ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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九七話

その日、日置の元にとある荷物が届けられた。

 

「……」 

 

ガムテープで封をされた段ボールをカッターナイフを使って開封の儀を行うと、その中身に彼女は唖然となる。

 

「バキューン…」

 

その中身に彼女は慌てて小笠原と武田の二人を呼んだ。

 

「「そうめん?」」

 

彼女の部屋に呼ばれた二人は、首を傾げた。

 

「まぁ、嫌いじゃないよ」

「私もー」

「よっしゃー!」

 

二人の反応を見て日置は安堵した様子を見せた。

 

「実はそうめんが余ってて…」

「あはは、夏あるあるだよね」

 

そうめんと聞き、二人は頷いて理解する。

 

「実家にいた頃は夏休み終盤のお昼、ほとんどそうめんだった事があったなー」

「でも今年はあまり食べていないかも」

「どれくらい余っているの?」

 

小笠原の問いかけに日置は端的に答えた。

 

「半年分」

「「(半年…?)」」

 

その量に一瞬二人の理解力を超えた量で殴られ、一瞬フリーズした。

 

「え…半年…?」

「うん…」

 

日置はやや力無く答え、こうなった訳を話す。

 

「昨日実家から仕送りが届いて…一緒に入っていた荷物によるとね?」

 

そこで彼女はダンボールに同封されていた母親からの手紙を代読する。

 

『ーー(中略)ーー

ところで先日福引でそうめん一年分が当たりました。

うちじゃ食べきれないので半分ほどそっちに送ります。クラスの子とか沢山いるからなんとかなるでしょ?

それでは体に気をつけて。

母より』

「…だそうで」

「それで半年分も…」

 

事情を理解すると、改めてその量に苦笑する。

 

「言いたいことは色々とあるけどさ、とりあえずーー…

 

 

せめて麺つゆ送ってよー!!」

「「あはははは!」」

 

日置の冗談か本音かも分からない叫びに二人は笑った。

 

「もぉー。笑い事じゃないよ!」

「あはは、ごめんごめん」

 

彼女に思わず笑ってしまった小笠原は軽く謝罪をし、武田は送って来た理由に理解を示す。

 

「でも確かにその量を一つの家庭で食べ切るのは現実的じゃないし、こっちに送って来たのは最善策かも?」

「とりあえずみかんちゃん達に相談してみれば?」

「そだねー、行ってみよ」

 

そこで三人は同じ寮の別室で屯していた伊良子達に事情を説明する。

 

「おそうめんかぁ」

「確かにこの時期余りがちだよねー」

「そうそう」

 

伊良子の後ろで杵崎姉妹が頷きあう。

 

「そのまま食べなくてもお団子にしたり、ドーナツにできたりもするよ」

「おぉー、さすがお菓子屋さん」

 

小笠原は杵崎姉妹の話に感心した様子で二人の実家を思い出す。

 

「どれくらいあるの?」

「半年分」

「はんっ…!?」

 

日置から聞かされた量に伊良子達も先ほどの小笠原達と同じ反応を見せた。

 

「そうなるよね。さっきも見た光景…」

「なんでまたそんなに?」

 

あかねが聞くと、その答えが出る前に伊良子が推測をした。

 

「わかった!」

「宝くじが当たって浮かれた気分でつい目についた素麺を買い占めた…とか!」

「だとしたら浮かれすぎでしょ」

 

そんな彼女の推測に冷静に武田が突っ込むと、その可愛らしい推測に軽く笑いつつ、冗談にならない現実を日置は伝える。

 

「宝くじじゃないけど、お母さんが福引で当たったそうめんを送って来たワケ」

「なるほどー」

 

一瞬、ここにいる全員に幸運の持ち主である晴風艦長のことが過ったが、流石に関係がなさすぎたので全員が口に出すことはなかった。

 

「流石にその量を使い切れるかは分からないけど、色々作って試食会でもやってみようか」

「私も新作メニュー考えてみる!」

「ありがとー、バキュンと助かるよ」

 

日置は提案してくれた伊良子達に両手を合わせて感謝すると、武田達もその提案に乗る。

 

「私たちは試食会のことみんなに知らせて回ろっかー」

「食べる人集めないとそもそも解決しないしね」

 

そして彼女達でそうめんを使ったパーティーを模索すると、ほまれが提案する。

 

「あっ、そうだ!そんなにおそうめんが余っているならやってみたいことがあるの」

「消費アイデアなら大歓迎だよー」

「やりたいことって?」

 

武田が聞くと、彼女は大量の素麺を聞いて思いついた企画を話す。

 

「えっとね、『流しそうめん』なんだけど…」

「流し、そうめん…」

 

その提案に全員が『なるほど』と理解する。

 

「あれってまとまった量のおそうめんと人数が揃わないとなかなか出来ないでしょ?ちょうどいいかと思って」

「確かにいいかもね」

 

伊良子は流しそうめんと聞いて納得する。

 

「スーちゃんにも楽しんでもらえるかも」

「うんうん。まぁスーちゃんは食べ物なら何でも喜びそうだけど」

 

そう言い、小笠原の脳裏にはいつでも大喜びの彼女の顔が過った。

 

「じゃあ流しそうめんとそうめんスイーツでそうめんパーティ!…は、いいとして」

 

伊良子はそうめんパーティーの大まかな企画を決めると、そこで一つ懸念をする。

 

「流しそうめんの()()どうするの?」

()()がないとね…」

 

『アレ』と言うのは流しそうめんの流し台である。決して阪神もトラも関係ない。

流しそうめんの楽しみに八割はあそこにあると言っても過言ではない。

 

「そう言うのはヒメちゃんに聞いてみよっか」

「それだ!」

 

伊良子はこういう祭りの催し物が得意…というか自作で神輿を作れる彼女が適任だろうと全員が思っていた。

 

 

 

「流しそうめん?いいねー、粋だねぇ。昔やったことあるよ」

 

そして伊良子達に話を持ちかけられた和住はその提案に乗り気な様子で答える。

 

「それでね、流しそうめんのアレあるでしょ?ヒメちゃん作れたりしない?」

「そりゃまあ材料があればできるけど…」

 

和住はそこで現実的は話をする。

 

「やらしい話お金がかかる!」

「うっ、そうだよね…」

 

マネェがかかってくる話に日置もギクッとなって渋い顔をする。そもそも流し台は一回しか使えないので、その後にゴミとなって処分する必要があった。

 

「一番はやっぱり竹かなー、そこそこの太さと長さがいるし。直径一〇センチは欲しい」

 

竹は真っ直ぐ伸びるので、流し台を作るには十分だろう。しかし平野の多くが水没したこの国で基本的に植物というのは高くつく。

 

「まぁある程度はある物で出来るけどね。竹も樋を使えば安く済む」

「とい?」

 

日置は知らない言葉に首を傾げた。

 

「うん樋、ほら雨樋とかに使うやつだよ」

「ああ、あれかぁ」

 

説明をされて武田は納得する。確かに、あれであれば予備が倉庫を探せば出てくるだろう。

 

「あれならホームセンターとかでも買えるし、必要分買っても数千円くらいで…」

「…がいい」

 

その時、ほまれが言った。

 

「え?」

「竹がいいっ!」

 

彼女は拘りを見せて叫ぶ。

 

「流しそうめんは竹だから風情があるの!」

「ほっちゃんの古き良き好きがこんなところで爆発するとは…」

「でもそのこだわりはわかる…!」

「わかるんだ」

 

伊良子は唖然とし、和住は頷き、武田は苦笑する。

 

「お金なら…お金なら私が払うからっ」

「うーん…でも大きめの青竹って結構高いからなぁ…やるなら私も少し出すけど」

 

和住はそこでほまれに言うと、日置が挟む。

 

「ストップ!そもそも私のそうめん消費に付き合ってもらってんだから、ほっちゃんにお金使わせるのは悪いよ」

 

この問題を持ち込んだ彼女はほまれ達に言う。

 

「私に任せて!お母さんに連絡して準備費出させるから!」

「そこまでしなくても…」

 

彼女の行動に武田は少し困った反応をした。

 

「でも元はと言えば大量のそうめんを送りつけてきたお母さんが悪いんだよ?」

「それでも良かれと思ってしたことだろうし…」

「う〜ん…じゃあわかった。お金は私が払う!」

 

暴走しそうな彼女を軽く諌めると、彼女はそこで走って部屋を出る。

 

「ちょっと電話してくるから待ってて!」

「行っちゃった…」

 

伊良子達は彼女の行動力にやや唖然となりながら彼女が戻ってくるのを待った。

 

 

 

そして数分後、部屋に彼女が戻ってきた。

 

「…と言うわけで!お母さんにお金を借りて来ました!」

 

彼女はVサインをしながら資金調達をしてきた。

 

「将来ブルマーになったら返すからってことで!」

「出世払いってやつだね」

「それでも流しそうめんの案を出したのは私だし、私も少し出すよ」

 

ほまれは小遣いを使って全額払おうとする彼女に言う。

 

「気にしなくてもいいのに」

 

そんな彼女に伊良子達は協力的な姿勢を取る。

 

「じゃあ私も少し協力しようかな」

「私も!」

「まぁみんなで少しずつ出せば負担も減るだろうしね」

「私の実家に連絡して知り合いから安く入手できないか聞いてみるよ」

 

彼女達はそう言うので日置は思わず感極まる。

 

「ううっ、みんな…」

 

そして友人達の優しい心遣いに心から感謝をする。

 

「ありがとーー!」

 

最大の感謝を彼女はすると、伊良子達に飛びついた。

 

 

 

その後、詳しい内容を決めながら和住が紙に線を引く。

 

「さて、資金面も解決してくれたことだし、装置の設計しないと」

「やる場所も決めないとね」

「室内はできないし…」

「流しそうめんって、水道の近くじゃないと無理だよね」

 

伊良子の懸念に和住は返す。

 

「あぁそれなら大丈夫」

「ポンプを使って水を循環させるから、最初に決まった量の水を用意するだけで済むよ」

「へぇー、そんなことできるんだ」

 

自分の知らない知識にへぇボタンを押して相槌を打つ伊良子。

 

「じゃあ私たちはメニューを考えておくね」

「うん、日程とか決まったら教えるよ」

「またね!」

「こっちはこっちで宣伝活動しないとね」

「うん、手始めにメッセージ飛ばしておこうか」

 

細かく内容を決めると、小笠原と日置はグループチャットを開いてパーティー開催のメールを送る。

 

「えーっと、そうめんパーティーのお知らせーー…っと」

 

そして彼女のメッセージはクラスメイト全員に一斉に送られた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そしてさまざまな準備を行なって開催となったそうめんパーティー。

 

「わぁ、私流しそうめんなんて久しぶりだわ」

 

招待されたサクラは感心した様子で目の前に青竹を真っ二つに割って用意された流し台を見る。

 

「昔やったよね」

「懐かしいわね」

 

明乃ともえかにサクラは頷くと、流し台や盛り上がっている会場を見る。もえかの前ではスーが会場を前にはしゃいでいた。

 

「へぇ、粋な器ね」

 

そこで青竹を輪切りにした器を手に取って感心した様子でそうめんを啜り始める。

 

「乾燥そうめんって、三年くらい持つとかって聞くけど?」

「そうなの?」

 

綺麗にスーが箸を使ってそうめんを掬い上げたのを見ながらサクラは言った。

 

「らしいよ?詳しくは知らないけど」

「へぇ〜」

 

相槌を打って明乃はサクラに答えると、そうめんを啜る。何せ半年分だ。おまけに大量に消費できるだろうと主催者の日置はさらにそうめんを実家方取り寄せていた。会場にはクレープ・ドーナツ・団子と言ったアレンジ料理なども用意されていた。

 

「ああ、そういえばコイツ揚げたらベビース○ーラーメンになるのよね」

「そうなの?」

「聞いたことがある。小麦粉しか使っていないから実質素麺だって話でしょう?」

 

もえかが混ざって軽く豆知識を話すと、やや驚いた様子で意外な事実を知っていた。

会場ではわんこそうめんや時期遅れの七夕をしていたりと、盛り上がりを見せていた。

 

 

 

「みんな協力ありがとー!」

 

そして皿が空になってから日置は来てくれた生徒達に言う。

 

「なんとかまとまった量のそうめんを消費することができました!」

 

彼女はそういうと、参加者の中には今季のそうめん容量を超えた生徒達からの声も上がっていた。さすがに半年分のそうめんは重たかった。

 

「スーちゃんも楽しかった?」

「うん!」

 

明乃が聞くと、彼女は頷いた。

 

「明日も食べたい!」

『『『『(スーちゃん恐るべし…!)』』』』

 

そして彼女の胃袋に全員が唖然となり、日置は翌日の昼にも彼女とそうめんを食べた。

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