ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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唐突に舞い降りて速攻で書き上げました


九四話

アメリカ軍人にとってアイスクリームとは何かと問われた際、我々は真っ先にこう答える。

 

 

ーー何者にも変え難い、煙草や大麻にも勝る心の支えであり、必要不可欠な代物である。

 

 

アイスクリームを作るためであるならば、我々は努力を惜しまない。

アイスクリームが支給されるのであるなら、我々は喜んで軍務を行使する。

アイスクリームは、我々アメリカ人の血液といっても過言ではない。

アイスクリームが無いのなら、我々は銃を手に取り上官に意見するのも怖くない。

 

 

 

 

 

「うわぁ…」

 

その日、明乃以下先の作戦に参加した各海洋学校所属艦の艦長・副長並びに希望する学生達はモンタナの巨大食堂に訪れていた。

 

「広いですね…」

「けったいなもんやぁ」

 

招待された宮里や能村がモンタナのクラスメイト全員を入れても余裕のある食堂を前に声を漏らし、

 

「うお〜!いっぱいあるぞ〜!!」

「待ってください艦長。まだモンタナ艦長からのご挨拶がまだですよ」

 

興奮する千葉を野際が抑える。

 

「すごいな…流石は工業力のアメリカだ」

「圧巻ですね〜、社長」

 

阿部と河野が食堂の広さとアメリカの戦艦らしい広い通路や、伝声管を用いない艦内通話などの惜しみない改良を前に感嘆の声を出していた。

すると食堂に集められた各学生達はそこで目の前にずらりと並んだアイスクリームの機械を見る。

 

『あーあー、テステス〜』

 

そこでマイクを片手に現れたサクラ。彼女はマイクの調子と、全員が集まった事を確認する。

 

『え〜、諸君。先の作戦はご苦労であった』

 

そこで最初に先の作戦の事をさらりと流し、そこあとに壁伝いにずらりと並んだアイスクリーム製造機を見せる。

 

『ーーーと言うことで、我々モンタナ艦長から今回の作戦に参加した乗組員に対し、ささやかではあるがプレゼントを用意させてもらった』

「ささやか?」

「アメリカ規格ではきっとそうなんですよ」

 

サクラの言葉に明乃は首を傾げ、招待を受けた真白はそう言うことにして艦長を納得させた。

 

『それが、後ろにある我がモンタナが誇るアイスクリームということだ。今日は存分に味わってくれたまえ!』

「「「「「おぉーー!!」」」」」

 

そこで最も歓喜に沸いたのはモンタナクラスである。

 

「艦長ー!今日はスプレーチョコも解禁ですか?」

『そうだとも。なんならアラザンも許可する』

「「「「「「うおぉぉーーーー!!」」」」」

 

その様子に近くにいたドイツ艦組も軽く驚いており、少し異常とも言えた。

 

「す、すごいね…」

「えぇ…」

 

その熱気に当てられ、明乃達も目を点にしてしまうほどだった。

すると真白の隣にいた納沙がタブレットを操作して得た情報を伝えた。

 

「どうやらアメリカ軍の規則でアイスクリームは昔から福利厚生の一つに入っていたそうで、士気を保つためにとても重宝されていたそうです」

「そうなのか?」

「はい!アメリカ軍はアイスクリームを作るための艀や輸送船まで作っていたという記録がありますね〜」

「すごいな…」

「お酒の代わりという側面もあったようです。まぁ我々で言うところのカレーに近いものなのでしょう」

 

わざわざアイスクリームを作るために船を作ったと言う事実に軽く唖然となった。

流石の国力といったところだろう。もし今から何十年も昔、急速に南下してきた共産主義の脅威がなく、日米の戦争があったなら、それは恐ろしいことになっていたに違いない。

 

「日本ではカレー、アメリカではアイスクリームと言うことか…」

 

そこで真白は嬉しそうに話し合っているモンタナクラスを見ていた。

 

ここに招待された時、軍事機密に関する区画には入らないようにあらかじめ防水扉が閉じられており、自分達の学生艦とは違った緊張感がはじめこそあったが、こうしてアイスクリームを前に興奮しているところを見ると結局彼女達も学生なんだなと実感していた。

 

『では、これからは各々好きなアイスクリームを堪能してくれ。以上!』

 

サクラがそういって締め括った直後、大量に準備されたアイスクリーム製造機に生徒達が一気に群がった。

 

「わぁ〜、こんなに大量にあるアイスクリームなんて初めて見た〜」

「私バニラ〜」

 

群がる大量の生徒達、色とりどりの海洋学校の制服を前に彼女達は好きなフレーバーの前に並ぶ。

 

「すごい!サーティーワンもびっくりな量だよ!」

「サーティーワンと違って食い放題だぞ!」

「ブルーシールもびっくりだよ」

 

ある生徒は並のアイスクリームショップよりも充実した品揃えのモンタナのアイスクリーム製造機を前に驚いていた。

 

「よっしゃー!チョコスプレー山盛りぃ!!」

「あっ!ずるいぞ!」

 

モンタナの生徒は、普段は禁止されているチョコスプレー掛けに集う。

前にチョコスプレーのかけすぎが原因で大喧嘩になったことがあり、校則に『チョコスプレー等アイスクリームに乗せる目的の食材は使用を制限する』と明記されるほどだった。

 

「すごい…コーンかカップも選べるよ!?」

「ワッフルとウエハース…うーん、どっちにしようかな…」

 

アイスクリームを乗せるペイストリーまで豊富にあり、生徒達はその時点で悩んでいた。

 

「どっち食べる?」

「両方でいいんじゃない?」

「おっ、それ良いね〜」

 

コーンの時点で悩んでいた彼女達だが、ここは女子校。彼女達は躊躇なく脂肪分の塊を思いの儘に口に頬張る。

男の目がないと言うのは恐ろしいものであり、学校の教室では平気でナプキンが頭上を飛び交い、廊下や生徒のロッカーにはどこから仕入れたか薄い本が必ず仕舞ってある。

 

「ん?おい誰だよ机の棚にGL本置きっぱなの!」

 

またモンタナという空間においてサクラは極めてクラスメイトに対し必要最低限の規則しか与えられていない。

四〇名という小規模の空間において、サクラ・A・ミヤマ・ファーゴは一種の独裁的な立ち位置を確立していた。そしてその独裁的運営はこの小さなコミュニティーだからこそうまく機能していた。

 

「わぁ〜!」

「艦長、あまりはしゃぎ過ぎないでください?」

 

そんな大盛り上がりの中、明乃と真白はウキウキで好きな味のアイスクリームを手に取る。

アイスクリーム製造機は二種類あり、自分でアイスクリームディッシャーで掬う物と、ソフトクリームメーカーの二種類があった。

 

「シロちゃん!どの味にする?!」

「うーん…そうですね…」

 

明乃に言われ、真白は大量のフレーバーのあるモンタナを前に一考する。

正直、あまりにも数が多い。聞いたところによるとその数はなんと六〇種類もある。一体どこから仕入れたのやらと思いながら真白は考える。

 

「あっ!ホッピングシャワーだ!」

 

そんな中で明乃は早速コーンを片手に目に入ったフレーバーを手に取る。

 

「私これにしよ〜」

 

そういって明乃が幸運にも新品に入れ替わった直後のホッピングシャワーを取りに行き、真白はどれにしようか一瞥した時、ちょうど無くなりかけのストロベリー・チーズケーキ味があった。

 

「あっ、じゃあ私はこれを…」

 

そこで近くにあったストロベリー・チーズケーキ味を取ろうとした時、

 

「あぁごめん。ちょっと交換するから待ってて〜」

 

モンタナの炊事員のカミラが容器毎回収してしまった。

 

「…ついていない」

 

相変わらずの自分の不運に肩を落としてしまった。

 

 

 

その後もモンタナの食堂ではひっきりなしに生徒達が訪れてはアイスクリームを吟味して取っていく。

 

「どうよ!」

「船長…流石に三段積みは…」

 

高橋のコーンアイスクリーム三段積みを前に山辺が不安げにそれを見つめ、用心のために空の紙カップを用意していた。

そして案の定、食べている最中にバランスを崩して崩壊し、山辺に叱られていた。

 

「みんな楽しんでいるようだね」

「うん!すごく美味しいよ!」

 

そんな様子を前に高級なラングドシャのコーンを片手に高級ソフトクリームを頂くサクラ。そしてその横で嬉しそうにホッピングシャワーを舌で掬うように食べる明乃。

 

「しかしすごい量ですね」

 

真白はそう言いながら抹茶味のアイスクリームをスプーンで削るように食べる。

 

「まぁ我々アメリカ人にとってアイスクリームは何にも優先される事案だ」

「実際、武蔵との戦闘後にアイスクリーム製造機が壊れた時なんてサクラが『それは由々しき事態だ!早急に修理したまえ!』と言ったくらいですからね」

「わぁ〜…」

 

ケイリーの言葉に、どこか伊良子の炊飯器にも似たものを感じた明乃達。

しかし彼女達の中では、アイスクリームが供給されないことはトイレや洗濯ができないことよりも大問題であった。

 

「おっ?艦長、それって…」

「わぁ、この人高いコーン食ってる!」

「一つくださいよ!」

 

するとサクラの持っていたものにめざとく気づいたクラスメイトが文句まじりに言うも、サクラは返す。

 

「馬鹿野郎、これはあたしの自費で買ったんだぞ?」

「ぶー!ずるいっす!」

「ふむ、ならば一枚二百円で考えてやろう」

 

クラスメイトに高値での転売を行うサクラは二本指を出す。

 

「じゃあサクちゃん、一枚…」

「ミケちゃんは無料であげちゃう」

「わーいっ!」

 

そこで紙箱から取り出して明乃は嬉しそうにそれを手に取った。

 

「わぁずるいっす!」

「差別だ差別だ!」

「区別だよ」

 

クラスメイトの文句も意に返さず一刀両断し、そこでサクラは真白にも一つ渡した。

 

「ほい、君の分」

「よ、よろしいのですか?」

「良いよ良いよ〜。好きなのとってきな〜」

 

そう言ってサクラは明乃達が新しいものを撮りに行ったのを見送ると、そこで反対に吸っていたもえかが話しかける。

 

「やっぱりサクちゃんはサクちゃんだね」

 

その目線を感じ取り、彼女は軽く笑った。

 

「はははっ、はいもかちゃんの分」

「ふふっ、ありがと」

 

ラングドシャの高いコーンをもらい、もえかはそこですでに取ったオレンジピューレ入りのアイスを食べる。

 

「まるでお祭りだね」

「まぁまだ日本は暑いからね。アイスもよく売れているよ」

 

そう言ってモンタナの張り出した広告を前に次々にやってくる生徒達。

先の作戦により、多くの艦艇が大小損傷をしており、修理が完了すれば帰っていくのだが、その間に時間を持て余した艦艇ではこう言った催し物が行われていた。

モンタナはその初回であり、今度間宮が似たようなことをすると聞いている。

このパーティーの費用は全部経費で主計科の生徒達は理解し、学校に落とさせるように後で処理するつもりだった。まぁアイスクリームならばほぼ確実に通るので心配いらない。

 

「一応、この後に先生方やブルーマーメイドの希望者の方も招く予定って言うね」

「わぁ、すごいわね」

 

もえかはその時の教師達の反応を想像していると、

 

「ワァ!スゴイスゴイ!」

 

モンタナの食堂に緑髪の肌の焼けた少女がやってきた。

 

「あっ!スーちゃん!」

 

それに気づいた明乃が聴取を終えて来たスーに近寄ると、彼女は大量のアイスクリームを前に目を輝かせて突撃していった。

 

「全部食ベテ良イノカ!?」

「そうだよ」

「ヤッター!!」

 

そんな光景を前にサクラ達も微笑んで見ていた。

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