U-20 ワールドカップ決勝にまで勝ち進んだ日本代表のエースストライカー田山 将兵は持ち前の技術とフィジカル、そして負けん気の強さを武器にスペイン代表にも選ばれている18歳の超逸材であるフェルナンデスを相手にもう何回目かわからない一対一の勝負を仕掛けていた。
本来なら周囲の味方と連動しながら攻めるのべきなのにスペインの連動したプレスと連戦からの疲れで周囲の動き出しがついて来れないのだ。むしろここまでパフォーマンスが落ちない田山のスタミナがいかに傑出しているのかがわかる。
『またか…何度やっても結果は同じだよ?』
「うるせ!何言ってるのかわかんねえんだよ!!」
高速シザースからのエラシコとみせかけてエッジターン。
『テクニックだけなら最上。でも味方がいなければ注意すればいいのは単独突破だけだね』
「確かに前半も30分過ぎ。普通なら足が止まる時間帯だけど…三上!!」
俺の選択は相棒…三上 春彦へのパスだった。これには流石のフェルナンデスも虚を突かれる。
『ここで…11番へのパス!?』
「三上!ここまでサボってたんだから働けニート!」
「ニートじゃない!効率よく休んでたと言え!!」
「負けたらどっちにしろ戦犯の一人じゃボケ!」
ボールを受けた三上は減速することなく加速する。田山に釣られて中央に絞り気味になった守備陣の外側…ライン際を持ち前のスピードドリブルで駆け上がっていく。
スペインの選手たちの注意が三上に集中する。
田山はその隙を突いて相手の死角に入り込むステップワークでフェルナンデスを突破。
『しまった!これは日本の得意パターン!』
田山に集中されれば三上が、三上に集中されれば田山が輝く。これが世代別代表に常にコンビを組んできた二人のコンビネーション。それゆえに二人はいつしかゴールデンコンビと言われるようになったのだ。
田山がゴール前に抜け出してフリーになるのと、三上のクロスはほぼ同時だった。
「相変わらずドリブルとパスだけは極上だわ…」
この相手を完全に出し抜いてフリーになった瞬間の快感はいつでも極上だ。
ダイビングヘッド!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ゴールを決めたことを確認した俺はゴール前のサポーターたちがいる一角に走り出す。
そしてサポーターたちに向けて恒例のゴールパフォーマンスである胸を三回叩くセレブレーションを行う。
遠く異国の地まで応援に駆けつけてくれたサポーターたちの日本コールが響き渡る。
最後に両腕を頭上にあげて感謝を送ろうとしたところで集まってきた味方に押しつぶされる。
「ぐへぇ」
情けない声が思わず口から出るがご愛敬だろう?実際に日本のメンバーからは賞賛の声がかけられる。
「よくやった」「さすがはゴールデンコンビ!」「無謀な突破にこだわってるから肝を冷やしたけどこれが狙いか」
キャプテンの近藤さんに助け出してもらわなかったら本当に圧死してたかもしれない…
近藤さんが音頭を取ってこれからの戦術について再度確認をしていく。
基本的には俺と三上の二人にボールを集めて攻撃。守備は最終ラインを高く保ってのハイプレス。
技術で劣る俺たちの長所である献身的なプレスでパスコースを限定して、日本で最高峰のDF能力を持つ近藤さんがボールを奪ってからのカウンターが基本路線。
ただし、ここまでの連戦で疲れ切ってる俺たちのスタミナを顧みて、必要に応じてポゼッションでスタミナを回復させる。
「難しい舵取りになりますね、近藤さん」
「それはしょうがない。勝つためには攻める姿勢を忘れるわけにいかないし、正直べた引きしたところでスペインならうちの守備を破壊するだけの破壊力がある」
思わず苦虫をかみつぶしたような顔になるのはしょうがないことなのかもしれない。
先制点を取ったのに楽になるどころか、これから本気のスペインを相手にしなければならないのだから…
「エースがそんな顔をするな!大丈夫だ。俺たちが何回でもお前たちにボールを供給してやる!!」
「近藤さん…わかりました。俺が前線に残ります。三上、お前は俺と中盤のジョイント役になってくれ」
「わかった」
腹をくくった俺たちは強い。そう思えるほど疲れ切っていた身体に闘志が充填されていく。
そして、格下だと思っていた日本に先制されたスペインを見れば、そこには剝き出しの闘志を視線に込めて俺たちを見つめてリスタートを待ちわびる姿があった。
「ここからはデュエルが勝敗のカギを握るな…」
急いでポジションにつきながら俺は思わず呟いていた。
結論だけ述べよう。
この日俺たちは本気のスペインに敗北することになる。敗北の理由は…この試合二得点を決めて大会得点王にもなった田上 将兵の負傷退場により攻め手を欠いたこと。
攻撃の柱であるエースを欠いたことで攻撃が単調化するとともに、注意するべきが三上の個人技に限定されたことで、スペインの圧力に屈することになったのだ。
ただし、大会得点王とベストイレブンに日本から三人の選手が選ばれたことは快挙と言える内容だった。
田上 将兵のケガは相手DFと競り合ったときにバランスを崩して着地に失敗したのが原因で足首のねんざということで深刻なものではなかった。
サッカー選手にケガは付き物である。だからこそ誰も田上のケガを責めたりはしなかったが、考えてしまうのだ。もし田上がケガをしていなかったならと…
それは田上自身もだった。だからこそ、田上はロッカールームでチームメイトたちに頭を下げて、号泣した。もし、自分がケガをしなかったら目標である優勝できたのにと…
これに怒り、悔し涙を流したのは相棒の三上とキャプテンの近藤さんだった。
「お前がいないぐらいで機能しなくなった俺の責任」
「お前がとってくれた二点を守り切れなくてすまん」
監督からも「お前たち三人を中心にチームを組んだのは俺だ。お前たちのバックアップメンバーを育てられなかったのは俺の責任」と逆に謝罪された。
頭の片隅では理解しているのだ…スペインが強かったのだと。それでもこの悔しさが消えないのは不完全燃焼だったからだ。
はっきりと言える。連戦の疲れ自体はあったが、コンディションは良好だった。いや、むしろ精神面では程よく闘志が乗った最高の状態だった。だからこそスペインの超逸材であるフェルナンデスを相手に対等以上に渡り合えたし、三上のサポートがあれば得点を取ることもできたのだと。
だからこそ…雪辱を誓う!必ずオリンピックこそ優勝して見せると!
この思いはチームの総意だった。あるものは海外移籍でより過酷な状況に身を置きレベルアップして見せると誓い。あるものはJリーグで活躍してレギュラーを奪って見せると誓った。
ただ置いて行かれているのは田上だけだった。
田上のケガは深刻なものではなかったが、U-20の活躍で出された海外オファーのほとんどがケガをしているという一点のみのために破談になったのだ。
もちろん所属クラブからは好条件のオファーが改めて通知されたし、ケガの回復までサポートすると言われたけど、心に刺さった小さなしこりが残った。
だから寝るときに最近は常に同じことを考えてる。もし、やり直せるのなら今度こそ世界一のストライカーになってみせると…
確かにそう考えていたけど…起きたら大人気漫画のブルーロックのキャラクターになってるのはおかしいと思うんだよね!
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