ルギア、拾っちゃいました。   作:じゅに

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第16話 おぞましき邪悪との遭遇。

 

 

 

 

 ようやく服も乾いた頃、地底湖からカブトプス(カブルー)が帰ってきた。両手の刃を上手に交差させてサングラスを載せている。イツキの表情がぱあっと輝いた。

 

「ぼくのサングラス…………!

 ほんとうにみつけてくれたんだね! ありがとう!」

「ぎしゅう」

 

 感極まりながら何度も頭を下げる少年に、カブルーはにこにこ顔で首を振った。

 

「気にしなくていいってさ。

 サンキュなカブルー。おつかれさん」

 

 湖水で冷やしといたミックスオレを渡すと、頼もしき相棒はじつに美味そうに音を立てて飲み干した。

 

ぷは〜(ぎしゅ〜)

「よっいい飲みっぷり! CM出れるぞっ」

 

 やんやと囃し立てる。不意に腰の辺りに熱い視線を感じた。サングラスをかけ直したイツキが、ベルトから吊り下げたフレンドボールをじーっと見つめている。

 

「どした?」

「ずっときになってたんですけど、このボールなんなんです? みたことない…………」

「ああ」

 

 チェーンからボールを外し、イツキの目の前に翳してやった。

 

「これはフレンドボールつってな。ヒワダに住んでる爺ちゃんから教わって俺が手作りしたんだわ。

 店にゃ並ばねえから、知ってる人は少ないけどな」

「てづくり!? ボールってつくれるんですか?」

 

 イツキは信じられないと叫んだ。

 

「嘘じゃねえって。

 昔はぼんぐりと道具さえあれば誰でも造れたんだと。

 でもどんどん技術が喪われていって、いまじゃ爺ちゃんと俺しか造れる人が居なくなっちまったんだってさ」

「すごいすごい! じゃあ、ゆくゆくはアシタバさんがあとをつぐんですか?」

「…………どーかな」

 

 俺は苦い笑みを浮かべた。

 まさにその件で、爺ちゃんと大喧嘩した記憶が甦る。

 跡継ぎになってほしい祖父とアカデミーで学びたい孫はどこまでいっても折り合いがつかなかった。

 半ば強引に、縁を切る覚悟で家を出た身としては、たとえ世間話でも迂闊なことは言いにくい。

 

 さてどう話を逸らそうかと思っていたら、水中からヤドンがのっそりと這い上がってきた。

 口をちゃむちゃむさせながら微睡んでいる。

 丁度いい。あのねぼすけを利用させてもらおう。

 

 リュックからドリームボールを取り出し、イツキに手渡した。

 

「こっちは爺ちゃんの作品だ。

 眠ってるポケモンを捕まえやすい。使ってみな」

「いいんですか?」

「いーんだよ。子供が遠慮すんなって」

「で、では」

 

 ぽおんと投げられたピンクのボールが、頼りない軌道を描きながらヤドンにヒットした。

 ヤドンは抵抗する素振りもなく吸いこまれていき、あっさり捕まった。

 

「世界でお前さんだけの、特製ドリボ入りヤドンだ。

 大事にしろよ?」

「はい!」

 

 イツキは頬を紅潮させながら、ドリームボールを押し抱いた。

 

 

⋈ ………………………………………… ⋈

 

 

「さあて、と。どーやって帰ろうかね」

 

 ぐるっと周囲を振り仰いだ。

 地底湖がある以外はとりたてて特徴のない鍾乳洞だが、一歩トンネルを出れば擂鉢山(スリバチやま)名物・地下迷宮が待っている。案内人も地図もなしに進むのは自殺行為だ。

 

 すると、イツキがふふんと胸を張った。

 

「ごしんぱいなく! ぼくのユンゲラーがかいけつしてくれますよ! このこはテレポートがつかえますから、いちばんちかいポケモンセンターまでひとっとびです!」

「────それはありがてぇ話だなあ」

 

 横からかけられた声に、俺たちははっと振り向いた。

 一体いつからそこに居たのか、男が岩にもたれて薄笑いを浮かべている。

 まばらに生えた無精髭、逞しい二の腕に荒んだ目つき。

 荒事に慣れきっているのがひと目でわかる。

 黒ずくめの服に縫いつけられたRのシンボルに戦慄が走った。

 

「ロケットだんっ!?」

「おお、オレ達を知ってんのか。話が早くて助かるぜ」

 

 男はゆっくり身を起こすと、イツキに向かって右手を差し出した。

 

「細けぇことは抜きにして、だ。

 おいガキ。お前のポケモンを寄越しな。

 大人しく従えば痛い思いはしなくて済むぜぇ?」

「っ!? ぜ、ぜったいにイヤです!」

 

 イツキは即答した。

 

「ユンゲラーはぼくのだいじなともだちです!

 だれにもあげません!」

「…………ほぉ」

 

 男がすっと目を細める。

 あまりに冷酷な眼差しに、イツキが小さく息を飲んだ。

 

「そうか、嫌か。なら仕方ねえ。腕ずくで奪うとするか」

「────おいおい」

 

 ボールを構える男に、俺とカブルーが立ちはだかった。

 カブルーは既に臨戦態勢に入っている。

 

「かのマフィア様はこんなちびっ子からもポケモンをぶん盗るのかよ? 節操もなけりゃ美学もねえな」

「あぁ? なんだテメェすっこんでろ。

 それともなにか? 仲間はずれが寂しいなら、テメェのポケモンも()()()()()()()?」

 

 あまりと言えばあまりな言い草に、こめかみに青筋が立つのが自分でも分かった。

 

「…………やれるもんならやってみろよ」

「その言葉、後悔すんなよ」

 

 男は嘲笑(わら)い、モンスターボールを2つ放り出した。ニューラと一緒に出てきたポケモンを見て、俺は目を疑った。

 

 情けなく跳ねる姿。赤い鱗に金のひげ。

 1000種以上いるポケモンのなかで、最も弱いと言われている魚────コイキングが、そこに居た。

 

「…………まさかそいつで戦うつもりか?」

「その通り。ただし────」

 

 男はピストル型注射器を取り出すと、無造作に引鉄を引いた。小ぶりなシリンジがコイキングに命中し、真緑の液体が注入されていく。

 

()()()()姿()()()()()()なぁ!」

 

 次の瞬間。

 コイキングの身体が白い光に包まれ、みるみる輪郭が変わっていった。

 地面を跳ねるだけだった肉体が、見上げるほど高く大きくなっていく。イツキが怯えた声で呟いた。

 

「ま、まさか…………」

「嘘だろ…………」

 

 俺の声も震えていた。

 

 馬鹿な。

 ありえない。

 理論上不可能とされていた《ポケモンの強制進化》を、マフィアが実用化しているなんて────! 

 

「……ああ、そうそう」

 

 男が不愉快な笑みを浮かべた。

 

「降参はいつでも受け付けるが、早めにやっとけよ? 肉片(ミンチ)になってから命乞いしても聞いてやれねえからなあ! ヒャハハハ!」

 

 男の言葉を裏づけるようにギャラドスが咆哮した。

 

 

 

 




というわけで第16話。
きな臭くなってまいりました。
このロケット団員はネームドではありません笑

お察しの通り注射型強制進化剤はポケスペのネタを引用してます。
ゲームでは経験アメ食べさせまくって進化させてる方も多いと思いますが、果たして我々とロケット団に違いはあるのか。
…………愛情があればオッケーてことで!

よければ感想評価おなしゃす。
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