U-12の試合前に昼食と休憩の時間が挟まれる。
この時に傑の両親ともあったけど、やっぱり原作の主人公の駆くんは存在しなかった。
やっぱりこの夢?はあくまでブルーロックが主で傑の存在が特別なのかもしれない。
そう考えながら母さんが作ってくれた弁当を早々に食べ終わると少しでも体力を回復させるために横になる。
「行儀が悪いぞ、凛」
「兄貴、さすがにフル出場は疲れたから勘弁してくれ」
まあ、U-12の試合でフル出場ということはないのは、事前に聞かされてるけど、出る以上は少しでも良いコンディションで出たいと思っての行動だったのは、兄貴にも分かったのかあんまりうるさく言われなかった。
「まあ、考えながら走ったりしてた割には逢沢よりは消耗が少ないだけましか…」
「傑は中盤だし、サッカー経験がないから無駄走りがどうしても多くなるのはしょうがないよ」
「サッカー経験はないのは同じだけど、凜は俺の試合をいつも見てただけあってサッカーIQが高いのかもな」
あんまり突っ込まれると困るので目を閉じて身体の調子を確かめるが、コンディションは悪くない。むしろ俺たち3人でやるサッカーへの興奮で寝れそうになかったので、兄貴と先の試合の軽く反省会を実施する。
「兄貴から見て先の試合の俺ってどうだった?」
「ん?良くも悪くもいつもの凜という感じだったな。1点目のシーンで空いてる右サイドじゃなくて左サイドに突っ込んだのは完全に予想外だったけど理由はあるのか?」
「ああ、あれは即興だね。相手CBが慌ててないし、冷静すぎたから右サイドを攻めても多分スライドして対応されたと思うから多少強引だったけど、トライアングルを破壊しに行ったんだ」
「なるほど…(やっぱり凜は俺と一緒のようで違うものをピッチ上で感じ取っている)」
兄貴が何か考え込んでるけど、変な事を言ったかな?まあ、かなり強引なプレーだった自覚はあるけど、あの時は何故かそっちの方が相手が混乱して得点のチャンスだと思ったんだよな…
もしかしたらこれが糸師凛の破壊者としての本能だったのかもしれないけど、俺という理性もそうするべきだと思った。俺のストライカーとしての本能が得点の匂いを強烈に感じ取ったんだ。
まあ、傑という稀代の天才が即座に俺のアドリブに合わせてくれたからこその得点だったと思う。そこまで考え込んでいたら兄貴から次の試合に向けての提案があった。
「凛、次の試合だけどお前らが投入されたら、俺がSTでプレイするからお前らの自由にプレーしろ」
「兄貴がCFじゃないの!?」
「ああ。普段の練習から感じてたけど俺と逢沢は見てるものが近い。だからこそ俺と逢沢が近い位置でプレーする方が確実に得点チャンスが作れる。それに対して凜はゴール前の嗅覚というべきものが特筆してるからCFでプレイするべきだと思う」
「俺はストライカーだからCFでプレイできるのはうれしいけど…兄貴の独断でそこまで決めちゃっていいの?」
「大丈夫だ。あの監督は選手の自主性を重んじるからちゃんと話しておけば問題ないし、凛と逢沢の適正を見るために俺との連携を重視してポジションを決めていいって言われてるんだよ」
なるほど…うちの監督はそういうタイプなのか。まあ確かに小学生から変な指導すると可能性を潰すからそういう監督の方がありがたいはありがたいな。
それに俺自身が見てみたい。異なる物語でそれぞれ日本の至宝と言われた存在たちのコンビプレーを!!
「「集合!!」
集合の時間か…これ以上グダグダ考えるのは俺の性分じゃない。兄貴、傑行こう!この試合が俺たちの分岐点のような気がする。だからこそ…全力でプレイしようぜ!
横浜エルスマーレU-12との試合は開始からゴールの奪い合いになった。
兄貴が自由なポジショニングと個人技で相手の守備陣を破壊しゴールを積み重ねるのに対して、エルスマーレはU-10で先発してたCBがSBに移行して先発。強固な守備を構築すると同時に左サイドの7番を中心にしてチャンスメイクするとCFの10番が得点を積み重ねていく。
こうなると交代が難しいな…
常識的な考えなら右サイドに守備的な選手を入れて立て直しながら兄貴を中心とした攻撃で突き放すというのも手だけど、問題はうちの守備のスペシャリストが相手の7番と10番を抑えられてない状況なんだよな。
前半で3:2でうちの1点リード。相手はそこまで疲労してる感じではないけど、うちの守備陣は疲労が激しいな。監督としたら守備陣と予定通りの俺と傑が交代で出場かな?
「凛、傑。後半の頭から行くぞ。田中、よく頑張った。遠藤を入れるから少し休め」
なるほど、監督の判断は攻撃的に行けというものだった。その一方で相手の7番にやられてスタミナの限界だった田中さんをうちの次期CBの遠藤を入れることで何とか立て直そうという感じかな?
「監督!それなら兄貴が後半は右サイドでプレッシャーかけますか?」
「う~ん。冴行けるか?」
「このままだと遠藤も田中も7番を抑えきれないだろうし、それで行こう」
「じゃあ傑が左サイドだけど大丈夫か?」
「大丈夫です、監督!!」
「よし!それじゃあそれに合わせてポジションを変更するぞ。CFは凛、OMFは左から傑、冴だ、真田はきついと思うけど中盤の底でフィルター役を頼んだぞ」
「「「「はい!!!!」」」」
KICK OFF
後半はマイボールからスタートだからとりあえず落ち着くまでボールを回すか…傑にパスすると落ち着いた様子でボールをコントロールしながら遠藤にパスしていく。
守備ラインでボールを回しながら俺たち前線の3人がじわりじわりと相手の様子を伺っていく。どうも俺と傑が出てきたことに動揺がないな…むしろ兄貴が右サイドでボールを持つたびに緊張が走ることから俺と傑はまあやるけど、脅威ではないという感じで受け止められてる印象だ。
ちょっと腹が立ってきた…
兄貴にボールが入った時点でポストプレーができるようにポジショニングを変更していく。傑も俺の意図を察したのか中央よりのポジションをとっていく。
そして兄貴からの速い足元へのパスが来た時点でスピードアップする。ワンタッチで傑へパスしながらオフザボールの動きで相手の裏へ飛び出しを狙うけど、冷静に対処される。
ならばと左サイドに流れながらパスコースを作る!それに呼応するように兄貴も一気に右サイドから中央よりにポジションを変更してくれたので、同じように傑からのパスを受けられるようにポジションを再度変更する。
そして傑から兄貴へのパスと同時にダイゴアナルランで左サイドから一気に右のハーフレーンに走り出すと傑が一気に中央に走りこむ。
そして兄貴と傑のワンツーから兄貴から低く速いセンタリングが出される。
相手のCBがマークについてくるけど、俺はこれを胸でコントロールしながら傑にダイレクトパス。
あとは二対二だけど、傑にはホイップキックというこの状況なら誘導して決めきれる絶対的な武器がある。
だから…傑からのシュートフェイクからのパスには驚いてしまった。
そこからの行動は無意識だった。一瞬相手に体重を預けることで行動を封じるとまた抜きの反転トラップと抜け出し。そして冷静にGKの動きを観察しながらキックフェイントからのコントロールシュート!
GOAL
このゴールが起点になって俺たち三人は歪ながら関係性が構築された。チャンスメイクは傑と兄貴が中心になって行い、俺がフィニッシャーになるという関係性だ。
「凛、よく決めたな。逢沢、完全に相手の裏をついたナイスパスだった」
「相手DFの反応が良くてシュートコースがほとんどなかったからパスを出させられました。次は俺が決めてみせます!!」
「分かってるのならいいさ」
忘れてたけど、まだピッチの王様はサッカーを本格的に初めて数か月なんだ。そう言えば普段の三人での自主トレでもシュートやドリブルよりもパスを優先してプレイすることが多かった気がする。
「傑、今度からドリブルもシュートも一緒に練習しようぜ。もう一回決めろって言われたら次は決められるかわからない厳しいパスだったからもっとお互いにうまくなろう!」
「ああ!!」
この日の横浜エルスマーレU-12との練習試合は試合に勝ったもののまだまだ俺たちに足りないものが多いと実感させられた貴重な練習試合になった。
どのタイミングで一気に原作まで加速させるかな…