」
「当然よ!!」
「続いて晴風チームの得点はこちらです」
そう言い、発表したのは250だった。
「いきなり負けているじゃない!?」
高橋がそう言い、驚くと長澤が話す。
「実はギリギリまで天津風が勝っていたのですが……この猫!!」
そう言い、長澤は五十六の写真を見せた。
「これが隠しボーナスの50点だったので、一気に逆転しました」
「やった!!」
「五十六か……完全に無駄だと思っていましたが……」
そう言い、真白はやはり明乃の運は良いんだと思いながら話を聞いていた。
「肝試しの写真で何で猫なのよ!?納得いかなわ!!」
そう言い、異議申し立てをする高橋に長澤は言う。
「そんな高橋艦長に朗報があります」
「えっ?」
「私はポイントを決めるために予めすべてのお化けと小ネタを把握していたのですが……実は高橋艦長が撮った写真の一つに私にも覚えのないモノが写っていまして……」
「えっ!?」
すると長澤は一枚の写真を見せた。そこにはトラップの横に映る白い影が映っていた。
「つまり、本物の心霊写真という事か?」
真白がやや冷や汗を掻きながら呟く。
「真相は定かではありませんが一応考えて実は万が一、本物の心霊写真が撮れた時のポイントも決めてあるんです」
「きみちゃん、そんなことまで決めていたの?」
「撮れたら撮れたで面白いと思いまして」
「そ、それでその写真は何点なの?」
「マイナス100点でした」
「ちょっと!!」
まさかの点数に高橋はまた叫んだ。
「あんた、さっき朗報って言ったのに何でマイナスなのよ!?悲報じゃない!!」
「まぁ、まぁ、こちらで決めていた本物の心霊写真の得点はですね、プラス100点かマイナス100点のチャンスボーナスだったんです」
そう言うと長澤は高橋に言う。
「だから、プラスで逆転の可能性もあったんですけど、今二択のクジを引いてみたらマイナスだったので……ざんねん」
「だったら、私に引かせなさいよ!!」
「心霊写真が足を引っ張る形になりましたね。幽霊だけに」
「何よ!?それ!!」
納得のいかないルールに高橋は終始怒鳴り散らしていた。
すると長澤は口を開く。
「しかし、みなさん惜しかったですね。せっかくドッペルゲンガーと言う飛び入り参加が居たのに……」
そう言うと高橋が長澤に問いかけた。
「そう!そうよ!あれ何だったのよ!?」
「あれは先輩方の飛び入り参加ですよ〜。点数で競わない代わりに驚かす方に回ったんです」
「何ですって?!」
長澤の告白に明乃達も驚いた声を出した。
「あれ、サクちゃん達だったんだ……」
「いつの間に……」
そう呟き、今までで一番怖かった体験を思い返す二人であった。
なお、高橋ペアの撮った心霊写真の解析をした所。それは木から飛び降りた多聞丸であった事がわかった。