寮まで荷物を取りに行き、ケイリーに事付けをしたサクラはそのままモンタナから陸上に降ろしていたM274 ミュールに荷物を乗せて明乃達のいる公園に移動していた。
元々ヘリコプターに搭載する武装や甲板を移動するために乗せられた車両だが、ナンバープレートも載せているのでこうして公道でも走ることができた。
荷物を持って公園に戻るとそこでは既に設営し終えたテントがあり、サクラが寝袋と毛布を持ってテントに入った。
「あれ?寝袋が四つ……」
「あぁ、私も今日はここで寝るよ」
「えぇっ!!」
これで何度目かは分からないが、真白が驚いていると。明乃は嬉しそうにしていた。
「サクちゃんと寝るなんて何年ぶりだろう」
「ねぇ、本当に。懐かしいわ……」
そう言いながら寝袋を敷くと、サクラ達はそのまま風呂に入り。さっぱりした後に寝袋に潜り込んだ。
外では五十六、多聞丸、マシューの三匹の猫が先ほどスーの焼いた魚を食べ。焚き火の証拠隠滅をしていた。
テントの中では真白、スー、明乃、サクラの順で横になっており。サクラだけはテントの外に出ていた。どうやら家族と連絡をする為らしい。
寝袋に入った明乃は思わずスーに言う。
「お父さんやお母さんと一緒に来れば良かったのに……」
昼に父親を探していると良い、一人でテントに泊まっていることから。親は後から来るのだと思っている明乃は彼女にそう言うと、スーはやや悲しげでも慣れた声色で明乃達に言う。
「ママ病気、ズット病院二居ル。パパ、コノ国ノ何処二居ルノカ分ラナイ」
「「えっ?!」」
まさかの告白に明乃達は寝袋から起き上がる勢いで驚くとスーは此処に来た目的を明乃達に言う。
「パパト連絡ツカナイ……スーハ、パパノ事捜シテイル」
「そうだったのか……」
真白は驚いていると、明乃がスーに言う。
「私にできる事が有ったら言って、何でも手伝うよ!」
「アリガトウ」
そう言い、明乃は父親探しに協力すると言い、スーを励ました。
「じゃあスーは、ずっと一人で暮らしているのか?」
「NO 兄弟、沢山居ル。皆仲ヨシ!」
スーは一人慣れした動きから、ずっと一人で生きて来たのかと思ったが。どうやら兄弟がいるようで真白はホッとしていた。
「そうか‥‥」
するとスーはその洞察力か、声色か、真白達を見て違和感を口にする。
「ミケトシロモ仲良シ。…ダケド……昼ノ方ガモット仲良シダッタ。今ハチョット違ウ」
「そんな事は……」
その違和感に心当たりがあるから、反射的に真白は言おうとしたが。スーから小さな寝息が聞こえて来た。日本に来るまでの工程で余程疲労が溜まっていたのかもしれない。
そう思ったからこそ、明乃はやや苦笑気味に真白を見ながら言う。
「寝入っちゃったね、スーちゃん」
「ええ……」
そう言い、お互いこの空気をどうしようかと思いながら、真白はふとある記憶が脳裏に再生されていた。
あれは真白が小学生の低学年がそこらの頃だった。
真白の私室でベットに包まりながら涙目で幼い頃の真白が言う。
『今日は三人で寝るもん!!』
そう言うと、同じく真白の私室で横になって根性と書かれたTシャツを着て寝ている真冬が言う。
『困った奴だなシロは……』
『貴方がホラー映画なんか見せるから……』
そう言い、真霜が真冬に注意するように言うと真冬は反論した。
『見せてねえよ、シロがいきなり部屋に入ってくるから……』
『うぅ〜、ついてないよぉ……』
真白にとってはお決まりの台詞を言うと、真冬がちょっかいを掛けるような言い方で真白に言う。
『おいおい、あんなもんにビビってたらブルーマーメイドには。ましてや艦長になんかなれないぞ』
『なるもん!!』
そんな真白を見ながら真霜は励ますように真白に言う。
『ふふっ、真白は頑張り屋さんだから。きっといい艦長になれるわ』
『やった〜!』
「ふぅ……」
そんな思い出を思い返しながら真白は大きく息を吐く。
おそらく、入学初期にこの話を持ちかけられた場合、真白は即座に受け入れていただろう。だが、明乃や晴風クラスと過ごしたあの経験から。自分にはあの立場の方が似合っているのではないかと思う自分がいた。
自分は明乃のような思いがけない作戦を提案できる可能性は低い。どちらかと言うと自分は硬派と言うか、スケジュース通りに動くような体質だと思っているので明乃の様な作戦を立案できるとは思っていなかった。
航洋艦副長から大型直教艦艦長は大きな出世である。卒業後の就職に響くわけではないが、それでもステータスにはなり得た。宗谷家としての家の重さを認知していない訳ではない。幼い頃から母に家のことは気にしなくても良いと言われて育って来たし、そう言う役目は全て長女である真霜が行っていた。
艦長になって家の事を考えた方が良いか、このまま航洋艦に残って明乃達と過ごすか。
二つの感情が真白の中で渦めいていた。
早めに結論を出して欲しいと言う事だから、この遊戯会が終わるまでに結論を出さなければ行けなかった。
そう思い、胃が重く感じていると……
「…ウ……ン…」
横で寝ていたスーが寝相で真白の腕に抱き付いた。
「……ママ…」
「ふぇっ?!」
飛び出たまさかの単語に思わず驚いてしまうと、明乃は少し面白そうになりながら真白に言う。
「フフ、夢を見ているのかも?」
「そ、そうなのか?」
「きっとママの事を思い出しているんだよ。シロちゃん、頼りになるから」
そう言い、明乃は普段に真白の動きを思い出しながら本心で出た言葉を並べる。
真白はそんな明乃に驚きつつも、その成果はほとんど明乃のおかげであると言おうとした。
「私は、そんな……」
「シロちゃん、本当に頼りになるから。…でも……」
「あっ‥‥」
するとやや空元気な声で明乃は真白に言う。
「私たちシロちゃんが居なくても、しっかりやらなきゃね!」
すっかり真白が比叡の艦長になる方針で進んでいる事に真白は反論しようとした。まだ決まったわけではないと。ただ、これだけの大抜擢に飛びつかない人は居ないから、明乃は真白が居なくなることを覚悟していた。だから言い出すことができなかった。
「ホントはね、私‥‥」
「……えっ?」
明乃の最後の一言が聞き取れず、疑問に思っているとそのまま明乃は真白に背を向けなが寝袋に入った。
「おやすみ……」
そう言うと明乃は寝てしまい、真白は半ば消化不良のままテントの明かりを消していた。
同じ頃、公園の柵に寄り掛かるように背を預けていたサクラはイヤホンを付けて通信をしていた。
相手は、自分たちのある意味での上司であり、父のモーリスだった。
「……では、デフコン3を発令するのですか?」
『あぁ、海上安全整備局に通達も行う。明日には日本にも連絡が行くだろう』
「はぁ、日本のブルーマーメイドに怒られそうですね」
そう言うとモーリスはやや疲れた声で言う。
『仕方あるまい。これは西太平洋の安全保障に関わる重大事項だ。おまけに要塞が移動し、日本の管轄海域に侵入した場合の事を考えれば……』
「いっそ公表した方が国際的批判も収まる…ですか」
『その通り。フィリピンの管轄海域を抜けて仕舞えば、あとは日本と一部諸島連合国しか残っていない。あの要塞を止められるとは思えないが、何もしないよりはマシだろう』
フィリピンの沿岸はアメリが軍がどれだけ激しく軍事行動を起こしても条約によって咎められることは無いが、日本の場合は別だ。事前に情報を公開した方が、いざとなった場合に管轄海域で攻撃を行なっても国際的批判はまだ収まると言う考えだった。
『今の要塞の状況は襲撃班に刺激させぬ様、極秘裏に通達する』
「ええ、了解」
元々解体屋送りのデカブツで尚且つ、巡航ミサイルの登場で戦術的価値も消え失せた要塞を今更隠す必要もないと言う訳で、モーリスの意見にサクラは反論する事もなかった。
「では、要塞が動き出せば。我々モンタナに召集命令が降ると言うことでよろしいですか?」
『あぁ、それで構わない。既にグアム島から高速輸送艦を送った。明日には横須賀沖に到着するだろう。その際、ミサイルを搭載する』
「了解しました」
予定を聞き、サクラは了承するとそのまま連絡を切り、テントに戻った。
競闘遊戯会ですら満足に楽しめなくなるなんて……と思いながらサクラは灯の消えたテントで、明乃達を起こさないように慎重に寝袋に入った。
翌朝早朝、サクラは習慣的に六時に目を覚ます。いつもであれは此処で日課のランニングや筋トレをするが、今日は遊戯会がある。開始時刻は九時から、準備諸々含めると一時間前には会場入りした方がいいので、サクラはスーを起こさないように明乃と真白を起こす。
「ミケちゃん、真白さん。朝よ、遅刻するわよ」
「んん…もう朝ぁ……?」
「…は…い……」
ゾンビのように起きながら二人は目を覚ますと、二人はテントを出る。
「ふっ!あぁぁああああっ!!」
「目がぁあ……!!」
明乃は太陽光を浴びて腕を伸ばし、真白は某大佐のように目元を覆って呻き声を上げた。
そんな二人を見ながらサクラは二人に水入りバケツを持ってくると二人はそれを使って顔を洗い、目をぱっちりと覚ましていた。
スーには朝ごはん用におにぎりとお茶を置いていくとそのままサクラ達は寝袋を片付けて移動する。
「さ、行こうか」
「うんっ!」
「はい」
そう言い、二人は車に乗り込むとそのまま会場へと向かっていった。
まさか車で来ているとは思っていなかったようで、明乃達はやや驚いた様子だった。
そして一時間後。
「………っ、Good mornin……!!」
目を覚ましたスーは腕を伸ばすといつの間にかいなくなっていた明乃達に一瞬驚きつつも、目の前に置かれた朝食を見た。
「Thank you。シロ、ミケ、サク」
そう言い、スーはテントを片付けるとそのおにぎりを口にする。
「はむっ!!」
そして朝食を食べながらスーは持っていた小型タブレットを持って地図を開いた。
「OK、行こう。はーむっ!」
そう言うと、スーは目的地に行くために準備を始めた。
ブルアカがレジェンズコラボと聞いて歓喜狂乱の毎日。