ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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七九話

もえか達の作戦で、横須賀沖から学生艦で構成された臨時編成艦隊が出港する準備が行われていた。

 

 

 

内火艇を降りて、晴風に乗った明乃はそのまま艦橋まで走ると、そのまま指示を出す。

 

「出航準備!!」

 

すると出航を指示する笛が鳴り響き、一斉に全員が配置に付いて報告を上げる。

 

「うぃ!」

「砲術、水雷準備完了!」

「航海、行けます!」

『機関、いつでも行けるぜい!』

『『『ヨーソロー!!』』』

 

各科から準備完了の報告が上がり、艦橋で納紗や真白が呼称する。

 

「艦内警戒閉鎖よし!」

「一つ甲板近錨、各部出港準備よし!」

 

これにて出航に必要な手順は全て整い、後は機関を回してスクリューを回すだけであった。

真白はそこで羅針儀にかけてあった艦長帽を取ろうとしたが、その上で五十六がスヤスヤと寝ていた。

一瞬帽子を取るのに戸惑ったが、そこで五十六が目を覚ました。

 

「ぬぅ?」

 

そして帽子を取ろうとしているのだと理解したのかは定かではないが、そのまま五十六は羅針盤を飛び降りた。

 

「ぬっ」

 

そして飛び降りた後、真白は艦長帽を手に取って明乃に渡していた。

 

「副長!!」

「行きましょう」

 

そう言い、帽子を受け取った明乃はそのまま頭に被ると指示を出した。

 

「うん……晴風、出航!」

 

その瞬間、万里小路が喇叭を吹き。錨が巻き取られ、等松が旗を上げて錨が巻き上げられたのを確認する。

それと同時に汽笛が鳴り、晴風は横須賀から出発する。

計画より先行する晴風は、そのまま武蔵の横を通り過ぎる。

 

「お……」

 

明乃は思わずその艦橋にいるであろうもえかの事を思いながらその横を通り過ぎて行った。

 

 

 

 

 

そしてその武蔵の艦橋では真霜が時計を見ており、もえかが報告を入れる。

 

「出港準備完了しました」

「各艦、出航準備完了」

 

親子も同様に報告を入れると、責任者である真霜が右手を挙げる。それを確認した親子は伝声管に向けて指示を出した。

 

「信号、予定順序に各艦揚錨。出航せよ!」

「出航用意!錨上げ!」

 

もえかの指示の元、武蔵に喇叭が鳴り響き。武蔵の錨も巻き上げられる。

 

「両舷前進微速!一三〇度宜候。航海長操艦」

 

するともえかの真後ろに武蔵の航海長が現れて復唱した。

 

「頂きました航海長。両舷前進微速。赤黒なし。針路一三〇度」

 

そして武蔵も出航を始め、波を切って晴風の後ろにつく形で進み始める。

その様子を眺め、時計を見ながら真霜が呟く。

 

「定刻五分前行動…何事もブルーマーメイドの慣習通り……先行させた晴風もそうだけど…よい腕ね」

「ありがとうございます」

「よろしい、湾外に出次第。第四警戒航行序列に占位せよ!」

「了解!」

 

真霜の指示にもえかは答えるとそのまま艦隊は進み始め、前方には黒いインディペンデンス級が特徴のべんてんが合流し、その映像を真雪も眺めていた。

 

「遅れて来たべんてんだけが動けるとは……」

「全くだわ。あの子は悪運が強いのよね」

「悪運……ですか?」

 

確かに、べんてんだけ動けるこの状況に確かにと老松は感じていた。

 

 

 

 

 

艦隊が出港する中、スーは一人。艦橋の壁にもたれ掛かりながら座っていた。そんな不貞腐れているようにも見える彼女に、もえかは声をかけた。

 

「どうしたの?」

「知ッテイル人……イナイ」

 

そう、彼女は日本に来て。仕事をして。父親に会うという目的があったが、父親は探せない上に犯罪に加担してしまい。異国で一人と言う不安から、彼女はどうすれば良いのかと不安で埋め尽くされていた。

しかし、もえかはそんなスーを見て励ますために窓の外を指差しながら言う。

 

「そうでもないよ」

「ン……?」

 

そう言い、もえかが指差した先には晴風が航行しており、その艦橋に明乃と真白が手を振っていた。

 

「ミケ、シロ!」

 

スーもそんな二人を見て嬉しそうに声色も良くなりながら手を振りかえすと、明乃がライトを片手に艦橋に発光信号を送っていた。

 

「エット…アレ、私ノ知ラナイ信号…何テ言ッテル?」

「『戻ったら一緒にご飯食べようね』…だって」

「ウン、食ベル!」

「ふふっ」

 

国際的な発光信号ではなく、日本語での通信を読んだもえかが翻訳すると、スーは嬉しそうにしていた。

日本に来て数少ない友人と呼べる存在であり、食事をとることは最大限の至福の時間である。

スーの不安はすっかり取り除かれていた。

 

「届いたかな……?」

 

ライトを片手にやや心配そうに聞くと、真白が指を差しながら答えた。

 

「大丈夫みたいですね。ほら……」

 

そう言い、武蔵の艦橋を指さすと。そこでは武蔵の艦橋で元気よく手を振るスーともえかの姿があった。

 

「良かった」

 

昼の一件もあって、色々と不安だろうと思っての行動だったが。功を奏したようでなによりであった。

 

 

 

 

 

同じ頃、モンタナの艦橋ではCICから報告を聞いていた。

 

『艦長、後方よりアドミラル・シュペーの接近を確認』

「信号は?」

『はっ、『本艦も協力する』であります』

「そうか……返信『貴艦の協力に感謝す』」

『了解!』

 

すでに、アメリカは世界に向けて先の海上要塞占拠の発表はした。おかげで国際法である海上治安維持法のおかげでシュペーも借り出される事が決まっていた。まぁ、直前で参戦が決定したのでこれを知る者は少なく。実際晴風にいた納紗は驚いた様子で右舷双眼鏡を眺めていた。

そこでは任侠顔で晴風に話しかけるミーナの姿があった。読唇術で納紗はその内容を読んでいた。

 

「『仁義で首括っとれ言うなら括ろうじゃないの』……!!艦長!シュペーに返答しても宜しいですか?」

「え?良いけど……」

 

いつになく元気な納紗に驚きつつも許可し、納紗はウキウキでミーナに返していた。

 

 

 

 

 

「『ワシら海で、ええ思いするために船乗りになったけぇ。海で体張ろう言うんが何処が悪いの』……か。ふふ…やるなあ」

 

読唇術でミーナは不敵な笑みを浮かべていると、後ろからテアに声をかけられた。

 

『副長、楽しそうだな』

『ええ、帰国する前にもう一度。晴風たちと同行できるとは思いませんでしたから』

 

そう言い、テア少し嬉しそうにしながらも、ミーナに言う。

 

『そうだな。この作戦に参加するために随分と母国とやりとりしていたし。その努力は尊敬に値する』

『このシュペーの実力をキチンと見せる良い機会ですし……』

 

そう言うと、二人はこのシュペーの名に恥じぬ戦いをするために非常にやる気に満ちた表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

武蔵やモンタナが出港する中、青い線の引かれた大和では……

 

「罐の温度が上っとらんだらぁ!横須賀に負けんようしりぃ!」

 

能村が伝声管に向けてそう怒鳴っていた。すると、そんな能村を見ながら宮里が注意をした。

 

「副長、無理をさせて罐を壊してしまっては元も子もないわ。少し落ち着きましょう」

「あ、はい……」

 

宮里に言われて頭に血が昇っていたと認識してスッとその昂る感情を抑えていた。

 

 

 

 

 

そして同じ頃、信濃では……

 

「一年も二年も気合十分。うちの子達も、二四時間残業行けそうなテンションね」

「また、ブラックな人使いを……」

 

そう言い、阿部のトンデモ発言を聴きながら河野が呆れるように言うと、阿部は艦橋にある双眼鏡で武蔵を覗きながら呟いた。

 

「まずは武蔵の艦長がどんな仕事っぷりか、お手並み拝見といきましょうか」

 

そう言い、阿部は前を進む赤い線が映える武蔵を眺めていた。

 

 

 

 

 

そして、紀伊の艦橋では千葉が面白そうにしながら呟いた。

 

「さて、どうなる事やら……」

「一年生が旗艦ですが、大丈夫でしょうか?」

 

野際がそう言い、眼鏡を直しながら呟くと。千葉は自分たちにこの話を持ちかけたもえかとサクラの顔を思い返しながら答える。

 

「事前の根回しは完璧だった。我々上級生のメンツを潰さず、むしろ手伝おうと言う気分にさせたんだ」

「なるほど見事なものですが、あまり活躍されると私たちの立場が脅かされるかもしれませんよ」

 

そう言うと、千葉はさぞ不敵な表情を浮かべながら強い言葉で言う。

 

「ふっ、頼もしいじゃないか。それくらいではないと我々も張り合いが無い」

 

そう言うと、宮里、阿部、千葉の各大和型の艦長は帽子を深く被ると同タイミングで指示を出す。

 

「「「出港用意!!」」」

 

そうして、三隻の大和型は武蔵やモンタナにやや遅れる形で出港し、横須賀を離れていく。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そして横須賀から出港していく艦隊を見ながら、校長室で真雪は願うように呟いた。

 

「全員、無事に戻ってきなさい」

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