ルギア、拾っちゃいました。   作:じゅに

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イッシュ編
第78話 1日目/摩天楼のはざまで。


 

 

 

 

 離陸してから3時間。機内食も食べ終わり、なんとなく倦いた空気が漂い始めたころ、機長からこんなアナウンスが流れた。

 

『本日はご搭乗くださいまして誠にありがとうございます。本機は当初の予定通りイッシュへフライトできる見通しです』

 

 それを聞いて、まわりの乗客たちが一斉に安堵する。

 俺は首をひねった。見通しも何もこれは直行便なんだから当たり前じゃないのか? 

 通りがかったCAにどういう意味か訊ねると、楚々とした微笑みを浮かべながら教えてくれた。

 

 なんでも、ガラル⇔イッシュ間の直線航路に()()()()()()()()()がたびたび出現し、空を飛ぶものを見境なしに襲う事件が多発しているのだそうな。

 そのポケモンが現れた日はアローラに迂回することを余儀なくされるため、いまや直行便として飛べることは珍しくなりつつあるという。

 

 CAは美しく装った顔に憂いを浮かべた。

 

「各地のポケモンリーグに問い合わせて退治を依頼しているんだけど、どこからともなく現れては消えてしまうから中々解決しないみたい」

「は〜そりゃまた難儀な」

「もし腕に覚えがあるなら挑戦してみたら?」

「わはは」

 

 笑ってごまかす。たとえ空が飛べたとしてもそんなおっかないポケモンには近づきたくない。

 

 そんなこんなで2時間後、俺は摩天楼都市と呼ばれるヒウンシティに降り立った。

 

 ヒウンは何もかもデカかった。

 見上げてもなおてっぺんが霞むビル、だだっぴろいポケモンセンター。行き交う人々は男も女も背が高く、ついでに横にも広い。

 俺より小さいのは子供くらいのもので、まるで年齢が逆行したような気分を味わった。

 

 ひとまず飯を食おう。ポケモンたちも腹を空かしているだろうし、なによりヌメラのニックネームを伝えねば。

 

 ヒウンのガイドマップを手に取ろうとした時だった。

 見知らぬ美少女が横から話しかけてきた。

 

「ねねね。あなた、よその地方から来た人よね?」

 

 分厚い眼鏡の奥の瞳がキラキラ輝いている。

 ダンデ(バトルジャンキー)に絡まれた記憶が甦り、おもわず警戒しながら頷いた。

 

「……そうだけど」

「やった! やっぱり!」

 

 少女はぱちんと手を鳴らし、その場でくるくる回った。

 

「空の玄関とも言われるヒウン空港で見張ってたらきっと面白そうな人に逢えると思ったけど、ビンゴだったわ!」

 

 可憐だが、どことなく普通とは違う空気を纏う女の子だった。やたら大きな黒いリボンで髪をまとめ、フリルたっぷりのワンピースを身につけている。

 どこからともなく分厚いメモ帳を取り出すと、凄まじい速さで書きつけはじめた。

 

「私は空港で彼と出会った。年の頃は10代前半から半ば、背丈はやや大きく背筋の伸びた立ち姿で…………」

「ちょい待ち」

 

 彼女の正体も声をかけてきた理由も不明だがそればっかりは聞き捨てならねえ。

 俺はジト目で訂正した。

 

「俺はローティーンじゃねえ。れっきとした18歳だ」

「えっ、歳上っ!?」

 

 少女は目も口も丸く開いて驚きをあらわにした。

 

「やだ、ごめんなさい! 幼く見えたからてっきり……そこはとっても重要なポイントよね! 書き直すわ!」

 

 ページを破き、クシャクシャに丸めてポケットに突っ込むとやにわにペンを走らせた。

 

「年は18、背丈はやや低いが背筋の伸びた立ち姿で」

「…………」

 

 幼いだの小さいだのナチュラル失礼な女だなこのやろう。第一俺は小さくねえよ標準だよ! イッシュのやつらがデカすぎるだけだろが! 

 

 黙って踵を返すと、少女が慌てて前に回りこんできた。

 

「あああっ、待って待って!

 あなたには聞きたいことが沢山あるの!」

「俺には無い。じゃあな」

 

 悪いがさっきの一言で好感度ダダ下がりだ。構わず歩こうとする俺に、少女はとんでもない言葉を投げかけた。

 

「協力してくれたらお昼を奢るわ! 

 ヒウンいちのレストランで!」

 

 途端、腰のボールがガタガタ揺れた。

 我が家の食いしん坊閣下はすでに起きていたらしい。

 寝とけや。

 

 ここで誘いを断れば、後でしこたま啄かれるんだろうな……

 

 俺は溜息をついてから、渋々答えた。

 

「…………不味かったら即帰るぞ」

「そんなことにはならないと予言するわ。あそこは本当に美味しいから。

 ────そういえば、まだ名前も言ってなかったわね」

 

 少女は細い手を差し出し、にっこりした。

 

「わたしはシキミ。新進気鋭の小説家よ」

「アシタバだ」

 

 握った手には、固いペンだこが出来ていた。

 

 

 

 

 




というわけで78話。
記念すべき初邂逅はシキミちゃんでした。
本好きで小説家であること以外本編で得られる情報がないので好き勝手にキャラ付けしていきます。
この時代すでにワープロはありますが彼女は手書きにこだわりそう。

よければ感想高評価おなしゃす!
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