ルギア、拾っちゃいました。   作:じゅに

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第43話 デボンコーポレーション。

 

 

 

 

 

 裏口は2人のロケット団員に封じられていた。足元に煙草の吸殻が散乱している。ダイゴに気づくと、薄笑いを浮かべながら近づいてきた。

 

「なんだァてめぇ?」

「ガキは帰んな」

 

 オリジナリティゼロの悪罵をぶつけられても、ダイゴは平然としたものだ。悠々たる仕草でボールを構え、スイッチを押した。

 

 中から現れたのは青い鋼鉄ボディのメタングだった。悪党どももボールを取り出す。しかし我らが御曹司殿は、ポケモンを呼ぶ暇など与えなかった。

 

「突進」

 

 目にも止まらぬ速さでメタングが急迫し、男たちの鳩尾を殴りつけた。聞くに絶えない呻き声をあげながら地べたに突っ伏していく。どちらも大量の吐瀉物を撒き散らしていた。

 

「念力」

 

 団員の肉体と吐いたもの、そして吸殻が空中に浮かび上がり、裏口から離れたところに放り出された。吸殻とゲロはご丁寧に男どもの口の中に詰めこまれている。さぞ地獄みたいな味だろうが、痛みに震える手下たちは吐き出すことも出来なさそうだった。

 

 さすがに憐れを催していると、隣でクチートが「ほう」と笑った。

 

『あのニンゲンやるな。容赦のなさがいい』

 

 絶賛である。

 吹けるものなら口笛でも吹きそうなくらい上機嫌だ。

 野生の倫理観こあい。

 

 というか、容赦なくこんなことをやってのけるダイゴがヤバい。穏やかな顔をして、実は相当キレているようだ。

 

「さ、行きましょうか」

「お、おん」

 

 ────何があってもコイツだきゃあ怒らせないでおこう。

 

 固く心に誓い、社内に突入した。

 

 

⋈ ………………………………………… ⋈

 

 

 1階ロビーのそこかしこにロケット団員の姿が見えた。

 数は多くないと表の社員は言っていたが、すると見張りに人員の大部分を割いているのだろうか。

 

「どうする? 全員ぶち倒していくか?」

「ですね。追われて挟み撃ちにされたり逃げられる方が面倒だ」

 

 ダイゴ曰く、化石復元を担当している開発研究部門は3階にあるらしい。

 ロビーは楕円形を描いており、左右どちらからでも奥の廊下に行くことが出来るが、隠れながら進めるような構造にはなっていない。遅かれ早かれ見つかるくらいなら、こちらから殴りかかったほうが事はスムーズに運ぶだろう。

 

「んじゃ俺右から」

「僕は左から行きます」

 

 それだけ決めて、2人同時に物陰から飛び出す。すぐにダイゴたちの方角から醜い悲鳴が聞こえてきた。

 

「止まれ! なんだガキども、何しに来やがった!」

 

 ロケット団員が4、5人バラバラと集まってくる。クチートがぱきりと指を鳴らした。

 

『丁度いい。暴れたくてウズウズしてた所だ』

 

 よほどメタングの攻撃に感銘を受けたらしい。地を蹴って高く飛び上がると、大顎をぐるんっ! と振り回した。

 

『おらァ!』

「ぶへえっ!?」

「ぐはあっ!」

 

 閉じたままの大顎に思いっきり横っ面を殴られて、大の男2人が吹っ飛んでいく。呆然と立ち竦む3人にクチートは次々噛みついていき、あっという間に行動不能にさせた。

 

『なんて()応えのない奴らだ』

 

 不満そうに吐き捨てる。宥めつつ奥へ向かうと既にダイゴたちが待っていた。

 

「早かったですね」

「まあな。エレベーターで行くのか?」

 

 ダイゴは笑って首を振った。もし既に俺たちの侵入がバレていた場合、エレベーターなんて使ったら待ち伏せされてしまうと言われた。たしかに。

 

「というわけで、階段を使います」

 

 手近な扉を押し開け、幅広い階段を一気に駆け上がる。クチートには随分高い段差だが、先程見せた跳躍力を遺憾無く発揮し、数段飛ばしで登っていた。

 

「足腰の強いクチートちゃんですね。洞窟でバトルばっかりしてたのかな」

「…………たぶんな」

 

 曖昧な言葉で相槌をうった。

 

 案外ダイゴの推理は当たっているかもしれない。女王のそばに侍女として控えていた時よりも今の方がずっと活き活きして見えるのは、生来バトルが大好きなんだろう。

 

 ディアンシーが俺に同行せよと命じたのは、俺を監視する為だけではなくて、彼女のこの気質を慮ってのことだったのだろうか? 

 

「止まって」

 

 ダイゴに止められ、思考が中断された。いつの間にか3階に着いていたらしい。

 扉に耳を当て、廊下の音を聞き澄ましている。

 

「何人かが巡回しているようです。ロビーにいた人数より多そうだ」

「ってことは、奴らの狙いもここなのか」

「かもしれません。ですが…………」

 

 ダイゴが訝る声を上げた。開発研究部門はその名の通り新商品や新技術を開発するための部署である。まだ世に出回っていないという意味では確かに希少な品々だが、裏を返せばそれはまだ商品として成り立たない代物ばかりということだ。

 

「何が狙いなんだ?」

 

 考え込んでしまったダイゴに俺はパタパタ手を振った。こんなとこで足止めを食らうわけにはいかない。一刻も早くアマルスの無事を確認せねば。

 

「ここで考えたってわかんねーよ。

 リーダーっぽいやつ捕まえて吐かせればいいだろ?」

「────それもそうですね。行きますか」

 

 ダイゴは勢いよく扉を開けた。

 

 

⋈ ………………………………………… ⋈

 

 

 廊下には、想像に反してロケット団の姿が見えなかった。代わりに白衣の男たちがふらふらした足取りで歩いている。部門の研究者たちらしい。ダイゴが呼びかけても無反応で、口の端から涎を垂らしながらどこか恍惚とした表情を浮かべていた。

 

 明らかに尋常の様子ではない。

 

「操られてる?」

「そのようです。催眠術かなにかを掛けられたんだ。急ぎましょう。今の彼らはなんでもする状態にある。一斉に襲いかかられたら大変ですよ」

 

 不気味な男たちの脇をすり抜け、部屋を一つ一つ見て回る。最後に辿り着いたのは《復元室》と書かれた部屋だった。

 

 自動ドアが開き、中の様子が見えた途端。

 クチートがはっと息を飲んだ。

 

 部屋には、ロケット団の男が4人と、幹部らしい赤髪の女がたむろしていた。

 女の傍には白いアマルスが座らせられ、ぐったりと膝に顎をもたれ掛けている。

 

 細い首を撫でながら、女が「あら」と片眉を上げた。

 

「なあにボクちゃん達。どこから入ってきたの? ロビーで待たせた坊やたちは一体何をしてるのかしら」

 

 美しい女だった。切れ長の瞳と細い鼻筋が、完璧なバランスで顔面に配置されている。

 しかし唇を彩る紅が余りに毒々しすぎて、女が普通ではないことをひと目で表していた。

 

『ゴーシェナイト様に触れるな、女郎(めろう)っ!』

 

 クチートが吼える。憤怒に形相が変わっていた。

 女はくすくす笑った。

 

「あらあら、可愛いポケモンね。

 なんだかとっても怒ってるみたい。お腹が空いているのかしら?」

『…………!』

 

 激昂したクチートが殴りかかる。しかし、まわりの団員がそれを許さなかった。

 一糸乱れぬ連携であるいは女を守り、あるいはポケモンを繰り出してクチートの攻撃をいなしている。

 結局クチートは一撃も入れることが出来ないまま悔しそうに戻ってきた。

 

『クソっ!』

「手練ですね。いままで倒してきた雑魚とはわけが違う」

「────だな」

 

 ダイゴが真剣な眼差しで敵を見据える。

 男たちは手持ちを並べ、人間とポケモンの壁で女を背後に庇った。

 シードラ、オコリザル、オニスズメ。どれもふてぶてしい面構えをしていて、相当鍛えられているのが理解った。この布陣を崩すのは容易じゃない。

 

 俺は跪き、クチートに耳打ちした。

 

「な。いまだけ俺の指示を聞いてくれないか」

『なんだと!?』

 

 クチートが目をギラギラさせながら睨めつけてきた。

 だが俺は1歩も引かず、真正面からその視線を受け止めた。

 

「いま戦って分かったろ? 力任せに顎をぶん回したり、無策で突っこんで倒せる相手じゃない。おまけに数的不利もある。戦術が必要だ」

『…………』

「俺と君なら、絶対勝てる」

『……………………』

 

 クチートは歯噛みしながら、それでも俺の話を黙って聞いてくれている。

 

 数秒後。

 再び敵に向き直り、ぐばりと大顎を開いた。

 

『敗けたら噛み殺してやるからな』

「…………ありがとう!」

 

 ダイゴに目線を送る。ダイゴも得たりと頷いた。

 

「タッグバトルは初めてですね」

 

 メタングが拳を握り、クチートが腰を落とす。

 

 女が愉快そうに笑った。

 

「行ってらっしゃい、私の愛しい部下(オトコ)たち」

 

 

 

 

 

 




というわけで43話。
ダイゴさん容赦ない。容赦ないダイゴさん書くのめっちゃ楽しいです。

クチートちゃんバーサーカーみたいな書き方してますが可愛い子がバトル鬼つよって萌えません? 萌えるよね、わかる。

よければ感想高評価おなしゃす!
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