ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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九三話

横須賀に寄港した米第七艦隊。

フィリピンを拠点に活動を行う西太平洋・インド洋最強と謳われる海軍艦隊である。

 

軍隊とは『一定の組織で編成されている、軍人の集団』であると有名な広辞苑には記されている。

公的海上治安維持組織であるブルーマーメイド並びにホワイドドルフィンにより、領海内における海上治安維持行為に関しては全面的な軍事的行動に対する責任はその二つの組織を統括する海上安全整備局が負う。

 

そして海上安全整備局の傘下に属す武装組織であるブルーマーメイド、ホワイトドルフィンはあくまでもその主要任務は海上輸送の警備と海上航路の監視任務だけである。

 

加盟国は寄港したブルーマーメイド・ホワイトドルフィンの艦艇には十分な補給を行う必要があるが、保有する武装で敵対的軍事行動を起こさせない為に、装備する武装は必要最低限に抑えられているのもまた事実。

 

国際的な海上警察である両組織に与えたられる艦艇、特にブルーマーメイドに関しては、元は小型の沿海域戦闘艦である。

またホワイトドルフィンに関しては加盟国毎に使用する艦艇がバラバラで、他国の港に寄港した場合の整備点検がしずらいと言う欠点も持ち合わせていた。

 

そして、海軍の一任務でもあった海上航路の警備・監視を海上安全整備局に一任した各国海軍はその後、純粋な戦闘と国家防衛を主目的に軍事作戦を行う武装組織として何十年と世界で活躍していた。

 

 

 

 

 

「ではこれより、表彰式を執り行わせていただきます」

 

そのアナウンスと共に壇上に立った一人の士官に軽い拍手が上がる。

その先には日本の各海洋学校の制服に身を包んだ生徒たちが立ち、中でも横須賀女子海洋学校の制服を着用する生徒たちが多く座っていた。

 

会場は都内にあるニュー山王ホテル、そこにある宴会場にてアメリカ海軍による略綬授賞式が行われていた。

理由は、先の海上要塞占拠事件を解決に導いた日本の女子海洋学校の学生に、米国政府から功績を称える為であった。

 

「横須賀女子海洋学校、武蔵艦長。知名もえか」

「はい」

 

名前を呼ばれ、士官服を見に纏うもえかが壇上に上がると、そこで勲章と共に賞状が手渡される。

 

「此度の軍事行動の功績を称え、勲功記章を授与するものとする」

「ありがとうございます」

 

そう言い、もえかはアメリカ軍の勲功記章を受け取るとそこで一礼した後に振り向いて壇上を降りる。

 

今回、アメリカ海軍より海上学校の学生に勲章を授けられる事は初めてのことであった。

また他国の公的軍事組織から勲章を授与される事は、欧州では実績があったがアメリカでは初めてであった。

 

あくまでも広域海上治安維持組織である海上安全整備局にも叙勲は当然あるが、それはあくまでもブルーマーメイドになった者のみと言う条件があり、そもそも学生の段階で春先のRATt事件や、この前の海上要塞占拠事件のような国際問題たり得る事件に遭遇する事がなかった。

 

「続いて、呉女子海洋学校、大和艦長。宮里十海」

「はいっ」

 

名前を呼ばれ、会場に置かれた席に座っていた宮里は席を立って壇上に上がると、同様に勲章を授与される。

今回授与される勲功記章は、平時において優れた功績・勤務実績に対して贈られる。

 

女子海洋学校の学生はブルーマーメイドの候補生でもあるため、公的には準戦闘員と言う立場であるので、規則上は各国軍隊の表彰の対象になるものであった。

 

「舞鶴女子海洋学校、信濃艦長。阿部亜澄」

「はいっ!」

 

今回は時間短縮の為、代表として作戦参加艦艇の艦長が勲章を授与されており、参加した生徒たちには各種功労賞が授与される。

 

「佐世保女子海洋学校、紀伊艦長。千葉沙千帆」

「はい!」

 

名前を呼ばれ、次々と壇上にあがっては勲章を受け取っていく大型直接教育艦の艦長達。

会場には副長と共に呼ばれていたが、名前を言われるのは艦長だけであった。

 

「サンディエゴ海洋学校、モンタナ艦長。サクラ・A・ミヤマ・ファーゴ」

「はい」

 

大型直接教育艦としては最後に名前が呼ばれると、彼女は落ち着いた表情で壇上にあがり、他の生徒と同様に勲章を授与される。

いくら相手が大統領の娘とは言え、今までと変わらない手順で勲章が授与され、次々と今回参加した艦艇の艦長達が呼ばれていく。

 

元より、米国政府が長年放置していた諸問題が原因で起こった今回の事件。

損傷した各艦艇の修復に関して今現在は米国政府と日本政府の間で会議が行われており、修繕費に関してどちらの国がどれほどの割合で払うのかなどを話し合っている真っ最中だ。

すでに作戦参加艦艇の修復作業は始まっており、モンタナに関しては米国政府が既に派遣した補給艦よりミサイルの補充や修繕を行い終えていた。

 

そして最後に、参加していた航洋直接教育艦艦長の名前が呼ばれると、最後にこの会場に女子海洋学校学生としては最も多く参加していた晴風クラスの名が呼ばれる。

 

「代表。沖風艦長、岬明乃」

「はいっ!」

 

最後に名前を呼ばれた明乃はやや緊張した足取りで壇上に上がると、そこで担当する士官から言われる。

書類上は沖風と言う立ち位置なので、残念ながらこう言った正式な場では俗称である晴風Ⅱの名を用いられる事は無かった。

それに明乃達は悲しんでいたが、元より自分たちが晴風Ⅱと名乗っているだけで世間的に言えば晴風の部品を使って動かせるようにした艦艇でしかないと言うことだ。

 

「沖風乗組員は今回の事件において英雄的活躍をした事を称え。沖風艦長岬明乃にアメリカ海軍長官リチャード・スペンサー、並びにアメリカ合衆国大統領モーリス・ファーゴより勲功記章、並びにレギオン・オブ・メリットをここに授与する」

 

賞状と共にそれを渡され明乃はそれを丁重に受け取ると、今までで一番大きな拍手が彼女に送られる。

晴風のみは副長である真白も呼ばれ同じ賞状と勲章を手渡された。

 

今回の事件で最も大きな活躍を果たした晴風は艦長・副長には平時における最高位の勲章であるレギオン・オブ・メリットを授与され、また晴風乗員全員が勲功記章を授与される事になっていた。

 

米国政府の失態を勲章授与という形で相殺するのが目的ではあるが、この結果に反対する者はほぼいなかった。

 

「おめでとう」

「ありがとう、サクちゃん。もかちゃん」

 

授賞式の後、明乃に話しかけたサクラともえか。周囲では多くの軍人が既に宴会場を出始めていた。

 

「さ、流石に疲れちゃった…」

「あはは…」

「まぁあれだけ囲まれてたらね」

 

そう言い、授賞式の後に彼女に話しかけてきた軍関係者に囲まれていた明乃に二人は苦笑していた。

 

「まぁ晴風に頭が上がらないのは事実だし…」

「サクちゃん」

「おっと…」

「?」

 

サクラの一言にもえかが突っ込み、明乃はそんな二人に首を傾げていると、サクラは明乃に言う。

 

「でも凄いわね。レギオン・オブ・メリットの受賞なんて」

「えへへ…みんなのお陰だよ〜」

 

そう言い、その手に持った勲章とメダルに恥ずかしそうにしている明乃。しかし晴風を中に突入させる作戦を立案したのは明乃達晴風乗組員達である事に間違いはなかった。

 

「さて…」

 

するとそこでサクラは言う。

 

「この後みんなで食べに行かない?私の奢りで」

「え?いいの!?」

 

サクラの提案に明乃は目を輝かせて見ると、彼女は頷く。

 

「えぇ勿論」

「やった〜!」

 

明乃は嬉しげに喜んでいると、サクラはもえかにも言う。

 

「もかちゃんはどうする?」

「え?私も誘ってくれるの?」

 

もえかはやや作った驚きをすると、サクラはそれを理解しつつ頷いた。

 

「勿論、今日はお姉に任せなさい」

「ふふっ、じゃあ御相伴に預からせてもらおうかしらね」

 

もえかは片手にサクラと同じ勲章を持って笑みを見せると、三人に一人が話しかけてきた。

 

「サクラ様」

 

話しかけてきたのは黒いスーツにサングラスをした一人の男性であり、サ明乃ともえかも見るとサクラに目線を合わせて彼女が頷いたのを確認すると、

 

「ミケちゃん、もかちゃん」

「「?」」

「ちょっと時間取れる?」

 

首を傾げる二人にサクラは聞くと、困惑しつつも二人は頷いて返した。

 

 

 

「どこにいくの?」

「ちょっとね」

 

その後、ホテルの客室に移動する三人。

先ほどの宴会場からは考えられないほど静寂な空間に前後を黒スーツの男性に囲まれた明乃は少々緊張しながらサクラに聞くと、彼女は慣れた様子で返すと、そのまま三人はある部屋の前で立ち止まった。

 

「ここ?」

「えぇ」

 

部屋の前では二人のボディーガードが立っており、先ほどからもえかは静かに目を閉じていた。

そしてサクラが三回扉をノックすると、部屋の扉が開いて中から同じような格好をした人達が現れて中に入れられた。

 

「誰に会うのかしら?」

「もう分かって言っているでしょうに」

 

そんなもえかとサクラの話に明乃もそこで察すると、

 

「えっ?今から会うの?」

「そりゃあね」

 

サクラはそう言って部屋の奥に入ると、

 

「連れてきたよ。父さん」

「あぁ、悪いな」

 

そこで優雅にコーヒーブレイクを楽しんでいた当代アメリカ合衆国大統領モーリス・ファーゴは部屋を訪れたサクラに返していた。

そんな人物を前に明乃ともえかは驚いていた。

 

「すまないねお二方。パーティーの最後に呼び出してしまって」

 

そう言い二人を反対のソファに掛けさせると、モーリスはそんな二人に聞いた。

 

「コーヒーか紅茶、どちらが好みかな?」

「あっ、えっと…」

 

緊張で上手く話せない明乃達にモーリスの隣に座ったサクラが言った。

 

「二人とも紅茶、できればアールグレイが良いわね」

「分かった」

 

そこでモーリスは軽く頷くと、サクラは聞いた。

 

「ルディーさんは?」

「あぁ、彼女は銀座に出かけた。久しぶりに日本で買い物だ」

「成る程ね」

 

するとモーリスは明乃ともえかに軽い雰囲気で話しかけた。

 

「いやはや、サクラがあれほど話していた友人がどんな人なのか…色々と噂は聞いていたのだがね」

「あのさぁ、だからって親が出てくるのはどうかと…」

「そうか?」

 

モーリスとサクラは平然と話しており、もえかは出てきた紅茶を飲みながら内心で頷きながら二人を見ていた。

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