恋するギフテッド   作:萌花千

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十二話

 ピザはとても美味しかった。

 会話の流れで気づけば、二ヶ月に一回はピザを食べることになった。

 今、思い出してもなんでそうなったのかわからない。

 

 

 

 それからしばらく忙しい日が続き、私が次登校したのは入学式から二週間が過ぎたころだった。

 

 二週間もすぎればみんな打ち解けてグループが確率していた。

 

 ボッチ再来!?

 

 と頭の中でテロップを思い浮かべていたら、マッシーが話し掛けてきた。

 

「仕事お疲れ。そんなに休んで出席日数大丈夫なの?」

 

 マッシーは無事野球部に入部したらしく少し土臭くなっていた。

 

「大丈夫だよ。仕事は公欠扱いだからね。テストで点数とっておけば問題なし」

「で、テストも主席だから余裕か」

「もちろん!」

 

 私は親指をたてる。

 

「すげーな、船戸」

「褒めても何もでないよ?」

「いやいや、単純に感心してるだけ」

「まあ、私の場合は運が良かっただけだからね」

 

 たまたま、ギフテッドとして生まれた。

 そうして容姿も優れていた。

 偶然だ。そこに努力は介入しない。

 遺伝子と運の勝利だ。

 きっと前世で沢山の徳を積んだんだろう。

 

「マッシーは? 野球部の方は?」

「まあ、ボチボチ。先輩にしごかれてるよ」

「大変じゃん。彼女に慰めてもらいないよ」

「それが今、喧嘩中なんだよ」

「えっ!? 彼女いたの!?」

 

 まさかの返しに私は驚く。

 本人は普通に落ち込んで、知っているのが当たり前のように話した。

 

「いる」

「写真みたい! 見せて!」

「えっ!? なになに? 何話してるん??」

 

 私の肩をかするように触りながら会話に参加してきた一人の男子。

 石川くんだ。

 彼の乱入にマッシーは一瞬、顔を歪ませる。

 

「別に。お前には関係ない話だよ」

 

 声色は普通だが、その言葉には明らかに敵意や嫌悪が含まえているのが感じ取れた。

 

「んだよ、マッシー。つれねぇなぁ」

 

 肩を組みダル絡みしてくる石川くん。

 

「ダルいって」

 

 心底迷惑なそうな顔をするマッシー。

 

 嫌われていることに気づいていないのかな?

 脳みそドングリでできてそう。

 

「結衣、教えてくれよ〜」

 

 ネコ撫で声を出しながら石川くんが私の背後に回った。

 私の警戒レベルがあがる。

 

「いいだろ?」

 

 肩に手を置き、顔を覗き込んでくる。

 

 キモ。

 キモキモ。

 

「おい石川、それはキモいって。やばすぎ」

 

 マッシーが空気に配慮し、半笑いする。

 ここで変に怒ったら教室の空気事態が悪くなる。それを危惧しているんだろう。

 

 しかしおかしい。

 私は石川くんが触れてきたら手を払ってやろう考えていたのに体が、動かない。

 なんでだ?

 

 こんなこと始めてだ。

 

「なんの話してるの??」

 

 石川を無理やりどかし、私の両肩に別の手が置かれた。

 優しい柔らかい手。

 私は首を回し、顔を見上げる。

 

「咲ちゃん、久しぶり」

「久しぶり。入学式からずっとこないから心細かったよ〜もう〜」  

「ごめん、ごめん」

 

 咲ちゃんの腕が胸の前でクロスする。

 私は柔らかく手触りのいい手を撫でる。

 

 凄いくっついてくる。

 いや、いいんだけどさ。

 

「おっす」

「ヒロくんおはよう〜」

 

 時刻は八時すぎ。

 今日は実家登校からのヒロくん。

 

 脳内に登校時間をメモしておく。

 

「おはよう〜」

「おは〜」

「マッシー、金曜に出た数学の宿題わかった?」

「おお」

「まじ? すご。俺さっぱりだから教えてくんね?」

 

 数学の宿題?

 そんなものがでてたのか。

 私なんもやってないんだけど。

 なんでヒロくん教えてくれないの。

 いや、そもそも昨日まで忙しすぎて殆どメッセージ交わしてないや。

 

 携帯を開きメッセージ開くと、通知が貯まっている。

 ヒロくんから十件ほど。

 そもそも未読だった。

 

 彼氏からのラインを数日間放置するなんて、酷い彼女だ。

 

 小さなため息をこぼし、私は携帯をポケットにしまう。

 

「なにそれ。私知らないんだけど??」

「結衣わからないなら俺が教えてやろうか?」

 

 得意げな笑みを見せる石川くんを一瞥。

 

「黒板に問題書いて解かせるタイプの先生だから大丈夫」

「そうなの?」

 

 ヒロくんの問に私は首をかしげる。

 

「そのせいで藤宮は酷い目にあったからな」

「ちょっ! マッシーその話は!!」

「なにがあったの?」

 

 咲ちゃんが顔を赤くして慌てる。

 

 聞いてみると、どうやら咲ちゃんは数学が苦手らしくマッシーに宿題を見せてもらったんだけど、答えだけ写した。

 で、先生に当てられて答えだけ黒板に書いたら先生に「式もちゃんと書いて」 と言われ「わかりません」と答えたそうだ。

 

 クラスメイトが注目する中でそんなボケをかましたもんだから教室は笑い包まれ、先生は呆れていたらしい。

 

 答えだけ写すのもバカだけど、それを黒板上で行使するってーー。

 

「咲ちゃんって思ったよりバカなんだね」

「ほら! 絶対言うと思った! みんなして私をバカにして!」

 

 もっと大人しい人なのかと思っていたが、咲ちゃんは明るい性格らしい。

 まぁ、インスタのトークは絵文字盛りだくさんだから、むしろ最初の方がギャップがあったけど。

 

「まあ、咲はバカだからな! アハハ!!」

「あ〜、うん。そうだね〜」

 

 嘲笑する石川くんの言葉に乾いた声で返す咲ちゃん。

 

「そうえいば今週の金曜に林間合宿あるの知ってる?」

「……知らないことだらけなんだけど?」

 

 宿題といい林間学校いい、なんか置いてけぼりだ。

 

「四人一組の班で結衣ちゃんは私たちの班に入れといたから!」

 

 褒めて褒めてと顔で訴える咲ちゃんの頭を私は撫でる。

 

 エエ子や。

 

「四人?」

 

 私が視線を動かすとヒロくんが一人ひとり指さす。

 

「石川くんは?」

「ん、いや、俺は既に別のグループと組んでたから!!」

 

 早口で言うと、石川くんはバツが悪そうな顔をして去っていった。

 

 どこへ行くんだろう?

 

 視線で追うと教室の隅っこで静かに話している陰キャ二人組に絡み行った。

 

 石川くんが去り、咲ちゃんも島田くんも一息つく。

 しかし、それだけ。

 

 どうやらこのグループは安易に人の悪口を言わない人格者らしい。

 

 それからHRが始まるまで、私は咲ちゃんとマッシーにこの二週間何をしていたか、根掘り葉掘り聞かれた。

 

 この二週間は基本的には写真撮影とMVの収録。あと、どこかの記者のインタビュー。

 写真撮影は日に日に増えている。

 一日で三箇所回ったりして、凄く忙しい。朝もはやく、四時起きなんてこともしばしば。

 私はまだ高校生だから深夜みたいに仕事はないけど、そのせいで深夜は生放送やったり、ジム行ったりと自分のルーティンを維持するのに必死で、気づけば午前二時とかになってる。

 生放送に関してはマネージャーも把握しているからたまに注意されるけど、私は仕事に支障をきたすまで止めないと突っぱねた。

 

 だって、生放送楽しいんだもん! しょうがないじゃん!

 

 と、心が叫んでいる。

 

 

 

「結衣ちゃん、次移動教室だよ!」

「ん? っえ? あ? ああ」

 

 咲ちゃんに肩を叩かれ意識が覚醒した。

 気づかないうちに私は寝ていたらしい。

 記憶があやふやだ。

 原文のおじちゃん先生の声があまりにも穏やかなせいで、開始五分で眠気に襲われーー。そのあとの記憶がない。

 

「わかったぁ。先に行っててぇ」

「うん、もうすぐ授業始まるから早くね!」

 

 目をこすり、私はゆっくりと上体を持ち上げる。

 固い椅子の上、それも変な姿勢で寝たせいか体のあちらこちらが痛い。

 

 痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がり、伸びをする。

 肩の関節がパキパキとなる。

 

 この関節がなる理由、明確に解明されていないが、一節による関節と関節の間にある関節水という水に空気が入るだか出る音らしい。

 人体の構造は複雑だ。

 他の動物も関節が鳴るのかな? 

 

 首を回すと、誰もいなくなった教室で一人の男の子が私と同じように机に顔を沈めて寝ているのが目に入った。

 腕を枕代わりにし、動く気配がまるでない。

 

 起こそうと思ったが、名前がわからない。

 

 私は教卓に置かれている座席表を見て、彼の名前を確認した。

 

「仙台?」

 

 地理だとよく聞くけど、名字では初めて聞いた。

 この地域では珍しい。

 

「お〜い、仙台くん! 移動教室だよ!」

 

 肩を叩くと、仙台くんがモゾモゾと動く。

 その顔は私より眠たそうで、残業地獄の官僚みたいだ。

 

「ほら、起きて起きて! 授業始まっちゃうよ!」

「……」

 

 私の言葉にパッと立ち上がり机に置いてある眼鏡をかけ、教室の時計を確認して慌てて準備する。

 

 もう大丈夫だろう。

 私は教室へ向かう。

 

「どこの教室? そしてどこだ……」

 

 廊下を見ると同じクラスの人は誰もいない。

 仕方ない。

 

「仙台くん、教室わかる? 私わからないから教えてくれない?」

 

 

 一度教室に戻り聞くと、無言で頷かれた。

 

 教科書とノート、筆箱を持ち廊下を持ち、廊下に出るその背中についていく。

 

「きょ、きょ、教科書とノート。ひ、ひひひひ、必要だよ」

 

 落ち着け、仙台。

 その緊張の仕方はキモいぞ。

 免疫ゼロ。

 

「そうなの!? ありがと! どれどれ??」

 

 わざと大げさに反応し、笑顔を見せつけ、次には持っている抱えている教科をグイっと引っ張りタイトルを見る。

 

「世界史ね。ちょっと待ってて!」

 

 私は小走りで教室に戻り、世界史の教科書とノート筆箱を取り出す。

 そしてまた小走りで仙台のところへ戻る。

 

「お待たせ! じゃあ、いこっか!」

「う、うん」

 

 笑顔を向けると顔を逸らす。

 

「そうえいば仙台くんは何か部活入った?」

「い、いや」

「そうなの? 私も! 一緒だね!」

「……」

「中学の時はなにかやってたの?」

「いや、特に」

「そうなんだ! 中学で部活やってないって珍しいね! なんか好きなものでもあったの?」

「あ、アニメずっと見てた」

「なんのアニメ?」

「リゼロとか、東リベとか鬼滅とか」

「あ! 鬼滅は私も見たよ! すっごい面白いよね!」

「そう! めっちゃ面白い! 特に無限列車の猗窩座との戦いは本当にすごくて!! アニメだと戦闘に肉付けがされてて、それがすっごい、上手いの! アニメの肉付けってーー」

 

 おいおい、急に凄い喋るじゃん。

 すごい早口だし。

 私がyoutube普段から三倍速で聞いてなかったら絶対聞き取れないって。

 

「へぇ、そうなんだ! 凄いね! 知らなかった! 仙台くん物知りだね!」

 

 適当に受け流すと子犬のような顔をされた。

 

 目的の教室にたどり着くと、仙台くんはピタリと黙った。

 まるで逆目覚まし時計だ。

 

 無言で扉をあけ、中へ入っていく。

 その背中に続く。

 

 どうやら目的の教室は視聴覚室だったらっしい。

 小さなライブ劇場みたいな部屋だ。

 

 部屋に入り、座っている人と位置から法則性を見つけようとするが、完全ランダム。

 自由席らしい。

 

「結衣ちゃんこっち!」

 

 と、一人手を振る元気な女の子が。

 

「仙台くん、ありがとね!」

 

 一言いい、私は咲ちゃんの元へ向かう。

 そこにはマッシーとヒロくんもいた。

 

「お待たせ〜」

 

 私は用意された席に座った。

 

 授業は歴史映画の鑑賞だった。

 

 

 昼休み。

 

 私達は食堂に行き、お弁当を食べていた。

 因みに私だけ学食。

 

「そういえばさ、私今年の冬にやるアニメのオープニングの作詞頼まれたんだけどさ、歌詞なんて考えたことないから一緒に考えてくれない?」

 

 ご飯を食べ終わり、雑談タイムに入った所で私は口を開いた。

 

「俺らも作詞とかしたことがないんだけど……」

「それそれ、面白そう!!」 

「なんで作詞したことない結衣に頼んだんだ?」

「原作者が私のファンらしくて、それで」

 

 当然の質問に私はスラスラと応える。

 

「すご! なんていう漫画!?」

「花が咲く前にっていうやつ」

「それ知ってる! メッチャ面白いやつじゃん!」

「そうなの?」

「そうだよ! 結衣ちゃん見たことないの!?」

 

 咲ちゃんが目を見開いて驚く。

 そんなに有名な作品なんだろうか。

 視線をヒロくんに向ける。

 

「俺も見たことある。かなり面白い」

「俺も」

 

 ヒロくんに続けてマッシーも頷く。

 

「そんなに人気なんだ……」

 

 どこか他人事のような声がでた。

 

「どんな話なの?」

 

 聞いてみると咲ちゃんがスラスラ喋り始める。

 要約すると、不定期で未来が見えるようになった少年が、不幸な未来が訪れる人を助けていくという話。

 最新刊では、主人公を昔イジメていた女の子が主人公に幾度となく助けられ、惚れたところらしい。

 

 ヒロインが出てくるまでが長く、またヒロインが主人公に惚れるまでも長い作品らしい。

 

 面白そうといえば、面白そうだが、わざわざ読もうと思うほどではない。

 

 私は三人から聞き出したを脳内で組み立て、想像する。

 そして、頭に湧いた言葉を適当に繋げて、ノートに書いていく。

 

  僕にとっては君はその一人

  私にとってあなたはたった一人

  

  巡る夢 消える道 作り出す道

  巡る想い 現れる道 隠す道

 

 

 昼休みを目一杯使い、私は歌詞を書き上げた。

 

 マネージャーからは適当に書いていい許可をちゃんと貰っている。

 ちゃんと原作者にも忠告した。

 

「本当に適当に書きますけど、いいですか? 作詞の勉強とかする時間ないですからね」と。

 

 二人共笑顔で頷いていた。

 いっちょん、わからん。

 

 

 

 

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