試合が行われている水上無差別合戦の一角で、サクラ達もウレタンソード片手に他校生を倒していた。
「くそっ、なんてデカさだ…!!」
そう言い、佐世保や舞鶴の生徒は目の前で立ちはだかるケイリーの身長に圧倒されていた。
そりゃそうだ、身長が180センチもあるケイリーはこの中では一番無双していた。接近戦だとウレタンソードを握られてそのまま風船を破られると言う、高さというブランクがあった。
だからと言って接近せず離れていても攻撃は無理だった。おまけに…
「うわっ?!」
「きゃあっ!!」
モタモタしていると足元に滑り込んだサクラの素手の攻撃で水風船が破られてしまう。
と言うか、モンタナクラスも何人か制圧したのにこの二人が異次元に強すぎたのだ。
「さぁ、後何人だい?」
一気に四人を制圧したサクラはまだ生き残っている生徒達の数を数えていた。
その頃、会場の一角では野間と万里小路がウレタンマットの端に追い詰められていた。
「全周目標…ですね……」
敵の数を見ながら万里小路が呟くと、佐世保の生徒を筆頭に接近戦を仕掛けてきた。
「っ!たぁ!!」
「やぁ!!」
一斉に切り掛かってくる相手に万里小路は目を大きく開けると野間は万里小路の体を持ち上げて大きく回転した。
「はぁぁっ!!」
そしてその技を見て観客席から内田が呟いた。
「あれは幻の合体技、竜巻サイクロン!」
「は?」
少なくとも初めて聞く技名にガチトーンで疑問に思うと、山下が解説をした。
「高速回転の遠心力で破壊力は通常の四倍!!風による追加ダメージで更に四倍!!合わせて十六倍!!接近する相手の動きも鈍らせる!!まさに攻防一体の必殺技!!」
「っ……恐ろしいぞな!」
そう言い、説明を聞いた勝田はやばそうな技を聞いて思わず息を呑んでいた。
一方、主戦力である野間達とは違い、等松達は苦戦を強いられていた。
「うわあっ!ヤバいわ、これ!」
「バトルロイヤルですからね!生き残る事が重要……」
斬撃を避けながら広田が答えると、柳原が妙案を思いついた。
「うわっ!てことは……逃げるが勝ちだい!」
「逃げるって何所に?」
駿河の言う通り此処は逃げ場がない。海に落ちれば失格な為、どこに逃げても敵がいる状態だった。
そんな中、納紗はと言うと……
「そっちとは、やり合いとう。なかったわ!」
「そがな極楽。この世界にはありゃあせんで……取るか、取られるかよ……」
といっていつもの極道トーンでミーナと話していた。
「ふっ…」
「ふん!はあっ!」
しかし遊び半分だった納紗に対し、ガチで風船を割りに来たミーナに納紗はトーンも消えて慌てて逃げ出していた。
「うわぁっ!きゃあ!本気ですね!!これは!!」
そして、野間、万里小路、黒木の攻撃側が集まって一旦小休止をしていると……
「マッチ〜!」
「「「?」」」
すると野間は等松の声のした方を見た、
「助けて〜〜!!」
等松達は後ろに多くのお友達を引き連れて野間達の後ろに隠れた。
「はぁ~これで一安心だな!」
「この三人がいれば鉄壁の守りですよ!」
そう言い、柳原と納紗が安心した声でそう言うと。黒木がそこで注意を入れた。
「ちょっと貴女たち、此処は……」
その瞬間、
「おっわわわわわ‥‥」
柳原が足を滑らせて転げ落ちそうになり、それを助けようとした野間や他の晴風クラスも巻き込まれそのまま真っ逆様に海に落ちていった。
「ウレタンマットの…端‥‥」
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」」」
そのまま全員が海に落下してそのまま失格判定となった。
「駄目だ……」
「あははは……」
自分のクラスのコントのような最後を見て。真白は呆れて、明乃は乾いた笑みを溢してしまった。
「ミケ、シロ。今ハ夜ヨリ仲ヨシカ?」
「「えっ?」」
声をかけられた方を見ると、そこにはスーが立っていた。
試合後、昼食の時間となり。スタジアムの一角で晴風クラスは伊良子達の作った弁当を食べていた。
「にゃ〜お?」
多聞丸や五十六が分けているのを眺めながら晴風クラスは食事を摂っていた。
「……美味しい」
そんな中、一口。ハンバーグを食べた美波が感想を呟くと、伊良子が皿を持ちながら鏑木に聞いた。
「美波さん、ハンバーグまだたくさんあるよ」
「肉じゃがも作ってきたから」
「どんどん食べてね」
まだまだ育ち盛りの美波に杵崎姉妹はそう言うと、鏑木がこの環境を見て嬉しそうに答える。
「楽しい…これこそ,和気藹々……」
「美波さん、飛び級でずっと忙しかったから。こんな風にご飯食べるのは初めてなのよね?」
「ああ、代えがたい喜びを感じる」
そう言い、鏑木は飛び級故の苦労を呟き。おまけに研究所で缶詰生活を送っていたのを思い返しながらこの弁当の旨さを噛み締めていた。
そう言い、盛り上がっている中。若狭が明乃と真白の間にいる見知らぬ少女を見て問いかけていた。
「ねえ、艦長。その子誰?」
「え?」
すると明乃はスーの事を皆に紹介していた。
「あ、スーちゃんだよ。私とシロちゃんの友達だよ」
そう言うと駿河がそんな彼女を見て誘った。
「OK!じゃあ一緒に食べよう」
そう言うとスーは目を輝かせて渡されたおにぎりを手に持つ。
「オオー、タベテイイノカ?はむっ…はむっ…はむっ…」
「凄い食欲ぞな!?」
その食べる速度から勝田達が目を丸くしていると、
「名前、スーちゃんって言うの?」
「ウン!!」
「何処から来たの?」
「外国!!」
山下の問いかけに元気よく答えるスー。そんな彼女を見ながら内田が自己紹介をする、
「私たちはね、海洋学校って言って、船乗りの勉強をする学校の生徒なの!」
「オー!!皆、船ノ学校ノ子カ!?」
そう言い、スーは立ち上がりながら驚いていると伊良子が言う。
「そうだよ!で、私は艦のコックさん!」
「ハハッ!スーハ、コックサン大好キ!!」
そう言うも、そこで和住にツッコミをかけられる。
「フフフ……と言うか、食べるのが大好きなんじゃないの?」
「ソウトモ言ウ!!」
「「「ハハハ……!!」」」
するとそんな和住のツッコミに笑いが巻き起こった。
「スーハ船モ大好キ!!スーノ国デハ船ノ仕事シテタ。Sight seeingノゲストヲ乗セタリ大キイ船モ動カスヨ!」
「まだ小さいのに大したものだ」
鏑木がそう言うと、スーが彼女の横に近づくと手を横に移動させながら言った。
「スーノ方ガ大キイ!」
「ぐっ……!!」
鏑木は自分よりも年下か同年の子供に負けた気分となり、思わず声を漏らしてしまっていた。
そしてまた笑いが起こる中、真白は席を立ってそのまま移動をしていた。
そんな真白を見て思わず明乃も途中まで追いかけるが、そこで足を止めてしまった。すると後ろからスーに不思議そうに声をかけられた。
「ミケ、何デ行カナイ?」
「えっ?何でって……」
「ミケハシロト一緒ガイインジャナイノ?」
そんな子供らしい純粋な問いかけに明乃は少し間を置いた後に呟く。
「私は……」
「?」
「……私は今、やりたい事をやれている……シロちゃんや皆のおかげで……だからシロちゃんにもやりたい事をやって欲しい……」
そう言うと遠くに離れていく真白を見る。そんな彼女を見てスーは納得したように明乃に言う。
やはり働いていると言う事で、こう言った人間関係には敏感なのかもしれない。だから、昨夜もスーは明乃達の関係に違和感を感じたのかもしてない。
「ソレガミケノ気持チ……ダッタラ、気持チノ通リニスレバイイ」
「うん‥‥そうだね‥‥」
そう言うと、明乃は離れていく真白をそのまま遠くから眺めていた。
昼食時、第一試合の賭けで勝ったクラスメイトが巻き上げたデザートで大盛り上がりしている中。試合が終わって士官服に着替えたサクラは常に付けているイヤホンに連絡が入った。
「?」
そしてそのまま携帯の画面を見ると相手はもえかからだった。
「悪い、ちょっと友人の所に行ってくるわ」
「ん、行ってらっしゃい」
「任せるわね」
そう言うとサクラはもえかと落ち合うために校内を歩いていた。
そして校舎の前で立ち止まると、そこでサクラはもえかと顔を合わせた。
「どうしたの?いきなり呼び出して」
「あぁ、ごめんね。少し、気になったことがあって……」
そう言うと、もえかは午前中に真白に聞かれた事について話した。
「なんか、いつになく真剣でね。何があったのかなって……」
「ふむ……それはちょっと臭うね。まぁ、あらかた予想はつくけど……」
「何?」
「まぁ、真白さん辺りに異動要請があったんじゃ無い?大方、代理で艦長か何かを務めて欲しいと言われたんでしょう」
そう言うと、サクラは予想をしながら普段からよく口に咥えているシガレットを取り出すと、一本もえかにも渡しながら呟く。
「『貴方にとっての艦長』……ねぇ」
「サクちゃんはどう思っているの?」
施設にいた頃はよく明乃の目標は聞いていたが、そういえばサクラの意見は聞いたことがないなと思い。思わず聞くと、サクラはこう答えた。
「ミケちゃんやモカちゃんがお父さんやお姉さんなら……私はお母さんかねぇ……」
「お母さん…あぁ、確かに。今のサクちゃんらしいかも……」
「そう言ってもらえるのは嬉しいねぇ……」
そう言いながらシガレットを齧ると。サクラはその意味をもえかに言う。
「私は、船の母さんになったら。中で起こっているすべての問題を受け止めて考えてアドバイスを出してあげる。そんなところかなあぁ……」
「実にサクちゃんらしいね。サクちゃんが私たちのお姉さんになるって言った時みたい……」
そう言うと、サクラ達は校舎の隅でシガレットを食べながら空を眺めていると、ふとあの時の光景が脳裏に甦った。
今でも鮮明に思い出せるあの時の約束。あの日は丁度流星群が空を飛んでおり、流星が時々流れていた。
秋の澄んだ空気の上で、三人は互いに約束をし。共にブルーマーメイドになると誓いを立てた。
一時はバラバラになってしまうも、こうしてまた会えたのは何かの巡り合わせなのかもしれない。
天文学的な割合の中から、こうしてまた会えた奇跡に、サクラは内心嬉しく思っていた。