ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

80 / 102
八〇話

競闘遊戯会中に起こった同時多発海上テロ事件。

それに対処するために海賊側は戦力であるブルーマーメイド艦隊を封じ、日本政府やブルーマーメイドなどはその対策として学生艦で構成された臨時編成艦隊で要塞へと向かうこととなった。

 

爆弾を積んだフロートを着底させ、港の入り口を塞いだ所までは思慮深かったかもしれないが。生憎と学生が動かす旧式艦艇は洋上にて待機しており、真雪も渋々ではあるが、学生艦で構成された艦隊を海上要塞に差し向けていた。

途中、遅刻していたべんてんが合流したことで学生艦に一隻だけインディペンデンス級が組み込まれる形となっていた。

そこで少しだけもえかと話し合った結果、作戦を少し変更し。海上要塞にはモンタナも追従する事になった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

八丈島南 三〇〇海里

 

その海域で別行動をして偵察を行なっているべんてんのCICで、真冬が同乗する福内に聞く。

 

「現状は如何なっている?」

 

すると福内は答えた。

 

「現在、バルーンでプラントの偵察を行っております。そろそろ映像が入る筈です」

 

そう言い、画面を操作すると、映像に映る大きな影を見つけた。

 

日本のブルーマーメイドにはまだヘリコプターの配備は進んで居なかった。理由として、まだ本格的な数が揃っていない上にもし海賊に鹵獲された場合の事を考えるとまだ導入するのは早いと判断したブルーマーメイド上層部の思惑があったからだった。

 

「見えた!」

「現在、目標は本艦の260度、38マイル、8ノットで西南西へ移動中」

 

詳しい座標と進路を確認し、真冬はセオリー通りに指示を出す。

 

「よし!潜入部隊を高速艇で送り込み、人質と海賊の配置を確認!可能ならプラント内部の監視システムをジャックせよ!」

「了解」

 

日本政府の要求として人質の絶対安全確保がある。日本の優秀で、今後の食料問題に関わる技術者を皆殺しにでもあえば恐ろしい事が待っているのは明白。そのため真冬達も人命優先での作戦であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同時刻、夜間での補給作業を行なう手筈となっている武蔵艦橋で、炊事委員から渡されたおにぎりをスーは食べていた。

 

「はーむっ!モグモグ……」

 

渡されたおにぎりを食べ終え、スーはふとそこで何かに気づき。ゆっくりと武蔵の艦橋の窓に張り付いた。すると、スーの異常な行動にもえかが問いかける。

 

「何を見ているの?」

「アッチ!スッゴク美味シソウ!」

 

そう言い、スーは明乃達の居る晴風を指差しながら見ていた。

 

「ミケちゃんの所?見えるの?」

「何カ、イイ匂イマデスル」

 

そう言い、スーは犬よりも強そうな嗅覚で匂いを感じ取ると、もえかに聞いた。

 

「ネェ!アッチニ移ッチャ駄目?」

「駄目です」

 

即答で却下され、スーは落胆した様子を見せていた。

 

「えぇ~……」

 

しかし、先ほどとは違い。暗い雰囲気は無い様に見えた。

 

 

 

 

 

同じ頃、晴風では夜食を配っており、非番の生徒が食堂で食事をとっていた。

作戦中ということもあって、片手で食べられるものであり、尚且つ腹持ちが良いものであった。

今、艦橋では真白が舵を握り、明乃は双眼鏡を持って警戒をしていた。

すると艦橋に黒木が上がってきて、夜食を渡してきた。

 

「宗谷さん、夜食です」

「ああ、ありがとう」

 

そう言い、夜食を受け取る際。黒木にこっそりを言われた。

 

「何か悩んでいるなら私に相談して……」 

 

そう言い、明乃の分の弁当箱も渡すと黒木はそのまま艦橋を後にし、真白は一瞬唖然となってしまった後。明乃を見て自分の気を引き締めるように言った。

 

「今はまだ作戦に集中します……」

「うん……」

 

なにせ今から自分たちは戦いに向かうのだ。余計な感情が自分たちの命も左右するかもしれないこの作戦。今はただ前を見ることだけであった。

 

 

 

 

 

同時刻

モンタナ第二艦橋

 

「……」

 

ハンバーガーを食べ終え、第二艦橋で一人瞑想をしているサクラは無音の艦橋下で考え事をしていた。

何か考えたいと思う時、やはり静かな環境の方が自分はよく頭を回せると思っていた。

 

今回の海上要塞占拠事件。あの要塞は解体を始めたばかりで、中にあった武装はすでに運び出されているが、フロートをあれだけ大規模に爆発させる事ができる財力を有しているならば、どこかで弾薬や砲身も購入しているかも知れない。

 

世界の警察として、陸軍や海兵隊を世界中に派遣しているアメリカではあるが、近年の海賊連合なる集合体を摘発するのも大変である。

アフリカや中東でたびたび起こる紛争などで武器が流れ、その中には大砲も含まれている事がある。

また、敗残兵や反政府組織が資金調達のために市場にそう言った火砲を横流しするので、要塞に再武装されていると見ていいだろう。

 

だが、問題は海賊如きがどうやってそう言った大砲を買ったのかという事にある。

大砲一門買うにしたって膨大な資金が必要だ。もしかすると要塞に砲身と弾薬の置き土産があったのかも知れないが、それでもあのデカさの要塞を制圧するにしたってかなりの人員が必要になる。事前情報では突入してきた海賊の中には訓練を積んだであろう兵士らしき人物もいたということでサクラはこの事件の黒幕に国家が絡んでいると踏んでいた。

 

この状況下で最も利益を被る国はどこなのか……

日本やアメリカは論外として、ロシアか中華人民共和国か、はたまた朝鮮か……

 

中華民国は要塞を奪うくらいならスクラップ名目で購入するはずだし、朝鮮が要塞を手にしたって手に余る代物と言うか国家予算が弾ける。

そもそも東南アジアや太平洋地域の諸国にあれだけの人員を雇える材料があるとは思えない。すると残るは……

 

「ロシアと北中国か……?」

 

ゆっくりと目を開けて、サクラは闇夜の大海原を見るとつぶやいた。

 

「幸いなのは海賊の資金がそこでショートをしたくらいだろうか……」

 

そう呟き、未だ海中を極秘で進んでいるアメリカ海軍の潜水艦からの敵艦発見の報がない事にサクラは予想を立てていた。

 

 

 

これだけの騒動を起こせる海賊だから、もしかすると潜水艇や偽装貨物船くらい用意しているかと思っていたが、未だにそう言った発見はされていなかった。そこでサクラは、海賊側は要塞制圧に資金を割きすぎて他に余力がなくなったのだと推測していた。無い袖触れないとはよく言ったもので、戦力は要塞に向けて、非武装であるプラントにはほとんど人員を送っていないのだろう。

その事を悟られない様にするためにあえて連絡を取らず、移動することでその目的を混乱させる目的も含めているのかも知れない。

事実、こっちはプラントを取り込んで海賊の拠点にするのか、ある意味本来の目的である都市に突っ込んで暴れるのか、どっちが目的なのかはわからなかった。

 

ただ、プラントと要塞を接触させない様する為には何をしても構わないという日本政府の本気度も感じていた。

春の時とは違い、しっかりと情報を集めて判断している辺り、やはり晴風の疑惑が漏れてマスコミに叩かれたのが響いたのかと思っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

一時間後、飛行船の偵察から詳しい情報が入ったと聞き。もえかが作戦を練ったからとサクラもべんてんに召集していた。

 

「現在、プラントの内部状況はほぼ完全に把握完了」

「人質は全員、デッキの此処に……」

 

プラントの地図が写り、真冬が指を差した一角に印がつく。

 

「見張りは?」

「人質の見張りは常に三人。まだ、交代のタイミング自体は分かりません」

「他の海賊は?」

 

そう聞くと、福内が詳しい居場所を話した。

 

「管制室に十二名、上層部にも見張りが六名。それ以外は食堂に集まっている模様です」

 

統制が取れているタイプの海賊で助かったと、サクラは思った。

去年のモンタナ襲撃事件の時も、一人が暴走しただけでそれ以外は概ね統率が取れており、そのおかげで強姦をされることなく事件は収束した。

もしこれで統率の取れていないならずもの集団の海賊であれば、おそらく人質は皆死んで居ただろう。

運が良かったと思っていると、横で真冬が大きな動作をしながら言う。

 

「人質がいなければ、あ突っ込んで。ドカーンって、行くのになぁ……」

 

そう言うと、真冬のつけていたマントが大きく翻り、福内を覆っていた。

 

「あーあー、何やって居るんですか……」

 

半分呆れながら呟くとサクラはもがいている福内たちからマントを取ると、そこでサクラは真冬に言う。

 

「ですが、政府としてもあそこは重要な研究施設。できるだけ無傷での解放を望んでいるはずです」

「そうね、人質の救出にあたってはテロリストに見つかる可能性は高いけど。母…校長からも人質が最優先と命令が出ているわ。

でも、人質さえ救出すれば手加減する必要……

 

 

 

 

 

無いでしょ?」

 

 

 

 

 

 

「「っ……!!」」

 

真霜のデビルスマイルを見て思わず背筋が凍る福内達は顔面が真っ青になっていた。

 

「(うわぁ、真白さんがこうなったらなんかやだなぁ……)」

 

先ほどの表情を見て、思わずサクラは内心そう思っていると、いつもの表情に戻った真霜がもえかとサクラに聞いた。

 

「貴方達は何かあるかしら?」

 

現役ブルマーからの質問に臆すること無く、もえかは少し間を置いた後に答える。

 

「……そうですね。此処まで情報が把握できているなら、このまま監視装置に欺瞞情報を流して。その間に人質を救出…でしょうか?」

「ですが、今は見張りの交代時間がまだ不明な為。だから迅速な制圧が必要ではありませんか?」

「正解よ、流石ね」

 

そう言い、真霜は二人の解答に満点を上げると、そこでもえかが聞いた。

 

「それだと、大きな陽動が必要ではありませんか?」

 

そんなもえかの問いに、サクラが答える。

 

「ならば、ちょうどいいのが居るじゃない。そこそこの速力と火力、そして装甲を持っているいい艦が……」

「…あぁ、成程……」

 

サクラの助言を聞いて納得したもえかは早速連絡を取り始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ーーーー作戦は以上です。この方法なら、先ず間違いなく。人質に危害が及ぶ事はありません」

 

校長室で真雪は説明を終えると、官僚が聞き返した。

 

『確率は?』

「95%」

 

すると真雪は残りの不安材料を口にしていた。

 

「残りの5%は、べんてん乗員が暴走する可能性ですが……宗谷真霜が抑えてくれるでしょう」

 

実質的に100%の成功率であると言った真雪に、官僚は少し間をおきながら返答をした。

 

『真霜君か……確かに彼女なら手綱を引き受けるだろう。

よろしい、作戦を承認する。プラントが我が国の管轄海域外に出るまでに、必ず作戦を必ず完遂せよ』

「了解しました」

 

そう言い、真雪は校長室から作戦が承認されたと報告を入れた。

 

 

 

 

 

そしてその情報は洋上に浮かぶべんてんに届けられた。

 

「本部から作戦決行の指示が来ました」

 

福内からの報告を聞き、指を鳴らしながら真冬が言う。

 

「よーし、腕が鳴るぜ!……姉ちゃん!作戦の指示を!!」

「此方の指揮官は貴方でしょう?」

「あっ、そうか……」

 

序盤から拍子抜けする様な形だが、こんな人がよく艦長でいられるなと。内心思いつつも、明乃もそういえば同類かと思いながらサクラは話を聞いていた。

 

「私たちは学生艦隊に戻って大至急、要塞に向かうわ。今のままなら〇六〇〇に管轄海域に侵入する筈…その瞬間にこちらも攻撃を開始します」

「「了解しました」」

 

現在補給中の艦隊の中、べんてんで作戦を聞いて二人は返事をしていた。




現在絶賛、新作ゲゲゲにビビってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。