呪いを焚べる   作:N島 ジュン太郎

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わ~ほのぼの~
第十二話をどぞ~


第十二話 誕生日ぱーてぃ!

 

 ボクが高専に来てから、三ヶ月ほど経った。

 今日は十一月六日、月曜日。

 寒いなと感じてきた頃だ。

 

 三ヶ月間の出来事としては――皆がいるときの術式の訓練が許可されたのだ。

 それでも偶になのだが、教えてもらえるようになったのは大きな進歩だった。

 

――でもなぁ……。

 

 外出許可は未だに下りていない。

 そう、呪力操作があまり上手くいっていないのだ。

 原因としては、幼い身体は感情の起伏が激しく呪力が一定に練りづらいこと。

 

「夏油さんはよく頑張ってるって言うけどなぁ……」

 

――カラコロ、カラコロ。

 

 五条さんに貰った飴玉を舌で転がしながら、鈴月部屋でとある準備をする。

 そう、明日は十一月七日――

 家入さんの誕生日なのだ。

 ボクは今、部屋の飾り付けをしている。

 

「えっと、折り紙のわっかを貼り付けて……」

 

 色とりどりの折り紙で部屋を彩る。

 幸いなことに、部屋には足踏み台がたくさんある。

 まだ小さいボクに配慮してあったのか、初めて入寮したときから置いてあったのだ。

 そんなわけでボクは飾り付け担当。

 

――五条さんと夏油さんはそろそろ帰ってくるかな……?

 

 今、二人は午後の呪術実践を終えて誕生日ケーキを買いに行っている。

 五条さんは初めて友達の誕生日を祝うらしい。

 

『俺んちだと祝われることはあっても、誰かを祝ったことはないんだよ』

 

 五条家。呪術界における御三家の一つ。

 そして、その名門、五条家の坊ちゃんが五条悟なのだ。

 確かに誰かを祝うとかなさそうな家柄である。

 

 すっごいはしゃぎながら、ケーキを買いに出かけるの五条さんが微笑ましかった。

 ウキウキな五条さんと、保護者の夏油さんを思い出していると――

 ガチャ、と部屋のドアが開いた。

 

「今、帰ったよ。り「凜! 三段ケーキ予約した! スゴくね!?」」

 

――……三段!?

 

「お、お帰りなさい。

 三段ケーキは、スゴいですね……」

「ははは、凜くんも部屋の飾り付け頑張ったね。ありがとう」

 

 夏油さんの大きな手がボクの頭に置かれる。

 思ったよりもはしゃいでいた五条さんに驚きながら、撫でられる。

 一年生ズにとってのボクは、世話をしている近所の子どもといったところか。

 

「凜の誕生日はもう過ぎてたから、段を増やしたんだ!

 あと一段はオマケ!

 来年はちゃんと祝うからな!」

「あ、ありがとうございます」

「悟、そろそろ硝子も実習から帰ってくる。

 声量を落とさないとバレるよ」

 

 五条さんは一緒に空を飛んだ日から、よく絡んでくるようになった。

 それは偶に鬱陶しかったりするが、ボクにとっては嬉しい変化だ。

 よく任務帰りに高い飴玉を買ってきてくれる。今食べているのがそれだ。

 

 夏油さんは、よく呪力操作の訓練に付き合ってくれる。

 一緒に映画を見ながら、ボクをこねくり回して癒やされているらしい。

 多分、任務のストレスが多いのだろう。

 複雑な気持ちになるが、アニマルセラピー的な事が提供できるなら嬉しい限りだ。

 

 家入さんは、実習から帰ってきた時に、疲れて寝ている事が多い。

 医学の勉強と、呪術と、検死と、色々と忙しいのだろう。

 高専寮のロビーでくたびれているか、タバコを吸っている姿をよく発見する。

 

「よし、じゃあ部屋の準備もそろそろ中断しよう。

 私の部屋で呪力操作の練習をして、バレないようにするんだ」

「凜、バレないように気を付けろよ!」

「悟が一番危ないなぁ……」

「あぁん?」

 

 このあと滅茶苦茶映画見た――

 

 

 

 

 

 

 次の日、十一月七日、火曜日、朝――

 家入さんの誕生日、当日だ。

 今日の目覚ましは、五条さんがボクの部屋を突撃した音だった。

 

 ガチャン!!――

 

「凜! 今日の準備、完璧だよな!?」

「うわあ!」

「悟ゥ……! バレるだろう……!」

 

 現在の時刻、朝の4時半……。

 五条さんは静かに怒る夏油さんに連行されていった。

 

~夏油、静かに説教中~

 

 改めて、男子生徒二人と合流したボクは今日の計画をすり合わせていた。

 ちなみに、五条さんは正座させられている。

 

「いいかい? 凜くんは放課後までに部屋の準備を終わらせること。

 私と悟は午後の実習が終わったら、直ぐ予約したケーキを取ってくる。

 もし、硝子が私たちよりも早く帰ってきてしまったら、足止めを頼むよ?」

「はい、大丈夫です」

 

――もしもがあったら、寮のロビーでおしゃべりでもしてようかな

 

「じゃあ、私たちは早めに教室へ行くよ

 ほら立って、悟。」

「わーったよ、傑ママ」

「誰がママだ」

 

 ゲシゲシと、今日も今日とてギャーギャー言い合う。

 朝から元気に“最強たち”は登校していった。

 

「じゃあ、ボクも準備を終わらせちゃおうかな」

 

 早く準備を終わらせてしまおう。

 そしたら、ロビーで少し寝て皆を待とうかな。

 そんなことを考えながら、昨日の準備の続きに取りかかった。

 

 

 

 

 

 

「……き、……づき、……ろ~……りづき~起きろ~」

「……ん」

「あ、起きた」

 

――ヤバ、寝過ぎた……

 

 部屋の準備が完了して、お昼ご飯を食べ終わった後、ずっと寮のロビーで寝転けていたようだ。

 ソファーで寝てたところを、家入さんに頬をツンツンされて目が覚めた。

 

「おはよ」

「……おはようございます」

 

 どうやら、五条さんと夏油さんがまだ帰ってきていない。

 今日は家入さんが早めに終わったようだ。

 部屋には鍵をかけてあるから、バレてないはず。

 

「朝、五条のバカがうるさかったもんね、よく寝れた?」

「……」

 

……もしかして、バレてる?

 

「今日、アイツめちゃくちゃソワソワしててさ~

 流石に分かるよね、ウケる」

 

――五条さ~~ん!!??

 

 ガビーン、と心の中で叫んだ。

 何をやってるんだあの人、ウキウキか? ウキウキなのか?

 家入さんは“どんなことしでかすんだろ~”とニヤニヤ笑っている。

 

「……家入さん、今日は終わるの早かったんですね」

「うん、早く終わらせた~。

 五条が初めて友達を祝うらしいから、盛大に祝われてあげようと思って」

「えっと、それは夏油さんから?」

「そ。流石に隠しきれないよアレは。あはは」

 

 夏油さんも匙を投げたらしい、

 ハァ、とため息をつき、ボクも匙を投げることにした。

 大丈夫、だって既に匙は投げられているのだから――

 

「あの、誕生日おめでとうございます……」

「ん、ありがと

 鈴月は何をしてくれるの?」

「まだ、内緒です。」

「楽しみにしてる」

「はい、楽しみにしててください」

 

 この後、ボクと家入さんは、今日のソワソワしてる五条さんとそれに慌てる夏油さんの話をしていた。

 

「五条がさ~――」

 

 

 

 

 

 

 それから暫くして、夏油さんだけが寮に帰ってきた。

 日が沈み、外はもう既に暗くなっている。

 

「あれ、五条は?」

「悟なら先に凜くんの部屋に行ってるよ。

 硝子にバレないようにコソコソとね」

「バレてるんだよなぁ~」

 

――ケーキがバレないように先に行ったんだ。

 

 流石に三段のケーキを持って、家入さんの前には出られなかったのだろう。

 でも、ボクの部屋には鍵がかかっている。

 そのことを夏油さんに言うと――

 

「じゃあ、私が鍵を持って行くよ」

 

 夏油さんが鍵を持って行き、暫くすると――

 

((よっし! 開いた!))

 

――五条さんの声が聞こえるなぁ……

 

 ホントに隠すつもりがあるのか分からなくなってきた。

 遠くではしゃいでいる五条さんの声に、家入さんと苦笑いし合った。

 

 “そろそろ行こう”、と家入さんが言い、二人で向かう。

 ボクの部屋に向かうと五条さんが部屋の前でニヤニヤして笑っていた。

 

「硝子! 驚いて死ぬなよ!」

「悟、じゃあ始めようか」

 

 バタン!!

 勢いよく扉を開けて、家入さんを先頭に鈴月部屋に入る。

 

 そこには、特大の三段ケーキ。

 “ハッピーバースデー”と書かれ、飾り付けされている部屋があった。

 

「ハハッ、ヤバッ」

「「「ハッピーバースデー!」」」

 

 パンッ!

 五条さんが隠し持っていたクラッカーを鳴らす。

 “驚いた!? 驚いた!?”とはしゃぎまくっている。

 

「あはは、食べきれないから五条、みんなで食べよう」

「このケーキ、凜の誕生日の分もあるからな!」

「じゃあ、凜くんもおめでとうだね」

「はい!」

 

 ボクたちの誕生日パーティーは騒がしいほどに盛り上がった。

 五条さんが顔をクリームまみれにして――

 夏油さんがヤレヤレとそれを拭き――

 家入さんが二人を見てケラケラ笑っている――

 五月蠅くしすぎて途中、夜蛾さんが乱入してきたりして――

 

 

 

 

 

 

「実は、私――甘いの苦手なんだよね」

「「「え」」」

「だから、“来年も期待してる”――」

 

 その夜は騒がしく更けていった。

 ギャーギャー言いながら――、ケラケラ笑いながら――。

 

 

 

 




どもっす!<(_ _)>
N島ジュン太郎です。
読了!感謝!
前日に三段ケーキを予約して間に合うのは多分五条家パワーとかそんな感じ。
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