武蔵にて、今後の要塞への対応と海賊の通信を受け。作戦を実行に移すべく行動を起こしていた。
同時刻 晴風艦橋
「『作戦を承認する』……だそうです!!」
山内が武蔵からの手旗信号を受け取った直後。
ガコーン!!
艦橋上のマストに重々しい金属音と共にフックが引っ掛けられ、何事かと明乃達が窓の外を見た時。
「「?!」」
そのワイヤーを伝って引っ掛けたハンガーを持って武蔵の艦橋からスーが滑り落ちてきた。
「え!?わぁっ!」
そして艦橋の窓に足を付けて速度を殺した後にそのまま手を離して落下したように見えた明乃達は慌てて下に行くと、そこではスキッパーの上に降りたスーの姿があった。
「スーちゃん!!」
「何しに来た!?」
真白と明乃がダイナミックな移乗方法や彼女の来訪に驚くと、スーは
「手伝イニ来タ!スー、要塞ノ中。知ッテル!!」
「え?本当に?」
明乃はそんな彼女の情報に驚いていると、真白が聞いた。
「それは助かるが……本当にいいのか?」
これから向かうのは海賊の多く居る要塞、おまけに武装されており。安全の保証はできなかった。しかし、そんな真白の問いにスーは当然の様子で答える。
「当然!モウfamilyヨ!!」
当然のように彼女は答えながら持っているポシェットを掛け直すと、そこで何かに気づいた様子で、猫のような足捌きで明乃達の隣にいたがあかねに近づくと目を輝かせた。
「さっきのいい匂い!!」
スーがそう溢すと、あかねがそのうちの一つを取り出しながら答えた。
「私の作った肉巻きミルフィーユカツおにぎりなの。よかったら食べて」
そう言い差し出すとスーは嬉しそうにそれを食べていた。
モンタナ艦橋
対要塞攻略の為の準備が着々と進む中、艦橋で受話器を片手に航海員のルイ・ノーマンがサクラに話しかける。
「艦長、武蔵艦長からです」
「?」
サクラはもえかからの連絡に軽く首を傾げた後に受話器を手に取る。
「はいこちらモンタナ艦長」
『サクちゃん、ちょっとお願いしたいことが……』
「何かしら?」
そこで通信を聞いたサクラは軽く苦笑気味でため息を吐くと、作戦を話したもえかに答える。
「はぁ……相変わらずだよ、貴方達は」
『お願いできる?』
「ええ、でもこっちからも安全の担保の為に観測機を飛ばすわ」
『え?でもヴァイパーは飛ばせないんじゃあ……』
そうもえかは聞くと、そこでサクラは薄い笑みを浮かべた後にもえかに言った。
「何の為に補給艦から耐爆コンテナを乗せたと思っているんだい?」
そう言った瞬間、艦橋にいた全員の顔が一瞬強張った後に驚いた表情を見せた。
『え?それってどう言う……』
「まぁ、後で分かるさ。じゃあ、今から準備に入るわ」
そう言うとサクラは少し薄い笑みを浮かべた後に受話器を元の位置に戻すと、そこで舵を握るエマがやや恐れるように聞いた。
「え?いいの?あれ使って……」
そう聞くとサクラは窓の外を見ながら言う。
「どちらにしろ、今飛ばしているスプライト1も燃料に限界が近づいている。ヴァイパーの燃料補給も換装も、時間的に間に合わない」
「……」
「この状況ですぐに飛ばせるのはあの機体しかあるまい」
そう言うとサクラはネルに目を向けた。
「ネル、すぐに飛行科に連絡。発艦用意を」
「了解、パイロットに連絡します」
そこで敬礼をした後に艦内通信を行った。
「それと大和、信濃、紀伊の各艦に通達」
「はっ!」
同時刻 モンタナ後部甲板
「ったく、艦長も人使いが荒いね」
片手にHMDヘルメットを持ちながらアリスはそう溢すと、横で同じ飛行科のロート・ライが答える。
「何、艦長の無茶は今に始まったことじゃねえだろ?」
「はっはっはっ、それは違いない」
艦内の移動やヘリコプターへの武器搭載などの為に使用されるM274トラックに乗りながらそう話す二人、運転しているのはエリーだった。
「しかし、まさかマジで乗るとは思わなんだ」
「それはそうね」
そう二人は言うと、漆黒に塗られたコンテナを見た。それは今回の作戦に合わせて急遽上からの指示で載せたヘリコプターだった。
二人のパイロットは先ほどヴァイパーに乗ってプラント船制圧の任に就き、モンタナに帰還した直後だった。本来であれば休憩が必要ではあったが、緊急ということでその休憩時間は繰り上げされてしまった。
「偽装解放して爆装したら、すぐに飛ぶわ」
「了解。準備はすでに終わっているわ」
青色のジャンパーを羽織っているエリーはそのまま二人をコンテナの近くまで送り届けると、そこでは色とりどりのジャンパーを羽織る。俗にいうレインボーギャングと呼ばれるヘリコプター要員が準備をしていた。
「偽装解除します!」
そこで叫ぶと外装のコンテナの爆発ボルトが吹き飛び、今まで隠すように覆っていたコンテナの中から一機のブレードやスタブウィングの折り畳まれた漆黒のヘリコプターが現れる。
深夜の暗闇に吸われてその姿を視認しにくいその攻撃ヘリはそのまま畳まれていたブレードやスタブウィングを展開する。
そしてそのまま置かれていたミサイルやロケット弾ポッドを搭載すると、燃料をすでに満載していたそのヘリ……AH-88ヘルハウンドはそのままローターを回転させて最後に茶色ジャンパーの生徒が親指を立てるとそのままアリス達を載せた攻撃ヘリコプターは離陸して行った。
「なんね、あれ?」
「新しいヘリコプターでしょうか?」
最後尾を進むモンタナから発艦した漆黒のヘリコプターを見て宮里達はそう溢していた。
機体に備え付けられた長砲身の四連装20mmガトリングや4連装ミサイル発射機、ロケット弾ポッドなどは明らかに今まで見たヘリコプターとは異質な見た目をしていた。
「あれは……」
「米軍の軍用機よ?どうしてここに……」
艦隊を離れてSH-2Gの交代に向かったヘリを見てややもえかと真霜は驚いていた。少なくとも作戦前にあの機体を載せているとは聞いていなかったからだ。
『トレボーこちらヘルハウンド。高度500フィート方位210』
「ヘルハウンド、こちらトレボー。これより誘導を行う」
モンタナCICで管制員のマリル・モンローが誘導を行っていた。今まで観測を行っていたSH-2Gを帰還させ、代わりに現用機でもあるAH-88を発艦させていた。
コンテナに収容出来るAH-88の機能はあくまでも秘匿であり、発艦までの動きは極めて迅速だったので、他の生徒達はいきなり現れたヘリコプターに驚いていた。
そして対要塞の艦隊から晴風を先頭に天津風と時津風などの航洋艦が艦隊から離れていく。
「啄木鳥作戦、開始!」
責任者の真霜が号令を出すと戦艦から砲撃が飛ぶ。しかしモンタナは帰還するSH-2Gの為に砲撃は前部のみで行っていた。
そしてホワイトドルフィン艦隊は要塞と適度な距離を取っていた。
「我々が奴らの砲撃を惹きつける!」
巧みな操艦により、要塞側の直接砲撃を回避する艦隊は適度に距離を保ちながら要塞を囲うように動く。
その間武蔵も砲撃を行うが、要塞近くに立つ水柱の内一つは全く見当違いな方向に着弾し、尚且つ真っ赤な染色弾を放っていた。
「あれ?武蔵、照準ミスしとるん?」
それを見て能村は首を傾げると、横で宮里が否定する。
「いいえ、あれを見て」
宮里が手前側を見ろと言うと、そこにはその水柱に躊躇なく突っ込んでいく晴風の姿があった。
「ありゃ〜」
それを見て何をしているのか察した能村は心底驚いていた。
「武蔵より通信です」
「読み上げて」
「はいっ!」
そこで上がってきた大和の通信員が伝聞を読んだ。
「『これより艦隊の射撃指揮は一時的に武蔵よりモンタナに移管する』です」
それを聞き、その意図を汲んだ宮里達は軽く頷いた後に答える。
「この際仕方ありませんね。指示に従うと返答を」
「了解!」
「モンタナのレーダーだどれほどのものか、見させてもらおうやない」
能村がそう溢すと艦隊の射撃指揮をモンタナに移管する事を容認していた。
「射撃指揮権の移管を確認」
「おっしゃあ、腕が鳴るぜ」
カルミヤの返答にルイーザはそう溢すと、ケイリーは指示を出す。
「レーダー照準による測距、並びに陽動を行う。ミサイル発射用意!」
「了解、ミサイル発射用意」
砲術員のケイト・マオが答えるとミサイル発射の為にコンソールを動かす。
「トマホーク、SLAM。発射用意、発射数二。発射間隔5秒」
「了解。SLAM二、トマホーク二、発射用意。発射間隔5秒。最終セーフティー解除」
復唱しながらコンソールを動かし、船体中央にあるMk 41発射機のミサイル・ハッチが開放される。そして同時に艦全体に警報のブザーが鳴り響く。
「発射準備完了」
「発射」
「撃ぇっ!」カチッ
そこで最後に赤いボタンを押すと排気口からロケットブースターの炎が吹き上がり、ミサイル・セルの中から一発のSLAMが空に向かって飛翔する。
その五秒後に近くのセルに格納されていたSLAMが発射され、上空で向きを90度変更しながら要塞に向かって飛翔した。
「SLAM発射完了。続いてトマホーク発射」
そして次に二発のトマホークが間隔を開けて飛翔する。
「全ミサイル、軌道安定。命中まで七秒」
『艦橋よりCIC。ミサイル発射を確認』
無茶をして前部砲塔しか撃てないモンタナはそこで飛翔した四発のミサイルを確認していた。
そんなモンタナの発射したミサイルは当然のように他の艦艇の生徒達も見ていた。
「あれが……」
「偉い轟音やったな……」
大和では宮里と能村はそう溢し、感心した目をしていた。
「おお!あれうちのも欲しいぞ!あれがあれば……!!」
「社長、あれは特別な装備がないと撃てないんです。まずは船体を改装しないと載せられませんよ」
信濃では興奮している阿部に呆れるように河野は宥めていた。
「すごいな!ほんとに飛んでいったぞ!」
「ええそうですね。すごいです」
「さすがはアメリカの技術力だ」
紀伊では千葉と野際がミサイルの飛んでいった軌道を見て興奮した目で見ていた。
先ほどのヘリコプターと言いミサイルと言い、米国の航空技術は他国に比べて抜きん出ていると言わざるを得ない光景だった。