「えーと…………どうします?」
予想外の結果に半ば混乱し半ば怖気づく俺だったが、対するレホール先輩はますます探究心が刺激されたようで、瞳の輝きがいや増していた。
あかん。
こうなったらもう止まらん。
「
アシタバ、貴様の手持ちを出せ」
ほらね。
「……了解」
ポケットからフレンドボールを取り出す。ルギアがふんふんと嗅ぎにきた。見慣れないものはとにかく匂いと硬さが気になるらしい。ボールごと手を噛まれかけて、慌てて後ずさった。
「やーめーろって。いま出すから」
開閉スイッチを押し、空中に放る。ボールが2つに割れて、無二の親友が飛び出してきた。
焦げ茶色の外皮。
鋭く曲がった両手の鎌。
平たい頭部と細身の胴体。
古代の海底に潜んでいたとされる甲羅ポケモンが着地する。
「よろしく頼むな、カブルー」
「ぎゅしっ」
カブトプスのカブルーが頼もしく頷いた。
────こいつとの付き合いは長い。5歳のときに参加したニビジムの林間学校まで遡る。お月見山での発掘体験中に掘り当てた化石を復元して以来、片時も離れることなく過ごしてきた自慢の相棒なのだ。
当時は引率のジムトレーナーに大層驚かれ、博物館に寄贈するしないで大いにモメたが……ここでは割愛するとしよう。
カブルーは慎重な性格の持ち主で、滅多なことはしでかさない。いまも新参者に油断のない視線を注ぎながら、何が起きても対応出来る距離を保っている。
対照的なのがちびすけだ。好奇心も露わに近づこうとしてはカブトプスに間を空けられている。それを何度も繰り返すうちに、いつの間にかくるくると円を描くように追いかけっこしていた。この懐っこい性格は
「大胆だな。迂闊に近寄ったら攻撃されるかもしれないという不安はないようだ」
「図太い奴ですね」
呆れる俺に先輩が「どうかな」と意味深な声を上げた。
「それだけ敵のない生涯だったのかもしれんぞ? 恐怖を感じる遺伝子は環境によって造られる。ルギアが深海の王として君臨していたことを示す片鱗とは思わんかね」
「…………おっかねえ」
俺は、自分の顔が引き攣るのを自覚せずにいられなかった。
パワー測定は、カブルーに作ってもらった岩塊で実験する。
まずストーンエッジで大地の岩盤を隆起させ、鎌で斬り払い、大小様々な
「嘴でも翼でもなんでもいい。とにかくこれを壊してみるんだ。やれそうか?」
「んげるっ」
ルギアはふんすっと鼻息を吹いて、最も小さい獲物の前に立つと、嘴を突き刺した。キューブがあっさり崩れる。
「よし、その調子だ」
「げーるっ」
ルギアは嬉しそうに、楽しそうに、どんどん石を壊していった。
快進撃が止まったのは5つ目の、1立方メートルほどのキューブだった。何度叩いても啄いてもビクともしない。だんだん不機嫌になってきた雛鳥が、悔しそうに地団駄を踏んだ。
「げるるるるるるっ!」
「騒ぐなって。4つ壊したのも大したもんじゃねーか」
慰めてみたが効果はいまひとつだった。
ええい面倒な。泣くな喚くなうっとうしい。
すると、それまで黙って見ていたカブルーがルギアの傍に跪いた。
「ぎしゃ」
「げる?」
「ぎしゃしゃ」
カブルーが胸を膨らませ、細い口から水をぴゅっと吐き出した。砕けた岩を弾き飛ばす。
なぁるほど、殴る蹴るばかりじゃなくて、頭を使えというわけか。
俺とレホールさんは前のめりになった。ルギアの特殊攻撃をこの目で拝めるまたとないチャンスである。技のタイプが分かれば、ルギアの属性判断の材料になる。
ルギアはカブルーに倣って息を深く吸い、力を溜め始めた。胸元がググッと膨れあがる。
──一瞬の後、雛鳥が吼えた。
「ぐるぁっ!」
凄まじいスピードで発射されたエネルギー弾が5つ目のキューブに命中する。表面をバターのように削り取り、あれほど硬かった岩を爆散せしめた。
「ウソだろ!?」
「ウヒョォ!」
2人とも、顎が外れるほど驚き、絶句した。
球状のエネルギーを発する技はいくつかあるが、こんな威力は滅多にお目にかかれない。
なんだあれチートかよ!?
「みっ、みた、みたかっ、あれ、あの技っ、すご、半端じゃないっ!」
レホール先輩は興奮しすぎて言葉が上手く出て来ないらしい。手だけが高速で今の衝撃をスケッチしている。
俺はといえば、ただただバカみたいに口を開けて頷くことしか出来なかった。
カブルーたちはそんな人間たちの驚愕など意に介さず、鎌と翼でハイタッチしていた。
というわけで第7話。
ずっと書きたかった主人公の相棒を出せて嬉しいです。
カブトプスなのは初期構想から決まってました。主人公はこの発掘体験から考古学に憧れるようになったという裏設定があります。
最後にルギアがぶっぱなした技は何か、お暇な方は推察してみてください。
攻略サイトはなしで笑
よければ感想評価おなしゃす。