ルギア、拾っちゃいました。   作:じゅに

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第23話 神が許しても許さない。

 

 

 

 

 悪党と真夏の魚は足が早いというのは全くその通りで、ついさっきすれ違ったはずのオッサンはどこを探しても見当たらなかった。

 

「畜生あの野郎どこ行きやがったぜってぇ許さねえからなぁああああ!!」

 

 喚きながら自然公園中を駆けずり回る。ヨーヨー釣りを楽しんでいた親子連れが怯えた顔で道を開けた。

 

 俺は怒っていた。ただ怒ってるなんてもんじゃない、掛け値なしの大激怒である。

 犯人はよりによって、俺の1番大切なものに手をつけやがった。物心ついた時から苦楽を共にした親友を薄汚い手で掠めとったのだ。

 

「命をもって償わせてやる……っ」

「まあまあ、落ち着けよアシタバ」

 

 歯を剥き出し、血走った目で獲物を探す俺をマツバが諌めた。

 

「感情的に走り回っても効果ないだろ? オレに任せてくれよ」

「任せるって…………」

「こう見えても、エンジュじゃ腕のいい占い師で有名なんだぜ?」

 

 言うやいなや、マツバの影がふわりと浮かび上がった。

 …………いや、それは正確じゃない。

 正しくは、マツバの()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 裾の長いドレスと魔女みたいな帽子をかぶったゴーストポケモン。名は確か────

 

「ムウマージ。

 ここにいた盗人がどこに行ったか知りたい」

 

 ムウマージは首肯し、目を閉じた。

 そのままうんでもすんでもない。

 焦れったくなってマツバを振り向くと、唇に指を当てられた。黙ってろということらしい。

 

「静かにしててくれ。神通力の最中だから」

「じんつうりき?」

 

 耳慣れない単語に瞬く。

 

「エスパータイプの技さ。オレみたいに頻繁に幽霊と接してると、稀にこの世ならざる存在とチャンネルが通じることがある。それを意図的に起こす術なんだ。どんな効果が得られるかはポケモンによって変わるが、彼女は失せ物の在り処を教えて貰えるらしい。とりわけヒト探しは大の得意だ」

 

 ムウマージがぱちりと目を開いた。確信的な表情を浮かべて南に飛んでいく。居場所が掴めたようだ。

 

 俺とマツバは頷き合い、同時に後を追いかけた。

 

 

⋈ ………………………………………… ⋈

 

 

 自然公園からコガネ方面に2キロほど進んだ街道の外れに、人目につかない窪地がある。そこには、犯人のおっさんともう1人先客がいた。

 

 子供だった。

 むき出しの地面に突っ伏して時折微かに呻いている。あきらかに尋常の様子ではない。

 

 追いついた俺たちを見て、おっさんが苦々しく吐き捨てた。

 

「くそっ、もう来やがったか!」

「観念しろクソジジイ。いますぐ降参して盗んだモン返せば半殺しで許してやる」

 

 仏のように心優しい提案を、しかしおっさんは一顧だにしなかった。

 返事の代わりにモンスターボールを5つ投げてくる。エレブーにブーバー、ゴルバット2体、そしてベトベトンが現れた。

 

「こそ泥にしちゃあやたら持ってんな」

「盗んだやつだろ」

 

 マツバが険しい声で囁いた。

 

「急いだ方がいい。あの子、おそらく毒に侵されてる。はやく治療しなければ不味いことになるぞ」

 

「う……」

 

 マツバの声が聞こえたのか、子供が微かに身を起こす。

 顔が見えた瞬間、俺たちは揃って、針を呑みこんだような衝撃に襲われた。

 

「ツツジ……っ!?」

 

 酷い顔色をしていたが間違いない、ツツジだ。

 なんで独りでこんなところに?! 

 

 俺たちの動揺を見てとったおっさんは下卑た笑みを浮かべ、ツツジの長い黒髪を掴みあげた。

少女が小さな悲鳴をあげる。

 

「おっとお? お知り合いかい? へへ、そいつは奇遇だなあ。なにも危害を加えるつもりはなかったんだがよぉ、このガキが掏摸は辞めろ、盗んだものを返せってしつっこくてなあ? ちょいとお仕置きしてやったんだ。

 おれっちのベトベトンの毒ガスを吸っちまってる。ちんたらしてたら手遅れになるぜ、へへへ…………。

 なあ、助けたいだろ? おれっちを見逃してくれたらこのガキは置いてくが、どうだい?」

 

「────!」

 

 俺は全身の毛が逆立つような怒りに目眩すら覚えた。

 掌に爪が食いこむほど強く強く握り締める。

 

「…………マツバよ」

「なんだ」

 

 応えるマツバの声は限りなく低かった。

 俺は思わず安堵した。

 よかった。

 こいつも俺並みにブチ切れている。

 

「いまから出すポケモンのこと、誰にも言わねぇでくれるか」

 

 フレンドボールを握る。

 カブトプス(カブルー)のじゃない、もう一体のほうを。

 

 頭の片隅では理解っている。出すべきではないと。

 人目に触れれば、隠し通せなくなるのだから。

 だがもう、怒りを抑えておくことは出来なかった。

 

 

 俺のポケモンを盗んだ罪。

 子供に乱暴した罪。

 子供を交渉に使った罪。

 

 それら全部を、贖わせてやる。

 

 

 マツバが笑った。

 

「オレがそんな口の軽い輩に見えるか? 

 安心してくれよ。君を裏切る真似は死んでもしない」

 

 俺はおもわず吹き出した。

 

「…………アンタ、時々口説くようなこと言うよな。

 でも、ありがとよ」

 

 力強くスイッチを押す。

 

「来い! ちびすけ!」

 

「げるるるるるるる!」

 

 伝説の雛鳥が、雄叫びをあげて現れた。

 




というわけで第23話。
ようやくルギアちゃんがバトります。いやあここに来るまで長かった。
まだまだルギアちゃんのタイプも持ち技も解明できていない主人公ですがどうやって戦うつもりなのか。

そしてツツジちゃんろくな目にあってないね、ごめんね。
おませな女の子は酷い目にあうのが似合っちゃって困ります。

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