ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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八七話

晴風を要塞に突入させる作戦、通称啄木鳥作戦が始まり。晴風は要塞に接近するが、要塞周辺は味方の砲撃も着弾しており、それはとても激しいものだった。

 

「目標まで、距離三〇……水柱まで距離〇.五……くっ」

 

観測をしていた野間の居る見張り台にまで海水がかかっていた。

 

「「「「うわぁっ!!」」」」

 

まるで嵐の中を航行するような感覚に一瞬環境では悲鳴が上がった。

 

『弾着が近づきます!!』

「艦長!!」

 

味方誤射を起こしそうなこの状況に真白は危険だと感じていた。

数多の砲弾が要塞周辺に着弾している今、その要塞の入り口の正確な位置が見えづらく。このまま直進しては巻き添えを喰らうかもしれなかった。

 

そんな状況の中、明乃はまっすぐ前を見てある違和感に気づいた。

数ある水柱の内、やけに晴風の至近に着弾し、そして適度に距離が離れてまた着弾する赤色の染色弾の水柱の違和感。

その違和感に気づいた瞬間、明乃は親友からのメッセージを感じ取った。

 

「おも〜か〜じ、赤色の水柱。ヨーソロー!」

「了解ぃぃ〜!」

 

涙目の鈴が半ば無心に舵を思い切り回して数ある水柱の内、赤色の物に突入させる命令を出した。

 

「艦長!?」

 

明乃の行動に真白は驚くと、至近での着弾で赤色の海水が艦橋に振りかぶる。

 

「大丈夫、絶対当たらないから。もかちゃんを信用して、あの赤い水柱の中に突入して!!」

 

そしてその赤い水柱を抜けると、次の赤い水柱が晴風と少し距離を置いて着弾する。

 

「うわっ…まさか……こんな方法で」

 

その意図に気付いた真白は予想外の方法に唖然となっていた。

 

 

 

 

 

武蔵艦橋

 

「了解、高め五」

『高め五!』

 

双眼鏡で晴風との測距をしたもえかは指示を出すと、武蔵の砲身がやや上がり。武蔵の砲術長が射撃管制所で引き金を引く。

そして放たれた砲弾は晴風の前に着弾すると、染色弾で誘導をしていた。

 

「染色弾で道案内なんて……」

 

真霜も海賊がおったまげそうなやり方だと舌を巻いていると、もえかは答えた。

 

「モンタナの優秀な管制制御システムのおかげです」

 

そう言い、砲撃の中に作ったあえての空洞を瞬く間に組み上げたモンタナの情報処理能力にもえかも舌を巻いていた。

 

 

 

 

 

晴風右舷側をホワイトドルフィン艦隊と共同で囮となって動く航洋艦艦隊では通信を新たに受けていた。

 

「艦長、我々は囮として目立つよう、後退せよと……」

 

天津風の山辺が高橋に言うと、彼女は悔しげにこぼす。晴風と同じ陽炎型のこの艦でも突入できるからだ。

 

「くっ、本当は私が一番に突入したかったのに……」

 

そう溢すと山辺が左舷方向を指差しながらやや苦笑し、他の艦橋要員も同様に苦笑とやや顔が青ざめを通り越して冷めた目で左舷側を見ていた。

 

「あれを見てもそう思います?」

「ん?」

 

山辺が指差した先には武蔵の染色弾の着弾の反動で船体が少し浮き上がり、それでもそのまま赤色の水柱に突っ込んでいる晴風の姿があった。

 

「……よし!囮で一番目立つわよ!」

「はい!そうしましょう!」

 

晴風の様子を見た高橋達は、あれでは命が幾つあっても危ないと本能的に感じ。指示通りに動くことに他のメンバーも大いに賛同していた。

 

 

 

 

 

『要塞は目の前です!!』

 

無数の赤い誘導路代わりの水柱を抜け。野間は要塞との距離を伝える。

 

「野間さん、退避を!」

『了解!』

 

晴風の高さでは見張り台は確実に弾き飛ばされるので、明乃は避難を指示する。

 

「万里小路さんも退避完了」

「艦内防水扉、閉鎖完了」

 

吃水は問題ないが、安全の為に船底部にいる万里小路の避難も完了し、いつでも突入できる準備が整った。

 

「みんな、捕まって!!」

 

明乃は確実に来る衝撃に備えるよう言い、目の前で最後の水柱が着弾し終え。晴風は要塞の真下に近づいた。晴風の接近に気付き、要塞の砲身が下に下がり始める。

 

「ドンピシャー!!」

 

そう叫ぶと晴風は要塞砲の死角に入った。そして運よく晴風に向けられた砲身は着弾したミサイル攻撃で豪快に破壊された。

 

「両舷停止!後進一杯!急げ!」

 

破口から侵入した際の勢いを少しでも稼ぐために後進を入れ、破口に向かって進んでそのまま突入を行なった。

そして突入をした際にマスト上部の見張り台から上の部分が衝突。盛大に折れた。

 

「私の……部屋がぁぁぁぁぁ!」

 

それを間近で見ていた野間は自分の仕事場と、私室代わりだった場所の消失に絶叫していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

武蔵艦橋では真霜は突入に成功した晴風を見て思わず溢す。

 

「砲弾で道案内するなんて……あなた達も無茶するわね……」

 

まさかの方法での誘導に真霜は心底驚いた目でもえかを見ていた。

 

「私達とミケちゃんなら絶対大丈夫ですから」

 

そんな眼差しを受けたもえかは自信がある目で真霜を見返した。

 

「はぁ…うちの家族も大概とは思っていたけど……この子達も相当ね……」

 

そんな絶対的な信頼を置くが故のぶっ飛んだ方法に真霜は考えもつかないと同時にそこはかとない恐ろしさを感じていた。

 

 

 

 

 

モンタナ艦橋

 

「晴風が突入に成功しました」

「了解……砲撃中止。ただしいつでも撃てるようにしておけ」

『了解』

 

無線で伝えると、ケイリーも了解をした。

 

「ヘルハウンドは?」

「現在、上空待機中です」

 

そう返答が返ってくるとサクラはさらに聞く。

 

「要塞側の動きは?」

「はっ、晴風突入後に要塞主砲の攻撃は動きが鈍くなっています」

 

要塞を双眼鏡で一旦見た後、指示を出す。

 

「よしっ、内部の晴風に気が行っている隙に外の武装を破壊させる」

「……よろしいので?」

「どのみち要塞の主機関が爆発すれば中の居住区画は酸欠だろうが、万が一がある。晴風の突入したゲート部分の武装を破壊した方がいい」

「ですね、予備電源もありますし。最後の悪足掻きがあるかもしれませんからね」

 

エマがそう言うと他の面々も納得した様子でサクラは通信をした。

 

「艦隊旗艦に通信。攻撃許可を」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、内部に突入した晴風では被害確認がされていた。

 

「被害報告!」

 

真白が叫ぶと各部署から無線が入った。

 

『前部マスト、上部欠損!』

『電探どちらも反応有りません!』

『機関、舵、スクリュー、異常なーし!』

『全砲門異常無し。全力発揮可能』

『炊飯器無事です』

『聴音、避難完了です』

 

艦橋に一気に情報が集まると、納沙はそれら情報をまとめあげた結果を分かりやすく報告した。

 

「艦内状況把握完了。電探、ソナー使用不能。対空電探も使用不能。それ以外は問題なし!」

 

突入の際に折れたマストにあった電探や艦底部の突き出たソナー以外の無事を確認すると明乃はやや強張った様子で前を向いた。

 

「前方、見張りを厳に。スーちゃん、道案内よろしく」

 

そして要塞の水先案内人の任を受けたスーを見た。

 

「任セテ!コノママ暫ク真ッ直グ!」

 

そして彼女は陽気な声で指を前に差して晴風を誘導し始めた。

ここは要塞内部、つまり海賊の腹の中にいるようなものであり。何が起こるか分からない、道の恐怖が晴風を徐々に包み込んでいた。

 

「コノ先ハドックニナッテイテーーー」

 

スーの案内に従って航行しているとそこで納沙がふと疑問を溢した。

 

「なんで外の砲が生きていたんでしょう?おまけにミサイルも増設されていましたし……」

 

それは要塞の主砲が稼働状態だった事だ。ホワイトドルフィン艦隊を撤退に追い込み、尚且つ艦隊にミサイルを撃って来た事実。不活性化されていると言う事前情報とはあまりにも違いすぎた。

 

「海賊が修理した?」

 

西崎がそこでありきたりな答えをすると、横でスーが話に割り込んできた。

 

「時々、外カラ来タ人ガ出入リシテタ」

 

事前にここにきて出入りしていたスーの情報を聞き、真白は考えた。

その出入りしていた人物が何らかの方法で武器を持ち込んだに違いないのは確実だ。事前の情報ではその装備していた砲身やらはすでに本国に回収されていることは確認済みなので、どこかから持ち込まれたものなのだろう。

 

しかし、そんな後の事よりも。もっと身近で起こる危険な事情がある可能性が真白の中で浮上した。

 

「じゃあ、もしかして中にも武装が……はっ!!」

 

外から出入りしていた人物が武装を持ち込んだと言うのなら、要塞内部に突入された際の撃退用の武装も追加でできる可能性があると言うことだ。

そして要塞には必ず、内部に突入された時用の自己防衛システムも備わっているはずだ。つまり……

 

 

 

 

 

その瞬間、要塞内部のドックに出た晴風に複数のスポットライトが照射された。

 

「やっぱり!」

「面舵一杯!急げ!」

「はいぃぃぃぃぃ!」

 

暗闇での照射で一瞬目が眩むも、鈴は無我夢中で舵を回し、速度を上げる。

すると内部ドックに設置された固定砲台が仰角をつけると発砲を開始した。そして砲弾は晴風の近くに着弾していた。

 

「反撃して!」

「うぃ」

 

そして晴風の15センチ単装砲が仰角をつけると、そのまま発砲。

15センチと言う駆逐艦にしては強力な主砲を備える晴風だが。それでも要塞砲の防楯の鉄筋コンクリートで防がれてしまった。

 

「弾かれた!」

 

野間が双眼鏡で確認をすると激しく船体が揺れ、左右ジグザグに回避行動を始めた。

 

「全然当たらないよ〜!」

「回避するの早すぎ……」

「バキュンと当てたいぃ!」

 

射撃指揮所に居る三人はそう溢すも、艦橋では五十鈴が半狂乱になりながら悲鳴をあげていた。

 

「ヒィィィィ!」

「うぃぃぃぃ……」

 

そしてその近くで測距をしながら当たらない砲撃に立石が唸っていた。

 

「艦長!擁壁が邪魔で、こちらの砲弾が当たりません!」

「上から撃ち込むしかないですね」

 

目を回しながら納沙は今の晴風の状況では無理に等しい提案をした。

 

「主砲の仰角を上げるのは?」

「天井…邪魔」

 

向こうの要塞砲は低圧砲で、ギリギリこの内部ドックに当たらないように設計されているのだろう。しかし、こちらの主砲は当たらないと言う何とも文句が出る仕様だ。

 

「だー!何か打ち上げるのないんか!」

 

西崎がこの焦ったい状況に思わず地団駄を踏みながらそう叫ぶと、明乃はそこであることが閃いた。

 

「それだ!爆雷準備!」

「爆雷?!」

 

明乃の司令に真白達は何をするのか分からなかった。それで思わず答えてしまう。

 

「艦長!目標は潜水艦ではありません!」

 

しかしそんな彼女の意見を無視して明乃は指示を出す。

 

「ヒメちゃん、モモちゃん爆雷用意!たまちゃん、お願い!」

「うぃ」

 

明乃の提案を察した立石は軽く頷くとそのまま艦橋を後にする。

 

 

 

 

 

そして晴風の後部甲板では爆雷の投射準備が行われた。

 

「投射距離と飛行秒時は?」

「単射で二一〇メートルの七.二秒っす!」

 

爆雷投射機の近くで青木がそう答える。

 

「一番上で上がった時がそれだから……」

「えっと…仰角は五〇度……」

「天井の高さから割り出すと……計算出ました!一杯一杯で旋回してください!」

 

そこで等松が携帯で計算をするとヘルメットを被った立石は40mm連装機関砲の砲座に座って準備を整えていた。

 

「了解!」

 

そして五十鈴が迫撃砲の回避をしながら海上でドリフトを行った。

 

「まだっすか?」

 

青木は爆雷の発射レバーを持った状態で聞く。

 

「まだ?」

 

和住も焦った様子で聞いた。

 

「あと少し、用意……っ撃てぇ!」

 

等松の指示で青木がレバーを引くと爆雷は投射され、一旦砲座の上まで上がると、そのまま一瞬空中で停止する。

 

「ヒーハー……

 

 

 

ドーン!」

 

そして一発の砲弾が発射されるとその砲弾は落下し始めた爆雷に命中し、そのまま爆雷は砲座の下に滑り込むと爆発。そのまま誘爆し、砲座全体が火の海に包まれた。

 

「「「「大成功!!」」」」

 

その爆発する様を見ながら青木達はハイタッチをする。

 

「砲塔…沈黙!」

 

野間も反撃のない砲座を見てそう答えると、すぐさま明乃は指示を出した。

 

「前方開口部に突入!」

「りょ、了解〜!」

 

そして鈴は舵を動かし、そのまま動力部へと駒を進めた。

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