サクラ達が校舎で話している頃、ブルーマーメイド関係者のテントでは真霜が携帯に届いたメールを見て、やや驚きの表情となった。そしてその後険しい表情となり、真霜は弁当を置いてそのまま席を立った。
そして真雪にも声をかけ、他の隊員達も集めて移動をしていた。
「……あっ、連絡だ」
「?誰から?」
校舎で携帯を見ると、そこでサクラの顔が一瞬だけ険しくなった後、届いたのだろうメールを読んだ後。もえかに言った。
「ごめん、ちょっと連絡が来てね。戻らなくちゃ、ごめんモカちゃん」
「あ、うん。良いよ全然。…またね、サクちゃん」
そう言うとサクラはイヤホンをしたまま校舎を早歩き出ていくと、そこから別方向で入れ替わるように真霜達が歩いてきた。
もえかはそこで敬礼をするも、真霜達は敬礼する事なく通り過ぎていった為。もえかはそこで不審に思っていた。
スタジアムを後にし、校舎前に来た真白はそこでやや大きめにため息を吐くと。そこで声をかけられた。
「シロ!」
「えっ?」
咄嗟に真白は振り向くと、そこにはスーが立っていた。
「トイレ何処?」
「あぁ、中に入って右だ」
そう言って校舎を指さすも、一向に動かないスーを見て真白は疑問に思った。
「何だ?トイレに行くんじゃないのか?」
すると彼女は真白に問いかける。
「シロは……此処二何ヲシニ来タ?」
そう問われ、真白は思わずどうしようかと思いながら答える。
「此処に…私は……何をしに来たのか……」
そう言いながら校舎を見る。
入学した当初は『家族と同じ、優秀なブルーマーメイドになる為』と自信満々で即答だっただろう。
だが、自分の硬派な作戦立案や。判断力の低さから、やはり今のままの方がいいのでは無いかとも思ってしまう。柔軟な提案ができる明乃の提案を聞きながら、自分の意見と折り合わせて計画を練った方がいいのではと思っていた。
「シロハ、何ガシタイ?」
「…何がしたいのか。決めないとな……」
制限時間は遊戯会が終わるまで、それまでに答えを出さなければならなかった。
「ミケハ、シロノヤリタイ事。分カッテイルミタイ!」
「えっ?」
するとスーは距離の置いた明乃の言葉を真白に伝えた。
「シロガヤリタイ事ヤッテホシイッテ。言ッテタ」
「…そうか……スーは、やけに私たちの事気にかけてくれるんだな?」
そう言うと、スーはその理由を真白に言う。
「当タリ前!ダッテ一緒ニゴ飯食ベタシ、寝ル時モ一緒ニイテクレタ!モウファミリート同ジ!」
そんな常に陽気な彼女を見ながら真白は微笑ましく思いながら言う。
「フフフ…そうか……スーのお父さんも早く見つかると良いな。家族は一緒にいるのが良い……」
「モウ直グ見ツカル」
自信ある言い方に探偵でも雇っていたのかと思いながら真白はスーを見る。すると遠くからアナウンスが聞こえた。
『間もなく午後の部を開始します!学生の皆さんは会場に集合して下さい!』
アナウンスが響き渡り、少し間ができるとそのままスーは真白に手を振りながら言う。
「スーハ行ク」
「えっ?」
「シロ、バイバイ!」
そう言うとスーは校舎から離れていき、真白はその後呆然と立ち尽くした後、スーの消えた方を見ながら呟いた。
「……トイレじゃなかったのか?」
その様子を黒木が低木の影から心配そうに眺めていた。
同じ頃、スタジアムで昼食の片付けをしていた明乃にサクラが声をかける。
「ミケちゃん」
「あっ!サクちゃん!!」
突然の訪問に明乃は驚きつつも嬉しそうに答えると、サクラが明乃に聞いた。
「ねぇ、ミケちゃん。スーちゃん見なかった?」
「え?スーちゃん?さっきまで此処にいたけど……」
「そう……」
そう呟き、軽く深刻な目をしており。何があったのかと思わずサクラに聞いてしまう。
「何かあったの?」
「ん?あぁ、いや。ちょっとスーちゃんに用事があってね……此処にいないなら仕方ないや。ごめんね」
そう言うと、サクラはスタジアムを後にしていた。その時の顔が、少し焦っているようにも見え。明乃は少し嫌な予感を感じていた。
スタジアムを出たサクラはイヤホンのマイクに手を当てて捜索に出ている主計科の面々に聞いた。
「見つけた?」
『いえ、校舎を探していますが。見つかっていません』
報告を聞き、サクラは目を閉じて校内図と捜索範囲を照らし合わせて居た。
「(情報から確実にスーが来ていたことは確実なのだが……)」
競闘遊戯会中は、横須賀に接岸した猿島フロートに一般人が出入りできるので問題はないのだが。サクラ達は事情を知っているが故に少しだけ焦って居た。
少し考えた後、サクラはイヤホンに向かって指示を出して居た。
「見つけ次第、直ぐに彼女を
『『『了解』』』
そう言うと、サクラはもしかしてと思いながら午後の競技会場である学内の講堂に向かって行った。
『午後は図上演習の競技を行います。個人競技なので、参加希望者は本部に申し出て下さい』
午後は図上演習競技という、言ってしまうと大きな将棋のような演習である。元々は兵棋演習を近代化させた様なもので。日本海軍の伝統的な競技であった。アメリカではもっぱらチェスで代用されているが、日本ではこうして大規模な艦隊戦を模して行われて居た。
「やはり暗黙の了解で、どのクラスも艦長がエントリーするみたいですね」
「毎年そうらしいわね。指揮能力がモロに出る競技だし……」
参加者を見ながら納紗が呟き、等松はその理由を呟く。この演習競技は自分で艦隊を動かし、サイコロを振って勝負が決まる、より実践的な物のため、どう対処するかも自分の腕次第と言うわけだ。
その為参加するのは宮里や阿部、千葉などの普段から艦の指揮を行っている艦長の方がやり易い利点があった。
そして多くの生徒がエントリーする中、会場にサクラが入ってきて帽子を脱いでいた。
「お疲れ、どうだった?」
「いや、全然見つからなかった」
そう聞き、ケイリーは疑問に思いつつも苦労を労う様に言った。
「そう…じゃあもうどこかに行っちゃったかもね……」
「あぁ、全く…襲撃犯は何を考えているのやら……」
そう呟くと、講堂の出入り口に一番近い外側の椅子で、並んで座っているモンタナクラスはサクラの言葉に少しだけ警戒をして居た。
同じ頃、晴風クラスの座る席では。真白が覚悟を決めた様な目で席を立ち上がって明乃を見た。
「艦長!」
「んっ?」
すると、真白は明乃にあるお願い事を伝える。
「艦長、お願いがあります!」
「……」
すると真白は一度息を整えると明乃に言った。
「私は図上演習競技に出ます!」
「「「えっ?」」」
後ろでクラスメイトが驚く中、真白は続けて言う。
「艦長も出て下さい!出て、私と勝負して下さい!」
「「「ええ!?」」」
真白のお願いに、明乃は間も置かずに答えた。
「うん、分かった!」
「「「えぇ〜っ?!」」」
明乃は真白がこの試合で決着をつけるのだろ確信した上で、この挑戦を受け入れた。これでもし真白が勝てば書き後も決まるだろうと言う思いからだった。
そして二人は古庄の元に行き、エントリーを済ませるのであった。
明乃と真白がエントリーをして周りを驚かせている中、会場の一部でもえかは真剣な表情をして考え事をしていると、横にいた角田から声をかけられる。
「艦長!エントリーされないんですか?」
すると、そんな角田にもえかは答える。
「私はパスするから。出たい子は自由に出て」
「えっ!?よろしいんですか?艦長なら優勝が狙えると思うのですが……」
もえかの頭脳であれば、優勝を狙えると思って居たが。当の本人にやる気がないことに驚きを隠せて居ない様子であった。
そしてもえかは会場を後にする様に歩くと、そのままある場所に向かって行った。
「(サクちゃんや、モンタナクラスが慌てて学校中を走って居た…誰かを探して居た可能性があるとして。ブルーマーメイドのあの慌てた異常な様子……)」
今まで見た光景をまとめながらもえかはある推測をして居た。
同じ頃、横須賀の岸壁の上を走る影があった。
それはスーで、彼女の頭にはどこから持って来たか分からないゴムボートがあり、背中には小型エンジンを背負っており、岸壁のある場所に着くと。スーはゴムボートを海上に落として、そのまま船に乗り込んだ後。背負って居たエンジンを取り付けるとそのまま海上を進み始めた。
進路方向には午前中にレースで使用した廃棄予定のフロートが停泊して居た。