第1話 小さないのちと逢いまして。
アカデミー生の朝は遅い。午前の授業がなければ、夕方まで寝こけるのがデフォだからだ。
だがその日の俺は早起きだった。
なんとびっくり朝の8時に起床したのだ。
こんな時刻に覚醒したのは何年ぶりだろう。
記憶の底を掻き回してもすぐには見当たらないほどの珍事であった。
なぜそんな時間に目覚めたか。
どこぞのアホな鳥が人ん家の窓に思いっきりぶつかったからだ。
安い窓ガラスがバァン!と鳴り響いた時の驚きたるや。
朝5時までネトゲし、泥のように眠っていた人間が飛び起きるぐらい凄まじい衝撃だった。
「なんだぁっ!?」
敷きっぱなしのせんべい布団から跳ね起きた俺は、窓に開いた小さな穴と、バタバタ暴れる白い翼を認めた。
その羽は酷く小さくて、明らかにおとなの鳥ではなかった。たぶん、巣立って間もないか、飛ぶ練習を始めたばかりの雛鳥だろう。
俺は小さく舌打ちした。
「ひとン家のベランダに突っ込んでくんじゃねえよ……」
安眠を文字通りぶち破りやがって。
ブツブツ言いながら硝子戸を開く。
床にへたりこんだ雛と目が合った。
「げるる」
ソイツはいっちょまえに威嚇っぽい声を上げて睨んできやがった。
俺は息が止まった。
威嚇にビビったわけではない。
ソイツの見た目に心当たりがあったからだ。
真っ白くて綺麗な羽毛。
流線型の躰。
目の周りを縁取る青紫の毛並み。
世界広しポケモン多しと言えど、こんな特徴を備えているやつは1匹しかいない。俺は呆然と呟いた。
「……いやお前ルギアじゃね?」
「げるる」
まるで、『その通りだ』と言わんばかりに。
ちびルギアは汚い声で鳴いた。
この世には、現代人は誰も見たことがないが今も確かに生きていると伝えられるポケモンが複数存在する。
シンオウ神話の三神────アルセウス・ディアルガ・パルキアを始め、イッシュ王国の礎と成ったレシラム・ゼクロムに、生死を司るイベルタルとゼルネアスなど。
話の
それらは俗に伝説ポケモンと呼ばれた。
俺が住むジョウト地方にもやはりそういう物語がある。
それが海の神と渾名される巨鳥──ルギアなのだ。
伝承に曰く。
ルギアは人跡未踏の海底洞窟に隠れ住み、決して人前には出てこない…………。
更に曰く。
世が乱れる時、ルギアは暴風と共に現れ、世界を混沌の渦に陥れる…………。
ルギアについて書かれた書物は少ないが、どれを紐解いても物騒なことばかり記されている。
そして判を押したように、外見の記述が似通っているのだ。白い羽根、青紫の目元、山を覆うほどの巨体。
本によっては大昔の人が描いたルギアのラフスケッチも載っている。
もう一度雛を見やった。
体格こそ違うものの、それ以外の部分は挿絵で見たルギアにそっくりだった。
────もし本当に、
災厄を運んでくる伝説のポケモンが、俺の元にやってきたことになる。
掌サイズで。
六畳一間のボロアパートのベランダに。
「…………どーすりゃいいんだ」
俺は、途方に暮れた。
深夜に思いついた話を書きなぐってみました。
伝説ポケモンにもちいちゃい頃あったやろ。
手乗りサイズのルギアとか可愛い絶対かわいい。
見切り発車ですが書けるとこまで書いてみます。
よければ感想評価おなしゃす。