【悲報】めちゃくちゃいい匂いのする美人はかつての同級生でした。
「えっ、同級生? えっ、それに気づかず綺麗なおねーさん呼びを? あまつさえナンパまで?」
「やめろォ!」
俺は耳を塞いでしゃがみこんだ。
改めて言うな!
恥ずかしすぎて埋まりたくなるんだからっ!
顔を真っ赤にして悶えていると、とんとん、と肩を叩かれた。
「アシタバくん」
「ナギ…………さん」
固まる俺にナギは、
「ま・ぬ・け♡」
素晴らしい笑顔でトドメを刺してきました。
よぉおし
「アシタバさんでたっぷり遊んだところで現場に行きましょうか」
遊んだって言った。
遊んだって言ったぞコイツ。
「いい性格してんなオメェ…………」
恨みがましい目を向けると、ダイゴはきらっきらの笑みで言った。
「よく言われます♡」
「くそガキがァ!」
ダイゴの小ぶりな尻を蹴り飛ばそうとしたら軽やかに避けられた。避けんな!!
しばらくムロの空を飛んでいるというナギを残して、俺たちは石の洞窟に向かった。
外側からは小さな石の山にしか見えないが、中に入るとうねうね曲がりくねった隧道が数十メートルにわたって伸びている。一本道で迷うことが無いうえに、床や壁など至るところから鉱石が出るので、ダイゴは暇さえあればここに潜って趣味の鉱石採集に勤しんでいた。
「アシタバさんもご存知のとおり、ここで採れるのは大抵が進化の石です。ところが昨日は、化石を3つも掘り当てたんですよ」
「3つ!?」
驚きの声がわんわん反響した。
化石というのはそう簡単に出来るものじゃない。
1つ掘り当てるだけでも僥倖だというのに、それが一気に3つも出てくるなんて。
「聞いたことねえな」
「僕もです。流石に目を疑いましたよ」
「なにが出た?」
「根っこと爪の化石が1つずつ。もう1つはまだ掘り出し切れてなくてわかりません」
「掘り出せない? お前が?」
ダイゴの発掘能力はずば抜けて高い。プロの発掘士に引けを取らないレベルだ。
「なにがあった?」
「あったというか、今も居るというか…………」
「
「百聞は一見にしかず、見ていただいた方が早いですね。急ぎましょう」
ダイゴが急ぎ足で先を歩いた。
案内されたのは隧道の途中にある石室だった。昔は偉人の墓だったらしく、明らかに人の手で積まれた石壁が周囲を取り巻いている。
奥の壁には数行の文句が刻まれているが、遺跡専門の考古学家が調べても、数千年前の文章であると分かっただけで文面の解読には至っていない。
その壁文字の前に、複数のメレシーが身を寄せあい、入ってきた俺たちを威嚇していた。
まさかと思いながら指をさす。
「…………アレか?」
「アレです。発掘しようとすると必ず彼らが阻んできて、作業が進まないんです」
ダイゴは大真面目な顔で頷いた。
「彼らは交代で眠り、片時も化石から離れません。近づくと攻撃してきます。無理にどかすわけにもいかず、いったいどうすればいいのかと…………」
「追っ払えばいいじゃん」
「できませんよそんなこと!」
発掘大好き石マニアが目を剥いて声を張り上げた。
「あんなに愛おしくて可憐な岩ポケモンに攻撃しろっていうんですか? あなたそれでも人ですか? 人の心をどこに無くしてきたんです!
鬼! 悪魔! 外道! 泣き虫茹でエビ!」
「お前次にそれ言ったらマジでビンタするからな」
据わった目でツッコミを入れる。
「別に倒せたぁ言ってないだろうが。乱暴なのがイヤなら発掘のあいだだけ眠らせるとかいくらでも方法はあるだろ?」
しかしダイゴは首を縦に振らなかった。
────最悪だ。こいつの悪癖が全力で発揮されはじめている。
俺はこめかみを揉んだ。
この青年、頭はキレるし人当たりもいい。さっきも言った通り発掘の腕も超一流だ。
しかし無視できない欠点がひとつある。
それは《岩タイプにとことん甘くなる》ことだった。
岩タイプが現れると、どんなに難しい作業をしていてもぽーんと放りだして構いにいったり写真を撮りまくったりする。他の人間が代わりに発掘しようとすれば怒るし、追い払おうとしても怒る。はなはだめんどくせェ男なのだ。
「ンじゃどーすんだよ?」
「それを一緒に考えたくて呼んだんです。アシタバさんなら思いつくでしょ? あの子たちを傷つけずその場からどかさず化石を掘り出す方法を」
きっぱりニコニコ丸投げされ。
俺は殴りたくなる衝動を必死で押し殺した。
というわけで34話。
ダイゴくん金持ちの御曹司なら上品だけどクッソわがままなんやろなあ、と妄想しながら書いています。
いままで2話3話ぐらいストックがあったんですがお盆忙しすぎてストック切れました。今後は毎日更新できなくなるかもです。
のんびり待っていただけると幸いでござる。
よければ感想高評価おなしゃす!