ルギア、拾っちゃいました。   作:じゅに

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第3話 なんとか学校に行きますと。

 

 

 

 

 キキョウアカデミーは築300年の歴史を随所に感じさせるジョウト一の名学府である。

 伽藍を改造した校舎はゆとりある構内と荘厳な佇まいを有し、門扉を潜った者すべての背筋を正さずにはおかない。

 

 ────まあ、つまるところ。

 

 古くて広くて死ぬほど使い勝手が悪い学園ということだ。

 そして、最低でもあと2年通うことが確定している地獄でもある。

 

「人多いな……」

 

 独りごちながら、人波を掻き分けた。

 午前中にガッコーに来るのは何時ぶりだろうか。

 新入生らしい集団が、何が面白いのかバカみたいに笑いながら通り過ぎていく。

 

 おもわずリュックを背負い直した。

 まかり間違ってもコイツを──ひいては中身を──落っことすわけにはいかない。

 といって、いかにも大事そうなものを運んでいるように見られるのもマズい。

 

 平常心だ、平常心。

 焦るな、慌てるな。慎重に歩を進めよ。

 

「あの人なんであんなへっぴり腰なんだろ」

 

「さあ?」

 

 そんな会話が真横でされていることにも気づかないまま、俺は研究室(ゼミ)への道を急いだ。

 

 

⋈ ………………………………………… ⋈

 

 

 幸い、研究堂(元伽藍なので棟ではなく堂という)までは誰にも会わずに辿り着けた。くたびれたシャツの袖で額を拭う。入口横には堂々たる筆蹟で、

 

古代神話研究室

 

 と書かれている。俺はここの室長補佐として、毎日毎日かび臭い古書を翻訳する日々を送っているのだ。

 俺が背中のちびをすぐにルギアと見抜けたのも、そうした苦行のおかげである。

 

 ノックをしようと掲げた右手は用をなさなかった。

 扉の方から勝手に開いたからだ。

 

「おや、これは珍しいこともある。

 よもやアシタバの顔が昼日中から拝めるとは」

 

「っ先輩」

 

 扉を開けたのは4年のレホール先輩だった。

 

 褐色の肌、知性豊かな瞳、大雑把に括った青髪。

 そしてメリハリの効いた肉体(ナイスバディ)

 研究に疲れた俺を癒してくれる美の女神である。

 

「貴様はてっきり、吸血鬼の類かと思っていたぞ。

 日が沈んでからでないと動けない生き物だとな」

 

「ンなわけないでしょ」

 

「ふん?」

 

 先輩は片眉を上げ、くすりと笑った。

 皮肉げな笑い方が彼女には良く似合う。

 

「それで? 何用だ。教授は1日不在だぞ」

 

「あー……むしろそれはチャンスかも。

 先輩、この後時間あります?」

 

「時間というのは作るものだ。悪巧みか?」

 

「……ですか、ね」

 

「ならば付き合おう」

 

 学園きっての才女は身を引き、中に入れてくれた。

 

 

⋈ ………………………………………… ⋈

 

 

 研究室はパズルのピースのごとき複雑な形をしている。

 部屋の造りは至極単純な矩形なのだが、うずたかく積まれた本の塔が人の通行を遮っているのだ。

 ここはいつ来てもこんな調子である。

 片付けても片付けても、次の日には元に戻っている。

 責任者の教授からして、次々に書物を引っ張り出しては放置するタイプの人間だからだ。

 ちなみに先輩も教授寄りなので、2人の議論が盛り上がった時はもう悲惨だ。

 泣きながら雪崩れた大量の本と格闘する羽目になる。

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 俺たちの他に誰もいないのを隅々まで確認してから、研究室の角──俺の机に先輩を手招きした。

 出入口からは最も遠く、最も見えにくい位置である。

 

 リュックを置き、先輩を見つめた。

 

「この中に、ヤベェもんが入ってます。

 ガチでヤベェのでかなり驚くかと思いますが、お願いですから騒がないでくださいね」

 

「いいのか? そんなにハードルを上げて」

 

 先輩は愉快そうに目を細めた。

 

「それで出てくるものがありふれた稀覯本だったりした日には、ただの吸血鬼からダダ滑り吸血鬼に格下げだぞ」

 

「…………んじゃ、見せますよ」

 

 俺は意を決してリュックを開き、雛を見せた。

 ちびルギアは知らない人間を見上げて「げる」と鳴き。

 先輩は息を飲んでから、やおら振り返り、

 

 

 

 

 

 

「ウッヒョー!!」

 

 

 

 

 

 とガッツポーズした。

 

 

 ばかやろう。

 

 

 

 

 




というわけで第3話。
どーしても出したくて出しちゃいましたレホールさん。
SV本編からおよそ10年くらい前だと思ってください。

主人公の名前はアシタバです。覚えなくていいです。

他にもネームドキャラが出てくる予定。
よければ感想評価おなしゃす。
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