マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート 真の博愛主義者チャート 作:まっしろたまご
魔法少女には基本、テリトリー、あるいは担当区域というものを有する。平たく言えば、『自分が魔女狩りで幅を利かせられる範囲』ということだ。しかしここ、神浜には1人イレギュラーな魔法少女が存在する。
西のトップのチームに新人にして加入、その後方向性の違いから脱退。基本的な拠点は水名区に構え、大東団地でフラフラとしているところを目撃され、いつのまにか北養区でアルバイトを始める。しかし、新人の魔法少女がいればどこにでも湧いて出る。そんな魔法少女。
それゆえに、やれ『チュートリアルのおねーさん』だの、『神浜のお遍路さん』だの、『まな板』だのと言った敬称や蔑称が飛び交っている始末。
だが、性格は冷静で情に厚く、どんな状況も表情ひとつ変えず適切な対処を行い、誰一人として見捨てない。冗談も通じるタイプで気の利いた返しをしてくれるし困ったことがあれば基本いつでも駆けつけてくれる……
これがまぁ東で魔法少女達に聞き込みをした結果。共通して好印象を持たれている上に、各地域のリーダー格とも面識があるっていう情報もあってビックリした。これなら先にひなのさんや十七夜さんを当たってみるのが正解だったかも知れない。そう思い立ったが吉日、『念のため』と受け取った2人の連絡先にそれぞれメールを入れておく。
それからしばらくして、日が暮れかかり始めた頃。十七夜さんから連絡があった。『ひとまず、挙げれる限りのことを挙げて添付しておく、さらに詳しく知りたいなら本人に会うか七海に聞くのをおすすめする』だ、そうだ。その後、先の2人の連絡先も送られてきた。
さて、どうするか。観鳥さんとしては、すぐに飛びつきたいぐらいだけれど、この人についてこれ以上詮索したとして、どうなるか。不利益を被ることはないだろうが、調べて作った新聞が誰かに届くわけでもない。というか魔法少女について扱ったのなら掲示できるものではないが。そもそも個人について詮索して新聞にするのはいかがなものかと、観鳥さんのなかの良心が訴えている。
良心と記者魂の間で葛藤していると、指のソウルジェムに淡い光が宿り、魔女の存在を告げた。
魔女結界内部にて、バズーカで使い魔を適当に蹴散らしたあと。奥に向かうにつれて、何かを弾くような音が聞こえてきた。
見れば、先客が一人で魔女と戦闘中だった。とんでもない密度で襲う触手を大きな盾で捌いている。助太刀に入った方が良さそうだ。幸い、観鳥さんのメイン火力は飛び道具だから、精度を気にしなければここからでも十分射程圏内。最低限盾の子に当たらないよう合わせて一発目。
不意打ちをまともに食らって、魔女が少しよろめく。一瞬、本当に一瞬。魔女のターゲットがこちらに移る。普通の魔法少女なら小休憩にもならない『隙』を、彼女は見逃さなかった。前に進む慣性を残しつつ、何かに引っ張られるように飛び上がり、落下する。
まるで迫撃砲のような挙動、素早い縦回転を纏い、魔女にダイレクトアタック。盾の重量に、回転の遠心力、プラスで重力まで加わればひとたまりもなく、魔女は消滅していった。
戦闘終了後、先の魔法少女が変身を解いて近づいてきた。
「や、助太刀ありがとね。助かったよ」
しかし、整理してみれば。全体的に長い毛髪、大盾の魔法少女、神浜市立大学附属学校の制服……つまりはそういうことだ。
「あなた、滝乃音めいさんですよね」
「そうだよ。タメ口でいい」
まさかこうもあっさりと出会えるとは。魔法少女は引かれ合うという運命というやつだろうか。
「滝乃音さんはどうしてここに?」
「南凪で、金髪サイドテールのカメラを持った女の子が私をお探しと聞いてね」
一旦、近くのベンチに腰を下ろして、いろいろとお話しを聞く運びとなった。道中の自販機で、「私、ブラックコーヒー好きなんだよ」と言いながら何の躊躇い無くおしるこのボタンを押して曰く、「ここの交換の人、よく間違えるんだよ」ということらしい。興味本位で観鳥さんも押してみたら、おしるこが出てきた。当然と言えば当然なんだけど、やるせない気持ちになった。
「さて、何から聞いたものか……」
「なんでも答えるよ。強さの秘訣からスリーサイズまで、なんでも」
「えぇ……じゃあそれで」
「了解」、と返事して観鳥さんと交換したおしるこを一口。少し思い出すような動作をした後、
「上から順に、108/130/95/80/85/102だよ」
「ダウト。明らかに多い」
「嘘。本当は測ったことない」
わざわざこれを思い出していたのかこの人は。いや、なんなんだこの人は。確かに戦闘中の状況判断や単純戦闘力は観鳥さんと比較にならないぐらいに高い、ということは言わずもがな分かる。けどそれ以上に奇人の印象が大きすぎる。なんなんだこの人は。
「なんなんだこの人は。って思ってるでしょ」
「図星だね。なんなんだこの人はって思ってるよ」
「まぁあれだよ。意味はわかんな人でもとりあえず危険は無さそうでしょ」
「それはまぁ確かにね」
観鳥さんの中で評価が変わり続けている。最初はカッコいいと思ったし少し前は呆れかけてたし、今は少し腑に落ちた。し、この人と話していると何か落ち着くというか、会話のテンポが心地良いような気がする。水名の人って聞いて少し抵抗があったけど、悪い人じゃないのかもしれない。
「ほんで、聞きたいことは?できたら本題に入ってもらえると嬉しいんだけど……」
「じゃあ、えっと……滝乃音さんはなんで水名の人なのに大東の魔法少女を助けてるんだい?」
一番疑問に思っていたことであり、観鳥さんの中で一番突っかかっていたこと単に東西間のいざこざと言っても、特に水名と大東の間には特に根深く残っている。それなのに、大東の魔法少女達からの信頼は厚かった。だからこそ、そこに至るまでの真意が気になる。
「観鳥ちゃん。『それ』は違うね」
「……その心は?」
「私は水名の魔法少女である以前に神浜の魔法少女だ。私が助けて回っているのはあくまで『神浜にいる魔法少女』。西とか東とかどうでも良いんだよ」
意外だった。それだけの信条でこうもフラットに行動できるものなのか。
「じゃあ、東西のしがらみのこと。あれについては?」
「そうだねぇ……強いて言うなら。あれは、クソだ」
「詳しく聞いても?」
「私も理由なく虐げられたことがあるってだけさ。それ以上でもそれ以下でもない」
「そうだったのか。言いづらいことを聞いたようで申し訳ないね」
「問題ないよ」
それからは、こんな踏み込んだ話ではなくて普通の雑談をして解散した。捜査……というか偶然会ってみて思ったことは、やはり不思議な人だということ、そしてどこかちぐはぐな印象を受けるということだ。行動は一貫して『誰かを助けたり、幸せにする』といった原理で構成されているように思えて、どこか打算的。だけど人助けが絡んだ途端急にそれ一辺倒になると言った様子。
『調べてみたけれど、よくわからなかった』という結果が観鳥さん的に一番いただけない。ここまで来たなら徹底的に洗ってみようじゃないか。
そういえば、別れ際に貰ったイチゴの飴。おいしかったなぁ。
▼めいちゃん
ついに南凪にも現れ始めた。
▼観鳥さん
あっぱれ記者魂。書いておいてなんだけど口調に違和感がある気がする。
▼みゃーこ先輩
しばらくメールを無視された挙句、『会えたので大丈夫です』と返信がくる。
▼重力を活かしたダイレクトアタック
飛鳥文化アタックと名付けよう。
▼イチゴの花言葉
先見の明、あなたは私を喜ばせる。