ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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九〇話

海賊による海上要塞占拠事件、海上プラントと海上要塞の占拠を行った海賊集団は突入したホワイトドルフィン艦隊によって捕縛された。

やはりと言えばいいのか、機関部をあれだけ派手に爆破した影響で中の様子はほぼ酸欠状態だったらしい。

 

横須賀への帰港途中、サクラは艦長室でその通信を受けていた。通信の中継は今でも極秘裏に艦隊下を潜航しているアッシュビルからであった。

 

「……」

 

ただし、この情報はブルーマーメイドの権限を持って情報公開はある程度制限される。これは春先の事件でも行われた情報操作の一環だ。

 

世界的な海上警察機構であるブルーマーメイド、加盟国は分担金を払う代わりに国家警備を任せられる。

しかし、その分担金の払えない国家は海賊から身を守る手段が自前で軍を用意するしか方法がない。

 

その代わりにアメリカ海軍は港の自由使用などの条件を代わりにブルーマーメイドよりも安い値段で海賊対策を行う。言ってしまうと、国が傭兵業を行っているのだ。

通常の海賊対策にアーレイ・バーク級を持ち出すのは泣きっ面に蜂

 

 

 

……とは行かない。極偶に駆逐艦が海賊に攻撃を加えられて米艦コール襲撃事件のように損害を受けることも多かった。まあ、あれの場合はテロ組織が相手なのだが……海賊とほぼやり方は変わらない。

 

「終わったか……」

 

サクラはそう溢すと、部屋を出て艦橋に上がる。

 

「すまんね、いきなり変わってもらって」

「いえ、皆も同じですから」

 

そう言い、操艦を一時的に変えてもらった彼女は再び舵を握ると武蔵に曳航されている晴風を見た。

 

「全く、あの船には危機を呼び込む悪魔でもいるのかね」

 

若しくは危機を救う天使がいるか、その両方が住んでいるのか。どちらにしろ、先代と名前を受け継いだその艦は書類上は沖風となっているが。生徒の間ではもっぱら晴風と呼称されていた。彼女達が卒業した後はしっかりと沖風と言われるかもしれないが……。

 

「何を一人で呟いていて?艦長」

 

そこで双眼鏡を片手に外を見ていたケイリーが話しかけてきた。

 

「ん?何、ただ独り言だ」

 

そんなケイリーに彼女はそう答えると、艦隊は先に帰港していた別働艦隊を追うように戻って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そしてその情報はもちろんアメリカにも届く。場所はペンシルベニア通り1600番地、アメリカで最も有名な住所だ。

 

「そうか……」

 

オーバルオフィスでモーリスは電話を片手にそう頷くと、指示を出した。

 

「では事件の背後関係とを探ってくれ。あとそれから、出発の準備もだ」

『了解いたしました』

 

補佐官はそう答えるとモーリスは受話器を置いた。

結果としてみれば、我が国の海上要塞が海賊に奪われた所を日本のブルーマーメイド候補生が解決に尽力をしたと言う、面目丸潰れに近いものであったが。幸いにも参加艦艇の中には娘の乗るモンタナが居たので国民への説明はそれで済ませるとしよう。

 

「ふぅ、終わってしまったか……」

 

そこで彼は椅子を回すと、窓の外を見る。

 

よく撮影などでも使用されるこの部屋は実を言うとホワイトハウスの横にあるウエストウィングと呼ばれる場所で行われている。ホワイトハウスとして普段思い浮かべる場所はメインハウスという別の場所であった。

 

日本人の感覚で例えるならウエストウィングは総理大臣官邸、メインハウスは総理大臣公邸となる。

 

「…まさかこんな事になるとはな……」

 

受話器を置き、モーリスは少し苦笑気味に答える。

 

 

 

実を言うと犯人の目星は付いている。

反政府勢力と海賊、この二つが合わさった巨大な海賊連合とでも呼ぶべき存在を手引きしたのはおそらくイギリス(三昧舌の紅茶野郎)だろう。なぜ分かるかって?そりゃウチと日本があの国にちょっかい出しているからさ。

いまだに植民地支配の続く南部アフリカ、その開放の為に日本とアメリカは秘密裏に武器を送って独立支援をしている。

 

欧州各国の植民地支配体制に反旗の旗を掲げたのは今から百年以上昔の日本だ。

日露戦争が起爆剤となった植民地の独立戦争。当時はフィリピンしか植民地を持っていなかったアメリカとしてはぜひ支援してその国の経済にアメリカの経済を持ち込む事を目的としていた。そしてアメリカ無しでは生きられないようにする算段だった。事実上の保護国化と言っても差し支えないだろう。

 

今から百年以上昔、アメリカはハワイを併合しようとしたが。王政派の共和制派が日本の仲介で行われ、アメリカはハワイ併合を断念して今の東太平洋の海軍の拠点はミッドウェー島とダッジハーバーに存在していた。

そしてハワイ王国は自らの国の価値を高めるためにブルーマーメイドの前身組織である日本の女子海援隊の本部を設置していた。その時の大統領は実に歯を食いしばって悔しがった事だろう。

 

「(しかし、まさか当時の人間が。英国と水面下で対立する事になるとは夢にも思うまい)」

 

かつての主君国と属国、戦争により独立を勝ち得た自由の国。対するのはかつて七つの意味を支配したとされる、今は滅びかけの世界帝国。

 

「(しかしすでにあの国には散々喧嘩を売って来たんだ。冷戦が終わって、それが爆発しただけか……)」

 

古いところで言うとスエズ動乱、最近だと南部アフリカの独立支援。どれもイギリスに喧嘩を売っているようなものだった。前者に関しては独立支援をしてくれたフランスにも喧嘩を売っていた。

 

「閣下。出発の準備が整いました」

「ん、分かった」

 

補佐官が部屋に訪れ、モーリスは小さく頷くと席を立っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

事件解決より数日後、そこでは共闘遊戯会に参加した艦艇達は一旦損傷箇所の修理のために猿島フロートに集合し、そこで丸一日は疲労を癒すために参加艦艇の生徒たちは休養をとっていた。

明日は解散直前に参加した全生徒を巻き込んだ祝勝会を行う予定だ。その準備も抜かりなく進んでいた。

 

「まさか改装後いきなり実戦とはね」

「ああ、そうだな……」

 

沖に停泊中のモンタナの甲板でケイリーとサクラは椅子とパラソルを広げて寝そべっていた。そしてサクラの腹の上にはマシューが寝転がっていた。

ヘリコプター甲板のある場所では元気なクラスメイト達がバスケットボールをして楽しんでいた。

 

この前の大規模改装で艦中央のバスケットコートは丸々潰れてVLSになってしまい、彼女達はバスケットゴールをヘリコプター甲板に設置していた。元々ある二機のヘリ達はもちろん移動させて。

 

「よくやるよ、わざわざヘリを移動させなきゃならんのに」

「中にあるのはスロットとかカジノとかだからね。運動できないんだよ」

「ジムがあるじゃないか」

「スポーツって意味だよ」

 

モンタナの艦内には一通りのトレーニング器具の揃ったジムがある。全長280mもあると中にはいろいろな施設を置くことが可能だ。

中にはパーツまで分解した予備のヘリコプターも収納されていた。

 

「甲板も変わっちゃったしね」

「前の木板の方が好みではあったがな」

 

そう言い、まるで現代艦の如く耐熱加工の施された甲板を軽く触れると横に並ぶ大和型を見る。今ここには大和型四隻全艦が横一列に並んでいた。

 

「しかし壮観な眺めだ」

「上から眺める?」

「それも良いな」

 

二人はそう話すと、椅子を片付けて艦橋を登る。

 

「ミャウ」

「おお、付いてくるか」

 

そしてその後をマシューも追いかけ、二人は射撃指揮所まで登る。そしてその手にはカメラを持っていた。

 

「流石の景色だ」

「ええ、良い絵が撮れそうだわ」

 

そう答えると、サクラはカメラの電源を入れてレンズを合わせるとそのままシャッターを切った。

 

カシャッ

 

青・赤・黄・緑と並ぶ大和型ではそれぞれの所属校の生徒達数名が甲板に上がっていた。横須賀所属の生徒は大半が陸地に上がっているが。それ以外の生徒は帰る家が艦しか無かったので、観光で街に繰り出している生徒も少なからずいた。

 

「まさかまた事件に巻き込まれるとは思わなかったわ」

「ええ全く……もうごめんだと思っていたのに」

 

サクラもこれにはやや疲れた様子で溢すとケイリーは言う。

 

「でも今度演習やるでしょ?」

「ん?ああ、そう言えばそうだったわね」

 

演習とは、夏休み中に宗谷校長が話してくれた。強制執行課との訓練のことだ。現役のブルーマーメイド職員による手解きをさせてもらえると言うのは実にありがたい話だ。

 

「準備の方はどうするの?」

「ああ、時期に訓練させるさ。まだM8には慣れたばかりだ」

 

サクラ達の基本装備として配給されたM8、艦内での戦闘を基本としているので主にコンパクト・カービンを支給されていた。

テストでは好成績を残していたが、前線兵士から『こんなおもちゃみてえな見た目の銃に命を預けられるか!!』と言う熱い意見を受けて不採用となった武器だった。

元々はM3短機関銃やM1911と、1940年代に戻ったような装備だった我々からすると何世代も進化した気分だ。

今はM8とベレッタM9が基本装備となって支給されていた。弾はゴム弾かペイント弾などの非殺傷武器。実弾は火器保管庫にて厳重に鍵がかけられていた。開けるには艦長と副長の承諾及び二人の同時の鍵開けが必要だ。距離が離れているので同時にやる事は不可能だ。

 

「で、作戦は?」

「一応考えてはいるさ」

「ほほう、これはちょっと予想外」

「いやぁ、あの宗谷真冬だぞ?何重にも罠に掛けないと仕留めきれんさ」

 

実際、今回の事件でも大立ち振る舞いをした。少なくとも海賊相手に鼻フック決めてピーーー(言語化不可能)をかますくらいだ。容赦がないし、凄まじい身体能力だ。

 

「サクラとどっちが強いかな」

「いやぁ、流石に向こうだろうな」

 

サクラは即答すると、ケイリーはやや驚いた様子で聞いた。

 

「ちなみに理由は?」

「私にあそこまで持久力がない」

「ああ、なるほど」

 

理由を聞いて急に納得できたケイリーは軽く頷くと、再び海を見て話す。

 

「でも反応速度はサクラが勝つと思うよ?」

「そうか?海賊のAKの乱射を左右に飛んで避けたような人だぞ?」

「勝てるよ、サクラは弾丸が見える人間だもん」

 

そう答えると少しだけ彼女は微笑み、サクラも同様に小さく微笑んでいた。




今更ですけど、本作には一部はいふりwikiを言うサイトを参考にさせております。
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