ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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七六話

「状況は?」

 

講堂を出て校長室に入った真雪は真霜と連絡を取って、報告を聞いていた。

 

『北緯26度、東経135度付近の洋上で試験運用されている水精製プラントが、海賊に占拠されたわ』

 

真霜の報告を聞いて前に聞いていた噂のあの実験艦の事かと思い返しながら聞き返す。

 

「確か、植物栽培と人口タンパク合成ユニットが付いている。自己完結型の……」

『そう、プラントの技術者は全員人質にされている』

「やっかいね……」

 

技術者を人質に取られている以上。船を沈めると言う選択が失われ、突入するか交渉するしか方法がなかった。

地盤沈下した日本において、この合成タンパク質は国家存亡にも関わる重大なプロジェクトで、すでに多大な資金が注がれていた。

そんな貴重な実験材料と優秀な技術者を失いたくないために交渉があれば日本は確実に応じることになるだろう。

すると真霜はさらに厄介な情報を真雪に伝える。

 

『それだけじゃないの。南シナ海でモスボールされていた海上要塞も同じ組織とみられる海賊に奪取されて、動き出しているのよ』

「何ですって……!?」

『アメリカからの情報だと海上要塞の武装は破壊してあるから使えないらしいわ。但し、プラントと合流したら人質に無理やり修理させるでしょうね』

 

そう言い、その海上要塞の映像を映しながら真霜は渡された情報を鵜呑みにして真雪に報告していた。真雪も真霜の情報を聞き、そして真霜に聞いた。

 

「……国土保全委員会は?」

『人質の救出が最優先。主力をプラントに向けて、海上要塞は余剰戦力でマークすることになりそうよ……』

 

そう言うと、真雪は真霜が見せた噂の海上要塞を見て深刻な眼差して言葉を溢した。

 

「この装甲圧ではブルーマーメイドやホワイトドルフィンの艦艇で足止めするのは、困難ね……」

『数で囲んで、乗り込んで止めるしかないわ。向こうに撃てる砲がない間にね』

 

そう言い、見るからに重装甲な見た目をした要塞を見てそう呟くのであった。すると真霜がさらに捕捉情報を入れる。

 

『既に国防総省はデフコン2を発令。モンタナに招集命令が出されて、今は出航準備をしているそうよ。グアム、サイパンのアメリカ軍基地はいつでも攻撃ができる準備は整っている……』

「……」

 

少なくとも、日本の管轄海域に向かっている現在。アメリカ軍はなるべく管轄海域外で攻撃を仕掛けたいと思っているはず。

それに、日本の管轄海域内でアメリカ軍がぶっ放せばそれこそ国際問題になる。

だが、ミサイルによる飽和攻撃でもこの要塞にダメージを与えられるかは、正直微妙であると思っていた。

 

『既にアメリカ第三、第七艦隊は集結し始めていて、明日には攻撃が可能と言われているわ』

「インド・太平洋艦隊全軍で要塞に向かうのね……」

『余程警戒していると見えるわ。既に外交ルートで日本の管轄海域内での戦闘許可を求めて来ている。今、政府はそれを承認するかどうかで揉めているわ』

 

少なくともに日本の管轄海域内でアメリが軍が軍事行動を起こしたとなれば、それは日本の面子が潰れると言う事。

下手に暴れられては立つ瀬がないために、恐らく……『日本のブルーマーメイドが対処できなかった場合』のみ、攻撃を許可すると思われる。

 

現在、急ピッチで生産が行われている各種ミサイルだが、やはり生産量で劣っており。まだブルーマーメイドの配備は十分とは言い難かった。

優先して海軍に配備されており、又巡航ミサイルや対艦ミサイルを積むためにはインディペンデンスの改装をしなければならなかった。

その為、優先的にミサイルを搭載可能なホワイトドルフィン艦に搭載が予定されているが、圧倒的に数が足りないので数日後に届く予定の貨物船に大量に乗せられて運ばれてきていた。

この貨物船は同時にヘリコプターも搭載しており、改修が終わったUHー1やSHー2Gを大量に載せてきていた。

 

「……万一、プラントと海上要塞が合流すれば難攻不落なうえ、自給自足が可能になる‥‥」

『移動できる海賊行為の拠点……想定しうる最悪の結末よ』

「……」

 

その時の世界情勢を考えて真雪は思わず冷や汗が溢れてしまっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

真霜が報告を入れている間、講堂では決勝戦が繰り広げられていた。

明乃が低い確率のサイコロを引き当てて遠距離からの攻撃を成功させ、又艦艇を撃沈していた。

 

「あやつ、さっきから事もなげに低い確率の成功判定を引き当てよる……」

「艦長の幸運とシロちゃんの不運の相乗効果ですかね……?」

 

試合を見ながら思わずミーナと納紗が予想を立てていると、テアが試合の先ほどの気になった所を話す。

 

「しかし宗谷も、ただやられているわけではない」

「「え?」」

 

するとテアはさすがは真白だと思いながら解説を挟んだ。

 

「先程撃沈されたのは、今までの攻撃で既に中破していた艦だった……宗谷は岬が何処を狙ってくるか読んで、継戦能力の落ちた艦を其処に配置し。被害担当艦としていた」

「「……!!」」

 

そんな接戦の試合を見て、青木がスケッチブック片手に思わず呟く。

 

「名勝負っス!漫画にしたい位の……!!」

 

そう言うと、他のクラスメイトからも同じ様に激しい接戦を見て思わず感想がこぼれた。

 

「これもうどっちが勝つかわかんないわー」

「口八丁手八丁って奴だね」

「いや、使い所違うから……」

 

最後の駿河の言い間違いに広田が突っ込む。しかし、接戦であることに変わりはなく、知床はどちらも応援をしていた。

 

「うう、艦長も副長も頑張れ!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「いやはや、負けちゃったねぇ〜……」

 

時は少し戻り、講堂の外の通路で千葉達が先ほどの試合の感想を呟きながら歩いていた。彼らは全員真白の戦術に負け、改めて宗谷家は優秀なんだと思っているとふと能村がある集団を見つけた。

 

「ん?なんね、あれ?」

「「「「?」」」」

 

能村の指差した方を見ると、そこにはモンタナクラスが慌てた様子で外に出て、沖合に停泊中のモンタナの方角に走っている様子が見えた。

 

「あれは……」

「留学生の、モンタナクラスですね」

「あぁ、本当はうちに来る所だった……」

 

そう言い、阿部は『寮が改装工事をしなければ……』と悔やんだ声で言っていた。

元々、アメリカからの留学艦は伝統で舞鶴海洋学校に留学に行く予定だったのだが、今年は寮が大規模改装工事をすると言うことで何処にも泊まれないことから横須賀に変更になっていたのだ。

その事を思い出しながら千葉達はモンタナクラスを見ていると、宮里が気になった様子で呟く。

 

「何かあったのでしょうか?」

「まぁ、アメリカの子ですしね」

「あ、そうえいばモンタナってどんな艦長なんだろう?」

「歓迎祭でも見かけませんでしたからね……」

 

そう言い、移動した先では既にモンタナの煙突から煙が出ているのを見て驚いてしまった。

 

「煙……?!」

「って事はどこかに向かうんでしょうか?」

「うーん、分からんなぁ……」

 

そう言い、彼女らはモンタナがこれから何かするのかと想像を掻き立てながら煙の上がるモンタナを見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「急いで!!」

 

講堂から出たサクラ達はそのまま沖合に停泊するモンタナに向けて移動を始める。既に機関科が動いてモンタナはいつでも出航する準備が整えられていた。

 

「クレア、出航できる?」

『あぁ、いつでも行ける』

「エマ?」

『既に配置完了しました』

「よし、艦に戻ったら直ぐに出るわ」

『『「了解」』』

 

内火艇に乗り込み、サクラはモンタナに移動をして、内火艇に乗ったまま回収されるとそのまま艦橋に向けて走り出した。

艦橋に登る途中、サクラは不可解な光景を見ていた。

 

「……あれ?あんなにフロートって近づいていたか?」

 

そう呟き、先ほどよりも大きく見えるフロートを一瞬だけ見て居た。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

報告を受け、校長室で真雪は

 

「直ちに競闘遊戯会を中断して、横須賀湾内にいるブルーマーメイド艦を全て出港させるよう、来賓に伝えて」

「了解しました」

 

そう言い、秘書の老松が出ていくと。入れ替わる様に通信があった。

 

『校長、廃棄フロートが動いているのですが……』

「日没後、移動する予定のはずよ?至急確認して」

『はい』

 

通信が切れ、思わず真雪は考える。あのフロートが潮に流されるとは考えづらい、かといって今フロートが動いているのは不自然だ。

 

「何故、こんな時に……」

 

少なくとも海上ではプラントと海上要塞の占拠事件が起こっているこのタイミングで予定より大幅に早く動いたフロート。

 

「……まさか…」

 

真雪は一瞬だけヒヤリとし、まさかと思っていた……

 

 

 

 

 

同じ頃、海上ではスーの操縦するタグボートはタブレットに記載された場所に向かって移動していた。

 

あと少しね(Just a little more.)

 

タグボートを操艦しながら呟くと、スーは無線に向かって指示をする。

 

私が合図したら微速前進して(Slow speed as turn by my signal)

 

しかし、返事はなく。そこで疑問に思ってしまった。

 

「?聞こえている?(Did you here me?)

 

もう一度問いかけるも、スーに返信はなかった。

 

 

 

 

 

試合は進み、徐々に戦況はハッキリとしていった。

 

「これはもう、どんな不運が起きてもシロちゃんの勝ち……ですね……」

 

旗艦が囲まれている岬艦隊、残存艦艇数、燃料と弾薬の残量。

どれを取っても真白艦隊の方が優勢であった。それを見て勝利は確実であると皆が思っていた。

 

「見事じゃ……」

 

そうミーナは呟き、それは試合をしている真白達も同様であった。

 

「このターンで決着ですね……」

 

そう言うと、真白も勝利を確信していた。この状況で打破するのはいくら明乃でも難しいと思っていた。そして明乃も、負けを確信していた。

 

「うん、シロちゃん……やっぱり凄いよ。私なんかより、ずっと立派な……」

 

これで綺麗に真白を比叡の艦長に送れると思った瞬間。

 

「う、うわぁああっ?!」

「?!」

 

突如、海上全体を激しい振動と揺れが襲い掛かり、明乃達はよろけてしまう。

外ではフロートに積まれていたであろう爆薬が吹き飛び、鉄の塊であるフロートに穴を開けて残骸を沈めていた。

その時の衝撃で、牽引していたタグボートは木の葉に揉まれる様に激しく動き、慌てて甲板に出たスーはそのまま波に攫われてそのまま海に落下してしまった。

 

 

 

 

 

フロートの爆発の衝撃は出航しようとしていたモンタナにも響き渡り、サクラは艦橋で毒吐いていた。

 

「クソッ、やられた……!!」

「嘘でしょう……?!」

 

沈んで行くフロートを見て、ケイリー達も唖然となってしまっていた。




最近、イカロス出版のWWⅡ塗装図集と言うのを買ったけど、最高ですわ。
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