ルギア、拾っちゃいました。   作:じゅに

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第94話 不可思議な力。

 

 

 

 

「海底洞窟にはどうやって行くんですか?」

「そら潜るのよ」

「生身で?」

「おう!」

 

 わあ朗らかな返事だ。

 おう! じゃねえのよ。

 俺がネイティみたいな眼を向けると、アデクさんは豪快に笑い飛ばした。

 

「がはははは! 冗談だ! ここらの海は深いでな、素潜りなんぞしたら耳が詰まってしまうわ!」

「常人はそれじゃ済まねえンですよ」

 

 この人の冗談ビミョーに分かりにくいんだよな……。

 呆れつつ、どうするつもりなのか見ていると、アデクさんが高らかに指笛を鳴らした。

 海原を、鳥の鳴き声にも似た音が響き渡っていく。

 

 暫くは何も起こらなかった。

 

「…………あの」

「しっ。来おったぞ」

 

 目配せされ、海の一点に目を転じた。

 最初は小さな影だった。

 みるみる大きくなっていく。

 俺が咄嗟に身構えるのと、()()が海上に姿を現すのはほぼ同時だった。

 

 海よりも青い膚。

 数多の傷が刻まれた甲羅。

 片目が白く濁っているのは、長い年月で視力を喪ったのだろう。

 

 カブトプス(カブルー)と同じく、太古の時代に生まれた化石ポケモンの一。

 

「アバゴーラだ。海底洞窟の守り主よ」

 

 年振りた亀が、低い声でごうと鳴いた。

 

 

⋈ ………………………………………… ⋈

 

 

 イッシュのとある街に、蔦に覆われた雑居ビルがある。雨風に晒され、いかにも寂れた風情のそれは、街のただ中にあるというのに誰も目を向けたりしない。

 

 目立たない。

 それこそ、購入にあたってアデクが求めた条件だった。

 

「…………ふう」

 

 ビルの一室で、数十枚に及ぶ調査資料に目を通し終えたギーマは、目頭を揉みながらソファに背を預けた。

 

 ここは対ロケット団のための捜査拠点だ。

 奴らの存在を知ってから、アデクはイッシュのあちこちにこの手のビルを求め、捜査に必要な機材や資材を運び入れた。

 

 各拠点の場所を知っているのは四天王候補の3人と、ごく限られた人間のみである。

 

 アデク達はこの数ヶ月、あらゆる手を尽くして捜査してきたが、やつらはまるでシビルドンのように掴みどころがない。しっぽを掴んでもするりと逃げられ、あるいは切り捨てて行方を晦ましてしまう。

 そしてまた何食わぬ顔で"商売"を再開するのだ。

 

 ライモンシティの地下で広げられていた賭場も、捕まえられたのはロケット団のロの字も知らぬ木っ端ばかり。

 

 せめて幹部クラスの人間を捕まえたいものだが……

 

「思い通りにいかないからこそこの世は面白いけどねえ」

 

 書類を纏めてくれていたズルズキンが心配そうな面持ちでギーマを見やる。喧嘩っ早い性格だが、仲間思いなポケモンなのだ。

 

 何度目かの溜息をついた時、電話のベルが鳴った。

 

 きっかり3コール待ってから受話器を取る。

 

「────はい、ギーマ」

『手がかりはあったか』

 

 挨拶もなく尋ねるやり口に、ギーマはうっすら微笑んだ。単純明快、そこが好ましい。

 

「残念ながらなにも。そちらは?」

『…………得たというか、得るというか』

「? どういうことだい、レンブ」

『…………。明確な情報は()()ない。

 だが、もうすぐ手に入る見込み、ということだ』

 

 思わず受話器を見つめる。

 彼にしては随分歯切れが悪いし、いまいち要点を掴めない。こちらが戸惑うのを察したのだろう、レンブは数秒の間を置いて、ゆっくりと答えた。

 

『…………占って、貰うんだ』

「……占い?」

 

 ギーマの目がすっと細くなる。

 レンブは口早に説明した。

 

『彼女の占いは恐ろしいほど当たるらしい。ロケット団の現在地も次の目的も、手に取るようにわかると言うんだ。俺も信じている訳では無いが、金はかからないというし、なにか手がかりでも掴めればいいと思ってな』

「料金も貰わないで、なぜ占ってくれるんだい?」

『シキミの知り合いらしくてな。

 友人価格でいいと言ってくれた』

「…………」

 

 ギーマはギャンブルを好む。

 賭けと聞けばどんな媒体、どんな手法でもやってみずには居られない。

 しかし、運に身を委ねることと、怪しいものに依存することは天と地ほどの開きがある。

 

 そんなギーマにとって占い師とは、誰にでも当てはまることを適当に話す胡散臭い輩でしかなかった。

 

「なんて人だい? その占い手は」

 

 必要ならば、身元を洗う必要があるやもしれない。

 彼らの鑑識(めきき)を疑うわけじゃないが、念には念を入れた方がいいだろう。

 

 レンブが言った。

 

 

『カトレア。常連曰く、夢見る占い師だそうだ』

 

 

 

 

 

 

 




というわけで94話。
今日もギリギリ更新です。なんとか間に合ってよかった。

さて、みんな大好きカトレアちゃん登場(名前だけ)。
早く出したかったので予定を早めちゃいました。

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