ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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七五話

現在、午後の部のメインイベントである図上演習競技が行われている講堂では、高橋と千葉。榊原と阿部がそれぞれ試合を行って居た。

三台置かれた機器の上でパネルをタッチして艦隊を動かしている中、真白はあの宮里と対戦をして居た。

 

「一回戦目から、いきなり大和の艦長に当たっちゃうなんて……やっぱりついていないね、うちの副長」

 

西崎がそう呟き、試合相手を見ながら呟く。真白の不運体質は有名だが、ここまで来ると最早誇れるような気もしてしまう。

試合が始まり、最初に宮里から戦艦の砲撃が行われ、サイコロが攻撃命中を示すと。そのまま真白艦隊の駆逐艦に直撃し、一隻が轟沈判定をなった。

 

「回避失敗?!」

「筋金入りのついてなさじゃな……」

 

初手で艦艇を失い、撃つ間も無く沈められた事に思わずそんな言葉が飛び出てしまうと、ミーナの横に座っていたテアが真白を見て言う。

 

「…人は誰しも不運が続くと闘争本能が衰えるものだ。しかし……」

「「「うん?」」」

「あれは諦めている人間の顔ではない」

 

そう言い、テアは会場でまだ真剣な眼差しをしている真白を見ながらそう答えていた。

 

「(ついてないことは、最初から分かっている……だったら、それも織り込み済みで策を考えるだけだ!)」

 

元々、不運体質な関係から。こういう事には慣れていた真白は負ける事に怯える事なく、対処をしていた。

自分はここで負けては笑い物だ。周りからは『運が悪かったから』としか言われないが、それでは自分がこれに参加した意味を失ってしまう。

だからここで負けるわけにはいかなかった。

 

「ん……」

 

パネルを操作し。艦隊を駆逐艦に先行させて動かし、宮里は接近してくる艦隊に前を航行する駆逐艦に主力艦で攻撃をする。

そして駆逐艦をまた一隻沈め、周りから歓声の声が出る中。真白のみは平常心を保っていた。

 

「あっ……」

 

そんな真白の違和感に、宮里はそこで冷や汗を掻く。

接近してきた真白艦隊はこのターンで、至近距離での砲撃を行い。ここで駆逐艦、重巡洋艦を沈め。戦艦にもダメージを与えていた。

 

「ん!?」

 

一気に主力艦を失い、会場にいた全員が驚きの声を上げる。

 

「「「あっ」」」

 

皆が艦隊が分断されたと思っていた構図が、実は主力艦を接近させ、確実に勝つための作戦だったと気づいた時。知床が思わず呟く。

 

「こ、これって、もしかして、ちょっと盛り返している?」

「ああ、幾度もの不運に見舞われながら、損害を最小限に食い止めて反撃できる形を作った」

 

真白の策に気付き、慌てて宮里も近くにいた駆逐艦を沈めるも、反撃の一手で深傷を負った宮里艦隊はまともな反撃が出来なくなっていた。

そんな一気に変わった戦況を見ながらテアは話す。

 

「図上演習は現実の海戦を模倣したもの…運、不運が勝敗に大きく影響するが、それで全てが決まる訳ではない。大和の艦長は攻めっ気を誘われたな。不運が功を奏したとも言える」

 

そう言うと、宮里艦隊最後の戦艦に真白艦隊の雷撃が加わり、撃沈判定を受けた。

 

『宮里対宗谷、試合終了!……勝者、宗谷!』

 

そんな大逆転のアナウンスと共に会場から大きな驚きの声が上がる中、宮里も驚きの声をあらわにしていた。

 

「こんな事が……!!」

 

そう漏れてしまうが、真白は試合が終わった後も礼儀をして宮里に頭を下げた。

そして宮里もそんな真白に頭を下げると、不思議そうに言った。

 

「やられたわ。でも不思議ね、何で貴女みたいな子が航洋艦の副長なのか?」

 

ここまでの技術を有していて、航洋艦の副長というはっきり言えばパッとしない職をしているのか。純粋に彼女が疑問に思った様子であった。

 

「いえ、そんな……」

 

まさか入学試験のミスで大コケしたなんて言えるはずもなく、会場の一部からは『やはり、宗谷家は宗谷家なんだね』や『やっぱり、優秀なんだ』といった声も上がっていた。宮里が会場を出ていく中、真白は考えて居た。

 

「(もし、最後まで…勝ち続けることが出来たなら……)」

 

そう思いながらトーナメント表に載る岬明乃の文字を眺めた。

 

 

 

 

 

同じ頃、横須賀沖合では。フロートに取り付けられたタグボートにスーの乗ったゴムボートが接近し、彼女が乗り込んでいた。

そしてそのまま操縦席に移動すると、彼女は船用の無線機の電源を入れて無線を繋いだ。

 

フロートの機関は?(How‘s the float’s engines?)

いつでも行けるぜ(All ready standby.)

 

そう言い、無線機越しに男らしき声が聞こえるとスーが指示を出して居た。

 

じゃあ、速力は三節で、(So set her to three knots) 行き足がついたら止めて。(and stop engine) 私がタグボートを止めたら、(After I stop the tugboat) フロートも少し後進をかけて止めて。(have the float move dead slow astern.)

了解(Aye.)

じゃあ、始めよう(Then Let's began.)

 

そう言うと、スーはタグボートを動かして縄で繋がれたフロートを動かし始めて居た。

水先案内人として仕事をしている彼女にとってこれは簡単なことなのだろうが、日本の法律ではこれは立派な違法行為であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

講堂内で何度かの試合が行われ、ついに決勝戦が始まった。

 

『それでは、図上演習競技の決勝戦を始めます』

 

アナウンスと共に真白と明乃が会場でパネルを操作し始めた。まさか同じ艦艇の生徒同士での戦いなんて誰が思っただろうか。

競技には多くの経験が多い先輩もいたが、それを打ち破ってのこの決勝である。

 

「シロちゃんは残ると思っていたよ」

「私も、艦長が残ると信じていました」

 

パネルを操作する中。明乃と真白はそう言いどこかわかって居た様にも話して居た。

そして素早くコマンドを入力し、初手は明乃の攻撃で真白艦隊の駆逐艦を最初に落として居た。

 

「「「おぉ〜!!」」」

 

一発目の撃沈で驚きの声が上がる中、観客席にいた柳原が唸る。

 

「うちの艦長と副長で決勝戦とはなぁ……」

 

そう言い、まさかの展開に思わず声が漏れてしまうと、山下がそこで思ったことを口にする。

 

「でも、あの二人はまるで、こうなる事を分かっていたみたいな雰囲気だね」

「いや、まさか…そんな……」

 

でも、試合前に戦って欲しいと言って居た真白達は実際こうして戦っている。それは互いの実力を加味してのことだったのかと思いながら試合を見ていた。

 

「で、どっちが勝つぞな?」

 

そんな中、どっちも勝ちそうな雰囲気に勝田が気になった様子で二人の間に入って聞いてきた。すると、八木がいつも持っているダウジングバーを持ち出して言った。

 

「これで予想してみる」

「……」

 

いつも通りのやり方だが、いまいち信憑性に欠けると思う宇田であった。

 

 

 

 

 

同じ頃、二人の試合を見て居た古庄と真雪は試合を見ながら真雪に感想を述べて居た。

 

「宗谷真白も知名もえか、岬明乃と並んで指揮官の素養を十分に備えていますね」

「……」

 

真白とて宗谷の血を継ぐ者。入学当初、点数だけ見ればギリギリだったが、ミスさえして居なければ主席も狙えたのだ。その力を此処で存分に出せていると思いながら真雪は試合を観戦している。

能力自体で言えば真白はもえかや明乃と同じく高いレベルで纏まっており、三人の中でも突出して不幸が強いと言うだけなのだ。

そう思うと、真雪の携帯が鳴り、画面を見て思わず驚いた声が出てしまった。

 

「……っ!!」

 

そしてそのまま携帯を持つと、古庄を置いたままどこかに移動して居た。

 

 

 

 

 

ブーッ!ブーッ!

 

同じ頃、サクラの携帯が鳴り、サクラは画面を見ると途端に険しい表情になった。それを見てケイリーはまさかと思っていると、サクラはケイリーに言う。

 

「招集命令。機関科に連絡を入れて、出航準備よ」

「了解……」

 

招集命令と聞き、一斉にモンタナクラスは席を立って走って会場を出ていく。近くにいた生徒は一斉にモンタナクラスが出て行ったことに何事かと思いながらも、白熱する試合に直ぐに視線を戻していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……ん?」

 

真白達の試合を見て居たテアは、会場から一斉に出ていくサクラ達モンタナクラスを見た。こんな時に不自然だと思っていると、艦長であるサクラを見て、その目がとても厳しい者であるのが窺え、テアは少しだけ警戒した目をして居た。

そんなテアを見て、ミーナも出ていくサクラ達を見てやや不思議に思って居た。

 

 

 

 

 

「艦長!もし私が艦長に勝てたら、その時は……」

 

試合中、コマンドを打っている真白が相手である明乃に話しかける。

 

「うん……分かっているよ。シロちゃん」

「だから、絶対。手は抜かないで下さい」

 

そう、注意する様に明乃に言うと、彼女は空回りしている様な声で答える。

 

「勿論だよ。そんな事をしたら、シロちゃんには直ぐばれちゃうし……」

「そうですね……」

 

此処までずっと同じ場所で生活してきたが故に相手の事を細かく知っているから、お互い出せる本気で試合をして居た。

現在は拮抗状態で、互いに失った艦艇数も同じであった。

サクラ達が会場から消えているとは気づかずに二人は試合を続けて居た。

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