ルギア、拾っちゃいました。   作:じゅに

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第6話 ようやく調査となりますが。

 

 

 

 

 ────仁義なき戦いは両者引き分けで幕を閉じた。

 というか、引き分けにさせられた。

 痺れを切らしたレホール女史にそこらへんの石塊(いしくれ)でぶん殴られたからである。

 

 めちゃくちゃ痛かった。

 

「ぼ、暴力反対……」

「げるるー……」

 

 ルギアと一緒に抗議すると、先輩はにっこりして、

 

「足りないようならお好きなだけ殴ってやろうか」

 

 と石塊を持ち上げた。さっきの1.5倍はデカい。

 

「すみませんでした」

 

「げう」

 

 1人と1羽が光の速さで頭を下げる。

 麗しき美女はやれやれと吐息して、眼鏡をかけ直した。

 

「学問の徒たるもの、己の感情は捨てて事実をありのまま見つめることが肝要だ。

 腹が膨れたならいよいよその子の生態調査にとりかかろうじゃないか」

 

「うす。

 ……てなわけで、痛いことはしないから協力しろよ」

 

「げっ」

 

 ルギアが、まあよかろう、といった面持ちで鳴いた。

 

 念の為、俺はもう一度周囲を見回した。

 アルフ遺跡は3つの小洞窟と1つの大洞窟からなる遺跡群である。

 俺たちが居るのは大洞窟の裏手、コの字型に窪んだ砂地だ。人っ子一人見当たらないし、近づく者が居ればすぐに分かる。

 

「誰もいないな?」

 

「はい」

 

「では始めよう。

 最初はそうだな……この子の属性(タイプ)から調べてみようか」

 

 俺たちはしばしの間黙考した。

 

 伝説ポケモンのタイプ考察。

 

 これは常に界隈を騒がせている難問である。

 なにしろ実物を捕らえた者が居ない。

 目撃情報や数百年前の書物はあっても、それらは大抵、尾びれ背びれがくっついて根拠たりえないのだ。

 大陸を引っ張っただの、この世界総てを創っただの云われて鵜呑みにできようか。

 それは流石にポケモンに夢を見過ぎってもんだろう。

 

 話が逸れた。戻そう。

 さて、ルギアのタイプだが、海に棲んでいるのだから水タイプだと主張する一派と、あくまで飛行タイプだと頑張る一派で数十年争っている。

 さらに水派のなかでも単一派と複合タイプ派に別れており、迂闊に触れるとクソ面倒くさい論戦に巻き込まれてしまうので、界隈では《ルギアの螺旋問答》とか言われている。読者諸君も迂闊に尋ねたりしないように。

 

「……ちなみに先輩は()()です?」

 

「空」

 

「あー……」

 

 つまり、彼女は飛行タイプだと考えているわけだ。

 

「貴様は?」

 

「水龍派っす」

 

「ギャンブラーだな」

 

 先輩が短く笑った。

 水派のなかでもドラゴンとの複合を唱える学者はごく少数なのだ。

 

「──では互いの仮説を確認したところで検証に移ろう」

「はい」

 

 俺はリュックから、トランシーバーによく似た機械を取り出した。

 手に収まるサイズの長方形で、小さなモニターとダイアルが複数付いている。

 てっぺんのアンテナをルギアに向けると、ちびすけの毛が逆立った。

 

「げるる……っ」

 

「警戒すんなって。痛くないっつったろ?」

 

「げ……」

 

「こいつはお前さんの属性を調べる道具さ。

 タイプチェッカーってんだ。

 このつまみを捻ると特殊な電波が流れて、対象を包囲するんだよ」

 

 赤いダイアルを回すと、キュィイ……と音がして測定波が飛んだ。

 これはかの有名なオーキド博士が開発したデバイスで、ポケモンが属性ごとに異なる電磁波を纏っている性質を利用したものだ。

 

「んで、このボタンを押すと、お前のタイプが分かるってわけさ」

 

 ポチッとな。

 測定中の文字が点滅する。

 シーケンスバーが少しずつ埋まっていくのを見ると、いやでも心臓が高鳴った。

 

 とうとう、ルギアのタイプが分かる。

 世界の誰も知り得なかった、知りたいと願った情報が、この手に。

 

 ピン! と完了音が鳴り、俺はおもわず息を詰めた。

 たぶん、横のレホール先輩も緊張していたろう。

 

 しかし、次に表示された文字を見て、俺たちは目を丸くした。

 

「そ……」

 

「測定不能ぉ……!?」

 

 何度目を擦っても、浮かんでいる文字は変わらない。

 測定失敗(エラー)ではなく、測定不能(アンノウン)

 こんな結果を見るのは初めてだった。

 

「ち、チェッカーの故障ですかね?」

 

「……確認しよう」

 

 レホールさんが手持ちのストライクを計測する。

 いくらも経たず、虫・飛行タイプと検出された。

 

「…………」

 

「正常だな」

 

「ス、ね」

 

 俺は呆然と頷いた。

 2人で顔を見合わせる。

 

「────こう出るとき、原因は2つある」

 

 先輩が形のいい指を2本立てた。

 

「1つは、対象が弱すぎて電磁波を捕捉できなかったケースだ。これはさして珍しくない。

 たとえば産まれたばかりのポケモンや瀕死の個体にチェッカーを使うと、纏う電磁波が微小すぎてこういう表示になることがままあるんだ」

 

「もう1つは?」

 

「その()だ」

 

「逆?」

 

 先輩が首肯する。

 

 

「対象が強すぎて、チェッカーの測定範囲を振り切る場合だ。……滅多にあることではないがな」

 

 

 俺は生唾を飲みこんだ。

 前者ならいい。

 だが後者だった場合は────。

 

 恐る恐る振り向くと、ルギアが「げうるぅ?」と喉を鳴らした。

 

 

 

 からあげを取り合った生き物が、急に遠い存在に思えてきた。

 

 

 

 

 




というわけで第6話。
伝ポケは小さくても伝ポケなのだ、という一端が少しでも表現できてたらいいんですが。

チェッカーの話は全くの捏造、独自設定です。
オーキド博士はこれを使って151匹を分類しました。博士すごい。

よければ感想評価おなしゃす。
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