六六話
二学期が始まる少し前、横須賀女子海洋学校のモンタナ寮ではある会議が行われていた。
「ーーーと言うわけで。今から会議を始めよう」
モンタナの教室でサクラは壇上に立ってホワイトボードに手を叩く。
「我々はこの度、晴風クラス。並びにシュペークラスと共同で映画を撮影をする事になりそうだ」
「「「……」」」
一瞬だけザワリとなるが、此処でルイーザが質問をする。
「艦長、何故映画撮影を?」
その問いかけにサクラは答える。
「実はね……」
そう言うと、サクラは数時間前の出来事を思い返しながら話した。
数時間前
晴風教室
「第一回、晴風出し物会議!!」
なぜか納紗に呼ばれたサクラは教室の隅で明乃の話を聞いていた。
「話は聞いていると思うが改めて……」
すると真白が詳しく内容を話し出す。
「近々行われる遊戯祭では、招待される他校の生徒やその他大勢の来客をもてなすために催し物が開かれる。我々晴風クラスも当然この催し物に参加する訳だが……」
すると柳原が要約をする。
「要するに祭りの演し物を決めようってんだろ?堅っ苦しい説明はナシ、ナシ!」
「こら、マロン。せっかく宗谷さんが説明しているのに……」
「いや、分かっているなら問題ない」
そう言い、真白は二人に言うと明乃が続けた。
「そう言う事だから何かアイディアがあれば提案してね」
そう言い、クラスメイトに聞くと早速伊良子が手を挙げる。
「はーい!やっぱり晴風といえば……晴風カレー!ウチのカレーをもっとたくさんの人に食べてほしいな」
そう言うと伊良子達は晴風カレーを出そうと提案をした。
「賛成」
「おっ、砲術長票が入ったぞな」
すると立石が椅子から勢いよく立ち上がり、両手を上げて言う。
「良いんじゃない?」
「無難といえば無難だよね」
「それなんだが……」
しかし、真白がそこで問題点を口にする。
「ちょっとした問題がある」
「問題?」
「〇〇と言えば〇〇カレー。これはどのクラスにも当てはまるキーワードだ」
「どのクラスにもこだわりのカレーがあるもんね」
「えぇ、その為出し物が被ってしまう可能性がある」
そう、時津風には時津風オリジナルのカレーがあるのと同じようにどのクラスにも確実に同じカレーがあるのだ。これでは歓迎祭ではなくカレーフェスタになってしまう可能性があった。
まぁ、カレーが好物である立石にとっては最高かも知れないが……
「まぁ、被るのを覚悟で提案してみるのも一つの手だが……できればそうなら無いものが良いと思う」
「そっかぁ……」
「ざんねん」
そう言うわけでカレーはひとまず保留という形で次に西崎が手を挙げる。
「はいっ!」
「メイちゃん、何かあるの?」
すると案の定と言うか、彼女らしい提案が出た。
「魚雷撃ち放題喫茶「却下」なんでーーーー!!」
「降りるわけないだろうそんな許可!」
そう言い、真白がツッコミを入れると西崎は真白に言い訳じみた様子で言う。
「大体その取ってつけたような
「大抵のことは語尾に喫茶をつければ丸く治るんだよ」
「収まるか!」
「(メイド喫茶でもあるまいし……)」
そんな西崎と真白の言い合いを見ながらサクラは内心そう吐くと、明乃がやや苦笑しながら言う。
「え〜っと…他に何かあるかなー?」
すると次々に提案が出て来る。
「ダウジング宝探しゲーム」
「それが出来るのはつぐちゃんだけだから…」
宇田と八木からは宝探しゲームが提案される。するとそれを元に新たな提案が浮かぶ。
「宝探しってのは面白そうだけどね」
「五十六探しゲームとかは?割と神出鬼没だし、『見つけたら商品ゲット!』みたいな」
「私たちやる事なくない?」
すると若狭が思わず口につぶやく。
「それに当日、食べ物の屋台が出てたら匂いに釣られて自分から出て来るでしょ」
「探す手間なく見つかりますね」
「ダメかー」
そんなこんなで良い案がないと思うと納紗が掛けていた伊達サングラスを外しながら言う。
「ふっふっふっ……」
「ココちゃん?」
「やはりここは…晴風全員参加の舞台演劇はどうでしょう!」
すると後ろにいたミーナがノリノリで言う。
「ふっふっふっ……面白そうじゃのう」
「ストーーーーップ!!ちょっと待ってくれ……」
「「?」」
思わずそこで真白がツッコミを入れると二人は不思議そうに首を傾げていた。
「どうしたんでしょう?」
「腹でも痛むのか?」
「(痛いのは頭……!!)」
そう内心思うと頭を回転させていた。
「(何故、当然の様にミーナさんが参加している!?いや…別に居て迷惑というわけではないのだが……)」
そう思うととりあえず出てきた単語を並べてミーナに聞いた。
「ミーナさんはどちらかと言うと招待される側では?」
「うん?」
するとミーナは少し納得した様子をしつつも、陽気に豪快に笑いながら言う。
「確かにワシは横須賀の人間ではないが……今更そんな水くさい仲じゃなかろう」
「ワシらはもう切っても切れない仲なんで……」
「わかった、わかった」
そう言い、真白は半分諦めた様子で軽くため息をつくと、明乃が思わずつぶやく。
「演劇かぁ……楽しそうだけどこれから準備して間に合うかな?」
「そうですね。何よりも私たちは素人……やるからにはミスは許されないが、それには練習にもだいぶ時間を使うだろう……なかなか簡単にはいかないぞ?」
「そうですね……」
そう、今度の歓迎祭でやって来るのは一般の人や他校の生徒なのだ。それはとんでも無い人数が観に来ると言うことはそれだけ出来高を期待されると言う事だ。どうするべきかと思うと、納紗が代案を持ち出す。
「じゃあ映画を撮るということで手を打ちます」
「んっ……!!…まぁ、代案があるのは助かる…… じゃあ、ストーリーを作ってきてくれ。出来るかはそれを見て判断しよう」
「了解です!ご期待ください!」
と言う事で保留となった後、明乃は知床に聞く。
「リンちゃんは何かない?」
「わ、私!?」
明乃は鈴に何かやりたいことはないかと訊ねた。
「あっ、イルカの写真展……とか?」
「イルカの?」
そう言い、知床はイルカの写真展を提案した。
「そう言えば海洋実習中に何枚かイルカの写真撮ったっスねぇ」
「うん、私も見た!」
Rats事件の際に航行していた期間のうちに何度かイルカに遭遇した彼女らは青木がスケッチの材料や宣材写真として撮影をしていた。
「だが、展示会となると量が少ないかもしれないな……」
「そ、そうだよね」
そう言い、展示会は却下となってしまった。
結果的にこの日は晴風クラスの出し物は決まらず、改めて後日話し合いを行われることになった。
「まだ何も決まっていないが……「(えっ、映画は!?)」まぁ、急に考えても難しいだろうから。今日はこのくらいにしておこう。この件はまた明日、改めて話し合う。それまでに各自、あるいは各科で話し合ってもらって良いから何か考えておいて欲しい。私も艦長と考えてみるが……」
「「りょうかーい」」
そう答え、全員が理解する中。翌日までにシナリオを提出してくれと真白に言われた納紗とミーナは……
「極道もびっくりのブラック案件じゃのう……」
「なあに、腕が鳴るわい」
そう言った様子でやる気は十分であった。すると納紗はサクラを見ながら言った。
「それで、この映画のためにサクラ艦長にご協力を願いたいのです!!」
「協力……?」
すると納紗はサクラにある要求をした。
「この映画の撮影のためにモンタナクラスが所有している銃をお借りしたいんです!」
「無理に決まっているでしょう。大体、日本人が拳銃なんて……」
「ですが、サクラ艦長達は拳銃の所持を認められていますよね?」
「ま、まぁ…ゴム弾なら……まさか?」
すると納紗は頷く。
「はい!是非、モンタナクラスの生徒に参加していただきたいのです!!」
「え、えぇ……」
こっちも歓迎祭の時に仕事があると言うのに……と思いつつも、人は通常よりも多いのでその分を回せばなんとかなるかと思いながら納紗の話を聞いた後にそのまま一旦保留という形でモンタナに戻る事にした。
「ーーーと言うわけで銃器を使えるうちらに話が回ってきたのさ」
事情を説明し終えると、まず全員が渋い顔をした。理由は簡単、モンタナクラスも出し物をする予定だったからだ。
「まぁ、ここでは自由参加とする。まだ、シナリオすら完成していないからな。おまけに軽火器を使用する際は色々と許可を取るのが面倒だしね」
そう言うとサクラはあくまでも自己申請で構わないと言い、いざと慣れば断ると話すとサクラ達は次の話題に映る。
「さて、我々が宗谷学校長より提案された計画を進めるにあたり。必要な物資の調達は完了した。後は訓練を始める」
「「「了解」」」
「当日の飛行ルートは……」
サクラはそこでプロジェクターで地図を写しながらホワイトボードにペンで印を書き出していた。
本当はアンタッチャブルとかフルメタルジャケットとかやろうかと思いましたけど、色々と面倒そうなのでやめました。