ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

85 / 102
八五話

特殊砲弾を一斉砲撃を行ったモンタナのCICではサクラが口を開く。

 

「通信員」

「はい」

「フィリピンにいる第三、第七艦隊に通信。勿論秘匿でだ」

「……了解」

 

そこでカルミアはサクラの指示通りに通信を行った。この多くの眼があるこの海域に於いても発していてバレることのないレーダーに交えて厳重に秘匿された通信は戦闘海域、水深百メートルに潜んでいるロサンゼルス級潜水艦『アッシュビル』に極秘裏に送られていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同時刻

フィリピン海

 

その場所で、上空をSH-60が複数飛行していた。そのヘリが向かう先では一隻の巨大な艦船が進路を北に向けていた。

 

米海軍第七艦隊旗艦『ロナルド・レーガン』

 

ニミッツ級大型ヘリコプター母艦の九番艦であり。基準排水量7万7千トン以上、全長333m、全幅89.4mを誇るこの巨大艦はアメリカ海軍が誇る世界最大の量産された軍艦であり。冷戦期から現代まで、アメリカを象徴する艦艇であった。

主機は、表向きは通常のガスタービンエンジンとされているが。実際はまだ立証段階で止まっているとされる、原子エネルギーを用いた機関ではないかと囁かれていた。

 

主な艦載機はAH-88、AH-64、SH-60、OH-58の四機種であり。甲板には四機のAH-88が発艦しようとしていた。

 

「艦長」

 

その艦橋でこの艦の艦長兼艦隊司令のリチャード・ボイスは伝来を受け取る。

 

「モンタナより通信。『ユナイテッド・ステーツは以前として東京に向けて進行中である。現在の映像を送る』です」

「……了解した」

 

ボイスはそこで通信を聞くと言った。

 

「返信、貴艦の好意に感謝する」

 

そう答えると、彼は通信をしてきたモンタナに乗るある人物を思い返すと、思わずため息が漏れてしまう。

 

「通信をしてきたのはVIPだ。くれぐれも粗相の無いようにな」

「はっ!」

 

そう答えると、そこで新たに通信が入る。

 

「第三艦隊、配置に付きました。通信が入っています」

「繋いでくれ」

 

そこで彼は第三艦隊司令官であるアラン・B・ランシングと通信を行う。

 

『こちら第三艦隊。現在管轄海域境界付近にて停船中』

 

そう言い、同じニミッツ級の『エイブラハム・リンカーン』に座乗する彼はそこで現在位置の報告を入れる。

現在、北上中の海上要塞を追う形で第七艦隊が。日本の管轄海域の境界線付近を真横から刺せる位置に第三艦隊が展開していた。

 

「了解した。海上要塞が学生艦隊を突破と同時に攻撃を開始する」

 

そう答え、ボイス自身はこの艦隊からミサイルが一発も飛ばない事を願っていた。

 

 

 

日本政府からの打診で、海上要塞が現在展開中の日本のブルーマーメイド候補生で編成された艦隊を突破した後に即刻攻撃するよう命令を受けていた。

 

「司令、映像受信を確認」

「回してくれ」

「はっ」

 

そして、艦橋の液晶に観測中のSH-2Gのガンカメラの映像が届く。

 

「これは……っ!」

「「ーーーっ」」

 

その映像に思わず艦橋に居た乗員も驚いた声をあげていた。

 

「ヤマト級でもこの有様か……」

「なんて化け物だ……」

「……」

 

そこには大和級の四六センチ砲弾に耐えながら応戦している海上要塞の姿が映っていた。

 

「各艦にこの映像を見させろ。第三艦隊にもだ」

「はっ!」

「これは恐ろしい事態になるぞ……」

 

するとその瞬間、カメラの映像が一瞬で白飛びしてしまった。

 

「何だっ?!」

 

そして映像の光度調整が終わると、そこには爆炎を上げて轟々と燃え盛る要塞の姿があった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「誘導砲弾、安定しました」

 

発射された砲弾はそのまま指示された目標に向かって途中でパラシュートを展開しながら落下を開始。そこで艦橋に上がったサクラは時計を見る。

 

「全艦、並びに展開中のスプライト1に通信。衝撃と閃光に備えよ。着弾まで二五秒」

「了解!」

 

そして通信が行われ、武蔵では秒読みが行われる。

 

「着弾まで十秒!」

 

そこでもえかも懐中時計の秒針を眺める。

 

「八…七…六…五…四…三…

 

 

 

弾着、今!」

 

 

 

その瞬間、海上要塞の上部全体に十二発の砲弾が正確に着弾すると、弾頭のサーモバリック爆薬が一気に気化。そして点火し、巨大な閃光と衝撃波をもたらす。

その閃光は遠く離れた武蔵でも視認できるほどだった。

 

「きゃっ!」

「あれは……!!」

 

その閃光で一瞬だけ目眩しを喰らったもえか達は驚いていると、無線が入る。

 

「スプライト1より通信!要塞上部に特殊砲弾、全弾命中。敵ミサイル発射機破壊を確認!」

「あの爆発で……そりゃ当然よね」

 

思わず真霜もそうこぼすと、そこで改めてあの爆発でもびくともしていない海上要塞の堅牢さにもはや呆れてしまっていた。

 

 

 

 

 

「サーモバリック砲弾、全弾命中」

「よしっ、そのまま砲撃続行。しかし念のため、対空警戒を厳とせよ」

「了解っ!」

 

モンタナ艦橋で、先ほどの閃光とSH-2Gのガンカメラに映る地獄のような燃え方をしている海上要塞を見て思わず苦笑する。

 

「どんだけ硬いんだよ……」

 

するとそこで新たに通信が入る。

 

「艦長、ヴァイパー1が帰還しました」

「了解、後部砲塔の射撃を中止して」

「前はよろしいのですか?」

 

エマが聞くと、サクラは頷く。

 

「ええ、撃っても衝撃波は届かないわ。それに、主砲が使えずとも。我々にはミサイルが残っている」

「……それもそうですね」

 

するとそこでサクラは続ける。

 

「本国からは海上要塞をいくらでも破壊して構わないと通達があった……どうやら上は、完全にあの要塞の利用価値はないと判断したようね」

「艦隊一個分の予算で一体何ができるのやら……」

「金食い虫も良いところですよ」

「まさに冷戦期の負の遺産ね……」

 

サクラはそう溢すと、双眼鏡を除いて水平線上の先に見え始めてきた海上要塞を見ていた。

 

 

 

 

 

「あれほどの爆発でも…ビクともし無いのか……」

 

先程の閃光は晴風でも確認されており、それでも止まらない要塞の堅牢さに改めて真白は絶句していた。そもそもサーモバリックは元々は対人用の気化爆弾。これほどの装甲を持つ要塞相手にはあまり意味がないのだ。

 

「……この晴風なら、中に入れる」

 

すると突然、明乃が呟く。

 

「確かに最大幅は10.8メートルですが…正気ですか?」

「分からない…でも…あたし達がやれるなら……」

 

少なくとも普通ならば考えもしない事だ。命の危険だってある。

しかし、そんな彼女の提案に真白は軽くため息を吐いた。

 

「はぁ…艦長ならそう言うと思っていました」

「っ!シロちゃん!!」

 

思わず明乃の顔が明るくなる。

 

「五分ください。作戦を考えます」

 

彼女はそう答えると、一旦艦橋を後にしていた。

 

 

 

 

 

そして大和型とモンタナの砲撃は続いており、後部甲板に耐爆処理を施されたAH-1Zの駐機を終え。後部砲塔の砲撃が再開していた。

 

「モンタナや大和型の砲撃でもダメか……!!」

「スキッパー部隊の突入を進言します」

 

同じ頃、ホワイトドルフィン艦隊でもあの閃光は確認していた。そしてそこで副長が艦隊司令に進言する。

 

「そうだな…要塞砲の次弾装填までは三十秒…それを使えば……」

 

そこで司令も小型のスキッパーであれば簡単に通れる上に的が小さいので狙われにくいと判断をした。

 

「よろしい、ぎりぎりまで接近させろ!」

「了解!」

 

そして艦隊はスキッパーの発艦準備と共に要塞に接近して行った。しかし、SH-2Gによる強力な電波妨害があるにも関わらず、目視による直接射撃で船体に直撃弾を与えていた。

 

「ちっ…全速退避!」

 

要塞主砲が直撃した事を受け、艦隊は一時退却を余儀なくされた。

 

「これでは接近もできん!」

 

スキッパーを出してもこれでは小口径砲で撃たれてお仕舞いだった。

 

 

 

 

 

「晴風が作戦計画を上進して来たわ」

「ミケちゃんが!?」

 

武蔵艦橋で真霜がそう言うと、もえかは驚いた様子を見せる。

 

「ええ、晴風が中に突入をして動力部を破壊するって」

「……じゃあやることは一つですね」

 

作戦の概要を聞いたもえかは少し間を置いた後に確信めいた顔でそう答える。

 

「何をする気?」

 

その顔を見て思わず真霜が聞くと、もえかは非常に簡単な答えを導いた。

 

「簡単です、我々が撃って撃って撃ちまくって、その間の中に晴風を突入させます」

「ホワイトドルフィン艦隊でも近づけなかったのに?」

 

要塞には現在、最小で6インチの大砲が確認されており、それが雨霰と降り注いでいる現状だ。そんな状態故に接近するだけでも危険である事は明白だ。

 

「私達なら大丈夫です」

 

しかしそんな状況でも、もえかは一つの勝ち手を得たような眼差しで真霜を見ていた。

 

「……」

「……」

 

そしてしばしの沈黙の後、真霜がため息を吐いた。

 

「はぁ…あなたも言い出したら引き下がらないタイプなのね。

仕方ないわ、確かに政府からも。学生を使ってでも要塞を止めろと命令が来てるの。だけど私としては安全を考慮して作戦を練って欲しい……」

 

事実上の作戦承認にもえかは頷いた。

 

「分かっています。あとは要塞の中を……」

「ソレ!私知ッテル!」

 

そこで艦橋に居たスーが手を上げて言った。彼女は日本に来る前に海上要塞にて仕事をしており、その構造を彼女は事前に提供していた。

 

「はぁ…そうだったわね……」

 

その時、ちょうど通信員が上がって来た。

 

「要塞と政府から通信です!」

 

そう言い真島にタブレットを渡すと、真霜はその中身を見た。

 

「何と……?」

 

もえかが聞くと、真霜は納得のいった様子で言った。

 

「予想通りよ、『近隣の船を引き上げてプラントを明け渡せ。さもなくば東京湾に突入する』と……」

「最悪…ですね……」

 

あれほどの質量を持った要塞が東京湾に突入し、尚且つ砲撃を加えれば無数の市民が死傷する事となり、国家存続の問題になる可能性がある。春の一件の再来となるのは明白だった。

 

「政府の方は?」

 

そこでもえかはもう一つの通信の方を聞くと、彼女軽くため息をついて答えた。

 

「十時間以内にあの要塞を止められなければ、この作戦の指揮権はアメリカ海軍に完全移管される事になったわ。それでなくとも、あの要塞が私達の艦隊を突破した時点で即刻攻撃を加える事も……」

「それは……」

 

もえかは驚いた様子で真霜を見た。そしてそこで真霜はその懸念を頷いた。

 

「そう、日本の管轄海域でアメリカ海軍が無制限の戦闘行為を行うことになるわ。これは日本……いや、ブルーマーメイドの限界を世界に見せることになるわね」

 

それ即ち、ブルーマーメイドが対応可能な事件には限界があるということを世界に見せる事となり、ブルーマーメイドの威厳を落とす事となる。

 

「こうなった以上、作戦を承認します」

 

ブルーマーメイドの行える権限が縮小される可能性のあるこの命令に真霜はブルーマーメイド上層部からの発破を掛けられている板挟み状態に溜め息が漏れてしまう。

 

「それと…あの子を晴風に送って」

 

真霜はスーを見ながらそう言った。

おまけに日本の管轄海域でアメリカ海軍の艦隊が戦闘行為をすると言う事は、日本の威厳の問題にもなるわけだ。だからこそ、この十時間と言うのも苦渋の決断の末に出した解答だというのが理解できた。

 

「了解!晴風に連絡!それと、モンタナに回線を繋いで」

 

既にアメリカ第七艦隊が南方から、第三艦隊が東方の管轄海域境界付近でいつでも攻撃ができる状態で待機している現状。向こうはミサイルを撃ちたくてウズウズしている事だろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。