ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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七八話

中にいた為に詳しい情報を知っているはずのスーを武蔵に乗せて単艦でこの問題に対処する為に知り合いやブルーマーメイド関係者に声をかけようと考えていた真雪は、陽が傾いた頃に武蔵に向かう内火艇の前で古庄やスーと共に立っていた。そして、古庄がスーを内火艇に乗せようとした時。

 

「待ってください!」

 

そこに明乃と真白が走って近寄ってきた。

 

「学生は、全員会場へ待機と命令が出ているはずよ」

 

そう言い、真雪は明乃達の命令違反を軽く咎めると、二人は食い下がる。

 

「スーちゃんを連れて行くなら私たちも連れて行ってください」

「その子を一人で行かせたくないんです」

「「お願いします!!」」

「ミケ、シロ……」

 

そんな二人を見てスーは嬉しそうに、そして望む様に言うとさらに二人は続ける。

 

「スーちゃんは私たちの友達なんです」

「そばに着いていたいんです、同じ艦が無理ならせめて晴風で随伴を……」

 

そう言い、しつこく食い下がる真白を見て真雪は娘の成長に嬉しさと関心を持ちながら言う。

 

「随分とはっきりものを言うようになったわね……真白」

「じゃ、じゃあ、私たちも一緒に……」

 

しかし、公私をしっかりと区別する事で有名な真雪はそんな真白に厳しく言う。

 

「それとこれとは話が別よ。あなた達を連れて行くわけには……っ!?」

 

そう言い、武蔵のいる海を見た時。洋上に浮かぶ艦艇群の煙突から黒煙が上がっていた。

 

「罐に火が……?!」

 

するとそこで思わぬ人物が現れた。

 

「私たちに行かせてください」

「もかちゃん!」

「知名艦長!」

 

二人の後ろから現れたもえかに明乃達は驚いていると、もえかは事情を話しながら真雪に近づく。

 

「いつでも出航できるように、機関科の子達には先に動いてもらいました」

「学生を危険に晒すわけにはいかないわ」

 

そう言い、あくまでも生徒達の安全が最優先であり、これは海洋学校の生徒が首を突っ込む事案ではないと言うと、もえかは真雪が驚く情報を伝える。

 

「要塞の武装は使えないと聞きました。ですから、私たちが対処しても危険は大きくないと見積もります」

「あなた…何処でそれを……」

 

するとその時タイミングよく、電話が鳴り。真雪は出ると相手は真霜からであった。

 

『国土保全委員会から宗谷真雪校長に緊急要請です。

二正面作戦の混乱を鑑み、宗谷真雪に統合作戦参謀として協力を要請したい。なお、この要請は海上治安維持法第十一条に基づくものある』

「十一条……ブルーマーメイド関係者を一時的に、強制的に引用する条文ね」

『ご協力をお願いします、宗谷校長』

 

もう、十一条を発令されてはどれだけ真雪が努力をしても海洋学校の生徒を動かさざるを得ない。

プラントと海上要塞が合流し、海上要塞が海賊にとっての破壊と暴力の象徴となる前に阻止すると言う一種の国家存亡の危機であると改めて認識せざるを得ない状況であった。

元々の自分の計画が全てオジャンになったと思っていると、もえかは真雪にタブレットを渡しながら言う。

 

「時間がありませんし,学生艦の扱い方に慣れている私たちが乗った方がいいと思うんです。砲の偏差も、舵の効きも、毎日触って知っていますから」

 

そう言い、真雪に急遽製作した作戦立案書を見せ、それを高速で真雪は読んでいた。

 

「艦隊編成と作戦概要です。他のクラスの子達と先輩方にも賛同してもらっています」

「いつの間に……」

 

そんなもえかを見てこんな短期間でそこまで準備できていたのかと思っているともえかは明乃達を見ながら言う。

 

「宗谷さんとミケちゃんは、スーちゃんの所にいたから伝えるのが今になっちゃったけど……」

 

そう言うと作戦を読み終えた真雪はタブレットを返しながらもえかに言う。

 

「よくできているわ。ただし、ブルーマーメイド、宗谷真霜を現場責任者としてのせます。わかっているわね?」

「はい、指揮に従います」

 

そう言うと、彼女らにさらに近づく一人の影があった。

 

「宗谷真雪校長」

「貴方は……」

「サク!!」

 

そこに現れたのはサクラだった。彼女は片手にもえかと同じ様にタブレットを持つと、真雪に近づいた。突然の登場に驚く明乃達であったが、サクラはタブレット上に記載されたある書類データを見せる。

 

「これは……」

「本国から送られた命令書です。この書類にサインをお願いします」

 

そう言い、そこに書かれた書類は。もえかの指揮する学生艦隊指揮下にモンタナを組み込む事を許可する為に必要な書類であった。

真雪は戦力が多いことに越したことはないと言う事でその書類にサインをする。そして内心、情報を流したのは彼女かと考えた。

タッチペンでサインを終えると、サクラはそれを確認してそのデータを何処かに送信していた。

 

「では、これより本艦は学生艦隊と合流し、作戦行動を開始します」

「宜しく頼むわね」

「はっ!!」

 

真雪に敬礼をすると、サクラは振り向いてそこでもえか達に言う。

 

「ごめんなさいね、遅くなって。ちょっと書類の手続きに手間取って……」

「ううん、大丈夫だよ」

 

そう言い、サクラに明乃はそう答えるとサクラ達はそれぞれの艦艇に移動を始めるのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

出撃準備がなされる中、今回の騒動の旗艦として動く武蔵の後部甲板では。もえかと真霜が歩いていた。

猿島フロートから内火艇に乗り込み、最初にサクラが降り。次にもえか達が降りていた。

夕暮れの中、真霜はもえかに唐突に話しかける。

 

「ねぇ、知名さん」

「?」

 

もえかに話しかけた真霜は彼女がここまでして積極的に動こうとする理由を聞いた。

 

「貴方が行きたがるのは、お母さんのことがあるから?…私たちも憧れた凄腕のブルーマーメイド……」

「……有難うございます。母のことを覚えててくださって」

 

既に故人である自分の母親が、こうして他の人の記憶に残っていることに嬉しさを感じながら。もえかは海を見て自分の夢を語る。

 

「私も、海にいるみんなを守りたいんです。道は遠いけど…いつかは……」

 

そう呟き、もえかは海に浮かぶ学生艦を見ながら自分が今最もしたいと思っている事を頭に浮かべていた。

 

 

 

 

 

同じ頃、内火艇には明乃と真白がそれぞれ別の場所で立っており、真白は思わず言葉をこぼしていた。

 

「はぁ…結局、艦長との勝負は付かなかった……」

 

あの状況で観客は勝ちが確定していると思っているだろうが、明乃のことだから。あの状況から突破口を見出して逆転勝利をしていた可能性も捨てきれない。

 

「だが、結論は出さなければならない……」

 

だから、勝負が付かなかった事に不完全燃焼のまま真白は内火艇で自分たちの家である晴風に向かって行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『くれぐれも人質の安全が最優先にしてくれ。これは政府全体の総意だ』

「分かっています」

 

校長室で出撃準備を行なっている艦艇を見ながら、真雪は政府高官の官僚と通信をしていた。

統合作戦参謀として招集され、猿島フロートに事実上の軟禁をされた真雪は官僚に通常の海賊であれば真っ先に行うであろう要求内容を聞いた。

 

「所で、海賊側からの要求は?」

 

しかし、高官は驚きの返答をした。

 

『現時点では何も入って来ていない』

「入っていない?」

 

通常、こう言う占拠事件を起こした海賊などは政府に直接身代金か、物品を要求するのだが。今回は何も要求がないと言う事実に驚いていた。

政府と繋ぐパイプがないと言うにはやっている事が大きすぎるのであり得ない。とすれば、何かしら別の目的があり、身代金要求で襲撃をしたわけではないと言う事になる。

プラントも占拠しているからてっきり身代金を要求すると思っていたからこそ思わず驚いてしまった。

 

『君達の報告は読んだ。我々も同じ考えだ。要塞にプラントを取り込み半永久的に海賊行為を行うか、もしくは……』

「直接都市を狙う?」

 

真雪の予想に高官も頷いた。

 

『その通り、もし要塞が都市に突っ込んできたら止める手立ては無い。人質の救出は最優先だがプラントと要塞を絶対にドッキングさせるな。そのためにはあらゆる手段を使っても良い』

 

何せ、一個艦隊を収容できる巨大な要塞だ。冷戦期の遺物ではあるものの、その脅威は質量爆弾としても十分すぎる威力であった。

ただし、前提として米海軍の協力は仰ぐなと言うのがつくが……。

米海軍のミサイルによる飽和攻撃が事実上封じ込められている時点で、こちらが出せる手は数少なかった。

 

「了解しました」

『人命が優先だが、要塞は必ず破壊しろ』

 

高官はそう言うと通信を切った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

モンタナに戻ったサクラは艦橋に上がると、そこでマイクを手に取って艦内に回線を開いた。

 

「これより、我が艦隊は海上要塞を目指す。出港準備」

 

すると艦内にベルが鳴り、各科から報告が上がる。

 

「航海科、準備良し」

『砲雷科。配置につきました』

『こちら機関科、いつでも行けるぞ』

『主計科、発艦準備完了です』

「全要員、配置完了」

 

報告を聞き、サクラは指示を出す。

 

「出港用意、錨上げ!」

 

 

 

 

 

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