ハイスクール・フリート 星の下の約束   作:Aa_おにぎり

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唐突ですが、新章始めます。
普段のやつと並行して投稿する予定です。


Hypothetical Enemy
#1


あれから何年が経ったであろう。

 

海洋学校の学生だった私達は、実に濃密な学校生活を送った。

 

春のウイルス事件、秋の海上要塞占拠事件。

 

三年間で濃厚な学校生活を送った私達も、今やブルーマーメイドになって数年が経過していた。

 

私は海洋学校卒業後に海洋大学に入学し、卒業後はある国の平和維持部隊に配属された。親友やクラスメイト達と最後に撮った写真を胸ポケットに入れ、海の向こうにいる親友に今日も幸運を分けてくれと願いながら白一色に塗装された小型艇(Mk5特殊任務艇)に乗り込んだ。

 

『こちらオスカー2』

 

指揮用舟艇に乗り込み、私は指示を出す。

 

「こちらオスカー0、全艇距離を保ちつつ移動」

 

ウォータージェットの推進音を轟かし、広く茶色い川を高速で航行する。

 

場所は赤道直下の某国。

先の紛争が終結した事で国際停戦監視任務・及び平和維持活動を目的に我々は展開している。

この河川の領有権を巡って勃発した紛争の停戦監視を目的に行われているこの活動、それに海洋大学を出たばかりの私は配属された。

主な任務は河川警備。小型艇を使って決められたルートを、決められた時間に戻るだけの任務である。

 

『オスカー1より指揮艇。前方より多数熱源探知』

 

その直後、船体に大きな衝撃が走る。その衝撃の具合から、それがなんなのかはすぐに理解できた。

 

「オスカー0より全艇。前方に機雷原。その場で停船」

 

そこで彼女は操縦者に聞く。

 

「損傷は?」

「幸い大きなものはありません。ただ片方のウォータージェットがやられました」

「残りのウォータージェットで操縦できる?」

「やってみます」

 

そこで操縦者はエンジンの確認を行って船が動くのを確認する。

河の中、四隻の小型艇は停船すると最後尾にいた船が言う。

 

『こちらオスカー1。前方に接近中の目標多数』

『目標小隊規模、なおも増加中』

 

熱源探知に映るのは無数の人影と、その背後には対空戦車の姿があった。

 

「警戒!右方向、新たな熱源反応」

「方位一一〇(ヒトヒトマル)、移動目標探知」

 

すると次々と同じ舟艇の乗組員から報告が上がる。

 

『距離一三〇〇(ヒトサンマルマル)、移動目標多数。ホバークラフトらしい熱源探知。RPGの射程に入ります』

 

事実上囲まれた状態を前に彼女は無線で問う。

 

「オスカーより司令部、当該勢力増大中。発砲許可を求む」

 

無線で問うと、前線司令部から連絡が届く。

 

『交戦は許可しない。現在日本隊が急行中である。繰り返す、交戦は許可しない。全力で回避せよ』

 

その返答に軽く舌打ちをする。

 

「回避不可能、司令部聞こえているか?!」

『前方よりRPGらしき熱源!』

 

直後、森から放たれた弾頭が真っ直ぐ舟艇側面に命中する。

 

『オスカー2被弾!浸水確認!』

『前方よりさらに熱源。なおも増加中』

 

その直後、発煙弾発射機から熱源欺瞞用のフレア弾が発射されるも、数多の発射されたロケット弾が舟艇に命中する。

 

『オスカー2沈没!』

『オスカー3被弾!緊急ハッチ開きません!!』

『隊長!!』

 

悲鳴の無線を聞き、彼女は手元にあった赤いボタンに手を触れると後部のRWS(Mk38機関砲)から25mmの銃弾が発射される。

 

ッーーー!!

 

発射した銃弾は対空戦車に命中するが、効果はほぼ無く。発射された対空ミサイルが接近してくるのがやけにゆっくりと見えた。

 

ーーーー!!

 

そして放たれたミサイルは舟艇側面に着弾した。

 

 

 

それからしばらくした頃、この地域特有のスコールが降る中。沈没しかけた舟艇の緊急ハッチを開けて、中から一人のヘルメットを被った一人の女性が出てくる。

 

「…」

 

その女性はヘルメットを外すと、軽く切ったデコから血を流していた。

スコールが彼女に一日を洗い流すように降っており、そのスコールを呆然と彼女は見上げていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「接岸用意!!」

 

その日、太陽が燦々に照りつける横須賀港にて一隻のフリゲート艦(もがみ級)で乗組員が準備にかかる。

 

「宜候〜!」

 

その艦橋で航海長が巧みな操舵を行い、甲板ではもやい縄を持って乗組員が岸壁に立つ職員に投げると、簡単に縛って船を岸辺に止める。

 

「投錨!」

 

そして船から錨が降ろされると、任務を終えたブルーマーメイド隊員達がタラップを伝って降りてくる。

 

「んぁ〜、疲れた〜」

「二週間ぶりの陸だ〜!!」

 

地面に降り、彼女達は思い思いの時間を取る前に言われる。

 

「みんな〜、後で集合かけるから〜」

「「「「了解しました!」」」」

 

現在は『おんたけ』の艦長を務めている岬明乃に他の乗組員達はそう答えて後にした。

 

最後まで船に残った明乃は暫く海を眺めた後にタラップを伝って岸壁に降りる。

 

「んっ!んん〜っ!!」

 

そこで大きく腕を伸ばして声を漏らす明乃。ブルーマーメイド隊員になって早数年。随分と海洋学校のあの頃が懐かしいと思ってしまう年頃になってしまった。

 

「久しぶりの大地かぁ…」

 

そんな事を思っていると、

 

「ミケちゃん」

 

自分のよく知る人物の声が聞こえて、思わず明乃は横を向く。

 

「もかちゃん!」

 

幼馴染を前に明乃は嬉しさのあまり飛びつく。

 

「久しぶり〜!」

「こらこら、まだ二週間じゃない」

 

成績優秀だったもえかは、あの後海洋大学に進学し、去年卒業を迎えたばかりだった。

自分は海洋学校を卒業後に受かる気がしなかった上に幹部候補生としての意味合いが強く、ほぼ海に出ずに勉学に励む海洋大学にあまり価値を見出せなかった。

 

先に海に出て現場で仕事をしており、あまり長居することもないのでもえかとシェアルームをして暮らしていた。

 

「いやぁ、もえかさん。ブルマーにとって二週間とは長いのだよ」

「ふふふっ、そうね…」

 

もえかはその時、海洋学校入学時のあの事件をふと思い出す。あの時は一ヶ月、海の上で生活をしていた。

あれは例外中の例外ではあるが、確実に自分たちの中でどこか危機意識を持たざるを得ない経験を与えた。

 

「二週間…ね」

 

今回の海上警備任務を終え、日本近海の担当管区の平穏を確認した明乃。

 

「私たちが学生の頃は、みんな沿海域戦闘艦(改インディペンデンス級)だったのにね…」

 

そこでもえかはステルス性を意識した滑らかな全体を有する最新型のフリゲート艦を見る。

 

「いやぁ、新しい船だから良いものだよ。はぁ〜、航洋艦みたいに『全部手作業!』って感じが全然ないんだよねぇ」

「そうね…最近は古い航洋艦もどんどん退役させているみたいだしね」

 

まぁ流石に鳳翔や吹雪型、金剛といった現役百年選手になるような艦艇を酷使し続けるわけにもいかない。

鳳翔は記念館としての保存がすでに決まっており、金剛型も一斉に退役させる話が上がっている。

 

流石にニイハウ条約という百年近くになる条約が発行されていた時代に作られた艦艇と今の艦艇では、あまりにも乖離し過ぎているので退役を進めるのも無理はないともえかは思う。

 

「なんか…ちょっと悲しいなぁ…」

 

そんな話を聞き、明乃はもえかと共に岸壁を歩きながら言う。

無論彼女もそこら辺の事情はよく知っているし、現にアメリカの海洋学校ではすでに海洋学校の生徒はミサイル・フリゲート艦(オリバー・ハザード・ペリー級)で海洋学校の課程をこなしている。

 

「仕方ないよ。航洋艦じゃあミサイルを撃てないでしょう?」

「まぁね…仕方ない話だけど」

 

アメリカが持ち込んだミサイルの登場で戦艦の役割は打撃力という面でも失われる事となった。

日本政府に管理が移行した今の大和型。ミサイルを発射できる近代化改装が施され、アメリカのモンタナ級と肩を並べる世界一の打撃力を有していた。

 

そしてそれら超弩級戦艦と呼ばれる類の戦艦は、世界的に見ても海上整備局から各国海軍に所管が移行されており、戦艦にとりあえずミサイルを撃てるようにする改装を行うのが当たり前となっていた。

 

日本において、日本海軍に大和型を持って行かれるからその対策としてモスボール解除・建造したのが超甲型巡洋艦(あづま級)である。

 

「それで、今日はどうしたの?」

 

そこで明乃はもえかに横須賀に帰港した理由を聞いた。

司令部からの命令で三週間以内に帰還するように言われ、ハワイ島の方が近い海域で海上警備任務に就いていた明乃は横須賀に戻っていた。

 

「あぁ、ミケちゃんに渡すものがあって…」

 

そこでもえかは事前に今いる司令部から受け取った書類をを明乃に渡す。

 

「ミケちゃんからみんなに伝えておいてって、上から」

「ほうほう…」

 

そこで明乃は紙の内容を読んでふむふむと相槌を打ちながら書類を読む。

 

「…」

 

そして書類を読んでいくうちに段々と彼女の顔が曇っていく。

事前に話を聞き、同じ内容の書類を読んでいたもえかは明乃が何を考えているのか手に取るようにわかった。

 

「これって…」

「気持ちは分かるよ。でもみんなの安全の為なら…どうしてもね」

 

明乃はそこで再び視点を落とす。その書類に書かれていたのは、

 

 

『ブルーマーメイド隊員の外出時に関する規則』

 

 

中に書いてある文書を少し砕いた表現で言うと、『最近ブルーマーメイドをよく思っていない人たちが多いから、ブルーマーメイド隊員は安全の為に外出時に制服着ないでね』と言うものだった。

 

「やんなっちゃう」

「まぁね、ただ基地の前でデモとかあったりするから。あっ、因みに出る時は表も使っちゃダメだからね」

「げっ、そんなぁ…」

 

駅に一番近い場所が使えないと言う事実に明乃は肩を落とす。

 

しかし上が言わんとすることも分かっている。いくら海の上では最強とも言われるブルーマーメイドと言えど、陸地に上がればただの船乗りで、かつ弱い女性なのだ。

 

小型艇に乗って直接突入をするような隊員であれば多少の格闘技が使えるが、何も犯罪を犯していない一般人相手にやったら別の意味で面倒になることは確実だった。

 

ただし、婦女暴行といった大惨事になるくらいであれば事前にこちらで予防するしかないのが悲しい現実である。

 

「嫌だなぁ…後でみんなにこれを言わないといけないってことでしょー?」

「そうだね」

 

明乃は今頃小休止で、今後の休暇を楽しみにしている仲間達にこれを言う事に少し気持ちが優れない。

 

「はぁ〜、堂々と制服を着て街を歩ける頃が羨ましいね〜」

 

そんな事をぼやきながら、新進気鋭の若き現場叩き上げのエリート艦長である『横女の突撃艦長』として名高い岬明乃は、幼馴染の『横女の秀才作戦参謀』と共に基地をトボトボと歩いて行った。

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